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財政制度分科会(平成29年4月20日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成29年4月20日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成29年4月20日(金)13:59〜16:12
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題

  • 財政総論
  • 社会保障

3.閉会

出席者

分科会長

榊原定征

三木大臣政務官
福田主計局長
可部次長
藤井次長
茶谷次長
角田総務課長
江島主計官
安出主計官
高司計課長
青木法規課長
関口主計企画官
高橋給与共済課長
中島調査課長
八幡主計企画官
竹田大臣官房参事官
嶋田主計官
小宮主計官
泉主計官
奥主計官
阿久澤主計官
廣光主計官
岩元主計官
中山主計官
内野主計官
委員

秋山咲恵

倉重篤郎

黒川行治

神津里季生

佐藤主光

角 和夫

武田洋子

竹中ナミ

土居丈朗

永易克典

宮島香澄

臨時委員

秋池玲子

伊藤一郎

老川祥一

大槻奈那

岡本圀衞

喜多恒雄

北尾早霧

小林慶一郎

小林 毅

進藤孝生

末澤豪謙

十河ひろ美

中曽 宏

南場智子

~子田 章博

宮武 剛

吉川 洋



午後1時59分開会

〔 中島調査課長 〕 それでは、お時間が参りましたので、始めさせていただきます。

本日議事進行を務めていただきます田近会長代理が、やむを得ない事情で急遽ご欠席のため、議事進行につきまして榊原会長よりご発言がございます。

〔 榊原分科会長 〕 先ほどございましたように、この分科会の議事進行をお願いしております田近会長代理がご欠席のため、土居委員に議事進行をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

〔 土居委員 〕 ただいま会長よりご指名をいただきましたので、僭越ながら本日の議事進行をいたしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

本日は冒頭カメラが入りますので、そのままお待ちください。

(報道カメラ入室)

〔 土居委員 〕 ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様にはご多用中のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は財政総論と社会保障の2つを議題といたします。

それでは、報道関係者の方はご退室をお願いいたします。

(報道カメラ退室)

〔 土居委員 〕 それでは、議事に移らせていただきます。

まず、財政総論について議論を行います。総論については、事務局からの説明をもとに簡単に財政の現状についておさらいした後に、講師として慶應義塾大学大学院商学研究科の鶴光太郎教授にお越しいただきまして、財政規律の在り方についてお話を伺うこととしております。

では、財政総論につきまして、中島調査課長より説明をお願いいたします。

〔 中島調査課長 〕 私のほうから、資料1「財政総論」の資料に基づいてご説明をさせていただきます。こちらの1ページと2ページだけを少しご説明させていただきます。

まず1ページでございますが、後ほど鶴先生からフリーライド、ただ乗りについての議論もございますが、そのフリーライドの規模がどの程度なのかということをご覧いただければと思います。右側に歳出の棒グラフがあり、下から社会保障4経費、地方交付税、その他社会保障関係費、そして、公共事業等となっておりまして、PB対象経費が73.9兆円でございます。左側の歳入の棒グラフを見ると、税収が57.7兆円、税外収入が5.4兆円、合わせて63.1兆円で、差額である基礎的財政収支は、▲10.8兆円となります。つまり、現世代の受益を、現世代の負担で賄えていない分が10.8兆円あるということになります。

それから、このPB対象経費に利払い費を足して、ある意味現世代のコストを現世代の負担で賄えていないもの、これが財政収支として▲20.0兆円の赤字があるというような規模感でございます。

2ページをご覧いただきまして、各国ともこの財政収支の均衡ないしは均衡に近いところを目標にして財政運営を行ってございます。我が国は、ご承知の通り、プライマリーバランスの均衡でありますので、諸外国よりも全体として緩い目標を掲げて努力をしていると、そういった状況でございます。

私のほうからは以上です。

〔 土居委員 〕 ありがとうございました。

本件については、今後審議を行う際の参考にしていただければと存じます。

それでは、続きまして鶴光太郎先生よりご説明をお願いいたします。

〔 鶴教授 〕 慶應大学の鶴でございます。本日はこのような場にお招きいただきましてありがとうございます。 皆様、お手元に資料2「財政規律回復に向けて」という資料がございます。こちらに沿いましてお話をさせていただきます。

2ページをご覧ください。私は、この10年程、雇用労働の問題を特に研究対象にしておりましたので、皆さんの中にはなぜこの財審に来て説明をということで、少しびっくりされた方もいらっしゃると思いますが、私自身、ここにもありますように、かつてRIETIのプロジェクトで財政改革について提言をとりまとめたり、2006年には経済財政諮問会議で少しお手伝いをしたり、また、3ページのほうにはNIRAの有識者提言ということで、お隣にいらっしゃる土居委員とともに提言等も出させていただきまして、少し財政改革との関わりもこれまでもやらせていただいてきています。

その中で、4ページ、1月16日の日経の経済教室で『財政「タダ乗り」政策に問題』という記事を書かせていただきました。後ほどご説明しますけれども、昨今話題となっているシムズ理論と、この横にある『RIETI Discussion Paper「社会保障の給付負担に対する選択を決定する要因は何か」』という報告書を3月末に出しまして、この経済教室にも少し研究の概要を引用させていただきました。今回こういった研究、また、論稿も出させていただいたということで、お声がけをいただきまして、本日この場でお話をさせていくことになりました。

この後のお話につきましては、この経済教室に少し書かせていただきましたこと、また、RIETIでの分析を少し皆様にご紹介して、最後は財政の問題も政治プロセスの中で考えていく必要があり、やはり民意というものが非常に大きく影響するということをご説明したいと思います。こうしたところを、やはり今何が起こっているのかということについて、少し考えを皆様にお伝えできたらなというふうに思いまして参りました。

5ページですけれども、財政規律弱体化の流れとあるように、ここに皆様いらっしゃる方々は、まさにその財政健全化の重要性をどの有識者よりも一番ご理解をしていただいている方々というふうに理解をしておりますけれども、このような状況が続いて、正直非常に危機的な状況なのかなというふうに思っています。

6ページをご覧いただきまして、本日中曽委員もいらっしゃっている中で、こういったことを申し上げるのは恐縮ですけれども、金融政策について、私は十分理解をしているつもりですし、それなりの効果を挙げてきたということだと思います。

ただ、ここに挙げていますように、政策の結果として、日銀の非常に大きな国債の買い入れ、それから、長期金利はゼロ近傍まで低下してしまっている。なぜ財政健全化が大事なのかという時に、こういったことを続けていると、ある時突然マーケットが変貌して、金利の高騰が起こる、また、為替レートの大幅な円安が起こるなど、様々な突発的な大きな危機が起こる可能性がありますということを、経済学者として我々は常に申し上げるわけです。

ただ、こういった状況の中、やはりそのようなことを申し上げても、非常に現実味が薄れてしまい、オオカミ少年という感じになってきてしまったというふうに感じています。

それから、もう1つ、金利がここまで低下すると、債務残高の対GDP比率について、これも着実に引き下げていくということが私は大きな目標だと思っていますけれども、PBの黒字化を待たずに低下してしまうということになります。

そうなると、PBの黒字化自体も、頑張らなくても、要は、債務残高の対GDP比率が着実に低下していくから別にいいではないかという状況になってしまう。意図せざる暗黙的な財政規律の緩和ということがやはり出てきてしまっている。先ほどの弱体化の流れの中、当然こういった流れもあるのだろうなというふうに思います。

そこで、財政健全化目標について一言申し上げたいなと思いますけれども、2006年当時、経済財政諮問会議でこの目標について様々な議論が交わされました。ここに挙げています、「上げ潮派」と「財政タカ派」にグルーピングをしていますけれども、当時どういった状況にあったか。これは吉川前会長がまさに当時の議論を引っ張っていただいたということで、私も理解をしていますけれども、「上げ潮派」のほうは、なるべく債務残高の対GDP比率にコミットをせず、まずはPB黒字化をすればいいのではないかという目標にこだわる。ここに理由として書いています通り、例えば、金利が成長率より高い状況を仮定しますと、債務残高の対GDP比率の低下のためには、PBの一定の黒字幅の確保が必要になってしまいます。ここまでやるためには、当時小泉総理も消費税率の引上げは自分のところではやらないとおっしゃっていましたが、どうしても増税というものが必要になってきてしまう。そういった議論を回避するために、私の理解ですと、金利も成長率もほとんど変わらないという仮定のもとに、PB黒字化の達成をすればいいのではないかという議論だったと思います。

ただ、財政健全化をやはり重視する「財政タカ派」のほうは、あくまでPBの黒字というのは一里塚ですと。金利が成長率より高い、これは金融が自由化された平時であればこう仮定するのが当然であろうということで、最終的に債務残高の対GDP比率の低下にコミットメントすることが重要であると主張しました。であれば、当然増税も必要になってくるだろう、そういった理論だったと思います。

増税をするかしないかということがバックにありながら、その前提としての金利と成長率の格差が非常に大きな議論になったというふうに理解をしています。

現在また同じように、PBか、それとも、債務残高の対GDP比率かという議論がございますけれども、かつてと比べて、非常に大きなねじれがある。逆に双方の支持が逆転してしまっているというような状況です。

ただ、私が申し上げるまでもなく、PBの黒字化の目標から逃げることはできません。現在の金利の状況についても、長期でこれを維持できるとは皆思っていないですから、長期的な視点から財政健全化を考えるという点においては、一番最後に挙げていますような金利も成長率も高い、当然そういった仮定の中で考えていかなければいけない。やはり議論が随分混乱してしまうなというふうに思っております。

次に、8ページをご覧いただくと、私は意図せざるところから出てきた暗黙的な財政規律の緩和については、なかなか仕方がない部分もあるのかもしれないですけれども、最近むしろ意図した明示的な財政規律の緩和という議論が出てきました。これはここに挙げていますように、シムズ理論(「物価水準の財政理論」)に基づいて、むしろ減税や歳出拡大をしても、将来の増税や歳出カットにコミットメントしない、それを国民がきちんと信じるということになると恒常所得が増加し、消費が拡大、物価が高騰していくというルートが生じるという議論でございます。

こちらについては、既にここにいらっしゃる何人かの有識者の先生方が、反論を様々な場面でされております。私としてはそれ以上ここで詳しくご説明することはないですけれども、どうも社会保障も含めて、将来不安は現代の消費に悪影響している可能性があり、なかなかこれを定量化して明らかにするというは難しいですが、やはりこういったところが影響しているということを考えることなしに、今の消費の伸びが弱いという状況を説明するのも難しいなと思っています。こういった状況で今申し上げているようなルートが働いていて、消費等が刺激され、物価上昇率が高まることは、私は非常に疑問だなというふうに感じています。

最近たんす預金が非常に急増しているというお話があって、これは税制との関係で把握をされたくないとかということももちろんあるのだと思いますが、やはり高所得者の方々、高資産を持っている方々が、将来的に、例えば預金を引き出せなくなるなど、様々なことをお考えになられて、そういったことも影響している可能性があることも、私は否定するのは難しいなと思います。ですので、やはりこうした将来不安というものが様々なところに行動として出ているという感じがいたします。

それから、労働市場の状況を見る限り、非常に人手不足で大変だというような状況でございますので、マクロ的な観点から、何が何でも2%目標を達成しなければいけないのかということにおいては、ここまで財政規律が緩和してしまうことの引きかえとして、どのように考えなければいけないのかなということは感じる部分がございます。

