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財政制度分科会(平成28年4月7日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成28年4月7日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成28年4月7日(木)14:00〜17:01
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題
・海外調査報告
・「経済・財政再生計画」の着実な実施

3.閉会

出席者

分科会長吉 川   洋福田主計局長
美並次長
可部次長
茶谷次長
阪田総務課長
内野給与共済課長
青木法規課長
余島司計課長
片岡大臣官房参事官
宇波主計官
奥主計官
阿久澤主計官
高村主計官
彦谷主計官
堀内主計官
冨安主計官
山崎主計官
高主計官
江島主計官
廣光主計企画官
泉主計企画官
委   員

遠藤典子

大宮英明

角   和 夫

竹中ナミ

田中弥生

土居丈朗

富田俊基

臨時委員

板垣信幸

伊藤一郎

井堀利宏

老川祥一

岡本圀衞

加藤久和

小 林   毅

佐藤主光

末澤豪謙

武田洋子

田近栄治

冨山和彦

増田寛也


午後2時00分開会

〔 吉川分科会長 〕 それでは定刻になりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様にはご多用中のところご出席いただきまして、ありがとうございます。

本日は、EU、イギリス、アイルランドとIMF、アメリカ、カナダの2つの海外調査報告に加えて、「経済・財政再生計画」の着実な実施に向け、社会資本整備、文教・科学技術及び地方財政について審議いただきます。

なお、本日は3時間にわたる長丁場でございますので、海外調査報告についての審議を終えたところで休憩を挟みたいと考えております。

前回4月4日の審議では、私の司会の不手際もありまして、予定の時間を超過してしまいましたので、本日は時間厳守でいきたいと、こういうことでございますのでご協力をよろしくお願いいたします。

それでは、早速議事に移らせていただきます。2月5日金曜日の審議の際に議論いたしましたように、計4チームに分けて海外調査を行っていただいておりますので、本日は、そのうちの2つのチームから報告を受けたいと思います。

まず、EU、イギリス、アイルランドの海外調査報告について、佐藤委員、竹中委員より、ご説明をお願いいたします。お二人でおおよそ30分程度ということで、時間厳守でお願いいたします。

〔 佐藤委員 〕 では、よろしくお願いいたします。資料1をご覧ください。今年の2月29日から3月4日まで、竹中委員とともにEU、イギリス、アイルランドに出張してまいりました。代表で私のほうから概要の報告をし、その後、竹中委員から適宜補足説明をさせていただければと思います。

本日は、EU、イギリス、アイルランドの順番でお話をさせていただきます。

まず早速ですが、資料1−1の1ページをご覧ください。ここではマーストリヒト条約以降の財政健全化の枠組み強化に向けた取組を整理しているところであります。ご案内のとおり、共通通貨ユーロのもとでは、金融政策はECBにより欧州共通ということになっておりますが、財政政策につきましては、各国が独自で実施することになっております。このため、今回のギリシャのように、ユーロ圏のどこかの国が財政悪化しますと、高インフレや金利上昇ということが他のユーロ加盟国にも伝搬するおそれがあります。そうならないようにするのが、このマーストリヒト条約でありまして、財政健全化の枠組みが規定されているということになります。

具体的に申し上げますと、ユーロ圏への参加条件といたしまして、財政赤字を3%以下、総債務残高対GDP比を60%以内に収斂させていくという基準が設けられているわけでありまして、これを担保するために各国共通の財政健全化の枠組みを構築し、欧州委員会がその遵守状況を監視するということになっております。

この財政健全化の枠組みを具体化したのが安定成長協定というものであります。同じページの下のほうです。同協定では、過剰な財政赤字の発生を防止するための予防的な措置と過剰な財政赤字や債務残高が発生した場合に、これを是正するための是正的な措置が定められております。まず予防的措置については、各国が中期財政目標、この協定調停時には各国共通で財政収支の均衡・黒字化ということになりますが、そうした目標を定めて、当該目標を実現するための安定化プログラムを欧州委員会に提出することになっております。

次に是正的措置ですが、EU諸国の財務大臣からなる閣僚理事会、ECOFINが過剰な財政赤字の存在を認めた場合、当該加盟国に対して、一定期間に財政健全化策をとって収支の改善を求めるということになり、この一連の手続は過剰財政赤字手続と呼ばれています。

この枠組みにつきましては、2000年代前半に、独仏に対して過剰財政赤字の是正勧告が出されたのですが、最終的には手続が停止になるなど、実効的な規律としては機能しづらいということが判明する中で、景気低迷時には厳しい財政緊縮策をとることは避けるべきではないかという考え方が強くなり、協定の緩和をめぐる動きが加速したということになります。それが次の2ページにあるとおりでありまして、中期財政目標を国ごとに設定して、低債務・高成長の国の場合は構造的財政赤字1%以下の範囲でよいという形で協定の弾力化が行われました。

マーストリヒトの場合は、財政収支赤字3%以下、ここでは構造的財政赤字1%以下という、この違いにご留意ください。

しかしながら、ユーロ圏債務危機において、一部の加盟国の財政悪化がユーロ全体の存続可能性への疑念につながるという事態になりましたので、逆に弾力化が危機の一因だったのではないかという批判が今度は出てくることになります。この結果としまして、ドイツの指導などにより、財政健全化の枠組みが今度は強化されていくということになるわけです。主な内容といたしましては、予防的措置の強化として、歳出のベンチマークが導入され、中期財政目標を実現していない国では、歳出の伸び率が潜在成長率よりも低くなるようにしなければならず、仮にこのような場合には、別途、歳入措置が必要だということになっております。このベンチマークというのは、経済ガバナンス六法の中で出てきているものであります。

このベンチマークについて、欧州委員会でいろいろとヒアリングしましたが、その有用性につきましては、政治家から歳出増加圧力がかかった場合、この政治家に対して、もしそのような形で歳出を拡大すると、このベンチマークは達成できませんよという形で、ある種、牽制効果が働くというメリットがあるのではないかというお話を伺いました。

4ページをおめくりください。

財政健全化と経済の関係でありますが、これは2015年ユーロ圏の財政に関する報告書の抜粋です。まず財政健全化は、長い目で見れば国債金利の安定やユーロへの信認向上を通じて経済成長に資するものであるという考え方が示されております。実際にヒアリングでも、高水準の債務自体、成長にマイナスではないかという懸念が出ていました。また、財政による需要の下支えの必要性というのは、必要なのは確かですが、将来の危機への対応力を高めるという観点から、経済がよいときにこそ、財政健全化を進めることが重要という考え方も示されているということであります。

併せて次の5ページにありますように、経済の成長力を強化するため、EU共通の成長戦略を策定しておりまして、2016年の報告書では、投資の促進、構造改革、それから財政責任の3つが優先事項とされ、経済の成長と財政健全化の両立のための取組が進められている状況だということです。

ここまで述べたことについては、6ページにポイントとしてまとめられておりますので、適宜ご覧いただければと思います。

さて、次は英国ですが、資料1−2の3ページをご覧ください。まず、なぜこの国において財政健全化が必要になったかということですが、金融危機が起きる前ですが、英国経済は16年にわたって、ある種プラスの成長を謳歌してきていたのですが、その中身を見ると個人消費と政府支出の拡大が成長の主導要因だったということになります。結果として、99年度以降は1%から2%超の経常赤字、それから2001年度以降は構造的な財政赤字が続いていたということになるわけです。

4ページを見ていただきますと、金融危機がこの状況を大きく変えたわけでありまして、金融危機によって経済が大幅に悪化する中で、金融危機前の成長を前提とした歳出が継続された結果、歳出の対GDP比が大幅に拡大し、もちろん税収は結果的に下がっていますので、財政赤字が大きく膨らむという事態になったわけです。これは4ページの左側の図の示しているとおりです。

2009年度の財政赤字は、金融危機前に比べて8%余り増加して、市場からは、英国債はニトログリセリンのベッドの上で眠っているようなものというネガティブな発言が出てきました。ちょっと動いたら爆発するということです。2010年5月の総選挙でハングパーラメント、つまりどの政党も単独過半数がとれない結果となってしまい、政治が不安定化するのではないかという懸念も出てきて、右側の図を見ていただくと、英国の国債金利がスペイン、イタリア並みに急騰するという事態が生じたわけです。これはイギリス国民にとっても大変ショックだったそうで、私たちも今回のヒアリングを通じて分かったのですが、このような国債金利の動向が、多くの人々に財政に対する危機感を共有させる1つの契機になったということが言われております。

5ページを見ていただきますと、先ほど少し述べましたが、2010年5月の総選挙の争点とその結果を取りまとめたものであります。結果は皆さんご案内のとおりでありますが、ポイントは、労働党を含め、与野党とも財政の健全化の必要は認めていたということであります。ただ、そのペースについてが争点だったということになります。当時の与党は労働党で、第三勢力は自民党です。そのとき彼らは、どちらかというと財政赤字の削減の必要は認めながらも拙速な対応は景気の腰を折るのではないかということで、緩やかな財政赤字の削減を訴えたと。当時の野党であった保守党は、むしろ英国最大のリスクは財政への信認の喪失と金利の急騰といって、むしろ、よりラディカルな財政赤字の削減を訴えたということになるわけです。その結果は、先ほどハングパーラメントという言い方をしましたが、どの政党も第一党にならなかったということになるわけです。ただ、このあたりは民主主義のプロであるイギリスでありまして、この後はご案内のとおり、保守党が自民党を抱き込んで連立政権を樹立し、非常に短い時間で財政健全化の加速を重要課題と位置付ける連立合意を取りまとめ、保守党・自民党の連立政権が誕生したということになるわけです。

次に9ページをご覧いただきますと、そこに2010年に策定された財政健全化計画の概要がまとめられています。同計画では、財政健全化目標について、フロー目標として経済財政見通しの予測期間であります5年の期間内、つまり2015年度までに構造的経常財政収支の黒字化、それからストック目標といたしましては、純債務残高対GDP比の2015年度までの減少というものを掲げ、歳出削減を中心として、2014年度ベースで1,100億ポンド、GDPの6%程度に相当する財政健全化計画を決定したということになります。この歳出面におきましては、各省の予算について、医療と海外援助を除きまして4年間で実質19%という削減を行っております。

ここで実質という言い方をしているのは、2010年度の歳出をCPIで伸ばしたときの金額と計画で策定された限度額との差ということになります。名目ベースで見ますと、医療等を含めて全体で1.5%の削減率という形になっております。また、これも有名な話ですが、労働・就労促進という観点から、手厚い福祉給付の制度改革にも取り組んでいったということになるわけです。

歳入面につきましては、どちらかというと所得税の課税ベースの拡大、実際これは労働党政権でも行われている増税策を引き継ぐということと、これも有名になりましたが、消費税の税率の引上げを行ったということになります。ある意味これは戦後の英国の歳出の削減の歴史の中では、過去に例のない厳しい計画となっております。

隣の10ページに歳出削減策の具体的内容が示されていますが、例えば公営住宅の賃料や大学の授業料の引上げによって、それらに対する補助金を削減するといったこと、それから地方公共団体向けの補助金や警察の補助金などの削減や、バックオフィス業務の効率化など、サービス提供主体への権限委譲と効率化を一体で行うなどの措置を講じました。あとは公務員に対する給料、公的部門の職員の給与の凍結も行っています。他方、長期的な経済成長を支えるという観点から公共投資への重点化なども行っているということになります。また福祉面では、物価スライド率を小売物価指数から、実際はより伸び率の低い消費者物価指数に置き換えて、実質的な削減を図る、また児童手当の支給対象を重点化するなど、実際に、収入6万ポンド以上の世帯を支給対象外にするという形での重点化といった措置を講じていったということがあります。

次に12ページですが、これは国民の支持・理解ということで、国民はどのように歳出削減策を受け止めたのかということについてです。総選挙の後のハネムーン効果と言いますが、連立政権は支持率の高い期間を最大限利用して、ほぼ1週間おきに財政政策の詳細を公表して、財政赤字は前の政権の負の遺産であり、これをこのままにしておけば金利の高騰を通じて企業や家計に悪影響を及ぼす、だから、財政赤字の削減は国民にとって非常に厳しいが、英国の国益のためには不可欠だという強いメッセージを繰り返し発信していたということ、それで実際、そのような危機感というのが、冒頭で申し上げたとおり国債の金利の上昇ということもあって、ある程度国民の間で共有される状況になったということです。

1枚めくっていただきますと、13ページと14ページの2枚で計画策定後の動きを整理してあります。13ページの左下のグラフにありますように、2010年5月以降、国債の金利は、イタリア、スペインとは違って低下していくことになったわけです。この辺は財政再建策の成功ではないかという主張もあります。ただ、一方で2011年6月以降になりますが、ユーロ圏の債務危機によって経済が低迷していく中において、やはり一部の経済学者や野党、IMFなど、いろいろなところから財政健全化計画の変更を求めるプレッシャーもあったということです。政治的なスキャンダルもあり非常に大変な時期でしたが、いずれにせよ財政健全化計画を維持したというのは1つの評価だと思います。

この結果、14ページの左下にありますように、歳入については実際のところは思ったほど伸びなかったと、これは実は誤算で、税収が伸びなかったんです。ただ、歳出削減については計画以上の削減が実現するということになります。ただ、外部の指摘を全く無視していたわけではなく、経済の低迷にも対応しましたし、長期的な経済成長に資するような公共投資の増額や減税など、成長力強化策も打ち出しつつということになります。対して、その財源につきましては経常支出の削減等によって確保すると、つまり赤字拡大はさせないという形で、経済の再生と財政健全化の両立を図ってきたということ。結果的に見ると、英国経済は、2013年には個人消費や住宅投資の改善を受けて回復軌道に乗り、2014年にはうらやましいことにG7の中で最も高い成長を実現したということになり、2015年には当初の目標は達成できなかったとはいえ、2010年に比べれば財政赤字は半減したということになります。ご案内のとおり、2015年には結果として保守党が総選挙で勝ち、単独政権の樹立につながっていくということになるわけです。

では、次に2015年に、新たな保守党政権の下で策定された財政健全化計画をご紹介したいと思いますので16ページをご覧ください。この計画では、前連立政権の下での財政収支の改善ペース、つまり年平均1.1%の改善を継続していくということです。2019年度までに財政収支を黒字化して、そのまま黒字を継続することを目標と掲げているということになります。目指すは2020年度です。これは偶然ですが日本と同じです。

なお、次のページで労働党政権を含めてですが、財政健全化目標の推移を表しています。イギリスでは、97年に労働党政権が誕生してから、フローとストック双方の財政指標について目標が設定されてきたのですが、当時の労働党政権では、サッチャー政権に対する反動もありまして、公共支出は将来世代も受益するから経常支出と区別するという考え方の下、フローの目標につきましては構造的財政収支から公共投資を除いた、構造的な経常財政収支が用いられることになったということです。ただ、そうはいっても公共投資が野放図に増えたわけではないと。なぜかというと、純債務残高の目標によって、公共支出全体の規模に対する財政規律を確保する規律があったからです。

連立政権の下では、金融危機の直後ということもあって、公共支出による機動的な対応の余地を残すという観点から、フロー目標としては同様に、構造的な経常財政収支が用いられましたが、純債務残高の目標が厳しい規律となって働いたということもあって、やはり歳出が大きく減少していくという形にりました。一方、現政権は、構造でもなく経常でもなく、財政収支の黒字化をフローの目標として掲げたということになります。なぜ変えたのかをヒアリングでも聞いてみましたが、債務残高を継続的に引き下げていくためには、よりシンプルで分かりやすいため、財政収支を目標に黒字化を図っていくことにしたとのことです。債務残高を引き下げていく必要性につきましては、債務残高が一定水準を超えると成長が低下する、もしくは経済ショックが発生するなど、さまざまな経済危機に対する財政の対応力を確保していく必要性があったということだそうです。

