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財政制度分科会(平成27年3月18日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
平成27年3月18日
財政制度等審議会


 財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成27年3月18日(木)12:59〜15:09
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

 

 

1.開会
2.有識者ヒアリング
・経済成長と財政の関係について
 −熊谷亮丸大和総研執行役員チーフエコノミスト
3.委員からのヒアリング
・「総合研究開発機構報告書」について
 −土居丈朗委員
4.閉会

配付資料
○資料1 「経済成長と財政の関係について」
○資料2 「共同提言「社会保障改革しか道はない」の概要と補足」
○資料3 「社会保障改革しか道はない(総合研究開発機構報告書)」
○資料4 「社会保障改革しか道はない(第2弾)(総合研究開発機構報告書)」

出席者

分科会長 吉川 洋           竹谷大臣政務官
岡本次長
太田次長
西田次長
新川総務課長
寺岡調査課長
山本司計課長
窪田法規課長
堀内給与共済課長
片岡官房参事官
阪田主計官
白石主計官
冨安主計官
青木主計官
井藤主計官
宇波主計官
彦谷主計官
高村主計官
小野主計官
井口主計官
中山主計企画官
内野主計企画官
分科会長代理     田近 栄治  
 委員

遠藤 典子
大宮 英明
倉重 篤郎
黒川 行治
古賀 伸明
角   和夫
田中 弥生
土居 丈朗
富田 俊基
中空 麻奈
永易 克典

 臨時委員 

板垣 信幸
井堀 利宏
葛西 敬之
加藤 久和
小林 毅
佐藤 主光
末澤 豪謙
十河 ひろ美
宮武 剛


   

 

午後 0時59分開会

〔 吉川分科会長 〕 それでは、ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様方におかれましては、ご多用中のところご出席いただきましてありがとうございます。

 本日は、熊谷亮丸大和総研執行役員チーフエコノミストよりお話を伺い、その後、総合研究開発機構報告書について、土居委員よりお話を伺います。

 まず、冒頭、前回委員からご質問のございました世代間会計について、寺岡調査課長から説明お願いいたします。

〔 寺岡調査課長 〕 前回、複数の委員の方から、世代別の受益と負担の状況をわかりやすく示すべきではないかという宿題をいただきました。世代別の受益と負担について説明させていただきます。

 まず、いわゆる世代会計というもので、若干古いですが、内閣府が2005年、平成17年度版年次経済財政報告において示したものでございます。

 ここでは2003年の時点で、それぞれの世代の方、ここに示しております間に生まれた方が生涯の間に政府との間で受ける受益と払う負担を、将来推計も含めて示したものでございます。

 受益と負担に係る制度につきましては、その当時、これは2003年時点でございますが、その制度が不変であるという前提のもとです。

 それから、1世帯当たりとなってございまして、いわば世帯主の方が家族、世帯の方も含めて生涯の間にどれだけ受益を受け、また、負担をするかといったものを示したものでございます。

 ごらんいただきますと、まず受益について、あるいは負担について、生涯純受益という形でネットの数字が出てございます。60歳以上の方で非常に多くの純受益となっていまして、これは、おそらく年金、医療、介護といった社会保障の関係の受益が非常に多いことが寄与しているのだと思います。

 それから、負担をごらんいただきますと、40歳代を境に若い方は、純受益がマイナス、すなわち純負担になる姿なのですが、先ほど申し上げましたように、制度が不変の前提を置いてございますので、今、毎年度財政赤字が生じている状態では、その分の負担は全て、この将来世代というところにかかってまいりますので、このように20代と将来世代の間では、これだけ大きく負担総額、あるいは純負担の額が違ってくるといった姿でございます。

 これにつきましては、将来推計が相当入ってございますので、経済成長率をどう置くか、あるいは割引率としての金利をどの程度置くかということで、相当大きく数字が変わってくる性格のものでございます。

 次に、極めて単純に現在の世代別に1人当たり、今の制度下で個人に帰着する受益をどれだけ受けているかを説明します。

 対象となりますのは個人ですので、年金、医療、介護、それから、教育、雇用保険、出産一時金といったようなものまで加味して示させていただいています。

 上の表は1人当たりの年間受益額で、それを世代別に合計したものが下でございます。受益総額で見ますと、60歳代で約30兆円、70代以降で60兆円となっていまして、この部分で受益が非常に多い。合わせると大体132兆円ぐらい受益が個人に帰着しているといったことでございます。