それでは、こういった財政規律を取り戻していくため、これは非常に難しいことですけれども、何が必要なのかなということをご説明したいと思います。9ページに、当然財政の問題であれば政治のプロセスを考えなければいけない、政治のプロセスを考えるのであれば、民意がどう動いていくのかということを考えなければいけないということだと思います。最近法政大学にいらっしゃった小峰隆夫先生が、ご著書の中で、「国民の甘い認識とその甘い民意に媚びる政治が続く限り、財政・社会保障問題の解決は難しい」、「日本が深刻な「民主主義の失敗」の状態に陥っている」、「国民の負託を受けた政治家が、本当に国民のために何が必要かを判断し、政策を決めていく必要がある」、「世論に迎合するのではなく、世論の方を説得するのが政治家の役割」であるとおっしゃっておりまして、私も全く同感でございます。この下にウィンストン・チャーチルの言葉、かつてはこれを自民党の財革研でもおっしゃった政治家の方がいらっしゃいましたけれども、なかなか今もう財政タカ派というのも、この数年間あまり見たことがないという声もありまして、特別天然記念物みたいな状況になっており、そこも本当に考えていかなければならないところなのかなというふうに感じています。

ただ、政治をどうするのかということよりも、本日私のお話のポイントとさせていただいているのは、10ページにございますように、民意はどう決まっているのかというところです。ここをやはり変えていけば当然政治も変わっていく可能性があるのではないかと思います。

そこでの一番の問題意識は、民意という話をすると、必ずシルバー民主主義だと、高齢者の方々の割合が増えており、そういった方々が将来世代に対してつけ回しをする、この民主主義の中で選挙をすると、そういった方々の声が強くなってしまうということが非常に言われているわけです。

ただ、私は本当にそうなのかなという疑問がありまして、社会保障、給付の負担に関する様々な考え方にどのような要因が影響しているのかということを分析いたしました。ここに挙げていますように、RIETIで実施したウェブ調査、およそ6,000名を超える人々から回答を得て、最終的に5,000名を超えるサンプルを分析対象といたしました。よくウェブ調査というと、非常に特定の偏ったサンプルが選ばれているのではないかということをお思いの方もいらっしゃると思いますが、かなり現実の構成要素と近い形でサンプルを選んで、他の分析もいろいろしていますけれども、バイアスがあるようなサンプルではないということは確認をさせていただいています。

11ページをご覧いただきますと、税制と社会保障について、以下の4つの見方から、あなたのお考えに近いものを選んでくださいという質問をいたしました。増税を今するかしないか、社会保障を縮小させるか拡大する必要があるのか、こうした4つの選択肢について回答をいただきました。

例えば、社会保障を拡大するということは、まとめると7割程度やはりいらっしゃる。増税をするかしないかということは割と均衡しています。

それから、4つの選択肢を見ていただくと、増税せずに社会保障を縮小させる、要は、小さな政府を目指すような方は、17%程度いらっしゃいました。増税をせずに社会保障を拡大する、フリーライダーという言葉を経済教室で使いましたが、33%程度いらっしゃいます。増税をして社会保障を縮小する、財政健全派は、15%程度、今後増税をして社会保障を拡大する、大きな政府を目指すような方々は、36%程度とこのような割合になっております。

これらの方々について、どのようなグループ別の特徴があるのかということを分析いたしました。12ページをご覧いただくと、黄色のところが4つのグループで一番低いグループ、水色のところが一番高いグループということを表しています。

それほど年齢は大きな違いがあるわけではありません。ただ、教育年数を見ますと、左から2番目のグループ、増税せずに社会保障を拡大が、少し教育年数が低いという結果でした。それから、こちらのグループは若干非正規雇用の割合も高くなっている。また、一番下、時間当たり所得も、この4つのグループの中ではやや低めであるというような特徴が出ています。

13ページをご覧いただくと、先ほど私が申し上げたシルバー民主主義との関係で、それぞれのグループで年代別の割合がどうなっているか、また、それぞれの年代で、グループ別の割合がどうなっているのかということを分析いたしました。特にグループ別の割合を見ていただきますと、「社会保障拡大・増税あり」の支持はむしろ年齢が高いほど大きくなっている。それから、「社会保障拡大・増税なし」の支持の割合は若い人たちの間で非常に高いということが分かります。また、「社会保障縮小・増税なし」の支持は年齢が低いほど大きくなるという傾向があります。

どうも、この調査だけで結論を出すのは難しいかもしれませんけれども、シルバー民主主義とは若干異なるような状況が出ているのかなというふうに思いました。

それで、もう少しグループ別の特徴について詳しく分析をして、こういった社会保障、負担、給付の選択が、例えば、政府や周りの人々に対する信頼、それから、不正受給をしないといった公共心、また、政府や市場の役割というものとどのような関係があるのかということを見ました。こちらは、後で少し詳しい分析をやっておりまして、皆様にお示ししますが、黄色のところ、信頼や公共心が少し低いのは、実は左から2番目の「社会保障拡大・増税なし」のグループとなっていることが、お分かりになると思います。

一方、公共心がいちばん高いのは、「社会保障拡大・増税あり」というような状況がございます。

15から16ページは、それを回帰分析という手法をとりまして、それぞれの要因が果たしてその選択にどのような影響を与えているのかということを分析しています。少しテクニカルで恐縮ですけれども、先ほど申し上げた社会保障と税との関係をニュートラルに考える、つまり、小さな政府もしくは大きな政府を選んだ方々を比較の対象として、逆に社会保障を拡大して増税をしない、それから、社会保障を縮小して逆に増税をしようと、こういった考え方をもつ方々の関係が様々な属性とともにどのように違うのかというところを見てみました。

そうすると、先ほど私が申し上げたように、やはり教育年数が短いほど社会保障の拡大・増税を支持する、長いほど「社会保障縮小・増税あり」を支持するという結果になりました。また、時間当たりの所得が低いほど、「社会保障拡大・増税なし」を支持するというような結果が出ているということでございます。

16ページをご覧いただくと、先ほど様々な個人の属性をコントロールいたしましたが、今度はここに書いている様々な指標について分析いたしました。政府は信頼できる、大部分の人々は信頼できるという指標や、公共心について、受給資格もなく年金を要求する、無賃乗車する、脱税、賄賂、ごみのポイ捨て、盗難品を買う、国民年金を納付しない、生活困難な親族を養わないで生活保護を受給させるというような点について間違っていると思うか、また、政府と市場の役割について、自立できない貧しい人は政府が面倒を見るべきだという考え方から、もっと格差が拡大するとしても市場経済は人々を豊かにする、いわゆる市場を重視する考え方を持っているかなど、これらの要因を見てみました。

これらの分析は、それぞれ全部一緒に変数を入れたわけではなくて、1つずつ先ほどの分析に加えていくということをやっています。そうすると、どの変数を加えていっても、公共心が低いほど、それから、政府の責任を重視する人ほど、増税せずに社会保障拡大という考え方をしてしまう、逆に市場経済を重視する人ほど、むしろ増税をして社会保障を縮小するというような考え方がある。結構はっきりした結果が出ています。

今私が申し上げたようなことは、17ページに書かせていただいています。政府への信頼、周りの人への信頼が低い人ほど「社会保障拡大・増税なし」を支持し、こうした信頼の高い人ほど「社会保障縮小・増税あり」を支持する。

不正受給、無賃乗車、脱税、賄賂、ごみのポイ捨て、盗難品購入、年金保険料未納付、生活保護不正といった8つの全ての異なる公共心の変数についても、公共心が低いほど「社会保障拡大・増税なし」を支持するという結果でした。

不正受給、生活保護不正、こうしたやや直接的な受給に関するものについては、公共心が高いほど「社会保障縮小・増税あり」を支持するという結果が出ています。

それから、政府の役割というところも、先ほどご説明したように、貧困や格差問題に対する政府の責任を重く見て、市場経済を評価しない人ほど「社会保障拡大・増税なし」を支持する一方、政府の責任を重く見ないで、市場経済を評価する人ほど「社会保障縮小・増税あり」を支持する、こういった結果が出ております。

18ページをご覧ください。このような結果をどのように考えるのかということについて、先ほどの分析では、非常に簡単な回帰分析をやりまして、一定方向の因果関係を特定するというのは私自身もある程度難しいのかなというふうに思っています。ただ、そうした因果関係は、ある程度可能性ということを考慮いたしますと、今下に挙げているようなインプリケーション、やはり政府が国民からの信頼に応えるだけではなく、様々な公共心を養う、周りの人への信頼が高まる、こうしたものが実は財政の規律回復に向けて非常に重要な取組であろうということです。

それから、教育水準・能力を高めるということもやはり重要であると。特に財政数理的に財政・社会保障の持続可能性を理解することは、非常に重要だと思っています。

ただ、ここで少し注視しなければならないなと思いますのは、教育年数を変数に使っていますけれども、物理的な期間の長さや、予算の多寡ではなく、教育の質ということを、やはり考えていかなければならないのではないかと考えています。

もう1つ、やはり所得等々の変数がこのような選択に影響しているということですので、雇用の安定や、能力の向上・発揮、生産性向上、これは言わずもがな働き方改革等で政府がまさに目指して推進しているところだと思いますが、こういったものも非常に重要になってくるだろうというふうに思います。

それと、先ほど政府への過度の依存症を改め、市場経済に対する信頼を高めていく、市場経済のメカニズムを活かすということが、多くの人に恩恵を与えるということをきちんと信じられる、実感できるということも、こうした問題の解決に私は非常に重要なのかなというふうに思っております。

19ページをご覧ください。最後に、民意について再び考えてみたいと思いますけれども、年明けからメディアを賑わすまさにトランプ氏の状況、行動、これがまたどのような影響を与えていくのかということです。

皆様ご承知のように、なかなかトランプ氏の勝利というのは、既存のメディア、エスタブリッシュメント層は見誤っていた。また、トランプ氏、非常に大統領になってからもツイッターを多用しております。こうしたものについてどのように考えるべきなのかということで、1つはここに中野信子先生のお話を引用しています。「彼が勝利したのは大衆が意思決定においてじっくり脳で考える遅いシステムではなく、感覚的にすぐ行動を起こす早いシステムを使うことを理解していたから」、とのことですが、こちらダニエル・カーネマンのベストセラー『Thinking Fast and Slow』の中で、非常に本能的にぱっと反応して考えることをシステム1と呼んで、じっくり考えて反応することをシステム2というふうに呼んでおります。どうも大衆がそのようにぱっと飛びつく速い意思決定のところを、トランプ氏は非常に刺激していると考えています。

もう1つは、ヘンリー・キッシンジャー氏の話をここで引用しておりますように、要は、インターネットが情報の獲得とその体系的な理解・探索にやはり非常に溝をつくっている。ツイッターで非常に短い文章に、ぱっと反応するというのは、じっくり長い本を読んでいろいろものを考えてという状況がやはりなくなってきているということがあるのではないのかと思います。

私は財政規律や健全化の話は、それこそこの遅いシステムでしか理解ができないと考えています。ここにいらっしゃる方は、速いシステムにすぐぱっと反応するという方々はむしろ全然いなくて、この遅いシステムでじっくりものを考えるという方々ばかり集まってらっしゃると思います。

経済学という学問自体も、何かぱっと起こった時に、実はそれの後に回り回って様々なことが起こるから、結局経済はこのようになると教えることが、私は経済学の役割なのかなというふうに考えていまして、それを理解するのは結構大変だと思っています。