2015年の健全化計画の歳出削減の具体的な内容は18ページに取りまとめられているとおりですので、適宜ご覧ください。

最後に今後の経済の見通しにつきましては19ページに示されております。歳出の規模は、足下の金融危機前の2000年代に比べて縮小していますが、連立政権ではこれを更に下げて、2019年には1990年代後半の水準まで抑える見通しになっています。こうした中で2019年の財政収支の黒字化目標については、50%以上の確率で達成できるのではないかということが、これは後ほどまた言及しますが、OBRという財政責任庁、独立の経済見通し機関から示されているところということになります。

以上がイギリスになります。

最後にアイルランドのケースにつきまして、資料1−3の3ページをご覧ください。アイルランドでは1990年半ばから高い成長を享受してきましたが、99年のユーロ導入以降、ユーロ圏の黒字国等の資金が流入して不動産バブルが発生して、2000年代半ばから経常赤字に陥りました。ただ、もちろんこうした不均衡な成長というのはなかなか続くものでもなく、2008年には住宅価格が大幅に下落してバブルが崩壊、このとき世界的な金融危機が起き、経済はマイナス成長に陥るという事態になったわけです。

4ページを見ていただきますと、財政につきましては1990年代半ば以降、高成長の中で歳出が拡大しますが、税収も大きく増えたので、財政黒字が継続して総債務残高(対GDP比)が大幅に減少するということはありました。ところが、こうした中で福祉の拡大が図られたということがあります。現役世代に対する給付の拡大、年金の拡大、公務員の給料の引上げといったことです。しかし、景気のいいときはこれでよかったのですが、イギリス同様、経済の悪化を受け、この財政赤字が大幅に拡大、またバブル崩壊後の金融システムの不安定化のための財政出動もあって、債務残高が一気に増える状況になっていったということです。

5ページですが、このような事態を受けて、アイルランドではほかの国に先駆けて、2008年より財政健全化の取組を開始することになります。2008年以降、世界的な経済危機を受けて、主要国が財政出動を行う中で、一貫して財政健全化を推進して、2014年までにはGDP19%相当の財政健全化策を実施するということになったわけです。1980年代後半の財政健全化というのもあるのですが、そのときは歳出削減のみで行いました。ただ、歳出削減だけだと必要な公共投資が行われにくくなり潜在成長率にも悪影響を与えるという考え方もあったので、歳出削減と増税を組み合わせるという形をとりました。そうはいっても歳出のほうに比重はありますが、増税と組み合わせています。

具体的な内容は6ページにまとめているところであります。考え方としましては、バブル経済を前提とした歳出水準の維持は不可能で、なかなか厳しい状況にあるということで、まずは公的部門の職員の人件費、年金、社会福祉、公共事業を含む事業について、聖域のない形での切り込みを図っていくということになります。2010年11月には、2011年から14年を対象に、財政健全化を内容とする「国家再生計画」が策定されました。それは7ページに具体的な内容が書いてあるのですが、公的部門の職員、社会福祉、事業予算、それぞれの削減を行っていくということになります。あと税制面においても、基礎控除が基本的にはない、所得負担金の導入、つまり社会保障関連税といったものの拡充が行われたということです。

このように、実はアイルランドの財政健全化計画は、状況が悪かったこともあって英国以上に厳しいものであったのですが、8ページにもありますように、財政健全化は持続的な経済成長の前提条件であるということ、そのためには経済成長だけでは赤字は減らない、この赤字は構造的なものであるということで国民の理解を得ようとしたということであります。

先ほど少し申し上げましたが、実はアイルランドでは1980年代に財政危機に見舞われたのですが、1987年に抜本的な財政健全化策をとった結果、経済が回復したという成功体験があったので、このあたりも国民の理解を得る上では役に立ったのではないかということです。

10ページは、2011年2月に総選挙があったのでその動向です。

11ページです。経済につきましては、小国開放経済であるということから、財政健全化策の悪影響が輸出増によって相殺されやすいということも追い風になったため、早い段階で成長軌道に戻ることができたということです。財政についても、実は計画を上回るペースで財政赤字を減少させることができまして、国債の金利は着実に減少しました。このあたりもスペインやイタリア、あるいはポルトガルとの違いだったということです。こうした中、2013年にはEU、IMFの支援からも卒業して、2015年には財政赤字は3%以下となって、冒頭で紹介したEUの過剰財政赤字手続からも卒業する見込みということであります。アイルランドはある意味、典型的な経済再生と財政健全化の両立に成功したケースになります。

ポイントにつきましては、最後の15ページにまとめているとおりでありますので、適宜ご参照ください。

ちなみに、最近アイルランドで選挙がありまして、与野党とも過半数をとるに至らなかったものですから、まだ新しい政権が決まっていないという状況です。

さて、最後に幾つか私なりの所感ということでお話をさせていただければと思います。英国、アイルランドの場合は、いずれも財政への危機感が国民の間で共有されていたことが財政再建を進める上での政治的な原動力になったということは否めないと思います。英国の場合は、特に国債金利が上昇したという形での市場の反応が、国民の間でも危機感につながったと言えますし、アイルランドの場合は金融危機はもちろん、80年代の財政危機の経験がありました。また、財政赤字は構造的で景気が上向けば解消するものではない、よって、このままでは財政は持続可能ではないという認識も共有されていたと理解しています。

財政再建を進める上で必要なのはやはり国民からの信認ということで、英国の場合、これを担うのが財政責任庁という独立機関であり、財政や経済の見通しに一定の客観性を担保するものです。組織再編論という話をしているわけではないのですが、財政、経済の見通しの客観性をいかに確保するかというのが、やはり重要ということです。

ちなみに、この財政責任庁というのは、あくまでも予測する機関であって、政策評価や提言はしませんし、自分たちで政策のシナリオをつくることもない、そのような形で政策形成の場から一定の距離を置くことによって、ある意味、第三者的な立ち位置を確保しています。

また、経済成長と財政再建の両立という観点から見ると、アイルランドやイギリスから学べるのは、彼らの経済自体がもともと柔軟な経済だったということです。具体的には労働市場の柔軟性ですが、このことが成長と財政再建の両立につながったということ。さらにアイルランドは小国開放経済だったということも、彼らにとってはラッキーだったということです。我が国においても、構造改革が問われて久しいのですが、構造改革を通じて経済の柔軟化を図っていくことは財政再建の観点から見ても重要ということになります。

あと我々が非常に学んだのは、両国とも、まだ高齢化に直面しているわけではありません。歳出削減の対象となった社会保障給付というのも、少なからぬ部分は現役世代に対する給付であります。また公務員の給料なども削減対象でした。したがって、現役世代の就労を促進するという形での歳出削減だったので、ある意味進めやすかったという点があると思います。ここら辺は翻って考えれば、我が国は既に高齢化しており、社会保障の多くが高齢者向けというところが、少し事情は違うかなと思います。無論、介護や医療の分野はまだまだ効率化の余地はあると思いますが、ただ、財政再建の多くを歳出削減だけで実現するのは、我が国の場合やはり難しいのかなということで、歳入確保策も求められていくのだろうなという、これは両国と日本との違いかなと思いました。

私からの話は以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、竹中委員、よろしくお願いします。

〔 竹中委員 〕 この度、初めて海外調査ということで行かせていただきまして大変勉強になりましたが、専門的な部分は佐藤委員が、もうしっかりと十分にお話になられたので、簡単に私の体感したことをご報告したいと思います。

資料1−1の3ページにもありますように、アイルランドのV字回復に私は一番関心を持っておりましたが、アイルランドでの説明を聞いて、与党も野党も政府も国民も関係なく、とにかく危機を共有して必死で乗り切ったのだと、それが私たちの誇りであり、この誇りがこれからも続く限り、私たちの経済成長は続くという論調でお話になったのが非常に印象的でした。これはアイルランドに限らず、イギリスもそうでした。そこのところが非常に大きなポイントなのかなと思いました。

それから、どの国の方も言われたのは、選挙前は財政規律が緩むが、緩むということを繰り返していると、逆に国民からの信頼が非常に損なわれる政府になるのだと、政府としてはどれだけ財政健全化に向けてしっかりと舵を取っていけるのかということに努力をしないといけないとおっしゃっておられました。

あと私の関心のチャレンジドのところで言うと、社会保障、弱い人たちに対する支援はきっちりするが、それは働いていただくための支援であるのだと、力を発揮していただくための支援なのだというのをどこの国の方もおっしゃって、そのような考え方、国民と政府が一体になって危機を乗り越えようとしてきた結果が、共通していたと思います。

最後に佐藤委員もおっしゃいましたが、イギリス、アイルランドでは高齢化が進んでおらず、若い人が活力を生み出しており、しかも子育てしやすいという社会状況になっているのが高齢化の問題に直面している今の日本とは相当違うのだと思いました。日本は少子高齢化問題があるからこそ、今まさに危機的な状況にあるのではないかと思います。

4月22日に女性公聴会もさせていただきますが、ぜひこの危機を乗り切るために、一緒に力を合わせて、誇りを持って、日本の国を安定化させたいというような女性たちの思いを共有できたらいいなと思いながら、私の感想とさせていただきたいと思います。いい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもお二人の委員、ありがとうございました。

それでは続きまして、IMF、アメリカ、カナダの海外調査報告について、末澤委員、田中委員より、ご説明をお願いいたします。また、くどいようですが、お二人で30分ということで。

〔 末澤委員 〕 了解しました。どうも、よろしくお願いいたします。

3月の第2週、1週間かけまして、私と隣の田中委員で、米国の首都・ワシントンD.C.及びカナダの首都・オタワを訪問しました。具体的には、IMF、またアメリカの政府機関、民間のシンクタンク、あとカナダの政府機関等を訪問させていただきました。

前段で私のほうから、IMF、アメリカの財政状況についてご報告させていただきます。後段で、田中委員のほうから米国の税財政教育とカナダの財政状況についてご報告いただきます。

初めに、参考資料2−1を1ページめくっていただきますと、IMFの組織図が出てまいります。私どもは今回、このIMFの組織図の真ん中あたりにございます財政局でグローバルな財政健全化に向けた取組策等をヒアリングさせていただきました。あとはアジア太平洋局と、一番下にあります西半球局の2局を回りまして、特に米国の財政状況、また今後の課題等についてヒアリングさせていただいております。

資料2−1に戻っていただきまして、海外調査報告(IMF)ということで、1ページ、IMFではわりと理論的な話が中心でしたので、本日は分かりやすくご説明させていただきたいと思います。IMFというのは、私の印象では緊縮財政原理主義的なイメージがありました。実際1997年、アジア通貨危機のときには、IMFは「I’M Fired(私はIMFによって首になった)」というのがわりと標語で使われていましたが、今回、相当柔軟になったなと。やはり2001年以降の世界的な危機、2008年のリーマン・ショック、また欧州債務危機もありまして、相当柔軟性が出てきていると思います。ただ、IMFでも、まず彼らが言っていたのは、あまり財政再建に時間をかけると「財政健全化“疲れ”」になってしまうと。ですから、なるべく機会を捉えて早くやることが必要だと。ただし、そうはいっても経済成長と財政健全化はやはり両立が必要ですから、ケース・バイ・ケース。彼らが今回よく使っていた言葉は、フレキシビリティー(柔軟性)とエスケープクローズ(例外条項)です。これらを相当使っておられまして、そういう意味では、柔軟に、ケース・バイ・ケースで対応が必要だと。ただし、景気がよいときに財政健全化をして、そこでバッファーをつくることで将来の危機に備えると、このようなスタンスは明確に話されていました。

2ページ目でございますが、彼らもかつては、やはりシンプルなルールがいいと思っていたそうですが、欧州債務危機等でなかなかうまくいかないということで、景気循環等を考慮した、情勢に応じたより柔軟な対応をやっていくと。ここはエスケープクローズ、すなわち例外条項の設定などが望ましいとおっしゃっていました。あとはやはり計画性をはっきり市場に示すことで、安定的なシグナルを送るべきということです。また、見通しよりも高い税収を実現した際は、その分歳出を増額するのではなく、「貯蓄」すなわち債務削減に充てることで、来るべき経済危機に備え、財政出動する余地をつくることが必要だと、このように話されていました。また、IMFと言いますと構造的財政収支という統計が有名です。つまり景気循環で変わる部分と変わらない部分を切り分ける。よく日本でも説明されるかと思いますが、ただ、彼らに聞くと、実はこれはなかなか切り分けが難しいと。ですから、理論的に考えるというよりも、わりと積み上げ的な考え方も最近はとっているということで、この構造的財政収支についても、最近の研究成果では変わってきているという発言がありました。

4ページまで行っていただいて、本当に簡単にですが、今回のIMFへのヒアリングによりますと、まず、財政再建の先送りや長期化は「健全化“疲れ”」に陥るため、できるだけ早期に進めていくことが重要である。また、経済が悪化しているときは、財政健全化による経済への影響にも当然留意が必要。想定していたよりも税収が上振れた場合は、その分歳出を増額するのではなく、「貯蓄」すなわち債務削減に充て、将来、経済危機などの場面で財政出動する余地をつくることが必要。また、財政再建に当たっては、中期計画を策定して市場へ安定的なシグナルを送り、かつ、事前に公表された内容通りに実施することが信頼性・予測可能性の観点から重要であると。最後に、私どもはファイナンシャル・システム・カウンシルということでございまして、財政制度等審議会等による外部のモニタリング機能は極めて重要であるというお褒めの言葉をいただきまして、また計画が遅延した場合の自動修正機能の導入や景気循環も含め、情勢に応じた対応を可能とする例外条項もつくってやることが、むしろ実際の財政ルールとしては有効であるということで、そういう意味では、必ずしも緊縮財政原理主義ではなくて、相当経済の状況によった対応が必要。ただし景気がいいときに、むしろ財政再建を進めるべきだというのが彼らの考え方でございました。

続きまして、米国に参ります。資料2−2の1ページを見ていただきますと、今の米国の経済状況、これは多分、先進国でも最も状況がいいということでございます。失業率も5%ないし、それを割る水準です。

成長率につきまして、ここでは2.8%という数字が出ています。これは昨年の分でございまして、実はIMFの見通しですが、現時点でIMFの米国の今年の見通しは、成長率2.6%です。ただし、私どもがヒアリングした感じでは、もう少し下振れそうだと。実は12日に新しい統計が出てきます。一昨日、ラガルド専務理事も弱気な発言をされていましたが、私の心証では、米国が2.6%を2.4%ぐらいに下げてくるのではないかというのがヒアリングの結果でございます。ただ、米国が相対的に極めて状況がいいのは事実でございますし、2ページ、財政の状況をご覧いただきますと、一時、2009年、これはリーマン・ショック直後でございますが、対GDP比でマイナス13.2%まで赤字が拡大したわけでございますが、その後は急激に改善していると。なぜ改善したかということを、この後ご説明させていただきたいと思います。

次の3ページでございます。米国の財政運営を規律するルールは幾つかございます。基本的にこれは法律に基づいて定められておりまして、まず直近のオバマ大統領が示した「2017年度予算教書」、ちなみにアメリカの財政会計年度というのは10月スタートで9月で終わります。日本は年度というと4月からのことを言いますが、彼らは終わるところなんですね。ですから、2017年度会計年度といいますと、2017年9月に終わる年度ということで、少し日本とずれがあるということです。ここの予算教書では、「2025年度にかけて財政赤字対GDP比を3%未満におさめることで、債務残高対GDP比を安定させ、さらには減少させる軌道に乗せる」とされております。ただ、現実にはこの予算教書、大統領のバジェットに沿って議会の審議が行われているかというと、これはほとんどございません。これは後ほどご説明したいと思います。