 一方、もう1枚おめくりいただきますと、この裏側の負担はどうなっているかということで、こちらも全て個人に帰着できる負担を調べたものでございまして、具体的には、直接税、消費税、それから各種の保険料、あるいは医療の自己負担、学校の授業料、そういったものの合計でございます。

 こちらは、実は40代、50代世代が多く負担している図が見て取れるかと思うのですが、この合計が実は62兆円にしかなりません。表のページの132兆円との差は、1つは、ここに書かせていただきましたように企業が負担するもの、これが30兆円〜40兆円ぐらいあると思います。こういったものは、この統計に入ってございません。したがいまして、それを差し引いた分は、一番左に将来世代の負担と棒を書かせていただいていますけれども、その差分は、同じように将来世代の負担になっているといった具合でございます。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では、ただいまのご説明に関して何かご意見、ご質問ございましたらお願いいたします。世代間会計ですが、よろしいでしょうか。以上は、いわゆる宿題返しということでご説明いただきましたが。

 それでは、本日の議事に移らせていただきます。

 まず「経済成長と財政の関係について」、このようなタイトルで熊谷亮丸大和総研執行役員チーフエコノミストからご説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 大和総研の熊谷でございます。本日は、お招きいただきまして心より光栄に存じます。大分、分量の多い資料を持ってまいりましたけれども、40分程度でポイントを絞ってお話をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、お手元の資料で1ページ目をごらんください。今日は、大きく2つの柱でお話をさせていただきたい。

 まず、前半部分でございますけれども、財政再建の重要性と望まれる政策対応ということでございます。ポイントは4つ。

 まず1点目としては、経済成長すれば、財政再建できるのかということでございますけれども、やはり財政健全化目標の達成のためにはPBが改善するだけでは不十分である。わが国がドーマー条件を、これから充足していくことはなかなか難しいのではないか。

 2点目として、我が国の財政再建に向けた課題ということでございますけれども、諸外国の事例を見ると、経済成長と増税と歳出カットをバランスよく行うことが必要である。やはり自然増収のみに頼っていては、財政再建はなかなか達成できない。

 我が国での課題ということで申し上げると、歳出の適正な管理を行っていく。内閣府の中長期試算も、そこはあまりゲタを履いていないということがございますけれども、やはり歳出に対する切り込みが甘い。ここにしっかりとキャップをはめていくことが必要である。とりわけ社会保障の抜本的な改革の具体策をつくることが鍵になる。

 3点目として、財政再建と経済の関係でございますが、グローバルに見ると財政赤字が積み上がると、経済に対して悪い影響が及んでいく。特に我が国では、将来不安が貯蓄率を押し上げているということがございますので、財政再建に取り組むということが日本経済にとってもプラスの影響を及ぼしていく。

 4点目として、アベノミクスの課題ということでございますが、今のアベノミクスは、全体の方向性は正しい政策であるという考え方ですが、3本の矢の中で言うと、1本目の矢の金融政策のところに少し負担がかかり過ぎている。黒田総裁が孤軍奮闘しているような状況である。2本目の財政、ここは大胆な財政ではなくて、柔軟な財政ということですから、中長期で規律を保って、社会保障の徹底的な合理化をする。3本目も岩盤規制のところに踏み込むような、ある意味で、国民に耳の痛いようなこと。社会保障制度の改革だとか、岩盤規制の緩和といった国民に耳の痛いことを正面から言っていく、そのような政策運営をさらに加速する必要があるのではないかということです。

 次のページで2つ目の論点、日本経済でございますけれども、日本経済は、昨年の1月が景気の山、そして8月まで景気後退という見方をしていますが、9月以降は着実に今、景気が拡大の方向にきている。今後も2つの理由から拡大すると見ておりまして、1つ目は、アベノミクスによる好循環が継続するということ。2つ目は、アメリカ向けを中心に輸出が拡大していくという理由です。

 そして、2点目として、原油安が日本経済、世界経済に非常に大きなプラスの影響を与えていく。

 3点目として、欧州の日本化、ジャパナイゼーションという長期の構造不況に入る可能性ですが、ここは、ファンダメンタルズで比較すると、ヨーロッパのほうが日本よりもはるかにいい条件がそろっている。ですから、政策対応を誤らない限りは、日本化の可能性はそれほど大きなものではないという考え方です。