また、私はやはりそういった分断化の話は、この財政の問題でも非常に大きくなっているのではないかという感じはします。

蛇足ながらお話をすると、1月に私は経済教室を書かせていただきました。もう5年程、年に3回エコノミスクストレンドをやっていますので、様々な話題について書いていますけれども、今まで何か反応があるということはそれほどありませんでした。しかし、今回非常に他のテーマと違って際立った反応が2つありました。

1つは、ツイッターや匿名の世界で、この記事に対する批判が非常に盛り上がりました。私がツイッターやっていたらおそらく炎上していただろうなと思いました。

一方、非常に財政や経済の問題に見識のある方々は、よく言ってくれたと、随分何十年振りにかつての先輩がメールしてくださって、おっしゃってくださいました。これほど反応が別れることは、私も日々経験したことはないです。

これを考えてみても、やはりこの問題において我々が見えないところで一体どのような反応が起きているのか、ここに最後ありますように、インターネット社会の影響や、思考システムがどのように変化しているのか、こういったことまで考えていかなければ、なかなか財政の問題を解決するのも、私は非常に難しくなっているのではないのかなと考えています。

かつては、財政の問題は政治の問題であると、やはりそれを変えるためには、財政の制度や、アーキテクチャーなど、そういった制度的なものを交付するべきだという話をかつて財政改革の本で書きました。しかし、もうその次元から、今別の次元に移ったのかなという感想を非常に持っておりまして、19ページの最後にありますように、シルバー民主主義、世代間の対立があるからなかなか財政の健全化が難しいということを我々は説明することが多いですけれども、今の大きな環境変化の中、ポピュリズムという話をしても、アメリカやヨーロッパの話だけに限らず、まさに財政の問題の本質にもかかわってくると思います。このような認識をやはり今新たにすべきではないのかなということを非常に強く感じる今日この頃であります。

非常に雑駁なお話で、このような場でお話しするにはあまり適していないお話もたくさんあったと思いますけれども、どうかお許しいただければと思います。

以上、ご説明は、ここで終わりにしたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

〔 土居委員 〕 鶴先生、ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご意見、ご質問などがございましたらお願いいたします。

それでは、小林慶一郎委員。

〔 小林(慶)委員 〕 前回欠席をいたしまして、本日初めて参加します。慶應大学経済学部の小林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の鶴先生のお話は大変私も腑に落ちると言いますか、日頃考えていることと非常にマッチすることだなと思いましたが、要するに、財政の問題は結局将来世代の利益と現代世代の利益をどう配分するかという、将来世代の利益をどう擁護していくかという話だと思います。それはよく考えると、道徳で考えるべきことと割と似ています。そうすると、結局この財政の問題というのは、本質的に道徳であったり、公共心であったりというところとつながっている。あるいは、道徳という言い方が適切でないとすると、公共哲学や、政治哲学など、そういった領域の話と非常に強くリンクしている話だなということを再認識させていただけるご研究だなというふうに思いました。

それで1つご質問をしたいのですけれども、この研究で公共心が高い方々は、様々な意味で周りの人に気遣いができるということだと思いますけれども、これは日本だけではないかもしれませんが、公共心が高い人は往々にしてマーケットのことを信頼しないという傾向があるのではないかと思っています。それはこの研究でも見られた傾向なのか、あるいは、そういったマーケットエコノミーに対する信頼も高くて、しかも公共心も高いという状態をどのような形で実現したらいいのかということを伺いたいと思います。

〔 鶴教授 〕 どうもありがとうございます。公共心の高さと、マーケットの信頼度というところですけれども、実は論文では相関係数を出していまして、割と両者の相関は高いという関係になっていて、公共心が高い人がマーケットを信頼しているという結果にはなっています。

確かに道徳の問題が大事だと、そのようなことを考えないと、将来世代のことも考えないという小林(慶)委員のご意見にも同感いたしますが、この結果を見て非常に思ったのは、若い方々、そうやってつけ回しをされている方々が、もっと怒って、何とかしなければいけない、ひどいではないかという声を上げなければいけないのに、結局今の若い世代からそういった声が出てきません。

なぜ出てこないのかということが僕もずっと疑問だったわけですけれども、ここを見ると、もうある種諦めと言いますか、ある種アナーキーな状況になってしまっていて、先ほど申し上げた、本当に目の前のことしか考えずに、もうこの状況だったら、もちろんなるべく税金も払いたくないけれども、もらえるものもらいたいという、何かそういったことで自分たちが今将来につけ回しをされている状況に対して、これは何とかしなければいけないと考えているのではないか。

むしろ高齢者の方々のほうが、自分たちはもう逃げ切るからもういいと、もう増税は嫌だ、社会保障だけ受け取ってもう自分たちは引退するという感じでもないわけです。割と高齢者の中で、やはりこういったことは大事だと思っている方々は、この調査では多いわけです。

先ほど申し上げた、ツイッターでご批判をされる方というのは、おそらく高齢者よりは若い世代の方々だろうというふうに思うので、若者の方々がこのような状況に陥ってしまっているということ自体も、何か我々がこれまで仮定していた話と少し違う、そこまで、将来や政府に対して不信感が、根強いところまで来ているのかなということが、私自身としては別な意味でショックでした。

先ほどご説明しなかったですけれども、日本の公共心は高いのかということについて、22ページをご覧いただいて、2000年の調査では、「ほとんどの人は信頼できると答えた割合」は、日本は中程度でした。ですから、OECDの中で日本が周りの人に対する信頼が特段高いと、我々はそのようにすぐ思ってしまいますけれども、このような調査自体では中程度ということになります。

こうした問題、別に日本は考えなくてもいいのかなということで、我々通常思っていることが多いですけれども、実はもう少し親身になって考えたほうがいいのではないかという印象を持っています。

〔 土居委員 〕 それでは、佐藤委員、秋山委員、神津委員、南場委員の順番でお願いします。

〔 佐藤委員 〕 お話ありがとうございました。それでは、3点ほど、できるだけ手短に申し上げます。

1つは、公共心にかかわる話、少しテクニカルな話なのでご回答は割愛していただいても結構ですが、16ページのところで、公共心が高いほどどうなるかということを多項ロジットモデルで分析されていますけれども、普通は今後増税せずに社会保障を拡大させる派と、今後増税をして社会保障を縮小させる派というのは、ある意味両極端だと思います。ですから、普通符号がある意味逆になることを想定していて、信頼や経済状況の話は、実際そうなっています。ただ、公共心に関してはどちらもマイナスになっているということ、これはつまり小さい政府、ある意味財政タカ派も、フリーライダー派も、ある種公共心に関しては同じようなメンタリティーを持っていると思っていいのかお伺いしたいです。

〔 鶴教授 〕 ご指摘のところ、確かにマイナスになっています。それでは、なぜこのようになっているのかということですけれども、まず前提として、ベースで比較しているのは、先ほど申し上げた財政中立、つまり、小さな政府(社会保障縮小・増税なし)と、大きな政府(社会保障拡大・増税あり)を合わせたグループです。それで、14ページの一番右のところを見ていただくと、大きな政府、つまり、社会保障を拡大して増税をすると、実はこのグループの方々は、年金や、生活保護のところは少し別ですけれども、直接的な受給にかかわらない公共心のところは、こういった方々が一番高くなっています。

ですから、実は公共心が高い方々はどのような人かというと、実は財政健全派というよりは、大きな政府、社会保障も拡大して増税もやると言っている方々が、きちんと直接的な受給にかかわらないところは結構公共心が高くなっています。ベースの方々は高いから、先ほどマイナスが出るというのはそのようなところが影響しているのだろうなという印象を持っています。

ただ、このような回帰分析をやると、先ほど私が申し上げたように、別の公共心、受給資格もなく年金などを要求するのは間違っているというところと、生活困難な親族を養わないで生活保護を受給させることは間違っているところは符号が同じになっていますので、そこは整合的なのかなと考えております。きれいに対称になっているというわけではないということは、ご指摘のとおりだと思います。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。それに関連して、11ページで、一番最初に出てくる4つのグループのすみ分けについてですけれども、実は我々が今やらなければならないのは、一番支持率の低い3番目(今後、増税をして、社会保障を縮小する必要がある)だと思っています。つまり、現在の状況、プライマリーバランスは赤字ですから、一方では増税をして、一方では社会保障を縮小しなければいけないということ、実はこれしか選択肢がなくて、実際これに対する支持率が一番低いと、当たり前のことですけれども、難点かなと思います。

逆に、私は危険だなと思っているのは、今後増税をして社会保障を拡大する必要があるというのは、一見財政中立のように見えますけれども、何%増税をして何%拡充するのだというバランスの問題でもありますし、現段階において赤字であるということ、今財政中立なら構わないと思いますけれども、今この段階においてバランスが崩れているという時に、果たしてこの4番目(今後、増税をして、社会保障を拡大する必要がある)というのは財政的に中立と本当に言っていいのかどうかというのは、私は疑問に思うところがあります。この教訓を素直に読むと、財政健全化はやはり難しいなということだと思います。

最後に、3点目で、なるほどなと思ったのは、先ほどのツイッターの話でもありましたが、13ページの下の段、グループ別割合を見ていただきますと、今後増税はせずに社会保障を拡大させる必要があるという、いわゆるフリーライダー派というのは、20代の間で一番高い。20代の中での35.7%が実はこれを選んでいます。意外と、ご指摘の通り、60代は30.1%と、一番低いです。

ですから、実は私たちはもうシルバー民主主義イコール高齢者によるフリーライダーという構造ではなくて、実は20代にこれがあるということを認識しなければならないと思います。

これはなぜだろうと考えた時に、2つあると思います。

1つは、先ほどの、将来に対する不安があるので、まず増税は嫌だということと、社会保障で守ってほしいという生活防衛ということがあって、結局彼らの生活の安定化をまずやらないとここの層が残るというふうに思います。

もう1つは、自分が学生を見ていて思うことですけれども、やはり若い人は自分で経験をしていないので、観念的にものを考えている傾向があって、それは、ツイッターにかかわる話だと思いますけれども、現実を見てものを言っているわけではなくて、感覚でものを言っているところがあると感じます。今の自分の学生の話を聞いても、いまだに高齢者はかわいそうだし、地方は貧しいと言います。君たちが一番かわいそうだと私はいつも言うわけですけれども、やはりこれは学校教育が、世の中のことをきちんと教えないからだと思っています。

金銭、それは経済教育も含めてですが、どうも結局ツイッターというものに対する最大のカウンターパートは、私はやはりエビデンスだと思います。ですから、最終的にここの層の方々にまず政策的にはどのように生活の安定と言いますか、彼らが安心してできる生活保障をしていくかということが政策として求められていて、おそらく戦略として求められるのは、どのようにこのエビデンスを見せていくかということだと思います。

以上です。

〔 土居委員 〕 ご発言まだたくさんの方にしていただくことになりますので、鶴先生には、まとめてお答えいただければと思います。

秋山委員。

〔 秋山委員 〕 ありがとうございます。一部もう既にお答えいただいた部分がありますので、ポイントのみ申し上げます。

最後の部分のお話で、鶴先生の記事に対する世論の反応が二分したというお話を聞いて、いわゆる社会の分断というキーワードが浮かびました。これはアメリカやヨーロッパで起きているという現実を目の当たりにして非常にショックを受けたという経験があるわけですけれども、これが日本にもあるのかというふうな理解をしつつあります。