ただ、アメリカのこの財政運営を規律する1つの大きなルールがCap制です。2011年予算管理法、これは2011年8月に成立した法でございますが、ここで歳出の上限にCapを設けるということで、歳出全体の3割を占める裁量的経費を総額9,000億ドル削減するというCapが設定されました。ただ、これはなぜこのタイミングでできたかというと、実はこの少し前に議会の審議が混乱しまして、これは後ほどご説明しますが、そのぎりぎりのところで最後できたんですね。

それでもう1つ規律がございまして、Pay−As−You−Goです。これは、新規の施策や制度変更により、同一年度内に債務増が見込まれる場合、債務増を相殺するために義務的経費に一律の削減率を課して強制削減する。これまでPay−As−You−Goに基づく強制削減の実績はございません。なお、このPay−As−You−Goは昔もありましたが、ブッシュ政権下でなくなり、オバマ政権下の2010年2月に復活させています。これは今でも相当きいております。ただ、これは2010年2月にできたということを、後でまた、なぜそうなったかをご説明したいと思います。

もう1つは債務上限というルールでございまして、米国の場合は基本的に予算について、日本のような何年度予算や補正予算という考え方はございませんので、基本的には全部歳出法という法律に基づいてつくるわけです。ただ、その歳出法は歳出の金額を決めて予算の根拠をつけるのですが、別途、アメリカ政府の債務の上限を縛るルールでございます。これは1917年第二自由公債法と、ここで言う自由というのはリバティーの自由なんですが、上限を法律に規定することになっています。これを毎年上げておりまして、この法律ができてから大体100回ほど上げられております。ただ、この数年間は上限が設定されておりません。なぜ設定されないかというと上限を決めることができないと。上限を決めるためには与野党の妥協が必要なんですね。ただ、それができませんので、最近は何年何月まで、直近ですと2017年3月15日までは上限がないという法律が通っております。では、今度、2017年3月になるとアメリカがデフォルトするのかということですが、実はそうはならないんですね。実は昨年も3月に上限が再設定されていたのですが、アメリカはずっとその後、秋まで上限を引き上げないままでした。

なぜできたかというとことで、今回、OMB(行政管理予算局)にヒアリングした内容ですが、実は財務省が特例措置をとることができます。具体的には、地方政府への資金援助、公務員退職年金による国債の引き受け、あと為替安定基金による国債の引き受けと、幾つかこれらを停止することができるんですね。つまりその資金繰り効果が幾らあるのかということで、一応2,000億ドル程度じゃないかということを当方から申し上げたら、大体そんなもんだろうという回答がありました。つまり特例措置をとることで、年間の予算で見ると2,000億ドル程度の資金繰りが可能になります。現状、アメリカの財政赤字は4,000億ドルです。つまりこれをやると、大体半年はもつということです。だから、昨年3月に上限が再設定されて、それ以上新規借り入れができなくなったのに秋までもったというのは、そういうことです。だから、今回も2017年3月に上限がきて、そこで法律ができないとしても半年前後はもつ可能性があるということでございます。

いずれにしても米国は、財政健全化は表面的には極めて進んでいるように見えますが、実は政治的には相当問題がございます。4ページに2009年1月のオバマ政権発足時と2010年11月の中間選挙時、2012年11月の大統領選挙時、あと直近の中間選挙時の状況を出しておりますが、実はこの4つの表の中で、オバマ大統領が自分の政策をスムーズにできたのは初めの2年間しかございません。これはなぜかというと、オバマ政権発足時は上院で59席とっています。実は上院においては60席とらないといけないんですね。アメリカの上院は、基本的には全会一致が原則ですから、議事の開始、または議事の終結時においてクローチャーモーションという60名の賛成が必要な採決をやる必要があります。ですから、60ないといけないわけです。ただ、当初は59席であったと。59席あると1名ぐらい共和党から引っ張ってくることができるので、これによって初めの2年間は彼がやりたい法律が通ったんです。下院も過半数をとっている。それが2010年11月の中間選挙時に、上院が55席まで下がったと。これでもう実質的に、上院はコントロールできなくなっています。また、下院は共和党にとられちゃったということで、それ以降はオバマ大統領がやりたいと言ってもなかなかできない。結果的に議会でのぎりぎりの交渉のもと、色々な法律ができているということですね。特に、直近の中間選挙では上院も下院もとられていますから、基本的にはオバマ大統領が何かやりたいと言っても、それだけでは全然法律が通らないという状況になっています。

そうした中、いろいろな混乱もございまして、4ページの太字のところをご覧いただきますと、2013年3月に10年間で1.2兆ドル、米国ではシクエスターといっていますが、強制歳出削減が発動しています。これはどういうことかというと、少し戻っていただくと前のページの2011年予算管理法(バジェット・コントロール・アクト)で0.9兆ドルとは別に、1.2兆ドルないし1.6兆ドルの歳出カットを決めることになっていました。これは超党派の委員会もつくって1年やったんですが決まりませんでした。最終的に、強制的に裁量的経費が1.2兆ドルカットになった。これは主に、半分が国防関連費です。もう1つ起こったのは、2013年10月、アメリカの場合は予算は10月からスタートするのですが、そのときまでに法律が通りませんでした。最近本予算が全然通らないので、まず暫定予算を通すのですが、暫定予算も通らないということで、90年代から十数年ぶりに2週間強のガバメントシャットダウンが起きたということで、そういう意味ではアメリカも相当混乱した状況が続いているということでございます。

次の5ページでございまして、一番下のところですが直近はどうなっているかということで、昨年の11月に2015年超党派予算法が成立しております。これ自身は歳出法案ではないので別途歳出法をつくっていますが、一応ここで2017年3月まで債務上限を適用しないことで合意したということと、もう1つは2年間の予算の大枠を決めまして、ここでは一部Capを緩和すると。その際に戦略的石油備蓄(SPR)の売却なども盛り込んでおりまして、そこで一部財源確保するような手段もとられています。

6ページです。ここでは社会保障改革について簡単に触れさせていただきたいと思いますが、アメリカでは日本の公的年金制度にやや近いものとして、OASDIという老齢・遺族・障害年金制度がございます。これも一応積立金の規模は、昨年の12月末現在で2兆7,600億ドルということで、約2.8兆ドル、日本円ですと約330兆円ですから、世界最大の公的年金ファンドということになります。ただ、米国の場合は国債での運用、非市場性国債の引き受けに義務づけられていますが、こういう制度がありますと。ここは今後、大丈夫なのかという議論はあるんですね。ただ、アメリカの場合は、日本と違ってベビーブーマーのバンドが相当長いこともあって、下に書いてありますが2034年までは大丈夫だろうということで、今のような政治的な対立が続いている中では、OASDIの見直しについてはなかなか進展していないということのようでございます。

次の7ページで、医療についてはどうかということですが、米国では高齢者・障害者向けのメディケアと、一定の要件はございますが、低所得者向けのメディケイドが存在しておりまして、「オバマケア」はメディケイドを取り込む一方、一部見直すということでございます。ただ、この「オバマケア」については、共和党の反対は極めて強いんですね。ただ、私どものヒアリングでも、下の将来の見通し及び対策のところで、議会予算局(CBO)によると、これをやると10年間で1,370億ドルの財政健全化効果はあるという推計はしております。ただ現時点では、まだこの効果はアメリカの決算上は表れていないです。

8ページでございますが、今後の経済・財政に関する見通しと当面の財政課題です。アメリカの場合は、OMB、これはホワイトハウスの組織の中にある行政管理予算局と議会の予算局(CBO)と2つございます。ご覧いただくと、財政収支の見通し、実質GDPの見通しは少し違いますよね。なぜ違うかということで、参考資料2−2の9ページの一番下をご覧いただきたいのですが、今回ヒアリングをしてきまして、私も興味があったのですが、実はOMB、ホワイトハウスの傘下にあります行政管理予算局の職員数は475名、そのうち50名が政治任用。つまり1割強は政治で決められている。一方でCBOの職員数は230名ですが、これは局長が議会の任命を受けるだけで、これは1人だけですから、そのような意味ではCBOは極めて独立した組織であるということで、そこは役割分担ができているのだなというふうに思いました。

最後は10ページまで飛んでいただいて、大統領選の真っ盛りということでございまして、今回は民間のシンクタンク等も回りまして状況をお伺いしたのですが、一言でいくと、4つ回ったうちの1つはトランプ大統領になるのではないかと、もう1つもトランプ大統領になる可能性もありますと、もう1つはクリントンでしょうと、もう1つは答えないと。実は答えなかったところは共和党系のシンクタンクでございまして、相当混乱している状況がお分かりいただけるかと思います。

10ページの右上にございますように、獲得代議員数で見ても、昨日はウィスコンシン州がございましたが、クリントンさんとサンダースさんだと、クリントンさんが相当勝っているように見えるんですが、500名近くがSDというスーパー・デリゲート、特別代議員ですね。これは知事、市長、あと上下両院議員等で構成をしている民主党の幹部です。彼らの票が500票近くあるので、実質的な差はそんなにないと。一方で、共和党はトランプさんが一番ということで相当混乱しておりまして、一応アメリカの場合は50州と1選挙区、コロンビア特別区の51選挙区でありまして、大統領選挙人の定員は上院100名、下院435名及びコロンビア特別区の3を足した538でありまして、過去は、ここで言うと緑色でくくっている、いわゆるスイング・ステートが最終決戦の地になっているのですが、今年の場合は、本当にどちらが勝つか分からないというのが現状と考えております。

私のご説明は以上とさせていただきます。

では、続きをよろしくお願いします。

〔 田中委員 〕 それでは、引き続きまして、私のほうは、アメリカの財政教育と、それからカナダについて説明をさせていただきたいと思います。

資料2−2の11ページをご覧ください。

アメリカには、政府とは独立した形で、州や連邦政府の財政状況や税金の使い方をチェックしようという非営利組織、NPOが相当数存在しておりますが、今回はワシントンで2件回ってまいりました。まず、その2つの団体の特徴を紹介したいと思います。

まず、Tax Foundationと書かれているものですが、これは1937年に、ですから、もう80年近い歴史があるNPOでありまして、世界恐慌当時、財政も悪化する中で、財界人が集まって、この国の予算、財政はどうなってしまうのかということで議論した結果、政府とは独立した形で、州や連邦政府の財政をチェックする必要があるだろうと、そういうものをつくろうということで、財界人が集まって、お金を出し合ってつくられたのが、この団体であります。

当時の関心事の中心は、むしろ州政府の税金の使い方でありましたので、地域に十数件ですか、小さな市民グループがあり、それは州の税金の使い方をチェックしようというグループがあったんですが、その芽を育てようということで、財政状況に関するデータや分析集を出して、彼らを育てました。結果的に4年間で1,200の団体がそこで生まれたということであります。

現在は非常にシンクタンク的な機能を強化しておりまして、お隣のページを見ていただくと、12ページに、これは各大統領候補者別の税制の比較表が出ていて、トランプ氏は、このままで行くと10年で10兆ドルほどの赤字を出すという数字も出してありますが、このような試算や国際比較表、あるいは州の議員さん向けのファクトブックを出したりしていますが、アナリシス、分析もきちんとしていますが、とにかく内容、発信の内容が分かりやすいんですね。なぜかと聞いてみましたら、いわゆる議員のスタッフさんが必ずしも税の専門家ではないので、その方たちが分かるようにしたということなのですが、結果的に、今800万回程度のアクセス数があるというような団体でありました。

それから、13ページをご覧いただきたいのですが、これはCRFB(Committee for a Responsible Federal Budget)というもので、この歴史は30年ほどですが、メディアへの露出が非常に高くて、日本の高官も着目していたという団体でした。これはもともとは女性1人が地下室の部屋を借りて始めたそうですが、この国の財政はどうなってしまうのかと、特に債務をどうするのかということで活動を始めて、そこから議会予算局、あるいは行政予算局のOBの方たちが集まって、サポートして、今、4億円ほどの規模の組織になっています。8名程度のアナリストを抱えていまして、週に2、3回は必ず分析表を発信しているというもので、その利用者がおもしろいのですが、シンクタンクや企業だけではなく、IMF、それから議会予算局、行政予算局の方たちがあえて使うと。なぜならば、政府が出す予算というのは、解釈はあまり入れないですが、ここはいろいろな分析情報を分かりやすく説明しているというものであります。

そのほかにもジャーナリスト向けの活動、それから一般市民向けの活動としての債務をストップしましょうというキャンペーンを行っていますが、ここはなかなか苦戦しているというようなことをおっしゃっていました。

これ、どのように捉えたらいいかということですが、先ほど申し上げたように、このような団体は相当数存在していて、しかも80年以上の歴史があるということです。これは私は、やはり財政民主主義というものを考えざるを得なかったと思います。普通、財政民主主義といえば、納税者の、あるいは有権者の代表である議会に、その財政の監視機能を委ねるという考え方ですが、この国では、議会以外に加えて、国民一人一人、納税者一人一人が、このような非営利組織を通じて、しかも、違った立ち位置、違った異なる視点の意見を交わしながら議論があると。これはやはり財政民主主義を支える母体の層の厚さや強靱さを支えているものではないかと思いました。これが税財政教育のところであります。

次に、カナダについて説明をさせていただきたいと思います。

資料2−3の1ページをご覧ください。

カナダの経済状況でありますが、これはご覧のとおり、2008年に起きたリーマン・ショックで2009年に大きく落ち込みますが、2010年にはプラス成長に早くも転じているということです。しかしながら、近年は、石油価格の下落で、経済成長の見通しはまた怪しくなっています。

2ページをご覧ください。財政状況についてであります。

財政状況ですが、このリーマン・ショックに対応するために財政出動をした結果として、2009年に大きく財政収支が悪化しています。しかしながら、直後に歳出削減のための施策を講じまして、2014年には、連邦政府レベルでありますが、均衡予算を達成していますし、州レベル、それから連邦を合わせても、まだ赤字ではありますが、改善傾向を示しています。

3ページをご覧ください。財政を運営するルールでありますが、これについては大きく3つあります。1つは、2015年までに黒字化する。2021年までに債務残高の対GDP比を25%まで縮減する。そして2015年には「財政収支均衡法」というものを制定しました。しかしながら、昨年の11月にトルドー新政権が誕生しているのですが、比較的財政出動型の政権でありまして、この均衡法も廃止すると述べております。

そして、財政健全化に関しては、カナダは各国のモデルになるほどの国でありまして、財務省を訪ねたときにも、各国がよくヒアリングに来るのでというようなことをおっしゃっていたんですが、その内容について説明をしたいと思います。

4ページをご覧いただくと、これは財政収支の対GDP比を時系列で並べたものですが、大きく山が2つあることが分かります。93年から97年、そして2009年から2014年であります。

次のページをご覧ください。

5ページでありますが、ここでどのような取組をしたかですが、93年のクレティエン自由党は、増税をせずに歳出削減によって均衡化を実現するということを掲げました。そして、その手段として導入したのがプログラム・レビューで、これは今、日本の政府が行っている行政事業レビュー、あるいは事業仕分けのモデルになっているものであります。そして、4年間で黒字化を実現しました。

そして、リーマン・ショック後に、もう一回、財政赤字に見舞われるわけですが、ここでも、このモデル、プログラム・レビューを深化した形で歳出削減を行いました。1つ加えたものとして、Strategic and Operating Reviewというものがあるのですが、これは事業費だけではなく、いわゆる各府省の経常経費も削減するということで切り込んでいきました。

なぜ、このようなことが可能になっているかということですが、先ほどのアイルランドやイギリスと同じで、やはり政治が非常にコミットしており、それを支えていたのが国民の意識であるということです。90年代に国債の格付が大きく下がりまして、そしてウォール・ストリート・ジャーナルに、カナダは途上国並みだという批判をされたことで、国民の危機意識が非常に高まりまして、やはり財政健全化をしなければいけないというコンセンサスが、ここでつくられたと言われています。

