1 | .たばこの包装への表示の在り方 現在、たばこ事業法においては、製造たばこの消費と健康に関して注意を促すために、たばこの包装に注意表示を行うことを義務付けており、平成元年のたばこ事業等審議会の答申「喫煙と健康の問題に関連するたばこ事業のあり方について」を受け、「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」との文言が定められている。 また、ニコチン量、タール量についても、平成元年の上記答申を受け、たばこ事業法により、喫煙と健康に関連する客観的情報を消費者に提供する一環として、たばこの包装に数値で表示することを義務付けている。 |
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2 | .たばこ広告の在り方 たばこの広告については、たばこ事業法において、「製造たばこに係る広告を行う者は、未成年者の喫煙防止及び製造たばこの消費と健康との関係に配慮するとともに、その広告が過度にわたることがないように努めなければならない」とされ、財務大臣は、「製造たばこに係る広告を行う者に対し、当該広告を行う際の指針を示すことができる」と規定している。 現行の財務大臣の指針は、平成元年のたばこ事業等審議会の答申を受けて定められたものであるが、業界においては、現在、日本たばこ協会で定められた自主規準により、テレビ、ラジオ、TVボード、インターネットサイトや未成年者向けの雑誌での製品広告の禁止、学校近辺での屋外広告看板の禁止、屋外広告看板における面積の規制及び注意表示の掲載など、財務大臣の指針を上回る措置が採られている。 当審議会においては、たばこ広告の在り方について、我が国におけるこのような広告等の規制に関する経緯、諸外国の広告規制の現状やこれらの諸国での広告が消費に与える影響に関する調査研究などを踏まえ、審議を行った。 また、枠組条約案においては、たばこの広告等の段階的廃止を目指し、「自国の能力に従い」広告等の削減を義務づけており、販売促進、スポンサーシップ、国境をまたがる広告等の段階的廃止を努力義務として規定している。 これらについては、 |
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| との意見もあった。 上記のとおり、広告等の規制については様々な意見があるが、規制の強化を主張するものであっても、たばこの広告等を全面的に禁止すべきであるとの考え方を前提としているものではない。しかしながら、たばこの広告等が未成年者に何らかの影響を与えていることは否定できないことから、当審議会としては、未成年者喫煙防止の観点から、今後の枠組条約案の議論の動向も見据えて、財務大臣の指針を見直す必要があると考える。また、この見直しを受け、業界においても、未成年者喫煙防止の観点から現行のブランド訴求広告についてもどこまで規制するかなど、社会的環境の変化を踏まえて現在の自主規制の見直しを行うことを要請する。 |
3 | .未成年者への販売規制の在り方 喫煙のリスクについて多くの場合、適切な判断を期待できない未成年者の喫煙を防止するためには、学校や家庭教育などの場で対応していくことが基本であるが、たばこ事業法においても、社会的規制として、引き続き自動販売機の規制など適切な措置を講じていく必要がある。 我が国では、治安が良好であることなどから各種の自動販売機が普及している。たばこ自動販売機は、現在、約60万台が設置され、販売業者にとっては販売コスト合理化のための重要な手段となっており、その売上げに占める割合も高い。このため、これを全面撤去することは、販売業者にとり死活問題になるとの意見がある一方で、従来から未成年者のたばこの主な入手経路となっているとの指摘もある。 また、日本たばこ産業株式会社法改正法案や未成年者喫煙禁止法改正法案の国会審議においては、自動販売機の管理の強化を図るべきであるとの議論が強く出された。 当審議会では、上記のような指摘や国会における議論なども踏まえ、審議を行った。 |
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4 | .たばこ製品の不正取引 たばこの不正取引については、たばこが多くの国において財政物資であり、高率の関税、内国税等が課されていることから途上国を中心として密輸等が大きな問題となっている。日本製品についても、偽造たばこの問題が散見されるなど、たばこ製品の不正取引防止は国際的に見ても重要な課題となっており、不正取引防止に関する国際的なルールを確立していく必要がある。 枠組条約案においては、製品の追跡を可能とするための製品連番のマーキング等の措置を義務付けているが、当審議会としては、これらの措置についても、不正取引防止の目的を達成するために、たばこ事業者が負担するコスト等も勘案した上で必要かつ適切な措置であるかどうかという観点から検討することが適当であると考える。 |
5 | .たばこの流通・販売に関する規制 たばこ小売販売業の許可制、定価制は、たばこ事業法上、当面の措置とされており、専売制廃止時に、流通の自由化により急激な変化が生じ、零細なたばこ小売業者に深刻な影響が及ぶことなどを回避する措置として導入されたものである。 許可制については、たばこ事業法に基づき、既設店との距離や予定取扱高の基準等の許可基準を設けて運用しているが、身体障害者及び寡婦等からの申請があった場合には距離制限を緩和し、また、自動販売機の設置場所について許可に条件を付して未成年者の喫煙防止措置を講じるなど、社会的要請にも応じたものとなっている。 定価制については、たばこが健康に対してリスクがある嗜好品であるとの性格から、販売業者による自由な価格競争に委ね、より安価に販売されるべきであるとの社会的要請は必ずしも強くない。 一方、WHOたばこ対策枠組条約の交渉の過程において、不正取引の防止や未成年者喫煙防止の観点からの流通業者に対する登録・許可制の議論が行われ、枠組条約案では、各締約国は、不正取引を防止する目的で、たばこ製品の生産及び流通を管理又は規制するため、適当な場合には、免許制を含む追加的な措置を採択及び実施するよう努めるものとする、と規定されている。 当審議会としては、許可制、定価制については、以上のとおり、未成年者喫煙防止等の社会的要請や不正取引防止の観点からも一定の役割を果たしており、枠組条約案においても同様の考え方が示されていることから、現時点で規制緩和の観点から議論を進める状況には至っていないと考える。 |
6 | .教育等 未成年者の喫煙防止に当たっては、たばこ事業関係者による努力のみならず、学校教育、家庭教育あるいは地域での取組みや、政府広報をはじめ様々なレベルでの広報活動等が不可欠であり、多様な方法により幅広く国民全般に周知していく必要がある。 また、健康増進法などの取組みに加え、事業関係者においては、未成年者喫煙防止の啓発や非喫煙者に対する配慮など喫煙マナーの普及等の活動を積極的に行うとともに、引き続き関係各方面に協力を求めていく必要がある。 |