それでは、日本がこのようになりつつあるのか、あるいは、また少し違う形でこういった構造になっているのかというところについての所見をお伺いしたいというのが1点目です。

それから、その中でも日本は公共心や、教育に関しては比較的優等生であるというような常識があったと思いますけれども、そこの認識を改めなければならないのかということが2点目です。

あとはこれまでも財政については、やはり広報努力がもっと必要だということはこの財審でもずっと言われてきて、そのためには丁寧に説明しようですとか、もっと情報をたくさん出そうということを言ってきわけですけれども、やはりその広報の在り方自体を、大きく認識を改める必要があるのかなと思いました。これは所感です。

それから、あと先生に1つリクエストですけれども、今回年代別にデータをとって分析していただいたことで浮かび上がったものが、例えば、都市部と地方で違う特徴が出るのではないかというふうに思っておりまして、また、こういった部分の研究などもぜひお伺いしたいと思っております。

以上です。

〔 土居委員 〕 神津委員。

〔 神津委員 〕 ありがとうございます。私自身が持っている問題意識は、鶴先生がおっしゃったことと全くと言っていいほど一緒です。ですから、ご質問というより感想に近い感じになりますが、2点申し上げます。1つはやはり率直に言って政治状況に対するもどかしさがあると思っていまして、今は与党と野党のバランスが大幅に崩れている、あるいは、与党も野党もその中で様々な問題を抱えていて、なかなかそれが是正されるような気遣いがあるのかというと、それも見えない。不幸なのは、やはり国民にとって選択肢が見えないということではないかと思っています。

今の政権はある種のリーダーシップで、政策項目によっては、事態を改善させる方向を打ち出しているところもあると思っています。ただ、やはり肝心の税財政の問題においては率直に言ってもどかしさを持たざるを得ませんし、先生の本日のお話の中でも、世論調査で増税はやむを得ないという人が半分程度いるということは、普通に考えたら大変なことであり、それだけ本当は危機感を持っているのにということではないかと思っています。

もう1つは、一方で三党合意の一体改革も先送りされていますので、そうすると、貧すれば鈍するで、工夫をしながらではありますけれども、やはり支出削減を考えざるを得ないと思います。ただ、そのことばかりが先行すると、やはり不安を高めてしまいます。したがって、本日のお話にもありましたけれども、そのような状況では、なかなか個人消費は増えない。そのことが結果的に、延長線上に何が待ち構えているのかということについては、危機感を強く持たざるを得ないと思います。

ご質問ということではないですけれども、まさに、遅いシステム、速いシステムというのは言い得て妙だなというふうに思いました。遅いシステムが、まだ一定数を占めている間にやはり何とかしなければいけないということではないかなと思っておりまして、速いシステムに切り込むということも、本当にどこまで結果に結びつくかというのは見えないところがあるものですから、やはり遅いシステムがある程度いる間に切り込むべきだというような思いを持ちました。

以上です。

〔 土居委員 〕 南場委員の後、十河委員、老川委員、小林毅委員、そして、末澤委員という順番でお願いします。

南場委員。

〔 南場委員 〕 民主主義の枠組みの中で財政の健全化、財政規律回復をやっていこうとした時の大変本質的な議論をしていただいたと思います。私は質問ではなく意見ですけれども、今日の議論は、本質的ではあるものの、危険だなというふうに感じます。ともすると上から目線という印象を与えかねないと。財務省の役人と大学教授と、有識者と言われる方々が集まって、公共心や教育水準、能力によって受け取り方が違うという議論をすること自体、謙虚さが足りないと感じます。この議論は学術的にはいいですけれども、これから本当に財政の健全化を民主主義の中でやっていこうとした時には、我々はやはりあくまで謙虚な視点で取り組んでいく必要があるので、そうではないような印象を与える議論をやっていくことには、私はあまり賛成できません。教育水準の差と言うより、例えばBS、PLなどの概念に、どれだけなじみがあるかということの差であり、それを知っているかどうかなどは、些細な差ではないのかなと思っています。

一方で、先ほど秋山委員のご指摘の通りだと思いますけれども、トレードオフということが一般の国民に分かりやすく伝わっていないと思います。増税の痛みや社会保障の縮小の痛みは分かりやすい反面、財政破綻によるディザスターのシナリオは絵になりにくく、伝わっていないというふうに思います。

したがって、財政破綻してしまった時に、どのようなことが起こって、国民がどのように困るのかということをしっかりと広報していく必要があります。あと、日本人が割と分かりやすいこととしては、次世代に借金を残すということは日本人の価値観としてはやりたくないことであり、その感覚は広く共有されているのではないでしょうか。やはり国民みんなの目線にしっかりと合わせた議論をしていく必要があると考えます。

〔 土居委員 〕 十河委員、どうぞ。

〔 十河委員 〕 鶴先生、ありがとうございました。今までご発言された方と重なってしまうところもございますけれども、私は出版社で長年女性雑誌をつくっているという立場から、今の鶴先生の若者についてのお話に大変共感を持ちましたので一言申し上げたいと思います。

特にここ10年程度、インターネットの普及によってかなり雑誌の売り上げが落ちているということは事実でございまして、そして、紙での表現とインターネット上での表現では、全く求められているものが違うということを日々痛感しております。

そしてこれからは、インターネットユーザーを取り込んでいかなければならず、私どもの会社は外資ということもあり、デジタル化を推進しているところです。また今、遅いシステム、速いシステムという言葉が出てきましたけれども、若い世代は速いシステムに反応するわけで、同じ内容でも表現手段によって受けとめられるか、あるいは、スルーされるという二極化が見られます。

そして、私の雑誌はファッションなどもたくさん扱っておりますけれども、ファッション界におきましても、今ミレニアル世代という若年層を取り込んでいかないと、高級品やブランド品離れが著しく進んでいるため、そういった対策がインターネットを通して行われている状況です。

本日思いましたのは、若いミレニアル世代がこれから5年、10年で社会の中心になっていくわけですので、そういった方たちにどのように財政を理解していただくかを考えることは非常に重要だと思います。先ほど秋山委員もおっしゃられたように、私たちもできる限り丁寧に伝えていくべきと思っておりますし、その表現の手段も、紙だけではなく、インターネットをうまく活用していく必要があるのではないかなと思いました。

以上です。

〔 土居委員 〕 老川委員、どうぞ。

〔 老川委員 〕 大変貴重な分析をお示しいただきましてありがとうございました。経済学の先生がこのようにいわゆる一般の方々の反応、社会意識というものを社会心理学的に分析されるということは非常に大事なことだと思います。

ただ、問題は2つあって、1つは、今もお話があったように、インターネットでの調査といわゆる一般の世論調査では、やはり微妙なところで違いがあると思いますし、またこの設問ももう少し精緻化させていく必要があるなど、様々な問題があると思いますので、これだけで1つの結論を出していくというわけにはいかないのではないかなと思います。

もう1つ、この通りの結果が投票行動や、政治に対する賛否に反映されるかというと、全然そうはならない。世論調査である政策についてかなり理解されているはずなのに、いざ選挙になると全然違って出るなど、そういったことが頻繁に起きます。それはやはりメディアの伝え方や、メディアに登場する評論家と称する方々のものの言い方などによってかなり影響されるところがありますので、1つの結論が出るからこれで進めようというわけには必ずしもいかないのではないかなと思います。

大事なことは、つまり、野党なりに実情は分かってはいてもあえて選挙戦術的に分からないふりをして情緒的な反応をするなどといったことがあるわけなので、そのあたりを十分頭に入れながら政策決定というものをやっていく必要があったと思いますし、それから、正しいと思った政策は積極的に説明していくということをやっていかないと、あまり細かいところにとられてしまって、思い通りの結果が出ないということにもなりかねないという気がしましたので、私の感想を申し上げた次第であります。

〔 土居委員 〕 次の議題もございますので、手短にお願いしたいと思います。

小林毅委員、お願いします。

〔 小林(毅)委員 〕 どうも大変興味深いお話をありがとうございました。この中で、シルバー民主主義とは異なる様相というお話が出ていたわけですけれども、実はこのシルバー民主主義というのは、民意を反映して政治が動かされているわけではなくて、その政治の側が投票にたくさん来る方々を意識して、その方々がいいのではないかという方向で動いていることがシルバー民主主義の実態ではないかなという気がいたします。ですから、ここに出ているように、高齢者の方々が「社会保障縮小・増税あり」を打ち出していても、そうではないほうがいいのではないかというふうに政治の側が見誤っているという捉え方もできると思います。

ですから、これはある意味では政治のほうがそういった意識改革、何が一番大事なものであり、この層はどのようなものを求めているのだろうということを考えていく、そちらのほうに働きかけていくということがもしかしたら重要なのではないかなという気がいたしました。

それから、これはとても大事なことだと思いますので、一言言いますが、先ほどの南場委員がおっしゃっていた御意見は全くその通りだと思います。扱いを間違ったら非常に反発だけが残って、分断を更に広げるような形にもなりかねないので、そのあたりは慎重に取り上げるべきではないかと思いました。

以上です。

〔 土居委員 〕 末澤委員、どうぞ。

〔 末澤委員 〕 どうも興味深い分析をありがとうございます。13ページのところで、4つのグループの特徴で、先ほど委員からもありましたシルバー民主主義とは少し違うという話もありました。私はこの評価を見て、むしろ世代間格差が固定化しているあらわれではないかと思いました。なぜかと言いますと、「社会保障拡大・増税あり」への支持は年齢が高いほど大きいということは、これは年齢が高い方々はもちろん増税はあまり関係がないわけです。ですから、むしろ社会保障を維持してほしいという気持ちのあらわれだ。逆に、若い方々はむしろ今の社会保障をもっと拡大されたらこれはもう自分たちは大変なことになるので、結果として社会保障も縮小し、増税もしないでほしいという、むしろ世代間格差を彼らは認識した上で、そう答えたのではないかと、私はそのように受けとめました。

ただ、いずれにしろ、欧米とはやや構造が異なりますが、社会が分断化されつつあるのは事実だと思います。これがどんどん進みますと、いわゆるポリティカル・コレクトネス、社会的、政治的公正さが他陣営からフェイク・ニュースと言われかねないということで、やはり今後この財審の中でも、より正確な情報を日々発信していくことが重要だろうというふうに認識しています。

以上でございます。

〔 土居委員 〕 ご発言どうもありがとうございました。

それでは、まとめて、鶴先生、よろしくお願いいたします。

〔 鶴教授 〕 大変たくさんのコメントいただきました。個別に全部お答えする時間はないのですが、皆さんのコメントを聞きまして、私も全くその通りだなと思ってお伺いしていました。

南場委員、小林(毅)委員から、やはり慎重に考える必要があると、これ実は我々その執筆者の間でも、一番最後そこが議論になりました。やはり教育や公共心という話は、一歩間違えれば国家がある特定のものを押しつけるということになりかねない。それはやはりすごく危ないと思います。ただ、21ページで紹介しているように、AlganとCahucの論文で、こういったものが財政や労働など、様々なところに実は影響しているという、かなり広範な分析をやっているということを考えてみると、やはり今後考慮していかなければないと思います。いずれにしても、我々は実は政策を考える時に、そこは非常に慎重にならないといけないということは同感です。ですから、これを変な形で使おうとすること自体はやはり危ないと思います。