具体的に、どのようなことをやっているのかということで、一例を紹介したいのですが、7ページの一番下の段を見ていただければと思います。

涙ぐましいと言いますか、運用経費については、5%もしくは10%の削減目標値をまず掲げます。そこで委員会がありまして、これは閣僚から構成されている委員会ですが、そこで目標値を定めて、大まかな大筋をつくった上で、あとは閣僚が各府省に持ち帰って、責任をとって削減をするということになっています。その中で、例えば、1セント硬貨のコストをダウンする、質を少し下げてダウンする、あるいは在外公館を売却してしまう、あるいは職員の数を削減するなどの、かなり細かな具体のところまで切り込んで削減を行っているということです。

若干、社会保障についても言及をしておきたいと思います。

社会保障に関しても、いろいろと切り込みをしていますが、具体的には、年金支給開始年齢を65歳から67歳に引き上げる、あるいは州政府に対する医療費の交付金にCapを引くことを予定しています。

ただし、実はこの引上げに関しては、新政権においては引上げをやめるというような発言も出ておりますので、若干、雲行きが怪しくなっているように思われます。

最後、9ページをご覧いただきたいのですが、今後の経済・財政に関する見通しと当面の財政課題であります。

ここでは、原油価格の下落を受けて、経済成長の低下あるいは減少が見られます。これに加え、トルドー新政権は、比較的ばらまき政権と言われていますし、いろいろな健全化に係る制度も廃止するというようなことを言っておりますので、そのときの理由として、この下の段を見ていただきたいのですが、要は、ほかの先進諸国と比べると、純債務残高対GDP比が、まだカナダは優良である。だから、まだいけていると、そのような説明をされているのですが、やはり中長期で見れば、経済成長と財政健全化をどのように両立するのかということが課題になるだろうと思われます。

少しポイントだけかいつまんで申し上げますが、特にポイントとしては、スペンディング・レビューの歳出削減の工夫だろうと思います。そのときの成功要因としては、1つは政治のレベルの高いエンゲージであり、2つ目に、それを支える国民の認識、意識の高さであり、それから、各府省がきちんと削減目標を設けて、体系立てて削減しているということであり、そして、それをフォローアップしているということだろうと思われます。

以上、ほかにもありますが、時間になりましたので、ここで終わらせていただきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明のあった2つの海外調査、4名の委員の皆様方からのご説明に対し、どなたからでもご質問、ご意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。おおむね30分程度、全体で予定しております。

では、岡本委員、老川委員、加藤委員の順でお願いいたします。岡本委員。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

竹中委員と田中委員に伺いたいのですが、ここでいろいろな議論をすると、大体、国民の理解促進や、啓蒙するのが大変だということになり、新聞で、もっと分かりやすい説明を、といった話が非常に多いです。今、竹中委員のお話を伺いましたら、海外では、政治のほうが緩んだら、国民がそれについて怒るという話がありました。これはなぜかと言うと、その背景が、各国が経済危機を経験した、あるいは高齢化が日本に比べて進んでいないといった理由があるからだろうかということを言っていましたが、そうなると、日本では、まだその危機は味わっておらず、また、人口構成が全然違うとなれば、啓蒙といいますか、これらの国のように国民自体の意識レベルが高いということに、なかなかなりづらいのかなと。そんな中で、示唆深い話があればというのが1つと、それから、田中委員のケースでは、アメリカの非営利組織のところです。80年以上の歴史があったということですが、なぜそのような歴史があったのかということと、このような組織があると、そんなに国民は言うことを聞くのかということ、それから、日本とアメリカとは違いますし、80年の歴史がある非営利組織もないと思いますが、いずれにしても、我々国民が、もっともっと、国の財政について理解しようとすることが、どのような形でできるのか、今回のこの出張の中、こういうのがあるのではないかというものが、もしもあったら、教えてもらいたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、ご質問だと思いますが、適宜お答えいただければと。

〔 竹中委員 〕 まさに、今おっしゃったとおり、危機を共有できたかどうか、また、危機を乗り越えた誇りを共有できるかどうかというのが共通していて、とりわけV字回復したアイルランドには強く感じました。

ただ、日本の場合は危機意識の持ち方のレベルが相当違う、戦後焼け野原のときから復興してきたあの共通認識は、残念ながら今の日本にはないと思います。そういった財政に対する危機意識を持てるようにする重要なツールの1つが、先ほど田中さんのご報告の中にもあった財政教育だと思います。私も恥ずかしながら、自分の娘が重度のチャレンジドで入院するようになり、税で助けていただいていると感じたときから初めて意識するようになったのですが、社会が税によって、みんなの支え合いの上で成り立っているということの重要性を教育で教えていくことを、より推進していくべきではないかと思いました。

また、やはり選挙の前は財政規律が緩むというのは、どこの方も言われたことですが、それを止めるのも、国民の危機意識と、その危機意識を持った人たちの行動しかないのでというのは、やはり非常に示唆に富んでいたと思いました。

〔 吉川分科会長 〕 では、田中委員でしょうか。

〔 田中委員 〕 分かりました。

アメリカは、なぜこういうものがあるのかということに関しては、アメリカに行く前にトクヴィルの本を読んだりして、いろいろと考えていましたが、やはり小さな政府で、元々は自分で自分のことを守るという自立心というのが非常に強い国である。だから、自分が払った税金がどうなっているのか、ちゃんと監視してやるぞというマインドがもともと強いところがあるんだろうと思います。あまりいい説明になっていないかもしれませんが、そこが1つ大きいと思います。

じゃあ、日本はどうしたらいいのかといえば、やはりお上意識が強く、非常に依存的であった戦後の数十年が続いてきたわけで、ここでどうやってブレークスルーするかというところだろうと思います。

確かに、危機意識をすぐ持てないというところは、竹中委員がおっしゃられたように、やはり知らないというところが大きいと思います。ですから、今、財務省でも若い方々が学校をめぐって財政教育を始めていますが、まず教育をする。そこから気づきを起こしていく。気づきを起こした方たちには、必ずアクションを取りたいと思っている人たちがいますから、そういう活動ができるようにサポートしていくというのは、金銭面でも人材面でもあると思います。

やはり上から教育するということもありますが、そこから芽生えたボトムアップを、どう支えていくかによって、層を厚くしていくというのは時間がかかりますが、必要なことではないかと思います。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、老川委員、お願いいたします。

〔 老川委員 〕 非常に貴重な研究結果を教えていただきまして、大変勉強になりました。

今の岡本委員の問題意識とかなり似ているのですが、主として佐藤委員にお尋ねしたいと思います。

特にアイルランドの場合ですね。社会福祉関係の歳出削減にかなり成功しているわけですが、日本の場合ですと、少し福祉の予算を削ると言うと、弱者いじめだとか、そのような批判がごうごうとなって、結局、中途半端なものに常に終わっていると、このような経験がありますが、アイルランドの場合は、そういったことは起きてなかったのかなと思うんですが、そこら辺どうなのかというのが1つ。

それから、もう1つ、イギリスの場合、消費税を17%から20%に上げたと、そのことは分かったのですが、それに伴って、消費の減少などは現実には起きていなかったんだろうと思いますが、日本の場合は、この間の8%の段階で、えらい駆け込み需要、それから反動減がありました。したがって、今度10%に上げるときも、こんなことやったら大変だぞと、このような議論になっているわけです。そこで、消費税の引上げと消費との関係ですね。ここら辺について、何かご意見がありましたら教えていただきたいと思います。

以上です。

〔 佐藤委員 〕 今のご質問は、資料1−3でいきますと8ページ、参考資料1−2でいきますと6ページの部分だと思いますが、イギリスにも共通のことなのですが、アイルランドもイギリスも、高齢化はまだしていない。もちろん、これから高齢化するという問題意識は持っていますが、この段階では、まだだということです。したがって、彼らの言うところの主な社会福祉は、失業率が高いが故の、いわゆる現役世代に対する失業手当、失業給付系になります。

例えばイギリスでも有名なのは、ワーキング・タックス・クレジットです。今はユニバーサル・クレジットになりましたが、どちらかというと就労促進型のほうにシステムを変えようとしているわけです。メーク・ワーク・ペイというのは言われて久しいですが、これが重要でありまして、つまり、もともとそのような福祉に依存している現役世代をいかに就労の場に返していくかということを行います。結果として、成長にも資するし、歳出削減にも資するという、このようなウィンウィン関係を構築することが、高齢化していない国の社会福祉の切り方だと思います。ここは、やはり日本とは違うと思います。日本の場合は、社会保障給付はイコール年金であり、医療であり、介護、全部高齢者向けとなっているためです。

もちろん国民の反発がなかったわけではないと思いますが、やはり日本に比べれば、彼らの持っているハードルは若干低かったのかもしれないという感想は持っております。

それから、2番目の消費税の話についてお答えします。

イギリスの場合もそうですし、ドイツは結構有名なケースになりましたが、消費税を上げたときに、同率で、物価、CPIが上がっているかというと、ほかの国ではそのようなことはありません。前倒しで価格を上げる、あるいは価格を上げるのを少々遅らせるというのが、諸外国では当然です。消費税率引上げ後に、ぴったりレシート内の値段が上がるというの日本だけです。これは日本が価格転嫁をきちっとやろうという、ある種の律儀な国だからだというのもありますが、海外では、むしろ消費税、少し専門用語を使って、BtoBではなくてBtoCの場合ですが、消費税はコストの一部なので、それをどのような形で、税込み価格の中に反映させるかというのは、それぞれの業者の判断です。だから早く上げるところもあれば、後で上げるところもある。別にやってはいけない話ではなくて、もちろん税金は税金で、ちゃんと納税しなさいというのはありますが、意外と上げるタイミングは事業者間でならされるので、日本みたいに、4月1日になったら、一気に上がったということはありません。したがって、その分だけ反動減はある程度抑えられるということになります。

消費が増えれば普通は価格が上がるので、その部分も含めて全体として見れば、インフレーション・スムージングが起きるというのが諸外国の場合です。日本の場合、これが起きなかったケースということだと思います。そこが日本の場合、大きな反動減をもたらしたのだと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。

加藤委員ですね。

〔 加藤委員 〕 ありがとうございます。

手短に、2つほどお伺いしたいのですが、佐藤委員に、まず1つお伺いしたいのが、イギリスの説明の中で、財政責任庁の話が出たのですが、例えば、将来に対する危機感、あるいは我々がどのようにして決定していかなければいけないかというときに、やはり教育の問題と情報の問題が大事だと思いますが、そのときに、中立的な形で、このような将来の財政の状況や将来の予測を出すということが非常に重要だと思いますが、それに対して財政責任庁が重要な役割ということだったので、それについてお伺いしたいのが1点。それから末澤委員のほうで、IMFの話の中で、エスケープクローズの話がありましたが、これは非常に、どこの国とは言えないですが、政治的にどんどん利用されてしまうのではないかというような気がしてしようがないのですが、ここら辺について、何かご感想があれば、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

〔 吉川分科会長 〕 では、それぞれお願いいたします。

〔 佐藤委員 〕 今、財政責任庁の話がありました。こうした組織はイギリス固有ではなく、アイルランドにも似たような、Irish Fiscal Advisory Councilというのがありますし、あと有名なのはオランダの制度です。オランダにも、そのような独立した推計機関、予測機関があるわけで、EUに行ったときにいろいろと伺ったのですが、これがある種、ヨーロッパの中でのトレンドになり始めているということで、イギリス特有ではないということが1つ目です。

おもしろいと思ったのは、やはり予測に徹していることです。やはり、我々学者も思わず政策提言したくなりますし、これはだめとか、この予算だめとか言いたくなりますが、そのようなこともせず、純粋に予測だけするということです。だからこそイギリスの場合は、おそらく政治的にも、財務省から切り離されたのだと思います。あくまでも予測機関として位置付けられ、客観性を担保するために設立されたということです。だからこそ客観性の担保だったということです。

ただ、予測は当たるものではないので、民間機関のヒアリングでは、財政責任庁の予測も外れることがあると伺いました。ただ、今持っている知見を最大限活かして、予測をしているというところに、皆、信頼を置いているのかなと思いました。

〔 末澤委員 〕 私もおっしゃるとおりだと思います。やはり例外条項をつくると、ここではブラジルの例の説明がありましたが、じゃあ、ブラジルが本当にうまくいっているかという問題もあります。

ただ、やはり今回思ったのは、あんまりシンプル・イズ・ベストではなくて、やはりその状況に応じて、きめ細かく、積み上げ方式できっちり見ていくことで、よりベストな方策を探ると、こういうことですね。ですから、例外は常に認められるのではなくて、何らかのきちっとした根拠があるのであれば、一時的に例外を認めるが、これが、むしろ、その後、景気状況、経済状況が改善すれば、むしろ、それはストップして、よりこの財政再建を進めていくと。より極めて現実的な、プラグマチックな方策を最近IMFは志向しているという印象を受けました。

〔 吉川分科会長 〕 では、続いて、井堀委員、土居委員、小林委員でよろしいですね。井堀委員。

〔 井堀委員 〕 財政健全化と、それから景気の関係についてお伺いしたい。特にイギリスとIMFについて、最近の世界経済に関して、どのような判断をされているのかということを伺いたい。

つまり、5月にサミットが予定されているので、日本が主導で財政出動しなければいけないような雰囲気も少し出てきました。景気が悪いときには財政出動しなければいけないが、景気がいいときには、ちゃんと財政再建しなければいけないという、そのようなロジックはいいと思います。問題は、現在の判断として、特にヨーロッパ、あるいはIMF等で、現状の世界経済が、リーマン・ショック級の大きな景気後退で財政出動をしなければいけないような状況にあるのかという、そのような認識については、どういうことをお考えなのか、お伺いしたいのです。

〔 吉川分科会長 〕 では、お願いします。まず、IMFですね。

〔 末澤委員 〕 世界経済の動向について、今回具体的に議論したことはないですが、米国の状況についてはIMFの米国チームとの間で議論しまして、ここでは、先ほど申しましたように、実は今、IMFの直近の1月の米国の今年の経済成長率見通しは2.6%ですね。ただ、そのときの印象だと、もう来週、4月12日に改定されますが、0.2%ポイント程度は下げるのかなという個人的な心象を受けまして、やや慎重に見ていると。ただし、これは2.6%が2.4%のレベルであれば、成長率が低いということでもないと。少なくともリーマン・ショックのような状況ではないので、やや慎重には見ているが、世界経済の回復基調は、まだ大きく崩れてはいないということではないかと思います。

財政出動については、特にアメリカの場合は財政出動をするという状況には、政治的な合意がされないですね。実は、補正予算についてどうかということを、前回、確か私がお伺いする前にご質問いただいたのですが、アメリカでは、今、2016会計年度というのが進行しております。今年の9月までです。2016年に統合歳出法が通りましたが、その前に3回、実は暫定予算を組んでいますが、これは日本でいう補正予算とは全く違って、単に延長すると。ガバメント・シャットダウンを避けるために3回行っただけで、最終的にできた統合歳出法は、歳出のCapを若干緩めてはいますが、基本的に、その線に沿ったものであり、ただ一部、このバーターがあって、その予算を通す。あとオバマ大統領が主張している再生可能エネルギー等に一部予算を組む代わりに、共和党が主張しているアメリカの原油輸出を1975年以来40年ぶりの再開を認めるという条項がセットされるというようなものでございます。ですから、財政出動をしてやるというような状況には、少なくともアメリカは、あんまり自国においてはないということだと思います。

