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おわりに

 以上、欧米主要先進諸国の1990年代における財政再建の取組を改めて振り返りながら、2000年代前半の財政事情について調査結果を取りまとめた。
  1990年代の各国の財政再建の取組を見ると、各国とも、財政状況が悪化する中、政治の強いリーダーシップの下、財政再建に係る目標やルールを設け、歳出・歳入の両面から改革が進められた。
 2000年代に入り、各国の財政事情は様々であるが、いずれの国においても、1990年代の取組をいわば土台として、財政の健全化に不断に取り組んでいる。カナダにおいては、1997年度に財政黒字を達成したが、その後も財政規律を緩めることなく、黒字を継続していることは注目に値する。米国は、2000年代に入って財政赤字が拡大したが、2009年度の「財政赤字半減目標」の達成に向けて、財政再建に取り組んでいる。ドイツにおいては、財政収支が悪化し、過剰財政赤字手続の適用を受ける中、幅広い分野で歳出の抑制に取り組んできたところであるが、今後は更に、付加価値税の引上げを含めた歳出・歳入両面での取組を進めることとしている。スウェーデンにおいては、1990年代に行った予算編成システムの改革で導入した財政運営上の目標のほか、社会保障における現金給付と現物給付の区分などを通じて、健全な財政運営を維持している。EU各国においては、2000年代に入り財政を悪化させたが、安定成長協定の基準を満たすべく財政健全化が進められ、近年ではEU全体でみると改善傾向にある。このほか、各国とも、高齢化の進展による社会保障関係費の増大といった課題を抱える中で、社会保障制度の改革に取り組んでいることも明らかになった。
 他方、我が国の財政状況を見ると、国・地方を合わせた債務残高が平成18年度末にはGDP比で150%を超えるなど主要先進国中最悪の水準にあり、財政健全化が我が国とって喫緊の課題であることは言うまでもない。
 国民の理解と支持を得て財政の健全化を実現することは、決して容易なことではないが、政府においては、本報告書で紹介した諸外国の取組も参考にしながら、国民に対し、厳しい財政状況と財政健全化の必要性を粘り強く説明するとともに、歳出・歳入を一体とした財政健全化の具体的な道筋をしっかりと示すなど、財政構造改革に断固たる姿勢で取り組むことを強く望む。