あと、先ほど秋山委員からご質問で、社会の分断は起きているのではないかというお話がありました。非常に重要なのは、実際にみんなが見れるような世界のところで、先ほどのいわゆる反対と賛成が起こっているのかというとそうではなくて、外では見えないけれども、水面下の世界でそれが起こっている。ですから、なかなかはっきりしたものが見えないという状況にあります。まさにトランプ現象というのはそのようなところで見誤ったということでして、そこがポイントになっているのかなということです。

過去と比較した時に、やはり政府の信頼というところが、若干低下してきているというところがワールド・バリューズ・サーベイにあったのかもしれないなと思っていまして、そこもやはり政府として何ができるのかということになると、先ほどの広報活動のお話がありましけれども、きちんと何が重要なのかということを伝えていく、信頼を得ていく、そういった活動を地道にやっていくしか道はないのかなということも感じております。

以上でございます。

〔 土居委員 〕 ご回答どうもありがとうございました。鶴先生におかれましては、改めてご多忙の折お越しいただきましてまことにありがとうございました。鶴先生はこれでご退室されます。

〔 鶴教授 〕 どうもありがとうございました。(拍手)

〔 土居委員 〕 それでは、続きまして社会保障の議論に移りたいと思います。

まず初めに、阿久澤主計官より説明をお願いいたします。

〔 阿久澤主計官 〕 社会保障を担当しています第一主計官の阿久澤でございます。

それでは、資料3「社会保障」に沿いまして、私及び第二主計官担当の廣光のほうからご説明をさせていただきます。

まず、2ページをご覧ください。平成29年度予算ですけれども、一般会計歳出の3分の1の規模が社会保障の歳出になっています。

また、この社会保障は規模が大きいというだけではなくて、高齢化の進展等によって毎年度増加をしていくという問題もございます。このいわゆる自然増とは、以前は大体1兆円近くの水準であったわけでございますが、3ページにありますように、近年は、雇用情勢の改善などによる失業給付の支出額の大幅な減少や、また、国保から被用者保険へのシフト、このような流れによる医療費国庫負担の減少などがあるため、社会保障関係費の伸びはやや鈍化をしております。 時間の関係上、ページを飛ばさせていただきます。13ページの「社会保障を巡る状況」という箇所をお開きください。14ページ以降で新たに発表された将来推計人口についてご説明させていただきます。

14ページにありますように、今回の推計でございますけれども、近年30歳から40歳代の出生動向の改善などを反映いたしまして、出生率の仮定が前回推計より上方に設定をされることになりました。こうしたことなどから、人口減少の速度や、高齢化の進行度合いが前回推計より緩和されています。ただし、少子高齢化が今後も進展していくという大きなトレンドに変化はございません。

続きまして、15ページをお開きください。15ページには、年齢4区分別の人口の見通しがございます。緑の65歳から74歳の線ですけれども、これは2030年から2040年頃にかけまして一旦上昇する局面を除きますと減少傾向にあるということでございます。また、75歳以上につきましては、団塊の世代の方々が75歳になる2025年にかけて急増した後、おおむね横ばいで推移をするということが見込まれております。

また一方、65歳未満の若年・現役世代につきましては、前回推計と比較して減少トレンドが若干緩やかにはなっておりますけれども、一貫して減少していくことが見込まれます。

続きまして、16ページをお開きいただきたいと思います。16ページは労働力人口の見通しについてでございます。高齢者や女性の労働参加などが進まない場合は、現役世代の人口の減少等に伴いまして、労働力人口も大きく減少していってしまうことが見込まれます。一方、高齢者や女性の労働参加が適切に進めば、ここで言うと橙色のラインのような形になればということですけれども、労働力人口は減少するものの、減少のスピードは緩やかなものになるということが見込まれます。

続きまして、17ページでございます。今度は社会保障給付費推移についてでございます。ここにありますように、高齢化の進展に伴いまして、社会保障給付費は増加の一途をたどっています。足元の給付総額は100兆円を超える規模になっております。

18ページをご覧ください。こうした社会保障給付費の伸びによりまして、それを支える国民の負担といったものも増加をしております。18ページ、19ページに保険料の推移を示しておりますけれども、現役世代、高齢者ともに保険料率が増加していることが見てとれます。こうした国民の負担の増加を抑えるためにも、医療費や介護費の伸びの抑制に取り組んでいく必要がある、このように考えております。

また、20ページでありますが、こちらは公費負担についてです。この公費負担の増加について見ますと、保険料負担以上に深刻な状況でございます。と申しますのも、我が国の社会保険制度では、公費負担は高齢者向け給付に対しより手厚く措置をされている仕組みとなっておりますので、給付費の伸び以上に公費負担が大きく伸びていくということが見込まれます。

更に、これだけにとどまらず、資料の右側の棒グラフに示されておりますように、必要な公費負担に見合う税財源を確保できていないということで、こうした公費負担を巡る給付と負担のアンバランスによりまして、将来世代に負担の先送りをしてしまっているという問題を抱えているところでございます。

おめくりいただいて、21ページの資料は、我が国におけるそうした社会保障の給付と負担のアンバランスといった問題を端的にお示しさせていただいたものであります。横軸は国民負担率で、縦軸は一般政府の社会保障支出、いずれも対GDP比でございます。通常、給付と負担がある程度バランスをしていればこの帯の上に乗ってくるということになり、その場合制度はおおむね持続可能ということでありますけれども、一方、制度の持続可能性という面から見てとり得ない選択肢というのは、この帯から外れるということであります。

残念ながら、我が国の状況は足元でも帯の外にございますし、また、現行制度のままでは更に帯から離れていってしまうということが見込まれます。これは医療費や介護費がGDPの伸びを上回って伸びていくということが見込まれるためでございます。社会保障を持続可能なものとするためには、この帯の上に戻していく努力が必要ですし、負担の引上げと給付の抑制といったものを、ともに行っていかなくてはならないということでございます。

それでは、22ページ以降の、「主な論点と改革の方向性」といったものについて次にご説明させていただきます。

23ページでございますけれども、我が国の医療・介護制度の特徴と問題点、そして、それらを踏まえた上での改革の視点といったものをまとめたものがこちらの資料になっております。

我が国の医療・介護制度の特徴といたしまして、国民皆保険、フリーアクセス、自由開業制、出来高払いなどが挙げられるわけでございますが、これらは国民にとってサービスを受けやすいという点では非常にメリットのある仕組みでありますけれども、一方で、医療・介護の費用の増大を招きやすい制度であるという側面もございます。

こうした構造上の問題に加えまして、緑の枠に示してあるような制度を巡る状況の変化といったものも生まれてきております。

こうしたことを踏まえますと、今後の医療・介護制度の改革を考えていくに当たりましては、表の下部にある4つの視点、すなわち、「高齢化の進展を踏まえた医療・介護提供体制の確保」、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」、「年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担」、「公定価格の適正化・包括化等を通じた効率的な医療・介護」といった、こういった改革の視点が重要であろうと考えております。

その上で、24ページに、こうした改革の視点を踏まえまして、今後どのような個別の改革が必要かをまとめたものがこちらでございます。青の項目は、既に一定の結論を得たものでありまして、緑の項目は計画などを踏まえて現在改革を実施中のものでございます。また、赤の項目は今後検討していくものということになっています。

中央の2つの柱、これは主に給付と負担の見直しに関する改革項目でありますが、平成29年度予算に一定程度の結論を得ることができました。残された課題もございますけれども、そちらはおおむね平成31年度予算に向けて議論を行い、結論を得ていくといったことになっております。

一方、平成30年度予算に向けましては、むしろこの両端の柱に取り組む必要がございます。まず左端でございますけれども、医療提供体制の見直しでございます。高齢化による疾病構造の変化などに伴う医療ニーズの変化も踏まえまして、各地域の将来のあるべき医療提供体制の姿を示す地域医療構想が全都道府県で取りまとめられたところでございます。今後はその具体化が求められておりまして、このための都道府県のガバナンス体制の強化などが課題になってまいります。

また、右端の公定価格の適正化の柱につきましては、平成30年度予算では、診療報酬・介護報酬の同時改定が控えております。更には薬価制度につきましても、今年末までに抜本改革の具体案について結論を得るということになっております。

続きまして、26ページです。「経済・財政再生計画」で示されました歳出改革の目安についてご説明させていただきます。この26ページにもありますように、「経済・財政再生計画」におきましては、社会保障関係費の増加につきまして、平成28年度から30年度までの3年間で1.5兆円程度におさめるということが目安になっています。

27ページにありますように、集中改革期間であります平成28年度及び29年度につきましては、薬価改定や、高額療養費の見直しなどの制度改正に取り組みまして、社会保障関係費の増加を両年とも5,000億円程度におさめることができたわけでございます。集中改革期間の最後の年であります平成30年度予算におきましても、「経済・財政再生計画」の目安を達成できるよう、社会保障関係費の伸びの抑制に十分に取り組んでいくことが必要であると考えております。

それでは、平成30年度予算における社会保障分野の主な課題について、幾つかピックアップしてご説明させていただきます。

まず、28ページの診療報酬・介護報酬の同時改定でございますけれども、資料にもありますように、診療報酬と介護報酬が同時に改定されるのは6年に1回ということになります。同時改定は医療・介護分野の横断的な課題につきまして一体的な対応を図ることのできる絶好の機会であると考えております。介護療養病床等の効率的な提供体制への転換も含む医療機能の分化・連携の推進や、地域包括ケアの構築に向けた在宅医療と介護の連携強化などの、いわゆる分野横断的な課題に対応した改定にしていく必要があると考えております。

また、改定率につきましては、経営実態調査などの結果も踏まえまして、具体的な議論は秋口以降からということになります。ただ、過去、デフレによって賃金や物価が下落していく中でも、診療報酬の本体は伸び続けたという経緯がございます。両者の間のギャップは未だに大きいわけです。また、ただでさえ高齢化等によって毎年度医療費・介護費は増加をしております。これらを支える税や保険料等の国民負担が増加をし続けているなどといった経緯や状況を勘案していく必要があると考えております。国民負担の抑制といった観点も踏まえて、年末にかけて十分に取り組んでいきたいと考えております。

なお、平成30年度予算では、あわせて障害福祉報酬も改定されることになっております。そういった意味では、トリプル改定の年ということになります。

続きまして、29ページ、薬価制度の抜本改革についてでございます。昨年のオプジーボの議論もございまして、昨年末に薬価制度の抜本改革に向けた基本方針がとりまとめられたところでございます。今後も公的保険制度が重篤なリスクを適切にカバーしながら、制度の持続可能性を維持していくためには、この薬価制度につきましても、基本方針に基づいて、国民負担の軽減につながるような改革を実行していく必要があると思っております。

31ページに示している、この基本方針についてでございますが、(1)、(2)、(3)が3つの柱となっております。まず(1)についてですけれども、効能追加等に伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するために、新薬収載の機会を最大限利用して、年4回薬価を見直すということです。2つ目の柱、(2)でございますけれども、市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、現在は2年に1回行われている薬価調査に加えまして、その間の年についても薬価調査を行って、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うとございます。