〔 吉川分科会長 〕 佐藤委員、よろしいでしょうか。

〔 佐藤委員 〕 イギリスの民間シンクタンクで、今後数年のイギリス経済の見通しについて伺っていたのですが、大体2015年で成長率が2.2%と予測していました。2016年もその程度の成長であり、2017年も2.7%くらいだろうということで、案外楽観的です。私たちも楽観的ではないかと思いましたが、楽観的な見通しはある程度あるということになります。

英国の株式市場は、中国、日本ほど大きく落ち込んでいるわけでもないので、イギリス経済自体は、健全であるというのが、彼らの見通しです。

ただし、今、イギリスでの話題はイギリスのEU離脱でありまして、6月に国民投票があります。ここに来て、少し離脱する可能性も高くなってきましたので、これが不安要因ではないかと伺いました。

ただ、イギリスのエコノミストの中には、このEU離脱を強く支持するグループもおり、これは逆にEUの規制から逃れることができるので、むしろプラスだと言う人もいて、意外と評価は拮抗しているということがあります。ただ、いずれにせよEU離脱というのが、彼らの大きなリスクであるということに変わりはありません。

また、ロンドンは今、非常に住宅価格が上がっています。バブルではなく、典型的な住宅不足です。これをどうしようかというところで、かなり頭を悩ませているという話をあらゆるところで聞きました。

〔 吉川分科会長 〕 はい。では、土居委員。

〔 土居委員 〕 1つコメントと、1つ質問させていただきたいと思います。

ご出張、大変お疲れさまでした。

4カ国のご報告を伺っていると、やはり1つ日本と決定的に違うのは党派性だと思います。つまり、イギリスは保守党ですし、カナダの例で政権交代があったという話で、財政をもう少し拡張しようと言っているのは、あれは自由党だからという、まさに財政に対するスタンスが、割と党派性がはっきりしていて、より負担を小さくしながら歳出も抑制するというタイプのコンサバティブな政党と、負担が増えてもいいが財政出動を拡大させたいというタイプのリベラルな政党。そのような政府があって、それぞれの政党が政権交代しながら競い合っているということが、このようなご報告の中にも反映されているのかなというのが1つコメントです。

それで、質問ですが、IMFでのご報告のところで、「健全化“疲れ”」という話をおっしゃったわけです。これは党派性の話と関係しますが、じゃあ、どこにその「健全化“疲れ”」している国があるのかというところですね。もしIMFの取材の中で、何かお気づきになったことや、IMFの方がおっしゃった言及があったら教えていただきたいと。

イギリスは、もう5年も健全化、かなり緊縮財政と言っていい状況で、キャメロン政権ですが、実質的にはオズボーン財務大臣が主導的で、次、総理大臣狙っているわけですよね。それでいて、ついこの間も、ダンカン大臣が辞めたわけです。彼は福祉予算をカットし過ぎるということで、保守党の仲間ですが、政権から離脱したわけですね。だから、そういうせめぎ合いもイギリスにはあるが、でも、やはりオズボーンは、絶対これは財政健全化の目標を達成するんだと、こう言っていて、サミットで本当に財政出動にイギリスが応じるのかなと私は思いますが、そういう、長年、財政健全化路線をずっとやり続けている政権もある。だけども、確かに我が国を見ていると、「健全化“疲れ”」のような言葉が当てはまりそうな、何かコミットメントが弱いとか、行きつ戻りつというようなことが繰り返されているような国もあるということがあったりするので、それをどのようにIMFの方が捉えられているのかなというのを、お聞かせいただければと思います。

〔 吉川分科会長 〕 そもそもFatigueというのは、口でだけ言ってて、先送りやいわばちゃんとやらない期間が長期化するとうまくいかないという意味でのFatigueということでしょう。

〔 末澤委員 〕 まあ、そうですね。

〔 末澤委員 〕 この議論の中では、具体的な国の名前は出ておりません。特に論文のほうも確認しましたが、論文にも特には出てないです。

ただ、要は、いつまでたってもやらない期間が長くやると、やはりお互い、案外いい加減になるし、そういう意味では、早くですね。要は、経済がいいときにドーンとやって、悪くなったときには、またカウンター・シクリカルと言いますか、景気の自動調整機能プラス、場合によっては財政出動等をやって景気を持ち直す。よくなったら、すぐ財政再建をすると、こういうことを意味しているんだろうと思います。

〔 吉川分科会長 〕 うん。いずれにしても厳しい財政再建が長続きし過ぎてFatigueがおきるという意味ではないですよね。言葉としては、若干紛らわしいところはありますが、口でだけ言っていて、ちゃんとやらないで、この健全化への道のりが長くなり過ぎる。先送りの場合は明らかですが、実行しないと。そういうことによるFatigue。短期決戦でいけという感じですよね、分かりやすく言えば。

〔 末澤委員 〕 おっしゃるとおりだと思います。

〔 吉川分科会長 〕 はい。

小林委員。

〔 小林委員 〕 実は今のところとほぼ似たようなことではあったのですが、ですから、質問という形式をやめて、意見に変えさせていただきます。

今の健全化、短期決戦ということでいうと、例えば、日本のように、これだけ額も大きい、毎年毎年、いつまでも厳しいということになってくると、短期決戦というのは、ちょっと絵に描いた餅に近いのかなと。そうなってくると、長期戦を覚悟しなければならない。そうすると、そこで先送りも当然あるだろうし、そのときそのときの景気状況でのメリハリのつけ方も出てくるだろう。まさに短期決戦ができる国はいい。でも、日本の場合は短期決戦とは言えない。だから、かなり刻みながら、このときまでは、ここまでやりましょう、これをやりましょうというのを言っているわけですが、ただ、その一方で、どうも日本の場合ですと、常に財政が危ない、危機だ、健全化だと言われることで、国民の方が「赤字慣れ」してきているような感じがあって、その空気を政治のほうも何となくくみ取って、そのような議論に陥りがちであるというような感じがしますので、このIMFの話、日本は果たしてどこまでそのまま適用していいのかなという気が正直いたしました。と同時に、税財政に対する教育という、国民に対する直接の教育を本当に進めていかないと、「赤字慣れ」のようなものが深刻化していくと、多分、日本はだめなんだろうなという危機感を強めました。

〔 吉川分科会長 〕 今、何人かの委員の方のおっしゃったIMFの主張に関するご意見ですかね。それとの関連でいうと、もう一方では、ご報告にもありましたが、IMFは経済が本当に厳しいときには、無理やりに財政再建を進めるべきでは必ずしもないということも言っているということを踏まえて、結局、今の日本の、たった今の現在の日本の財政運営との関係でいうと、井堀委員がご質問になったと思いますが、要するに、今の日本経済、あるいは世界経済の実情が、本当によく言われるリーマン・ショック後のような厳しい危機的状況と認識すべきなのかどうか。したがって、あまり無理な財政再建を強行すべきではないのか、あるいは、これもIMFははっきり言っているわけですが、ほかの国も、経済がそこそこのときには、やはり財政再建をきちんと進めるべきだということをいずれのところも言っているわけで、したがって、日本経済、世界経済の実情をどのように見るのかというのが井堀委員のご質問だったと思いますが、ご質問の背景には、そういうことがあったのだろうと私も解釈していますが、そこがやはり問題になるのかなと思います。ほかにいかがでしょうか。

では、富田委員。

〔 富田委員 〕 ご出張、どうもお疲れさまでした。

ご発表の中で、アメリカの財政運営を規律するルール、かつてOBRAと言われた、CapとPay-As-You-Goですが、これがアメリカの場合は極めて有効に働き得る。人口も増えて、経済成長率も高い。このルールを守っておれば、もちろん100年に1度のリーマン・ショックのときは例外で、これが外れていたわけですが。これでうまくいくのですが、翻って我が国を見ると、これではなかなかうまくいかなくて、だからこそ目標年度を決めて、現在ですとまずはプライマリーバランスの黒字化をやっていかないと、Pay-As-You-GoとCapだけではなかなかうまくいかないということを、まず我々、基本的に認識すべきだと思います。

それで、IMFでお話を聞かれたときに、そういう日本の特殊性について、どう考えるかなどをお聞きになられたかどうか。また、お答えはどうであったかということに関心あるのですが、いかがでしょうか。

〔 末澤委員 〕 一応、日本チームともヒアリングしまして、彼らの日本の経済の認識や今後の処方箋についてというような表明もありましたが、基本的には、やはり一番の問題は少子・高齢化の問題と。そこで、労働供給不足や需要不足が起きるので、いわゆる処方箋としては、女性の活躍など、割とそのような労働規制関連のところが多かった印象を受けました。ですから、何かすごい魔法の杖を提示されたという印象はなくて、そんなの分かっていますよという感じもありましたが、やはり人口動態の問題ですね。これはおそらくIMFに限らず、私もいろいろな海外の投資家と話しても、どこの国の人もやはり一番そこを突いてこられるわけですけど、そこに対する長期的な対策を出してこないと、なかなか海外からの長期的な信任というのは得にくいのかなという、これは私の個人的な印象でございますが、受けました。

〔 田中委員 〕 日本チームに対して、歳出減、債務削減のために何が必要かという質問をしたのですが、やはり社会保障系ですね。社会保障をもう少し切り込むべきだという意見をいただいていますし、やはり日本は、ヘルスケアが無償であるという考えが蔓延し過ぎているのではないかという指摘も受けております。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 それでは、角委員、大宮委員。

〔 角委員 〕 ありがとうございます。

私も報告をお聞きしていて、経済が少し下降局面、もしくは悪いときは財政再建の手を少し緩めるというご発言が多々あったので、それが今の状況にかぶってくるところもあったなという感じで聞いていたのですが、少なくとも、確かに個人消費は弱含みですし、企業の設備投資も弱い部分はあります。しかし、雇用を見ると、これほど失業率が低くて、ほぼ完全雇用で、そして有効求人倍率が高いという中で、今の日本経済が何かやはりそれ相応の手を打てば、消費税を10%にしていく中で、十分腰折れしない対策が十分打てると思うので、ぜひとも、それはお願いしたいということと、やはり諸外国と決定的な違いは超高齢化で、社会保障と税の一体改革は待ったなしだという、この点で全然状況が違うわけですから、そこはしっかりと押さえていくべきかなと思いました。

〔 吉川分科会長 〕 はい。それでは、大宮委員、それで板垣委員ですね。

〔 大宮委員 〕 ありがとうございます。

少し勉強不足ですので、非常に単純な質問ですが、国と地方を含めた公共サービスがありますよね。それは各国多分、カバーしている範囲が違うのではないかという気がしますが、例えば、日本としては非常にサービスが手厚い。例えば、人口が老齢化しているということで、そちら側へのサービスが多分多くなっているというのはあると思いますが、そういうところは施策と何かとるべき対策が違ってくるという印象を持ったかどうかということを、ちょっと知りたいんですけど。

〔 吉川分科会長 〕 これは佐藤委員から。

〔 佐藤委員 〕 まず、国と地方の関係で1つ言いますと、国はやはり交付税など財政移転という形で、地方の保護者的な位置付けになります。先ほどカナダの話がありましたが、90年代のカナダが何をしたかというと、連邦が州に対する補助金切っているんです。なぜか自活を求めているという面があります。国と地方の関係は全く国によって違うので、自立性の高い地方自治体を抱えている国では、やはり切るという形で行います。

あと医療についてです。先ほどから何回か出てきますが、医療の範囲が全く違います。イギリスなどは、医療の範囲が意外と狭いです。公的な医療を受けたくないのであれば、私的な治療を個人で受けてくださいという考え方です。薬についても同様です。ですから範囲がかなり違います。だからこそ、日本の場合、医療費の抑制は、かなりチャレンジングだと思います。それは海外とも事情は違うかと思います。

〔 吉川分科会長 〕 はい。

末澤委員。

〔 末澤委員 〕 やはり今、お話がありましたが、私どもが今お伺いしたのは米国とカナダで、どちらも連邦国家なんですね。つまり連邦と州で、もう完全に切り分けていますから、例えば、消費税。日本では消費税が、今、問題としてありますが、アメリカは基本的に消費税は国の収入ではありません。カナダは両方ありまして、2本立てになっています。ですから、そこがまた違います。その点、歳出の範囲も、例えば、医療でも、メディケアはお年寄りしかやっていません。例えば、年金、OASDIでも、基本的に働き手にしか対応してないと。だから日本のように、ある面、国民皆保険、皆年金という仕組みとは、まず基本的に構図が違って、それを全部やるかどうかは、今度は州レベルの問題になってくるということだと。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。

では、前半の最後、板垣委員から、簡潔にお願いできればと思います。

〔 板垣委員 〕 調査、大変お疲れさまでした。

アメリカの報告を見て、ふと思ったのは、90年代の財政調整法でPay-As-You-GoとCap制度ができた、その直後に、私、4年間ほどワシントンにいたのですが、そのときの雰囲気を言うと、極めて効率的な財政を目指すという意識が非常に強かった。とりわけ共和党が非常に厳しいスタンスを常にとっていて、今もとっているわけで、日本にはそういう政党間の対立軸がむしろ希薄になっているだろうという気がするんですね。

ただ、その中で、今、アメリカがこの90年代につくった1つの基本原則を保ち得ているのかどうか、実感として、どのような印象を持たれたかということをお聞きしたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 はい。では、末澤さん、お願いいたします。

〔 末澤委員 〕 今日、ご説明した中では、基本的にアメリカの財政収支がなぜ改善しているかというと、与野党は対立しているが、基本的には、彼らはいずれも財政再建の計画は出しています。ただ、その再建の計画の方策が全く違うと。民主党は基本的に増税ですよと。共和党は歳出削減。だから、結果的には、その部分を出して、両方足して2で割らないんですね。要は、最低限のところしかやらないということで、結果的に、それで強制歳出削減が続いてしまっていると。ですから、歳出削減が、与野党の対立によって、より長期化しているんですね。そこが日本とは全く違う環境だと。

ただし、じゃあ、今後続くかというと、これは分かりません。なぜかというと、今、サンダースさん、またトランプさんの人気というのは、逆に中低所得者層の不平不満の表れですから、結果的に、そういう従来の対策に対しては、本当に米国民が納得しているかどうかは分かりません。ティーパーティーは、基本的に小さな政府は求めていますが、ただ、サンダースさんやトランプさん、割と、あのお二人は2人とも「サンダース・ケア」、「トランプ・ケア」というのを入れようとしているんですね。「オバマ・ケア」をやめてですね。また、例えば、公立学校の無償化策や低所得者層の無税化というのをサンダースさんやトランプさんは主張していますから、その人気とで、やや今混乱があるという感じはしました。

〔 田中委員 〕 どのような印象だったかということですが、実はやはり、このレポートを書くときにも悩んだところで、そんなにきれいには進んでいない。資料2−2の4ページを見ていただいても、かなりねじれているんですね。ですから、実は財政健全化、数字上は進んでいますが、決められなかったゆえに強制削減が発動されている、あるいは、やはりオバマ政権の7年間においては、予算が12本ありますが、本来は一本一本通さなければいけないところ、オムニバスで一遍に通していて、それができていないということですから、必ずしも90年代のときとは印象が違うのではないかなと思います。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

では、後半の議題もありますので、前半の議論はここまでとさせていただいて、3時間コースですので、10分休みをとりたいと思います3時55分からスタートということで、お願いいたします。

午後3時43分休憩

午後3時53分再開

〔 吉川分科会長 〕 では、後半の議題に移らせていただきます。

「経済・財政再生計画」の着実な実施に向け、本日は社会資本整備、文教・科学技術及び地方財政について、それぞれ彦谷主計官、奥主計官、阿久澤主計官よりご説明をお願いいたします。

まず、社会資本整備について、彦谷主計官より説明をお願いいたします。おおむね10分程度ということで、よろしくお願いします。

〔 彦谷主計官 〕 公共事業担当主計官の彦谷でございます。資料3に基づいてご説明させていただきます。

まず、1ページをおめくりいただきますと、左側、目次でございます。今日、4つの論点について、ご説明させていただきたいと思っております。

上の2つは、現在、経済財政諮問会議で議論されております歳出改革のための取組である改革工程表に関係する論点でございます。下の2つは、その他の公共事業関係の更なる歳出改革に向けての論点でございます。