 4点目としてはリスク要因、財政不安、そして中国の問題、アメリカの出口、地政学的リスクということですが、特にマル1マル2のあたりを常に警戒しておく必要がある。

 最後に、金融市場は、基本的には株高・円安の流れ。株価が、このまま2万円を大きく超えていくという見方をしていますし、為替も120円台の半ば、125円程度に向けて緩やかな円安の方向性。債券は、今、出てくる国債のほとんどを日銀が買っている状況でございますので、1、2年は低位で安定した状況。ただ、出口に向かうと、少なくとも長期金利は2%を超えて、長いスパンで財政規律が失われてしまうと4%、5%に向けて上がってしまう可能性があるということですから、やはり財政の規律を維持することが非常に重要である。

 今日は、これらの点についてポイントを絞って図表でご説明したいと思います。

 3ページ目をごらんください。まず、経済成長すれば財政再建できるかということですが、ご案内のようにドーマー条件、名目GDP成長率が長期金利よりも高いという、この条件を満たすことがなかなか困難ではないかと考えています。

 例えば左のグラフの右上の緑で塗ってある部分で、過去の日本におけるドーマー条件が成立した確率が書いてありますが、70年代の規制金利などのときを別とすれば、やはりその確率は、それほど高いものではない。

 右のグラフは、OECD諸国の中でドーマー条件を満たしている国の割合ということでございますが、金利が自由化する前の70年代は条件を満たす国が比較的多かったわけですが、近年は、よほどのバブルでも起きない限りは、国際的に見てドーマー条件を満たすのが難しくなっている。

 ですから、よくディフィシットギャンブルという言い方をしますが、このようなギャンブルのような財政運営をしてはいけないという考え方です。

 4ページ目をごらんください。左上が日本の全体の財政収支の状況、左下が歳入の動き、右のグラフが歳出の動きということでございますけれども、まず、左上のグラフの全体の収支から見ていただくと、日本の特徴というのは、グラフが上に行って財政収支が改善するときに、ブルーの部分の歳出のカットではなくて、赤い部分の歳入の増加、ここに頼るようなバブル頼み、景気頼みという傾向がある。ですから、景気が悪くなると税収が急減して、再度、財政が悪化するということを繰り返してきた。

 左下の歳入の中身で見ると、ブルーの部分が間接税ということで、ここは安定しているわけですが、いかんせんウエートが低いということがあって、全体としては所得税だとか法人税などによってぶれてしまう。

 そして、右のグラフが歳出の動き。上に行くほど歳出をカットして、下に行くほど歳出のカットが甘いということですけれども、紫の右上からのしまで塗ってある社会保障費、ここに対する切り込みが非常に甘いことが特徴である。

 ご参考まで、後ほどごらんいただきたいと思いますが、5ページ、6ページがイギリス、ドイツの事例、7ページ、8ページが比較的成功したと言われるスウェーデン、カナダの事例でございますけれども、やはり成功している国は、歳入頼みではなくて、歳出のところにしっかりと切り込んで、間接税のウエートを高くしている。さらには、社会保障のところに抜本的に切り込んでいるということがありますので、我が国も歳入頼みではなくて歳出、とりわけ社会保障のところにしっかりと切り込んでいくことが必要であるという考え方です。

 9ページまで行っていただきたいと思います。歳出の中で公共事業ということでございますが、やはり過去のオリンピックなどのインフラの更新需要など、これからかなり巨額な更新需要が発生する。ただ、これを全てやっていたら財政はもう破綻してしまうということになってしまいますので、かなり選別的に、しかも民間のお金を入れていくような形でやっていく姿勢が重要である。

 実際、10ページの左のグラフ見ていただきますと、公共投資の景気刺激効果というのは一時的で、出したときには一旦景気が上がるけれども、抑えるとすぐに落ちるという、このようなことを繰り返して、我が国は世界最悪の財政状況になっている。

 右のグラフが公共投資の乗数ということですが、長いスパンで見ると公共投資の景気刺激効果はかなり落ちているということがございます。

 11ページをごらんください。やはり最大の問題は、社会保障にどこまで切り込めるかということ。一番上に中福祉・低負担から高福祉・低負担と書いてございますけれども、縦軸が社会保障における受益、横軸が国民負担ということですが、ごらんいただくと、日本は、もうほぼギリシャと並行に垂直に上に上がって、マクロで見れば完全に高福祉・低負担という状況になっている。これは、もう子や孫の世代にツケを先回ししているということですから、このようなことは、経済の問題だけではなくて、モラルの問題としてもいち早く是正していくことが必要である。