3つ目の柱、(3)でございますが、特許期間中の新薬の薬価を維持する仕組みとして現在設けられております新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度というものがございます。この制度については薬の有効性、安全性といった医薬品の価値とは関係なく、他の医薬品に比べて市場実勢価格があまり下がっていないかどうかということだけで加算の対象とするなど、イノベーションの評価といった観点からも問題が多い仕組みだと考えております。このため、こうした新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度はゼロベースで見直すということとしておりまして、あわせて費用対効果評価を本格的に導入することなどにより、真に有効な医薬品を適切に見きわめてイノベーションを評価するということにしております。

続きまして、33ページ、医療分野での都道府県のガバナンス強化についてでございます。平成30年度から、都道府県は地域医療構想の実現に向けた医療提供体制改革や、医療費適正化計画の推進、また、国民健康保険の財政運営を一体的に担うようになります。各地域の地域医療構想や、医療費適正化計画を十分に実現していくためには、都道府県に実効的な手段・権限を付与するとともに、取組の結果に応じた強力なインセンティブを設けることで、医療保険・医療提供体制を通じたガバナンス体制を構築していくことが重要であると考えております。次の34ページに具体的な手段、権限、また、インセンティブ措置についてまとめさせていただいております。

〔 廣光主計官 〕 続いて私、廣光のほうから障害保健福祉関係予算についてご説明いたします。

障害福祉サービスは利用者数の増加によりまして、事業規模で3兆円に達するものとなっております。特に知的障害者と精神障害者によるサービス利用が伸びています。知的障害者については特別支援学校の卒業生がサービス利用者になる流れが強くなり、若年の利用者が増加していること、精神障害者については、患者のうちサービス利用者となる者の割合が増加し、壮年の利用者が大幅に増加していることが分かりました。

これは比較的軽度な障害者や一般就労していた方が障害福祉サービスの利用者になっていることなどを通じ、利用者像が従来から変化していることを示唆していると考えております。

36ページでございますが、障害福祉サービスの利用実態を地域別で見たものでございます。左上のグラフにあります通り、都道府県別の人口当たりの障害福祉サービスの利用者数を算出したところ、大きな地域差がありました。左下には、横軸に人口当たりの事業者数の割合、縦軸に人口当たりのサービス利用率の散布図がありますが、その地域差は人口当たりの事業所の数と正の相関があることがわかりました。

37ページをご覧ください。このように、サービス利用量が増加しているわけですが、例えば、左上にある福祉関係者の意見書を見ていただいて分かる通り、就労希望を持っているにもかかわらず就労移行支援を行わないなど、利用者のニーズにサービスが合っていないのではないかとの指摘もされております。サービス利用量の増加が必ずしも障害者の生活の質の向上につながらない状況が生じつつあるとも言えまして、厚労省も問題意識を持ち始めております。

一億総活躍プランが掲げる、障害者が最大限活躍できる環境を整備する上で大きな課題があると考えております。改革の方向性としては、利用者像やニーズの変化を的確に捉え、具体的な活躍の在り方やその実現に向けた各サービスの位置づけ・成果を明らかにし、具体的な支援の在り方を改善していくべきであるとしております。

次いで、38ページは生活保護でございます。生活保護の生活扶助基準については、5年に一度検証を行うこととされておりまして、平成29年において5年ぶりの検証が行われることになっております。

改革の方向性ですが、まず検証をきめ細かく行い、国民の理解が得られるような生活扶助基準となるよう、検証結果を適切に基準に反映すべきとしております。

また、医療扶助の適正化や、就労などを通じた生活保護からの脱却の促進など、生活保護制度の適正化に取り組むべきとしております。

〔 阿久澤主計官 〕 それでは、39ページからは、少子化対策でございます。

保育につきまして、総理から新しく、待機児童解消加速化プランの策定の指示がなされました。そういったこともありまして、ここからは保育についての説明をさせていただきます。

まず、保育の受け皿の確保でございます。政府といたしましては、現行の待機児童解消加速化プランに沿いまして、消費税増収分等を財源として保育の受け皿を拡大してきております。その結果、平成25年度から29年度の5年間で企業主導型保育とあわせて53万人分の受け皿の拡大が図られる見込みとなっております。

しかしながら、右下の折れ線グラフにありますけれども、女性の就業率の上昇に伴いまして、都市部を中心に待機児童の解消が非常に厳しい状況となっております。各自治体の状況なども踏まえまして、本年6月までに新たなプランを策定するということになっております。

一方、消費税率の引上げに伴う社会保障の充実に関しては、約2.8兆円程度を充てる予定になっておりますが、このうち子ども・子育て支援には0.7兆円を充てることになっております。この平成29年度予算におきまして、子ども・子育て支援分は既に0.7兆円に達してしまっているという状態になっております。したがいまして、消費税増収分とは別途安定的な財源を確保しながら、引き続き保育の受け皿を確保していく必要がございます。

続いて、40ページでございます。ここでは平成28年度から導入された新たな仕組みである企業主導型保育事業についてご説明させていただきます。保育の受け皿の整備の拡充に向けて、事業主拠出金を引き上げまして、企業主導型保育事業を平成28年度に創設したところでありますが、既に2万人程度の受け皿が確保されまして、平成29年度末までには5万人の受け皿が確保される見込みでございます。

この企業主導型保育事業は、団塊の世代が順次引退をし、労働需給が逼迫をしていく中、女性の就業促進にも大きく貢献していくものだと考えられますので、引き続きこの事業の積極的な活用が期待されるところであります。

次に42ページ、保育料についてでございます。平成27年4月からの子ども・子育て支援新制度の実施以降、職員配置の改善といった質の向上にも取り組んでおります。これに伴いまして、児童1人当たりの保育コストは増加をしておりますけれども、国が定める保育の利用者負担は近年引き上げられておりませんので、その結果として利用者負担割合は減少しているということになっております。

また、保育士の配置基準は資料の左下にありますように、0歳児、1・2歳児、3歳児、4歳児の順に手厚くなっておりますが、保育料は0〜2歳と3歳以上の2区分しか設けられておりません。保育利用率も高まっていく中で、サービスの対価としての保育料につきまして、保育コストとの関係も踏まえて、その在り方を検討していく必要があるのではないかと考えております。

続きまして、43ページの幼稚園における待機児童の受け入れの推進についてでございます。資料にありますように、教育時間の前後、または、長期休業期間等における預かり保育の実施状況を見てみますと、幼稚園が育児と就業の両立支援に貢献できる余地はなお存在するのではないかと思っております。このため、幼稚園にかかわる施設型給付や私学助成等を全体として適正化しつつ、その財源を活用して長期休業期間などに預かり保育を実施する幼稚園への支援を増加させるなどにより、預かり保育実施のインセンティブを強化していくこととしてはどうかと考えております。

44ページでございます。次に、子ども向けの現金給付である児童手当についてでございます。児童手当は所得制限があるのですが、この所得制限につきましては世帯全体の所得ではなく、世帯の中で所得が最も多い者の所得のみで判定されております。このため、世帯全体の所得が同一であっても、主たる生計者の所得の水準により、児童手当の支給対象となるかどうかが異なるといった不公平が生じています。ちなみに、保育料は、既に世帯合算の所得で判断をしております。

また、所得制限を超える者に対しても、当分の間の措置として、月額5,000円の特例給付が支給されております。やはり児童手当の所得制限につきましては、保育料と同様、世帯合算で判断をする仕組みに改めるべきではないかと考えます。あわせて、当分の間の措置として支給をされております特例給付につきましては、廃止を含めた検討を行うべきではないかと考えております。

また、こうした見直しによって確保された財源は、子ども・子育て支援に直結をする保育の量的拡充に充てることにしてはどうかと、このように思うところでございます。

最後に、これまでも様々にご議論いただいた各分野の具体的な改革項目につきまして46ページ以降におまとめさせていただいております。また、この各改革項目、改革の方向性と書かれているものにつきましては、基本的にこれまでの財審建議に沿った改革の方向性を示させていただいていることとなっております。また、あわせてお配りしてありますこの参考資料に、個票として各項目の詳細な内容を書かせていただいておりますので、お配りさせていただいております。

時間の関係で飛ばし飛ばしになりましたが、説明は以上でございます。

〔 土居委員 〕 ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして皆様からご意見、ご質問をいただきたいと思います。なお、多くの委員の方々にご発言いただきますように、論点を絞って手短にご発言をお願いいたします。

それでは、伊藤委員からお願いいたします。

〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。これは私の所感でございます。これまで進められてきた社会保障の重点化・効率化を通じた給付の抑制策というものは、資料にもあります通り、更に給付増が想定されているわけでございますので、更に踏み込んだ検討が必要であると考えます。

それから、プライマリーバランスの黒字化目標達成という点でも、医療・介護保険料への相次ぐ総報酬割の導入など、どちらかというと高齢世代よりもむしろ現役世代の負担増に依存する部分が依然として大きいのではないかというふうに感じております。高齢者負担の在り方について、更に踏み込んだ議論をする必要があるでしょうし、今後も若年人口が急減していく見込みでございますので、世代間の適正な負担の分配の在り方についても、今後議論をすべきだろうと思っております。

特に現役世代や企業等の事業者は、高齢世代を支える負担がこれからどこまで増え続けるのかということについて、不透明であるし、不安を持っております。したがいまして、政府は短期的な改革の方向性を示すだけではなく、中長期的に見た社会保障の将来見通しと負担の在り方について、国民が納得できるような具体的な道筋を示すように努力をしていただきたいと思います。

以上です。

〔 土居委員 〕 ありがとうございました。

それでは、老川委員から順に反時計回りで順番にご発言いただきたいと思います。

〔 老川委員 〕 ありがとうございました。40ページの企業主導型保育事業は画期的なことで、高く評価したいと思います。

全ての施策を税金で済ませようにも限りがあります。企業にとってはもちろん負担になりますが、内部留保等の活用策の1つという意味でも、この施策を更に拡充して進めていただきたいと思います。それから、保育所をつくるという当面の対策だけではなく、できれば第2子以降の子どものいる家には家賃を補助するなど、そういった施策によって少子化傾向そのものを改善していく、人口が少しでも増加するような方向に進めるように、この制度をうまく活用していただけるとありがたいと思います。

以上です。

〔 土居委員 〕 岡本委員、どうぞ。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。3点申し述べたいと思います。

第1点は4ページにあります平成29年度社会保障関係予算ですが、社会保障関係費の伸びは資料に示されている通り4,997億円の増加と、確かに公約の5,000億円から見ると綱渡り的に抑えられておりまして、相手もあることでありますから、本当によくやられたと思います。ただ、一方で27ページを見ますと、最近の社会保障関係費の伸びを制度改正により減少させた中身が示されていますが、そのほとんどが薬価改定か協会けんぽの見直しか、あるいは、本当に我々にとって厳しかった総報酬割か、この辺で達成しているわけであります。要するに、取りやすいところから取っているという様にも見られると思います。

また4ページで、この44項目の改革工程表がせっかくあるのですが、継続検討項目や、あるいは、今後実施を検討する項目等もありますので、平成30年度においては、ぜひともこの44項目の改革工程について、一つ一つきっちり手がけてほしいと思います。

2020年度のPB黒字化目標は間近に迫っていますので、現状の5,000億円の目安にはりつくということではなく、例えば4,000億円に抑えるなど、少しでも下げるというようなご努力をぜひお願いしたいという点が1点目でございます。