おめくりいただきまして、3ページ、4ページでございます。こちらは経済財政諮問会議で昨年の12月に取りまとめられました改革工程表からの抜粋でございます。

3ページ目にお示ししておりますのは、公共施設関係の集約、活性化についての改革の取組、また、適切にそれらを維持管理、更新していくための総合管理計画を各自治体がつくることを支援するための取組でございます。

4ページ目にお示ししておりますのは、公共投資の制約要因になりかねない課題としてこれまで指摘されております担い手確保、それから生産性の向上に係る取組についての改革工程表でございます。

5ページ目以降、まず計画的なメンテナンス、それから公共施設の集約についての話でございます。

6ページ目には、昨年秋の財審で、取りまとめていただきました建議の関連の部分をお示ししております。

7ページ、ご覧いただきたいと思います。地方公共団体の抱えております公共施設が多数ございますが、それらについて適切に維持管理し、更新していくという観点から、各地方自治体が総合管理計画をつくるということが定められております。ただ、左側にお示ししてありますように、現時点において策定済みの自治体は都道府県において30%程度、市町村に至りますと5%程度ということで、いまだ策定途上のところが多い状況でございます。

また、右側見ていただきますと、「立地適正化計画」の作成についてでございます。今後、多数ある公共施設が老朽化してくる中で、「立地適正化計画」にて、コンパクトシティという観点からの集約を進めていくということが必要になろうかと思います。そのような意味で、各自治体に、コンパクトシティという観点からの計画の策定を促していくことが必要かと考えております。

8ページ目にお示ししておりますのは、この関係での改革工程表を実施していく上での留意点ということでございます。

今申し上げましたように、各自治体が総合管理計画をつくることになっておりますが、やはり計画を策定するだけではあまり意味がない。やはり中身のある、実効性のある計画であることが必要でございます。そのような観点から、やはりその計画を一般の人が見て、もしくはその専門の人が見て、ちゃんとした計画であるのか、他の自治体との比較も踏まえて公表を促していくということが必要かと考えております。現在、総務省においても、このような観点から公表する指標の在り方などを検討しているところでございます。

8ページ、右側にお示ししておりますのは、兵庫県伊丹市の例でございますが、人口1人当たりの施設の延べ床面積といったものを比較する試みなどをされているところであり、こういった点も参考になるのではないかと考えております。

おめくりいただいて、9ページでございます。

公共施設につきましては、今後、維持・更新が非常に大きな課題となってまいりますが、それを人的な面でもサポートしていくことが必要かと考えております。特に市町村等においては、近年の行政改革の取組の中で、土木部門の職員数が減少しているということもあります。また、このような職員の減少は、新規採用の抑制という形で行われている場合が多くございます。その観点からも、若手の土木職員が非常に少なくなっているという自治体も多いと聞いております。その中で、マニュアルの策定、それからまた研修による技術的支援など、国としても積極的に地方の職員を支援していく取組が必要ではないかと考えております。

それとも関連しますが、10ページ以降、建設業の公共事業に関係します担い手の確保と生産性の向上についてお示ししております。

11ページ、ご覧いただきたいと思います。

左の上の表でございます。こちらを見ていただきますと、建設業における技能労働者の数が書いてございますが、65歳以上が42万人、60歳から64歳の方も35万人とございます。その一方で、25歳から29歳の方が19万人、20歳から24歳の方が13万人ということで、建設業は、これから5年、10年とたちますと、高齢の方が離職される中で、入職がそれほど多くないという、これは日本経済全体の問題でもございますが、長らく3Kとも言われておりました職場でございます。比較的新しい、若い方が入ってくるのがなかなか難しいという状況にございます。

おめくりいただきまして、13ページ、ご覧いただきたいと思います。

改革工程表についての留意点でございますが、1つは、左側の図にお示ししておりますように、こちらは公共事業の関係での労務単価の平均でございます。近年、かなり上昇しております。平成24年度から平成25年度につきましては、当時、入札の不調等の問題がございました。そのような観点から、単価の算出方法の見直しということで労務単価の引上げが行われましたが、その後は労務単価の実勢に応じまして単価の引上げを行っております。昨年も、やはり7%程度の引上げということで、単価が若干高くなってきております。

その背景にありますのは、その右側にあります日銀短観の「雇用人員判断DI」の推移でございますが、これは労働力が不足していると答えている企業が、全産業を示す青に比べて、建設業を示す赤のほうが、近年、非常に多い状況になっておりまして、建設業においては、足下では若干緩和しているとはいえ、かなり人手不足が続いている状況でございます。

14ページにお示ししておりますのは、左側の図でございますが、労働生産性の推移でございます。青い線が産業全体の平均でございます。労働生産性、若干向上しており、右肩上がりになっておりますが、それに対して建設業は比較的フラットで、労働生産性の向上があまり見られないという状況がございます。やはり建設業の場合は、どうしても下請、中小企業が多いという状況もありますし、労働集約的な産業であるということからも、機械化・合理化があまり図られてきてないということも、この背景にあると思います。今後、人手不足が続く中で、公共施設の維持管理・更新を適切に行っていくためには、生産性の向上というのがより大きな課題になってくるのではないかと考えております。

15ページ以降、新たな歳出改革ということで、1点目は社会資本整備総合交付金等の見直しについてでございます。公共事業関係の予算全体は、国費で今6兆円ほどございますが、そのうちの2兆円は地方向けの補助金を交付金という形で出しているところでございます。地方向けの交付金につきましては、地方が自由に使えるというメリットがある一方で、その使い方について、国のほうから、このような形で使ってくれと言いづらい構造になっているものですから、若干の問題点が出ているのではないかということで、昨年の秋に、16ページにございますように建議の中で問題点のご指摘をいただきました。

17ページでございますが、このような建議のご指摘を踏まえまして、国土交通省におきまして、平成28年度予算の執行から順次運用の見直しをするということをしております。1つは、未契約の繰越・不用というものが自治体間でかなりばらつきがあったことに対しまして、把握・公表していくということ。それから、整備計画も目標も自治体によってかなり中身の違うものがあったということから、基本的にアウトカム目標を定めていただきたいという、望ましい目標例を提示するということをしております。

それから、事業評価は交付金になったときには要件化されておりませんでした。今後はやはりB/Cを算出していただいて、事業評価をした上で事業を実施していただくという方向に変えていくことでございます。

もう一点の変化は、18ページにお示ししておりますが、地方交付金の場合には、比較的、国として重点的に今取り組んでいる分野以外についても、いろいろと使用されているのではないかという指摘がありました。そういうことから、国として交付金を重点的に充てるべき事業内容というものを例示いたしまして、そのような事業内容に特化した計画に対しては重点的な配分を行うという取組を今年度から始めることとしております。

19ページ以降、最後の論点でございますが、維持・更新需要を見据えた受益者負担の在り方について、下水道の例を用いてご説明させていただきたいと思います。

20ページ、左上にございますように、下水道というのは上水道に比べて、整備が比較的遅く行われた公共事業でございます。平成2年の時点で下水道の処理人口というのは、普及率は44%でございましたが、近年では汚水処理人口普及率で約90%となっており、上水道にかなり近づいてきている状況でございます。ただ、整備が遅かったという観点から、今すぐには更新が来ない状況でございますが、将来的に、かなりの更新がまとまって来ることになっております。その際どのように対応していくのかということでございます。

1つは、21ページにありますように、公営企業会計でしっかりと把握していただくということが必要かと考えております。水道事業については、ほとんどの自治体で公営企業会計をしておりまして、減価償却、それからどの程度の料金を取るかということを、しっかりと1つの会計として把握しておりますが、下水道の場合には、それがあまり行われておりません。したがいまして、このような取組を進める必要があると考えております。

それから、22ページにありますように、使用料につきましても、やはり更新需要を見据えた使用料というものを、しっかりと求めていくということが必要だろうと考えております。

23ページ下の図をご覧いただきたいと思います。左側が水道事業でございまして、水道については水色の棒で示された「自己資金等」と書いてあるところで、やはり料金収入を用いて維持・更新が行われているというのが基本でございます。右側、下水道の場合には、料金収納に用いた部分というのが11%ということで、国・県の補助金にかなり頼っている構造になっております。今後の更新を見据えますと、その更新需要をちゃんと見据えた上で使用料を算定していくということが必要だろうと考えているところでございます。

25ページには、今申し上げました論点について、まとめているところでございます。

私からは以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 はい。どうもありがとうございました。

続きまして、文教・科学技術について、奥主計官、ご説明をお願いいたします。

〔 奥主計官 〕 それでは、資料4に沿って、ご説明させていただきます。

まず、義務教育関係予算につきましてですが、3ページをお開きください。これが、昨年の末に経済財政諮問会議が策定をいたしました、義務教育関係の改革工程表でございます。赤丸で囲っておりますところをご覧いただきますと、少子化の進展及び小規模化した学校の規模適正化の動向、いじめ・不登校などに関して、客観的データを収集し、実証研究を推進すること。また、地方自治体の政策ニーズなどを踏まえて、予算の裏付けのある教職員定数の中長期的な見通しを策定、公表、各都道府県・指定都市に提示をするべしと、そのような内容の工程表が策定されたところでございます。

この工程表に基づきまして、今後、検討を進めていくに当たり、まず4ページですが、義務教育の教職員定数の問題でございます。これはかねてよりご審議いただいているテーマですが、真ん中のグラフ、円グラフと、それから矢印をご覧いただくとお分かりいただけますように、現在、義務教育の教職員定数というのは69万人の規模でございますが、平成元年度からの姿を比べてみますと、基礎定数、法律に基づいて数が決まってくる基礎定数の世界、真ん中の矢印にありますように、12万人減少してきている一方で、毎年度の予算によって措置をいたします加配定数、これが5万2,000人増加しているという状況にあります。したがいまして、平成元年度、加配定数の割合、全体に占める割合というのは1.5%であったものが、近時1割近い規模に増えてきているというのが現状ということでございます。

続きまして、5ページですが、その加配定数というものが増加してきた内訳であります。左下の折れ線グラフをご覧いただきますとお分かりいただけますように、その要因としては、アクティブラーニングなど、きめ細かい事業の実施のための加配と、指導方法工夫改善が圧倒的な割合を占めておりまして、これに続いて、いじめ問題などへの対応、それから特別支援児童・生徒への対応がかなり伸びており、その加配全体が伸びている要因ということでございます。

続きまして、右側の6ページですが、加配定数につきまして、我々事務局といたしましては、再度よりきめ細かい見直しを進めていく必要があると考えておりまして、加配定数については、まず、過去に会計検査院などから運用の問題点が指摘されたものもございます。例えば、初任者研修加配というものがありますが、左下に挙げておりますように、会計検査院からは、この初任者研修の加配につきまして、異なる免許教科の教員を、その初任者の教員の指導員に任命をしていたといった事例、あるいは初任者に免許外の教科を担任させていたという事例、負担軽減が行われていなかったということが指摘されたことでございます。こうなりますと、政策判断に基づいて行う加配というものの、その判断、根拠が失われることになりかねませんので、改めて私どもとしては、適正な運用方法について予算執行調査などを通じて検証してまいりたいと考えております。

この適正化を踏まえた上で、指導方法工夫、あるいは児童・生徒支援といった加配につきましては、平成28年度予算で新規にエビデンス実証研究のための予算も計上いたしておりますので、そういったものを活用し検証を進めるということ、それから全国学力テストのデータ公開、その活用を通じまして費用対効果の分析を進めて、クラス・児童生徒数当たり、一体どれ程度の規模の加配教員、あるいは教員数が適正なのかといったことについて、知見を粘り強く着実に積み重ねて、政策判断に生かしていくということが、ぜひとも必要であろうと考えているところでございます。これらを通じて、現在の加配定数6万4,000人というものの再検証をしてまいりたいと考えてございます。

続きまして、7ページですが、加配定数の性質分析ということで、加配というのは、今申し上げましたように、それぞれの政策判断を通じまして、予算措置をするということになっていますが、よりきめ細かく子細に見ていけば、2つの性格に分類できるのではないかということで、マル1マル2と掲げてございます。

その2つの性格といいますのは、いわば基礎定数と同様の性格を持っているもの、マル1学校数やクラス数、児童生徒数に連動する性格のもの、それと、マル2今まさに、その加配の大もとの決め方である地域や学校ごとの個別事情に応じて政策的に措置すべき定数と、その2つに分類できるのではないかということで、例えば、左下の表をご覧ください。例えば、6万人いる加配の塊の中で、指導方法工夫改善のための加配というのが4万1,000人を占めているという状態にありますが、それを右の矢印たどっていただきまして、中身をもっと細かく見てみますと、この指導方法工夫改善の中にも、少人数学級を小学校2年生に適用するために行われている加配というものもございます。このようなものはクラス数に連動して変動するということで、いわば基礎定数と同じような性格を持っているのではないか。この指導方法工夫改善の中には、ほかにも習熟度別にクラスを分けて指導する、ティーム・ティーチングをするといったように、これはまさに地域・学校の実情に応じて、それぞれの判断で行っているものでございますから、これについては政策判断で、これまでの加配と同様に考えていく必要があるものです。そのような性格を持ったものが、加配といっても、含まれているのではないかということでございます。

左の表に戻って、上から2つ目、例えば、特別支援教育というものにつきましても、その学校が抱えている対象児童数、障害を持つお子さんの児童生徒さんの数などに連動する性格のものと考えていいものもありましょうし、少し下のほうへ行きまして、養護教諭等や栄養教諭等といったものは、学校数にまさに連動するという性格のものという意味では、基礎定数と同様の性格を持っているものではないかということです。上のまとめに戻りまして、このうち、そのマル1に分類し得る定数につきましては、その性質上、むしろ基礎定数化をして、連動する学校数、クラス数、児童生徒数などに応じて定数を変動させていくということが可能になるのではないかと考えておるところでございます。この基礎定数化に当たりましては、おそらく義務標準法という法律改正が必要になってくるものと考えられます。

次に、右側、8ページですが、今、出てまいりました特別支援、それから外国人の親御さんのご子息、児童・生徒さんに対応するための加配といったものにつきまして、近年、これらの特別支援や外国人児童・生徒の数は増加傾向にございます。したがいまして、その学校が抱えている特別支援の対象や、外国人児童・生徒の方々の数に応じて連動するという話になりますと、それは必ずしも児童・生徒数全体が減少しているというものとは別の動きをしているわけです。このような特別支援、外国人児童・生徒の増加傾向に対しては、適正数を見極めた上で、適切に措置をする必要があるのではないかと考えているところでございます。

続きまして、9ページですが、これは事務職員、それから「チーム学校」と最近呼ばれている、教員をサポートするための人材の活用についてでございます。これはかねてから教員の多忙の解消のために、我々としても適切に措置し、教員の負担を減らすべきであると考えているところでありますが、引き続き、教員の負担感の原因となっております保護者からの要望への対応、あるいは国、教育委員会からの調査への対応、クラブ活動の指導といった負担感を和らげて、先生方が授業、授業準備、それから生徒指導といった業務に専念できるようにするという観点から、事務職員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの適正数をエビデンス検証なども経て検討いたしまして、効果的に措置をしていくべきであろうと考えているところでございます。