 12ページ、やはり90年度から30兆円程、歳出が拡大した中で3分の2程度が社会保障費である。

 そして、13ページ、ここでは横軸で成長のシナリオ、縦軸で社会保障費の伸び率ということでシミュレーションを行っていますけれども、やはり社会保障のところを相当切り込んでいかない限りは、2020年度の基礎的財政収支が黒字化するということは非常に難しい。社会保障について、どこまで具体性のある再建プランをつくれるかということが最大のポイントであるということです。

 ご参考までに14ページで、ストックベースで見た財政の動き、左上のグラフは2.5%の高成長など、それぞれ成長率を変えて、社会保障の伸び率のシナリオによって先々のストックベースの赤字が非常に大きく変わってくるということですから、社会保障のところをしっかりと改革することがポイントです。

 15ページは、もう釈迦に説法ということですので、見ていただくとして、16ページ、縦軸は潜在成長率、横軸が一般政府の負債ということでございますが、緩やかな右下がりの均衡線が引ける。もちろん因果関係については、いろいろな議論があると思いますが、全体的な傾向としては、やはり財政赤字が積み上がっている国は、潜在成長率が低い、このような現象が認められる。

 17ページを見ていただくと、Reinhart、Rogoffの論文。当初、データがちょっと間違っていて、当時のインプリケーションほどには政府債務が積み上がると景気が悪いという話にはなっていないわけですけれども、グラフは、全体としてやはり緩やかな左下がりの方向でございますので、債務が積み上がっている国ほど結果においては成長率が低いということがございます。

 18ページ、我が国では、老後の不安というものが経済に対して悪影響を与えている可能性がある。ポイントは、右下の四角の中に書いてございますけれども、1つ目の黒丸、これは左上のグラフですが、老後に必要な資金、これは黄色い線で1,500万円〜2,500万円でございますけれども、実際にはブルーの線ぐらいの貯蓄しかなくて、実際に求めているものと比べれば、非常に不十分な水準にとどまっている。

 2つ目の丸は上のグラフでございますけれども、金融資産を2,000万円以上保有している世帯は、やはり老後に対する不安も非常に少ないということがある。

 3つ目の丸は左下のグラフ、日本では、社会保障では老後の生活が足りないという考え方が根強いということで、ドイツだとかスウェーデンは、公的年金に頼る割合は高いわけですが、社会保障で足りると考えている向きも多いということでございます。

 19ページに行っていただくと、我が国では将来不安が貯蓄率を押し上げている。この左のグラフで見ると、上から2番目から一番上に行っているオレンジの線、老後の生活資金というのが金融資産の保有目的としてどんどん上がっている状況である。

 右のグラフは、貯蓄率の関数をつくって推計したものでございますけれども、ご注目いただきたいのは紫で塗ってある将来不安要因。本来は、高齢化で貯蓄率はどんどん下がるはずなのですが、将来不安があることが貯蓄率を下げることをかなり妨げているということがあるわけですから、むしろ、財政再建をやっていくことが、長い目で見れば消費などの面で見てもプラスの効果を有するのではないかという考え方です。

 20ページはアベノミクスの話ということですが、いわゆる七重苦問題、それから、追い出し5点セットといった、従来とられていた悪政がアベノミクスによってがらっと修正されて、全体としてはプロビジネスの方向で極めて適正な経済政策がとられている。

 その中で、21ページでございますけれども、冒頭申し上げたように、1本目の矢の金融政策に少し負担がかかり過ぎている。2本目は財政の規律を維持しなくてはいけない。3本目では岩盤規制の緩和を行うといった、若干語弊のある言い方かもしれませんが、ややポピュリズム的な傾向、金融政策は誰も大きくは文句を言わないわけでございますから、本来は、国民にとって耳の痛い社会保障制度改革だとか、岩盤規制の緩和、そこまで踏み込んで国民に提示をしていくことが、これからのアベノミクスの残された最大の課題であるという考え方です。

 22ページは、左が今までの「茹で蛙」構造、右がこれからの構造変化ということですが、今までは、お金が余っていて経常収支が黒字、そして、円高になり、デフレになり、低金利ということでございますが、これからオセロゲームのように一気にひっくり返る可能性があって、高齢化で貯蓄が取り崩される、経常収支が大きく悪化する、そして、円安になり、インフレスタグフレーションになり、長期金利が大きく上がってしまう可能性があるわけですから、このような構造変化を踏まえた上で、ちゃんと財政の規律を守るということが課題である。