2点目は子ども・子育て支援についてです。44ページに、児童手当の特例給付490億円の廃止を検討するという内容があります。所得の多いところを廃止するということですので、良いと思いますが、一方で子育て支援はまだまだ手薄なために、ただ減らせば良いというわけにはいかないと思います。そのように考えると、浮いた財源について、子ども・子育て支援に直結する量的拡充に充ててはどうかという点については、まさに大賛成であります。

ただ、量的拡充を行う場合は、ぜひとも待機児童対策のために活用してはどうかと思います。現在、日本では現金給付が非常に多いわけですから、ここで現物給付を相対的に増加させて、少しでも、本当にこのために使われているという方向に向けていただきたいと思います。これを通じて、現金給付から現物給付へシフトする流れをつくっていければと思っております。

それから、この待機児童対策は現在でもかなり立ち遅れている上に、M字カーブが急激に改善されていって、女性がより働くようになると、待機児童問題は更に際限なく難しくなっていくということになります。この人口減少問題は喫緊の課題ですから、ここで歳出が増えるというのはやむを得ないと思いますが、そうであるからこそ、やはり高齢者からの財源シフトに抜本的に取り組んでほしいと思います。

最後に40ページの企業主導型保育事業についてです。これに関しては、老川さんがお話された通りだと思います。ただ、このページを見ますと、企業主導型保育事業を引き続き積極的に活用していくとありまして、これがもしも用途を広げる等の方向になると、そのための財源というのは大体企業が負担することになります。今までも総報酬割や、事業主拠出金等の様々な形で、6,500億円ほどが企業から出ております。今必要なのは、事業の対象を拡大するというよりも、既に決めた事業の枠の中で、財源が有効に使われるようにしていくことです。そのような方向で担当省庁と交渉してほしいと思います。

以上でございます。

〔 土居委員 〕 神津委員、どうぞ。

〔 神津委員 〕 ありがとうございます。総論的なところは先ほど申し上げた通りで、その上に立って、幾つか申し上げたいと思います。

まず、医療に関して、24ページの一覧表の左上ですが、地域医療構想に沿った医療提供体制の実現、あるいは医療費適正化計画の策定・実現、これらはしかるべく進めていく必要があるというふうに思います。

一方で、薬価に関しましては、一覧表の右側のほうに記載がありますけれども、薬価問題に関しても基本方針なり具体的な措置をこれまでとられてきております。基本的にはそのような方向性に進むことは不可避だと思いますが、結果的に新薬の開発に影響が生じてしまうことや、患者にとってのデメリットが生じることのないような形に検証していくことが必要だろうというふうに思っています。

それから、一覧表の左側のほうに、今後検討する事項ということになっていますが、かかりつけ医の普及の観点からの外来時の定額負担、それから、市販品類似薬に係る保険給付の見直し、これらについてはくれぐれも財源確保のためだけの議論に陥らないようにすべきだと思っています。

それから、障害保健福祉に関してですが、私は「障害者」という呼称ではなく、竹中委員がふだん使われている「チャレンジド」という呼称を用いたいと思っておりますけれども、チャレンジドの方々の持つ可能性を最大限に引き出していくことが重要だと思います。精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加わるということも念頭に置いて、企業における合理的な配慮を促すような施策が求められると思います。

また、可能性がまだ開花していないチャレンジドの方々に関しまして、いかに質の高い安定した雇用につなげていくかという視点を持って、就労移行支援事業の利用拡大を十分に支援していくべきではないかと思います。

生活保護についても1点発言したいと思います。国民の理解が得られるような生活扶助基準という表現があります。率直に言ってやや不安を感じております。生活保護の問題としては、本来保護が必要な人がスティグマの問題によって自ら保護を遠ざけて、結果として命を失ってしまうというケースが実態としてありますので、そういった実態を十分に念頭に置いておく必要があるだろうと思っています。

子ども・子育て支援についてでありますけれども、保育士の処遇改善は、まだ緒についたばかりだろうと思っています。明確なキャリアアップの仕組みを構築するということを含めて、抜本的な改善が必要だと思います。

また、39ページにありますように、待機児童数は2万3,000人程度ということですが、実際の潜在的な待機児童数に関しては、全国で6万7,000人程いると言われています。待機児童の定義を統一しながら、地方自治体が積極的に支援事業計画を検証し、受け皿の確保を進めるということが必要だろうと思っています。

それから、安全面の強化なども含めて、更なる財源の確保ということが必要だろうというふうに思います。

また、児童手当の削減ということが財源の確保策として提案されているのですが、本来の社会全体で子育てを支えていこうという考え方との関係でどうなのかということや、所得制限を世帯収入で判定する仕組みに関しては、政府の方針である女性活躍との関係でも矛盾しないように整理していく必要があるのではないのかと思います。

以上です。

〔 土居委員 〕 ありがとうございました。

あと9名の方にご発言いただきますが、残り時間が10分程度ということですので、手短にお願いいたします。

それでは、小林慶一郎委員。

〔 小林(慶)委員 〕 一言だけ申し上げたいと思います。この資料の中で、人口については2065年までの長期推計が載っているわけですけれども、例えば、社会保障の支出や公的債務などのような財政的な変数については2025年までとなっています。先ほど伊藤委員のお話にもあったように、社会保障の将来的な経路が、長期的に見てこれからどのようなものになっていくのかというのを我々は念頭に置きながら議論を進める必要があると思います。様々な仮定を置けば、長期的な社会保障支出や収入などはおそらく簡単に計算ができると思いますので、その仮定を置いた上で、このような条件ではどうなるのかというような、数字なりグラフなりを資料として、特に財審の場で示していただくということが望ましいと思います。

以上でございます。

〔 土居委員 〕 佐藤委員。

〔 佐藤委員 〕 まず問題提起ですけれども、20ページを見ていただきますと、社会保険料の中でも事業主負担の増加が実は被保険者負担の増加よりもかなり少ないと言えます。社会保険料における事業主負担の割合は、平成2年と平成26年の間で比較すると、むしろ下がっています。これが何を意味しているかというと、非正規雇用の拡大、つまり、被用者保険の適用でない方々が明らかに増えているという状況が裏にあるはずです。

これをどこで議論すべきなのか分からないですが、社会保険料の問題点というのはもう少し真摯に取り組むべきことであります。社会保険料は、やはり雇用者報酬の伸びを抑えるだけではなく、正規雇用も阻害しますし、もちろん極めて逆進的でありますので、給付の伸びを抑えることや、公費の投入を抑えることも大事ですけれども、社会保険料の在り方自体も本来は考えるべきことかと思います。

次に、44ページで、これは実は政府税調マターでもあるのですけれども、児童手当の所得制限の対象が主たる生計者というのはさすがに時代遅れなので、これは明らかに世帯合算にしていくべきだと思います。課税は個人単位で、給付と控除は世帯単位という考え方がある意味きれいな整理だと思いますので、これは全体的に世帯単位で統一していくという方向で行くべきではないかと思います。

あと、最後に少々雑感になりますけれども、39ページの少子化対策のところで、今後引き続き少子化対策の財源として、7,000億円を超えて、財源を確保していくということになっております。これは本当に必要だと思います。ただ、その点は先ほどの議論にもかかわりますが、医療や介護などの社会保障や他の分野でもそうですけれども、それらの歳出をなぜ抑制しなければいけないのかというと、それは歳出を抑制することによって、赤字を減らすことももちろん大事ですが、新たに生まれてくる財政ニーズというものを満たしていく必要があるからです。実は、現在の財政再建のキープレイヤーは、もはや国ではなくて地方自治体なのです。地域医療構想や少子化対策を含めて、地方がやっている仕事が多いので、やはり地方のほうで歳出改革を促して、その浮いた財源をこうした新しい財政ニーズに回すのだという姿を見せることが財政再建についてのコンセンサスなのかなと思います。

以上です。

〔 土居委員 〕 それでは、角委員、どうぞ。

〔 角委員 〕 ありがとうございます。28ページに6年に一度の診療・介護報酬の同時改定ということが記載されています。以前に医療の高度化、あるいは、進展スピードの速さを考えると、診療報酬については毎年見直すべきではないかという議論も出たわけですけれども、これはやはり抵抗も強くて無理だろうということで、薬価についてはこのような対策を入れていただいたと。

一方で、超高齢社会が進んでいくことを考えますと、医療と介護は一体に対策を打っていかなければならないということはもう自明の理でございますので、ぜひ介護報酬改定のサイクルを、診療報酬との同時改定が6年に一度にならないように、2年サイクルで回るようにぜひともご検討いただければと思います。

参考資料の52ページにアウトカムに応じて介護報酬のメリハリをつけるということを書いていただいておりますが、これに関しては大賛成です。まじめにやっている事業者と、一部お金儲けのためにやっている事業者もおられると思います。こういった中でまじめにやっている人を適切に処遇し、逆に、金儲けでやっている人にはシビアにやっていただかなければならない。例えば51ページのC社は、いかがなものかというふうに思います。

それと、生活保護についてですけれども、資料の38ページに生活保護受給者の医療扶助の適正化ということが書かれています。これは私が以前主張したのですけれども、大体生活保護に4兆円かかっていて、そのうち2兆円が医療扶助費となっております。その中で、やはりこれも残念ながら、大阪には生活保護しか診療しないという診療所があると聞きます。非常に情けないですが、貧困ビジネスといいうようなものがあるのが実態です。この参考資料の76ページに記載されている頻回受診対策というものがありますが、この施策を確実にするためには、例えば、医療費2兆円のうちの10%、2,000億円、ただし、当然一定額以上は、高額療養制度ではないですけれども、要らないわけですから、その時に仮に医療費が1,000億円負担をしていただいたと、それは、その同額を生活扶助のほうに積んでいただいたら総額は一緒ですから、サービスとしては一緒で、公平感というものが出る。あるいは、要らない検査をするといったこともなくなっていくのではないかなというふうに思います。

ただ、それを言ってもすぐできることではないのだと思うので、例えば、頻回受診している人は、ある一定の回数を超える場合、負担をしてくださいというようなステップを踏むというのが1つのやり方かなと思います。

以上です。ありがとうございました。

〔 土居委員 〕 では、武田委員。

〔 武田委員 〕 2点申し上げます。

まず1点目は、社会保障の伸びの目安、これを毎年維持していただいていて、非常にご苦労が多いのではないかと考えますが、岡本委員もおっしゃっておりましたけれども、毎年の頑張りだけではなくて、制度改革、これをしっかり行っていくということが非常に重要ではないかと思います。

2点目としまして、では、何が必要かということでございますが、本日24ページで具体的な検討項目を示していただいておりますけれども、真ん中の負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化のところには、緑、つまり実施中の事項がございません。特に49ページにもございますが、医療保険における後期高齢者の窓口負担の在り方は、今後議論される項目には挙がっていますけれども、今からしっかり議論していくことが極めて重要ではないかと思います。

先ほど鶴先生のご説明の資料で、若い方の増税に対する理解が高齢者よりもむしろ低いというようなご説明ございましたけれども、その背景の仮説として、世代間の負担と給付の公平性に対する納得感、これがもしかすると得られていないのかもしれない。したがって、その納得感を得るためにも、そうした改革の道筋を今から示し、議論していくことが重要と考えます。