10ページは、今、私が申し上げてきましたことをまとめたイメージ図でありまして、一番上の加配定数6万4,700人の再検討、再見直しということで、まずは、その運用面で問題があるものをきちんと見直すこと、その上で、実証研究を通じてエビデンスを集めるということ、費用対効果、適正配置数というものを検証する。その過程で2つの性格に分かれていき、基礎定数化し得るものについては、その基礎定数化の中に取り込んでいく。政策的措置と引き続きすべきものについては、引き続き加配として取り扱うと。最初の工程表に出てまいりました予算の裏付けのある教職員定数の中期的な見通しを示すということに関して申し上げますと、この左下にある基礎定数化し得るものということについては、今後、その予算の裏付けのある定数として見通しを示すことができるという性格になじむものではないかと考えます。

続きまして、11ページ、そのような教職員定数全体の数を検討するに当たって、念頭に置いておく必要がある事柄として、ここに掲げさせていただいております。

1つ目の丸は、公財政支出の規模の問題でございます。日本の小中学校向け公財政支出、これを在学者1人当たりで見ますと、OECD平均よりも高いと。左下の棒グラフを見ていただきますとお分かりいただけますように、横点線がOECD平均でありまして、日本は、その水準を上回っているということです。赤い棒グラフはG5の水準でございます。このG5の中で見ても、イギリスに次いで高いということが見てとれると思います。

それから、2つ目の丸、PT比、これはつまり教員1人当たりが抱える児童・生徒の数のことでありますが、これもよくOECDの平均よりも、日本は数を多く抱えているということが指摘されますが、ただ、OECD平均値、右側の表を見ていただきますと分かりますように、OECD平均よりは、確かに数字が大きいですが、例えば、G5の水準、平均値と比べてみますと、数字は小さくなっておりまして、そのことも念頭に置いて、教職員定数全体のことを考えるべきではないかということで、その際には、財政健全化に齟齬を来さないように取り組んでいく必要があるのではないかと考えているところでございます。

以上が1つ目のテーマでありまして、2つ目のテーマは、国立大学と科学技術まとめてでありますが、これらにつきましては、年末のご審議も経て、予算折衝の過程でもって、それぞれ、今後5年間、6年間に及ぶ中期計画を策定したところでございます。改革工程表も、この中期計画を踏まえて、国立大学、科学技術関係、いずれも策定されたところであります。

この工程表の概略をご紹介したいと思いますが、例えば、国立大学関係につきましては、新たに大学と民間企業との共同研究、これを数値目標を持って増やしていくと、あるいは寄附金収入を数値目標を定めて増やしていくということが新たに定められたというところでありますし、右側の科学技術関係につきましても、財審でご意見をいただきました共同研究、研究設備の共用化といったことにつきまして、数値目標を定めて増加を図っていくことが工程表に盛り込まれたところでありますので、ご紹介をいたしました。

次の17ページは、年末及び年明けに閣議決定いたしました次期科学技術基本計画をご参考として挙げさせていただいております。右側の真ん中にありますように、政府研究開発投資の数字について、対GDP比の1%にすることを目指すという文言は維持いたしましたが、その前提として、「『経済・財政再生計画』との整合性を確保しつつ」という文言が明記されているところでございます。

2つ目のテーマにつきましては以上とさせていただきまして、最後に文化関係予算につきまして、ご説明させていただきたいと思います。

文化関係予算全体で約1,000億円の規模でございます。で、右側の円グラフをご覧いただきますとお分かりいただきますように、そのオレンジ色の部分、約半分近くが文化財保護の充実というものに充てられております。これについて、以降、ご説明させていただきたいと思います。

21ページですが、この文化財保護の関連予算、これまでは主に文化財の保存・修理を適切に実施という観点から実施されてきましたが、近時、観光立国推進基本法や、それに関連する閣議決定などにおきまして、文化財を地域振興や観光資源として活用すると明記されたということでありますので、その予算の世界におきましても、地域資源や観光資源として活用することを促す仕組みを取り入れていくということが必要ではないかと考えます。

ただ、その際に、観光資源活用の取組を進める際には、文化財所有者の収入増に結びつくという観点から、所有者自身の取組を積極的に促すという視点が必要ではないかということで、右側の22ページ、そのような文化財の観光資源活用、所有者自身の取組促進を進めるための例といたしまして、1つ目に掲げさせていただいておりますのは、面的・一体的な総合活用というものを推進すべきではないかということから、市町村がつくることになっております歴史文化基本構想に基づいた事業というもの、これが、まだあまり策定が進んでいないのですが、これを策定して事業を進めるという場合には、その事業を優先的に採択するということによって、こういった面的・一体的な活用を促せるのではないかと考えます。

また、右下の棒グラフをご覧いただきますと、「京都観光の残念度」という調査結果を掲げておりますが、京都観光をされたときに、寺社などで、せっかく外国人の観光客が大分増えてきているのですが、外国語での通訳、案内表示というのが不十分で、なかなかそこが不満だといった意見もあります。観光振興という観点からは、案内板や、パンフレット、ガイドなどの整備が進むことが望ましいと考えられますが、そのようなことを所有者自身の負担でもって促進させるというような仕組みを仕組むべきではないかと考えておりまして、その観点から、所有者自身が負担をして、案内板、パンフレットを併せて整備する場合には、文化財の保存・修理という事業につきまして、ほかに優先して採択するという仕組みを盛り込んではどうかということでございます。

最後に、23ページ、まとめでありますが、上から3つ目までは、今申し上げたことの繰り返しでございますので、省略させていただきます。

最後に、予算を最大限効果的に活用するためにはということで、文化財の保存・修理の事業の執行に当たって、事業の質、すなわち事業実施者、適切な事業実施者、あるいはその実施方法を適切に担保して、貴重な財政資源の投入に当たって、安かろう悪かろうということがないように配慮する必要があるのではないかということを書かせていただいてございます。

私から、以上です。

〔 吉川分科会長 〕 はい。ありがとうございました。

では、3つ目、地方財政について、阿久澤主計官、お願いします。

〔 阿久澤主計官 〕 地方財政を担当しております阿久澤でございます。それでは、資料5に沿いまして、ご説明をさせていただきます。

まず地方財政制度の仕組みや現状について触れさせていただいた上で、今後の課題を中心に、ご説明させていただきたいと思います。

それでは、資料の4ページをお開きください。

始めに、マクロの地方交付税総額の算定についてでございますが、まず地方財政計画における歳出歳入ギャップといったものを見積もりまして、それを埋めていく形でマクロの地方交付税総額が決まってくることになります。

具体的には、地財計画におけます歳出歳入ギャップに対しまして、まず地方交付税の法定率分を充てることになります。また、これに加えて、地方法人課税の偏在是正のために導入されました地方法人税のような特会財源がございます。これもギャップを埋めるために使われるということになります。それでも、なお生じる財源不足が、平成28年度では0.5兆円でございますが、これに対しましては、国・地方折半で埋めるということになっておりまして、この折半ルールに基づいて国は赤字国債を発行して、交付税に特例加算を行い、地方は赤字地方債である臨時財政対策債を発行するということになっております。

なお、この赤字地方債であります臨財債、これは、この折半対象の財源不足に伴う臨財債のほかにも、資料の図の通り、地方歳入における地方債の内訳に臨財債3.5兆円といったものがございます。これは何かと申しますと、既に発行されている臨財債の元利償還金等の財源といたしまして、全額地方負担で、すなわち折半対象外で発行されるものでございます。すなわち、従来から説明させていただいております折半対象の財源不足というのは、既発の臨財債といったストックベースの債務に起因する財源不足を、折半対象外として全額臨財債で賄ってもなお生じる財源不足、いわゆるフローベースの財源不足を指すものであるということでございます。

それでは、5ページをお開きください。

このフローベースの財源不足、すなわち折半対象財源不足のことでございますが、これにつきましては、近年の税収の増加等を背景に、年々縮小してきております。このまま税収増の傾向が仮に続いた場合には、平成29年度には、この折半対象財源不足は解消する可能性がございますが、この場合における論点は、後ほど述べさせていただきます。

また、平成27年度までは、リーマン・ショック後の歳入面の危機対応措置といたしまして、折半ルールの例外として、全額国費による別枠加算が措置されてきたところですが、これは危機対応モードから平時モードへ切替えということで、平成28年度予算においては廃止をしております。

また、歳出面の危機対応措置であります歳出特別枠につきましても、平成28年度予算で大幅に縮減をいたしました。これにつきましても、平時モードへの切替えの中で廃止をしていく必要があると、このように考えております。

続きまして、6ページ、7ページは、国と地方の財政状況の対比についてでございます。

6ページ、7ページにありますように、フローベースで見ましても、ストックベースで見ましても、リーマン・ショック後、国と地方の財政の不均衡は著しく拡大をしております。一言で言ってしまうと、国の財政状況というのは、地方に比べて、非常に厳しい状況になっているということでございます。

こうした国と地方の財政状況の違いが生じた要因につきましては、これはいろいろな意見はあるかと思いますが、やはり地財計画において、歳出歳入ギャップが生じた場合に、それを交付税で埋めるという仕組みがあるということが大きな要因であると考えております。さらに、この6ページの下段の棒グラフを見ていただければと思いますが、仮に景気悪化によって、地方交付税の法定率分が減少したとしても、国から特例加算や別枠加算などの法定率分を上回るような財政措置を講じてギャップを埋めている。このような手厚い措置が、国と地方の財政状況の違いにつながる要因となっているのではないかと考えております。

続きまして、9ページをお開きいただきたいと思います。

こちらにつきましては、平成28年度の地財計画の概要をまとめたものでございます。説明は割愛させていただきますが、後ほどご参照いただければと思います。

それでは、13ページをお願いいたします。地方財政における今後の主な課題についてでございます。

まず、冒頭でも触れさせていただきました折半対象財源不足が解消した後の対応についてでございますけれども、これについてご説明をさせていただきます。

内閣府の中長期試算の「経済再生ケース」を踏まえますと、平成29年度以降、地方税収や交付税の法定率分の増加等を背景に、この折半対象財源不足が解消いたしまして、フローベースで見て財源余剰が生じる見込みとなっております。この財源余剰分につきましては、2020年度の国・地方を合わせたPB黒字化という政府の財政健全化目標を着実に達成していくという観点からは、これは地方のPB対象経費の増加に回してしまうのではなくて、着実に国・地方のPB改善につなげて、債務の縮減に充てていく必要があると、このように考えております。

また、この債務の縮減に当たりましては、これは一方で、地方に財源不足といったものが生じた場合には、それを埋めるために、地方だけではなく、国も特例加算や別枠加算の形で法定率分を超えて負担してきた経緯があることに加え、冒頭申し上げましたが、地方以上に国の財政事情が極めて厳しい状況に置かれているということなども鑑みれば、この財源余剰の分は、地方の債務縮減に充てるだけではなく、国の債務縮減にもつなげていく必要がある、このように考えているところでございます。

続きまして、14ページをお開きいただきたいと思います。

各自治体において生じております、臨財債の円滑な償還に支障が生じかねない問題について、一言触れさせていただきたいと思います。

臨財債の元利償還金、こちらにつきましては、後年度に基準財政需要額に算入される形で、交付税措置をされるということになっております。

一方で、各自治体における臨財債の実際の償還スケジュールと交付税措置されるスケジュールが異なるといったこと等から、現実には、交付税措置された元利償還相当額の全てが、実際の元利償還や減債基金の積立に充当されているわけではなく、いわば減債基金への積立不足といった事態が生じているところでございます。

こうした減債基金への積立不足が生じる原因としましては、自治体によっては、ともすれば、この臨財債の元利償還に係る負担を適切に管理しなくてはならないとの意識が必ずしも十分ではなく、交付税措置に合わせて自治体が計画的に減債基金への積立などを行わなければ、これは将来の実質的な負担につながりかねないとのリスクを十分に共有できていないといったことも要因になっているのではないかと考えております。こうした認識のギャップ、これは自治体に想定外の負担をもたらす可能性もございまして、引き続き、この問題の解消に向けて、しっかりと取り組んでいく必要があると、このように考えておりますし、また、この問題は、マクロで見ますと、仮に地財計画において債務償還のための財源を確保したとしても、結果として、地方のPB改善にはつながっていかないといったことにもなりかねません。こうした観点からも、ミクロの自治体レベルにおける臨財債の計画的かつ適正な償還もしくは積立といったものが担保されるようにしていく必要があると考えております。

続きまして、15ページ、16ページで、地方行財政分野における改革工程表の主な取組を4つ、ご紹介させていただきます。

まず、トップランナー方式の導入ということでございますが、これは地方における歳出の効率化に向けて、他団体のモデルとなるような業務改革を行っている団体の、その経費水準を地方交付税の基準財政需要額の算定基礎に反映させていくという取組でございまして、平成28年度から導入をし、適宜拡大をしていくということにしております。

次に、下にあります公共施設の集約化・複合化等の促進でございますが、こちらにつきましては、各自治体が保有している公共施設などの老朽化が進んでおり、その対応も必要となってきている一方で、少子高齢化が進み、また地域の人口が減少していく中で、やはり公共施設の効率的な管理・運用を図る観点から、公共施設等の集約化や複合化等を進めていこう、といったものでございます。

続いて、16ページをお開きください。地方財政の「見える化」についてでございます。

住民や議会等に対する適切な説明責任、また、自治体のガバナンスの向上を図るといった観点から、例えば住民1人当たりコストやストック情報の充実など、地方財政の「見える化」を今以上に推進していく必要があると、そういった取組でございます。

また、最後でございますが、自治体クラウドの積極的な展開といったことでございまして、自治体の情報システムについて、クラウド化を積極的に進めていくということとしております。こうした取組などによりまして、国と同様、自治体情報システムの運用コストを3割縮減していくことを目指すといった取組でございます。

続きまして、20ページをお開きいただきたいと思います。人口減少の歳出への反映についてでございます。

こちらにつきましては、「骨太方針2015」におきましても、人口減少等を踏まえた歳出改革を行うといった方針が定められております。地方歳出では、人口を測定単位とする歳出項目、この測定単位というのは、財政需要を測定するための単位でございますが、そのような歳出項目が多数あり、すなわち、需要の強さが人口に応じて連動する歳出が多くあるということでございます。資料にありますように、積み上げてみますと、おおむね7割弱程度はそのような歳出であるということでもありますので、やはり地方財政につきましても、人口減少を踏まえた適正化をしっかり行っていく必要があると考えております。

私からは以上です。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

では、残された時間、20分余りですが、どなたからでも。角委員、岡本委員、富田委員、簡潔にお願いいたします。

〔 角委員 〕 ありがとうございます。

社会資本整備総合交付金等のB/Cの要件化については、もちろん大賛成でございます。少しこれとは違うかも分かりませんが、関西で最大のミッシングリンクとされていた湾岸の西部の部分が一応事業化の目処が立ちました。このときに、当然、B/Cがとられると思います。そういったB/Cをとる時の将来の需要予測というのは非常に重要かなと思います。今、関西国際空港に多くのインバウンドの方が来られていて、大阪、京都はいいですが、神戸にはなかなか行っていただけない。これは、やはり非常に渋滞するということで、旅行業者もプランが立てにくい。そこで、将来の需要予測が完成すれば、かなり上がってくると思います。逆に、減る部分も当然出てくるわけで、そういったB/Cをとるときの将来の需要予測について、しっかりとしていただければありがたい。

もう1つ、学校の問題につきましては、先ほどもありましたように、まだまだ不十分とは言いながら、小学校はかなり効率化が進んだと思いますが、中学校が、先ほどの数字にもあるように、残念ながらあまり手がつけられていないのではないかなと思いますので、ここは引き続き、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