以上です。

〔 土居委員 〕 では、竹中委員。

〔 竹中委員 〕 ありがとうございます。35から37ページの障害保健福祉について、とりわけプロップ・ステーションはいわゆる雇用率の制度の中で、なかなか働くことが難しい重度のチャレンジドを支援し、障害を持つ方の可能性に着目したチャレンジドをタックスペイヤーにできる日本というスローガンで活動を続けてきました。それは、雇用率の制度以外のところで様々な働き方を実はできる方がいらっしゃり、そういった方々のスキルを上げながら、実際にタックスペイヤーになっていけるように、活動を続けてきました。厚生労働省としても、働けるチャレンジドを増やすというふうに政策転換をしていただいて、就労継続支援A型、B型というような制度も生まれました。本来でしたら働ける方々を受けとめて、そのためのスキルアップと就労へつなげることを使命としているはずのA型が、165.7%という非常に大きな伸び率があるにもかかわらず、残念ながら、利用者のニーズに基づかないサービスや質の低い供給が指摘されたり、一般就労の可能性があり、本人も希望しているにもかかわらず、一般就労に向けた支援を行わないという実態がございます。安易にA型に所属させてしまって、そこに税金が投入されているにもかかわらず、どれだけのチャレンジドがそこからタックスペイヤーとして巣立っていったのかということが明確にされていないこの状況は、本当に一刻も早く改善されなければいけないなというふうに思っております。

この度出ました働き方改革実行計画の中で、プロップ・ステーションなどがやってきました通うことが難しくても在宅で働ける、そういった障害者の就業を促進するために、在宅の障害者たちに仕事を発注した企業へのインセンティブや、それをきっちり仲介できる事業者モデルを構築していく、また、情報通信、ICTを活用してというようなことがしっかり記載される状況になりました。私たちとしては、より透明性があって、なおかつ公平に働くチャレンジドを育てていける実力のあるそういった事業者がどんどん増えていくことを願いつつ、就労支援A型の良き改善を取り組んでいきたいなということと同時に、企業の皆様方が雇用率の中だけではなく、それ以外のところで働ける方々にお仕事を出していただくということに対しても、ますますご支援をいただけるよう努力を続けていきたいなと思っております。

以上です。

〔 土居委員 〕 永易委員。

〔 永易委員 〕 ありがとうございます。この春の財審のスケジュールを見てみると、財政総論の審議は、本日1時間やっていただいたことになっていますけれども、先ほどの議論は、総論の議論ではないのではないかという気がいたします。ですから、本当はこの春の陣は、むしろ総論的なものを中心にやり、方向性を示して、秋の陣は具体的にやるというのがもともとのやり方だったのではないかという気がするので、少しその辺はいかがなものかと思いました。

やはり2020年のPB黒字化、これをどのように実現するかということが、一番のポイントの議論になるべきです。その本丸が、社会保障であるということはよく分かります。しかし、その大きい絵を示さずに個別の議論をやっても、仕方がない。もちろん、これは方法論としては非常に大事なことですし、大きい方向感や大項目だけ出しても、実際はそこにたどりつけないというのは十分あります。今は正直言って、いわゆる目安の議論、これが最後の支えになっています。ただ、この目安の議論が2018年度で終わりますし、その次は更に厳しいものを出さない限り、2020年度の目標は達成できません。

ですから、今回まではいいのかもしれないけれども、次の時には相当強いトーンの建議をこの財審が出さないと届かないというふうになります。先ほど、鶴先生も言われていたことですけれども、財政規律がどんどん緩んでいることは、我々も感じます。しかし、財審は、やはりそうではないのだというトーンの建議を出さないといけないという役割があると思いますので、ぜひよろしくお願いします。

個別のところはもう時間もないのでやめさせていただきます。

〔 土居委員 〕 ~子田委員。

〔 ~子田委員 〕 私は質問です。23ページの医療・介護制度改革の視点のところで、年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担というところで、負担能力に応じた負担をしていくということには賛成なのですが、ここに資産の保有状況等も含めた負担能力とありますけれども、どのように個々の金融資産、所有不動産等を把握していくのか、少し疑問に思いました。こちらの、実現可能性はどのようにあるのかということをもう少し具体的にイメージができたらと思いました。

以上です。

〔 土居委員 〕 宮島委員。

〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。この4月からこの会議に参加させていただいていますけれども、記者としては大分昔から取材しています。

まず、ここのある意味すごく精緻な議論が国民から遠くなってはいないかという心配をしております。それは我々マスメディアにも責任があると思いますけれども、議論の方向として、すごく難しく固く正しいことだけではなく、国民に対してどのように働きかけていくか、先ほどの鶴教授のお話もありましたが、そのあたりの意識に働きかけるような議論、見えやすさなどもこだわっていきたいと思っております。

その中で、医療・介護は今年本当に報酬改定を大きく変えるチャンスですけれども、提供を受ける側にも出す側にも効率化のインセンティブがないというところが提示されていますが、患者側のインセンティブに関してどのように考えていくかということは重要だと思います。今、例えば、私が普段発信している対象の視聴者から見れば、非常に遠いと思われる地域医療構想や、医療費適正化計画など、そういった組み立てのところはありますけれども、それでは、自分が病院の窓口に行った時に何があるか。

例えば、今問題だと思うのは、病院に行った時に自分のその薬に、本当のところ幾らお金がかかっているかということが意外と分からないことが多いということです。何となく、のどが痛いと言うと、うがい薬と1週間分のトローチが出ますけれども、それが本当のところ必要でお金がかかっているかどうかが分からない。普通物を買う時には一応値段を見ながら必要性をはかっているものが、医療の現場では行われていないということに関してどのように考えるか、そういった国民と直接向き合う部分をどう変えていくかというところも視点として持ちたいと思います。

更に、レセプトのデータなども分析が進みますと、おそらく同じ疾病でも、地域や医療機関によって、病院によって全然かかるお金が違っているということがより明らかになっていくと思います。そこで、いわゆる標準モデルのようなものをつくるなど、それを国民が認識するということも含めて、情報を共有していくということが今後大事なのではないかと思います。

もう1点、子育ての少子化対策に関しては、私も10年程前から議論していて、今優先的に予算がつけられるようになって、これがもう少し早ければ、もう少し効いたのではないかと思うところが正直あります。ベビーブーマージュニアの世代は40歳を超えてしまいました。

それで、今何とか仕事をしながら子どもが育てられるのではないか、自分の社会生活、仕事、収入、様々なところに不安な若者たちが、産めるのではないかという機運が出てきたところなので、何とかこれをバックアップしたいと思います。ですから、子育てのそれぞれの施策については様々な議論がありますけれども、トータルとしてはやはり人口問題、次の世代を増やすということがすごく重要だということは、絶対外してはいけないと思います。

あと、おまけで、最近孫を持たない高齢者がすごく増えてきていると思います。財界などの集まりでも孫の話は軽々にできないというような話を伺ったことがありますが、やはり次の世代を思う時に、自分の子どもや孫のために少しは我慢しようというような、いわゆる財政健全化の気持ちというものに関して、ある程度以上に孫を持つ、子どもを持つ大人の比率が少なくなってしまうと揺らいでしまう部分があるのではないかという心配があります。やはり次の世代に責任を果たすことや、次の世代を多く生み出すということに関しては、財政の健全化を求めながらも支援を緩めない必要があるのではないかと思いました。

以上です。

〔 土居委員 〕 宮武委員、どうぞ。

〔 宮武委員 〕 社会保障の給付と負担の関係でございますが、21ページにOECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係と書いてございます。昨年度もこれ出ておりまして、高い負担であれば高い福祉、低い負担であれば低い福祉しかないという、いわばその範囲に入っている国々はこのブルーの網掛け部分に入っているわけです。日本は2015年においてブルーの網掛けからかけ離れて、中福祉でありながら低福祉という状況にあります。今回は2060年、改革を行わなければ社会保障支出が膨張するのだということを示されました。それは非常によく分かります。しかし、今の低負担のままのトレンドで国民負担率を恐らく弾いておられるので、国民負担率のほうはごくわずかに右にスライドしているだけですね。本来であれば、赤字国債を出さないで応分の負担をしていれば、この図で言えば、現在のオーストリアやイタリアあたりのところまで増えてくるはずです。そのような形の図の示し方のほうが、これから先の社会保障の給付と負担を考える場合に役に立つのではないか、危機感も共有できるのではないかと思っております。

もう1点は、高い薬剤費について、様々な手をお打ちになっていますけれども、薬剤費を下げますと今度は現場では何が起きるかというと、たくさん使うようになります。そこでしのいでいる。日本の場合、薬の乱用が先進国の中でも最も顕著な国です。多剤投与と重複投与という実態は様々な調査で明らかです。最近ですと、東京都の健康長寿医療センターが、65歳以上の自宅で暮らしている方1,300人程度の調査をして4割の方は毎日6種類以上の薬を飲んでおられた。10種類以上の方も1割程度いらっしゃる。一番多い方は17種類処方されていた。17種類処方されていますと、絶対に飲んでいない、飲んだら死んでしまいますから。

そのような状況を見ると、高額薬剤の対策を立てることももちろん大事ですけれども、経費の面で言うと、多剤投与や重複投与のほうがむしろ経費はかかっております。そこに手をつけないと、薬剤費問題は解決しないのではないか。かかりつけ医に見てもらう、そして、出来高払いではなく、報酬を包括的に払う、定額で払うという方式をやはり外来にも入れていかないと、薬剤費は根本治療できないと思っております。その対策をぜひ財審で打ち出すべきではないかと思っております。

以上です。

〔 土居委員 〕 ありがとうございました。

時間が押しておりますので、質問に対する回答は個別にさせていただくということにさせていただきます。

それでは、最後に榊原会長からご発言をお願いいたします。

〔 榊原分科会長 〕 もう時間が過ぎておりますので、簡単に申し上げます。

本日の議論でもございましたけれども、厳しい財政状況の中で、2020年度のPB黒字化は何としても達成すべき課題だと思います。その課題への方策は、歳出改革、歳入改革、経済成長の3本の柱だと思います。先ほど永易委員からご指摘ございましたけれども、まずそのための総論をきっちりと議論するということがこの財審の大きな役割であろうと思います。最大の論点はやはり社会保障制度改革、これは論を待たないわけで、将来世代に課題を先送りすることなく、我々世代のうちにぜひ解決しなければならないと思います。国民の痛みを伴いますけれども、勇気を持って取り組んでいくと必要があります。

私は経済財政諮問会議で社会保障制度改革のワーキンググループの主査をしています。44項目の改革工程表をつくりまして、それを達成すべく取り組んでおりますけれども、全部を確実にやるということが欠かせません。本日のお話を聞きまして、その意を改めて強くしているところであります。

その中で、今年は特に、6年に一度の診療報酬・介護報酬の同時改定が行われる極めて重要な年ですので、それを中心に給付の適正化、効率化に資する改定にしていくための議論をしっかりとしてまいりたいと思っています。

財審としましては、本日も広報の重要性のご指摘がございましたけれども、厳しい改革の必要性を訴えていかなければならないと考えております。引き続き皆様方のご協力をお願いしたいと思います。

私からは以上です。

〔 土居委員 〕 ありがとうございました。

本日の議論はこれで終了させていただきます。

本日の会議内容につきましては、私にお任せいただき、会議終了後の記者会見でご紹介させていただきたいと存じます。会議の個々の発言につきましては、皆様から報道機関等などにお話しすることのないようご注意をお願いいたします。

次回は5月10日水曜日、13時30分より予定をしておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日は、これにて閉会いたします。ご多用中誠にありがとうございました。

午後4時12分閉会

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