それと、奨学金について、給付型奨学金の話が出てきておりまして、これは少し問題かなと思っていましたら、今日、読売新聞の社説に、言おうと思った意見が全く書かれておりまして、やはり給付型は成績優秀者など、従来通りある程度限定していただいて、どちらかというと金利ですね。利息の減免、あるいは、無利息と言いますか。たまたま、今、超低金利ですから、平成27年度の3月の固定金利を選ばれた方の利率は0.16%でしたが、これが5年ぐらい前になりますと、例えば1.5%などになります。そのときに固定を選んでしまうと、それをずっと払い続けることになりかねないわけで、ここをゼロにしても、今後の話であれば、超低金利であれば、それほどのお金はかからずに対応できる。奨学金については無利息を導入すると言っていただくと、非常にパンチがあるかなと思います。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 はい。では、時間の制約がありますので、一応、ご意見、問題提起ということにさせていただいてよろしいでしょうか。事務局は、もちろん、いただいたご意見、しっかり記録して、最終的には建議に反映していただくということになりますが。

岡本委員。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

3点ありまして、1つは感謝で、1つは質問で、1つは意見です。

この感謝というのは、別枠加算に関してであります。これについては、リーマン・ショックの後、2009年にできましたが、これが2013年からここでも議論になり、いかに平時モードであるかを粘り強く主張して、いろいろな交渉を重ねてやってきたわけですから、財務省の方のご苦労も大きかったのではということと、絶えず主張するということは極めて重要なことだなと、また改めて思いました。これは感謝であります。

2点目の質問というのは、地方財政、13ページの例の折半対象財源不足解消後の対応についてです。この問題は、やはり非常に重要だと思います。別枠加算の場合は、単なる廃止ということだと思いますが、この場合には、使い切ってしまうということもあろうかと思いますので、何らかの形で精算する仕組みの導入が必要だとありますが、それは具体的に、どのようなものを、今考えているのか、ということをお聞きしたいということです。これは質問です。

3点目の意見は社会資本整備についてであります。

7ページに公共施設等総合管理計画というのがありますが、この数値を見ていると、こんなに未実施なのかということで、びっくりしています。これは地方の問題もあるのかもしれませんが、このような実態であるということを、適切にディスクローズしていかなければならないのではないかと思います。

私もつい最近、5年ぶりに、大震災後の石巻や女川行きました。まだ、盛り土だけで、何も変わってないなと。以前見た瓦礫だけのところから、その後、4、5カ月経って、盛り土をやっているという時間的なイメージがありましたので。多額のお金を投入しているわけですから、これでどのくらい人が帰ってくるのだろうか、あるいは、どのようなスケジュールでやっているのか、本当に有効、効率的なのかなど、公共事業関係は一事が万事なので、途中途中も含めて、PDCAできっちりやっていただきたい。財務省のほうでも交渉するときは、そのようなところもぜひ見ていただきたい。

それから、下水道のところは、予算主義と言いますか、予算を余らせてしまうと、働いていないように見えるので、使ってしまうという事情もあるかもしれませんが、企業の場合は、収益をベースに一生懸命取り組んでいるという部分もありますので、支出を減らして効率的な予算執行をするということに改める。どのようなインセンティブを与えるべきかという問題はありますが、地方財政と同様、ぜひ取り組んでいただきたいということです。

最後に、文化財の整備ですが、例えば、生活保護が4兆幾らというときに、この領域の予算が460億円というのを見ると、本当に小さい、誤差の話のように感じます。最近、インバウンドがよく議論されますが、日本は文化国家として、観光収入拡大や地方創生などに向け、意識を変えて、ある程度この領域に予算を積まなければいけないという気持ちに、ぜひなっていただきたいなと。以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ご質問もありましたが、かなりの数の方がご発言もありますので、時間が許せば主計官からお答えいただくことにして、できるだけ、まずご発言いただきたいと思います。

富田委員、簡潔にお願いいたします。

〔 富田委員 〕 はい。ありがとうございます。

社会資本整備及び地方財政に係る問題ですが、国の予算を、国あるいは国の機関が使う場合と、地方財政が国の予算でお金を確保して使う場合で、私は著しく規律の違いがあると、今日、改めて思いました。

1つは、彦谷主計官からご説明のありました社会資本整備総合交付金等であります。

見直し内容としてあるのは、未契約の繰越率や不用率の公表すらされていない点。それから、B/Cの算出の要件化もなされていない。また、補助金であれば、不用は返還や繰り越し手続が必要である一方、交付金は返還や繰り越しの手続は不要であるという問題であります。

この点に絡んで、去年の秋の財審の建議におきましては、資料の中で、驚くべきことに、積算がなく、地方が自由に使える一般行政経費の単独事業等、いわゆる枠計上が21兆円もある。だから地方財政の4分の1は積算がなく、地方が自由に使える。

さらに、地方財政の21ページのところに、地方税収の決算が上振れした場合に、それも精算されず、国が発行した赤字国債の減額すらできないという問題があります。

このように、国から地方に流れます歳出の規律というものを、やはり国、あるいは国の機関が支出する場合と対比させて、予算要求での積算根拠の違い、費用便益分析が適用されているかどうか、予算執行調査ができるかどうか、あるいは実績の検証ができるか、会計検査院の検査や決算での精算義務があるかどうかといった問題を、各項目について、やはり当審議会として、きちんと比較していかないと、なかなか国・地方を通じた財政の健全化は難しいのではないかと強く思いましたので、問題提起させていただきました。

〔 吉川分科会長 〕 はい。

では、続きまして、大宮委員、老川委員、伊藤委員の順で、お願いいたします。

〔 大宮委員 〕 2点ございます。

1つは、科学技術予算で、今の日本の公的研究機関による研究によって、日本のイノベーションの創出の1つの源にするというのは大変大事だと思っていまして、この研究開発予算の獲得において、健全な競争原理がより働く必要があるのではないかと考えています。

例えば、ドイツのフラウンフォーファー研究機構というのは、受託研究を民間から得ると、それに比例して公的資金が増えるということをしています。何を言っているかと言いますと、企業のほうが、多分、評価制度が非常にはっきりしているので、研究にこれ程多くのお金を突っ込んだとしても、これ程の成果が多分期待できるからつぎ込むという観点での評価が非常に厳しいという点からすると、企業から受託研究を受けたところに公的資金を投入していくというのは、研究の効率性という観点から、よいのではないかなと思っています。したがって、何かこの辺の仕組みを取り入れていただいて、例えば、先ほどのドイツの研究所の例ですと、ライセンス料が1年間に130億円ほど収入としてあるという話もありますから、その観点も含めて、もう少し公的資金の入れ方について検討が要るのではないかなというのが第1点目であります。

第2点目は、教育の加配定数ですね。事務職員やチーム学校関連の人材活用、他のいろいろな対応に、学校の先生が非常に忙しくしていて、教育以外のことにたくさん時間を費やしているという視点からすると、加配定数だけではなくて、全体の効率を上げるために、先生たちが一体どのような仕事をやっているのかということの棚卸を全部やってみて、それに応じて、例えば教育分野であれば、それは先生が対応すべきですし、それ以外のものであれば、専門家をきちんと充てるという、適正な人的配置というのは一体何かということを考える必要があるのではないかなと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、老川委員。

〔 老川委員 〕 2点、意見を申し上げたいと思います。

1つは、社会資本整備に関して、担い手、人材の確保ですね。これに関連して、12ページで、職業教育の在り方について議論が必要だということを言及していただいたというのは非常に大事なことだと思います。

11ページにあるように、絶対数が減ってきていることは間違いないですが、減っている絶対数の中でも、必ずしも全員が何らかの職業に就いているわけではなくて、むしろ家に引きこもっているだけ、あるいはフリーターのような非常に不安定な仕事をしているというケースが非常に多く、やはり働くことの大切さ、そしてまた、それに関連した技能を若いうちからしっかり身につけるということが大事だと思います。在り方と言うと抽象的ですが、もう少し踏み込んで、勤労観の育成、そして同時に技能の習得、そのようなことを具体的に提言されてはどうかと思います。

それから2点目は、今、大宮委員が挙げられたことと全く同感の問題意識ですが、加配定数について、例えば7ページによると、事務職員というカテゴリーもありますが、これがもし教員として数えられているのであれば、その仕事は別に教員免許がなくてもできる仕事ではないかと思います。また、先生が非常に多忙だということがしばしば言われて、定数削減、あるいは適正化に非常に強い抵抗がありますが、どのような要因で多忙なのかももう少し具体的に分析した上で、それに伴った対応が必要だろうと思います。

そこで、僕はチーム学校という考え方はいいのではないかなと思いますが、教員免許を持った先生だけでなく、社会人、学校外の人、既に退職した人など、いろいろな人がいろいろな役割をサポートすることで、先生方の多忙さを緩和していく、そのような取組も重要ではないかなと思いますので、エビデンスと言う場合に、もう少し教育現場の実態というものを具体的に分析された上で、対応策を打ち出していかれるべきかと思います。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。

では、伊藤委員。

〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。

私の方からは、社会資本整備について、意見を申し上げようと思います。その前に、前回どなたかが言っているかもしれませんが、この個別テーマを進めていく上でも関連するので、企業の業績について、最近の状況をどう見ているのかということを、一言だけ申し上げておこうと思います。

企業業績は2016年3月期、つまり2015年度がピークであって、2017年3月期、今年の2016年度は減益になるところが結構増えるのではないかと感じております。中国や新興国の成長鈍化などは前から言われていますが、最近は円高傾向ですね。これがどの辺に来るか、どの辺におさまるかによって、相当大きな企業業績に影響が出てくる。

そういうことも前提に考えておく必要があるのではないかという気がいたします。

社会資本整備につきましては、1つは、10ページから14ページにある担い手の確保と生産性の向上のところで、日本建設業連合会が出している資料がありまして、この業界は女性の比率が低いのですが、その比率を上げたいということで、自ら自分たちの資料を出されていまして、全産業の平均では42.3%程度女性比率があるのに、建設業全体では13.9%、大手建設業では11.9%ということで、いずれにしても、特に中小企業の建設業の女性比率を高めるために何か打てる手があれば、そういうことも考えていただきたいというのが1点であります。

それから、2点目は、社会資本整備総合交付金等の見直しですが、これも17、18ページにありましたように、費用対効果、B/C算定でやっていくということで、中長期的な波及効果ですね。ストック効果を重視するということも、ぜひ考えて進めていただきたい。ストック効果というのは、当然、広域圏での観光消費額の増加や、道路と空港、港湾等の発達につながって、物流の利便性が向上し、その周りに新規工場の立地が増加、雇用の創出などに波及しますので、その効果をぜひ考慮した上で優先順位をつけていただきたいということであります。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、続けて、武田委員、田中委員、竹中委員、恐縮ですが簡潔に。

武田委員。

〔 武田委員 〕 どうもありがとうございます。

社会資本整備に関係しまして、「立地適正化計画」についてご説明いただいたわけですが、KPIは市町村単位です。一方、複数の隣接している都市との連携とも書かれていまして、その連携をどのように進めていくかという点が一つです。また、同計画とは別に、地域医療構想も同時進められているわけでにございますが、地域医療構想と、この「立地適正化計画」の連携も、どのように考えていけばいいのかという点。後日で結構ですのでご教示いただければありがたいと思います。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 田中委員。

〔 田中委員 〕 私は、まず15ページの、文教、国立大学について、先ほど大宮委員が、大学との産学連携による、特に受託研究の比率に関してマッチングをとおっしゃいましたが、そうであれば、このKPIは、いわゆる世界大学ランキングよりは、世界イノベーション指標を使ったほうが、パテントがベースにしてはかっていきますので、適正なのではないかと思います。

それから、2点目ですが、これは公共事業における、いわゆる人材不足の話で、人材を育成するのはいいのですが、将来的に少子高齢化やコンパクト化を考えた時、医師のように余剰人員にならないかと懸念しています。たまたま私が工学部、土木にいたものですから、職がなくて、どんどん学生が来なくなるという時期を経験していますので、その点が気になりました。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 続けて、竹中委員、どうぞ。

〔 竹中委員 〕 文化について、今回初めて財審で取り上げていますが、資料4の21、22ページの右側に「京都観光の残念度」とあって、言語、案内、標識というお話がありました。実は私、国土交通省の委員も10年程やっていて、ちょうど国交省のほうの「YOKOSO! JAPAN」など、自立移動支援で、体が不自由な方々とともに、外国人の方に、どのように日本を楽しんでもらうかという中で、まさにこのテーマをやっています。それはICTを使っていて、海外の方は自分の端末を持ってこられるので、事前にそのような情報を、その国で呼び出せるようにというようなソフトをつくるというやり方なんですね。

それで、文化庁ではパンフレットとか書かれてますが、紙物を増やすのではなくて、ぜひ、省を超えて、力を合わせて、情報通信をうまく活用して、外国人の方にもっと楽しんでいただけるようにしていただけたらうれしいなというのが1つ。また、左側の21ページに、清水寺、二条城の400円、600円、入場料の話があります。おそらく、このようなお寺というのは、入場料よりお賽銭だと思うので、その辺を突っ込んでほしいのかほしくないのか分かりませんが、とりあえず意見です。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございます。はい。きめ細かいご意見ありがとうございます。

佐藤委員、土居委員、簡潔にお願いいたします。

〔 佐藤委員 〕 社会資本整備のところで、これから課題になるのは公共施設等総合管理計画、多分これは、今年度中につくると思いますが、その着実な実施をフォローアップしていく必要があるということと、やはりPFIを含めて、民間資金をどのように活用していくかということが、これからの公共施設の在り方には問われてくるということ。

それから、下水道も同様でありまして、これは本来、コンセッションの対象ですが、なかなか実際は進んでいないということがありますので、何らかの一押しが要るかなと思います。

それから、先ほど、田中委員からもご指摘のありました、人材育成ですね。公共事業、建設業の人材育成について、人材育成も大事ですが、建設業界の再編成も大事でありまして、特にPFIのような大規模な事業を受けるためには、やはり大規模化していないといけませんので、特に地方の建設業界の再編成というのは、やはりこれから進めていかないといけないという気がします。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、土居委員、簡潔に。

〔 土居委員 〕 ご説明ありがとうございました。

まず、資料3の23ページで、まさに下水道の公営企業会計の適用は非常に大事ですが、実は、ここで資金調達で出している企業債というのは、財務省で言えば理財局が財政融資資金を使って貸しているという意味合いの部分が結構あって、主計局での公共投資の支出のアングルからと、この理財局が企業債を貸すというアングルを、2つ、いい形でコラボレーションしてもらう、しかも、理財局は地方公共団体及び公営企業に対しては、財務状況把握というのをやっていて、各財務局が状況を把握しているということもありますから、主計局と理財局がタイアップして、改善を進めていただくというのがいいのかなと思います。

資料4の11ページの初等中等教育の話ですが、財審ではこのようなデータが出てきますが、世の中で、1人当たりの在学者に対する公的支出というのは決して引けをとっていないという情報が、あまり広く流布されていないところがありますので、これはいろいろな形で、委員の先生方も含めて、国民に知っていただくということが大事なのかなと思います。

最後に、資料5の21ページで、まさに富田委員もおっしゃったように、税収の上振れというものは適正に評価をして、きちんと地方財政計画における地方税収というものを計っていただいて、必ずしも財源不足というのは大きくないという事態が、特に好景気の時には起こり得るということを、しっかり主張していくということが大事だと思います。

以上です。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

では、おおむね時間ですので、本日の議論、これで終了ということにさせていただきたいと思います。

最後に少しだけアナウンスメントですが、本日欠席の赤井委員、神津委員から意見書をいただいております。皆さんのお手元にお配りしております。

ルーチンですが、本日の会議の内容につきましては、大変恐縮ですが、私から一元的に報道関係者の方々にお話しすることになっております。

次回の日程ですが、来週、4月15日金曜日14時から17時。次回は、ドイツ、イタリア、ギリシャと、OECD、フランス、スペイン、ポルトガルび海外調査報告、海外調査に関する論点整理、それから財政・租税教育について審議する予定にしております。

それでは、これで閉会とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

午後5時01分閉会

財務省の政策