 ちなみに23ページは、左がイギリスの1930年代の事例、右がアメリカの1970年代の事例ですけれども、いずれも経常収支の赤字化が視野に入ると、長短スプレッドが拡大して、国債相場がかなり暴落するということが起きているわけですので、今までは、このページの下にあるような日本とギリシャは違うという議論が一部は成り立ったわけですが、この経常収支の赤字化をきっかけにして、やはり日本の国債についても相当程度、警戒すべき状況に入る可能性がある。そこに先手を打って、財政規律を守ることが必要であるという考え方です。

 24ページは、いわゆるボーン条件、縦軸がプライマリーバランス、横軸が政府債務残高のGDP比ですけれども、極めて単純化して言うと、ピンクの矢印で左下から右上に行っている国はかろうじて持続可能である。ギリシャですら持続可能な状況でございますが、日本だけが、大局的には左上から右下に動いているわけですから、財政のサスティナビリティーをまずはしっかりと回復した上で、ストックベースのことを考えていくことが必要である。

 ちなみに25ページは、縦軸に長短スプレッド、横軸に政府債務残高をとると、かなりの国がきれいな線上に並んでくる。ところが、日本だけは右下で、相当異常値にあるわけですから、これからの構造変化を踏まえると、必ずしも国債相場は安心した状況ではないのではないかという考え方です。

 ご参考までに26ページは、ここ十数年のマーケットの方々の肌合いの感覚としては、左側の軸で長期金利、これを1万倍すると右側の軸の日経平均になる。ですから、今の日経平均1万9,000円台ということを考えますと、自然体では1.9%ぐらいまで上がってもおかしくない状況である。

 次のページは、金利のモデルをつくって、これから出口に行ったときに金利がどこまで上がるかということですが、少なくとも出口に行けば、長期金利は2%を大きく超えていく。将来的には4%、5%というものが視野に入る可能性がある。

 28ページは、違う角度で、OECDの平均的な金利モデルをつくって、ここに日本のデータを外挿すると、普通に日本の財政赤字が評価されてしまうときは5%ぐらいまで上がってしまう。今、経常収支がかろうじて黒字のうちに、先回りして財政再建をしっかりと行うことが必要であるという考え方です。

 30ページに行っていただいて、日本経済、後段の話でございますけれども、成長率としては2%近い、まずまず高めの経済成長が続いていく。

 31ページは景気の動向指数。これを見ると、昨年の1月が景気の山で、8月まで景気後退でございますけれども、9月以降は、かなり明確な形で底入れをしているということでございます。

 33ページをご覧ください。アベノミクスによる好循環が底流の部分では継続していくのではないか。一番上のブルーの線が企業の売上高、2番目のオレンジの線が個人の所得、3番目の緑の線が物価ということでございますが、ここでは、微妙に右斜めに傾きをつけて3本の線を重ねると、一定の時間差で比較的似たような動きをしてくる。

 実際、まずはアベノミクスのやり方として企業を元気にして、分配の原資をつくる。そこから半年から1年たつと、2番目のオレンジの線で個人の所得が上がってくる。今日が春闘の集中回答日でございますが、おそらく昨年を上回る賃上げが実施される可能性が高いだろうということです。

 34ページの左上のところをごらんいただきたいと思いますけれども、ここでは、日本とアメリカとドイツで時間当たりの実質賃金を比較すると、日本だけがマイナスの状況である。そして、この賃金をマル1マル2マル3という3つの要因に分解して、この数字は寄与度でございますので、3段の数字を足し込んでいくと一番上の段の全体の賃金に一致する。

 まず、ご注目いただきたいのはマル3という労働分配率、ここは若干下がっているわけですが、諸外国もほとんど同じペースで下がっているということですから、分配政策によってマル3の労働分配率を上げて、そこで賃上げをしようとしても伸びしろはかなり限定的なものにならざるを得ない。

 やはりマル1の労働生産性、それから、マル2の交易条件のような企業の広い意味での競争力、ここを3本目の矢によってしっかりと上げていく。TPPへの参加等々によってマル1マル2のところを成長戦略によって上げていくことこそが、持続的に国民の所得を伸ばすための鍵である。分配政策だけでは国民の低賃金の問題は解決しないということでございます。

 35ページをごらんください。上の図表は、縦軸が円安で企業の人件費がどれぐらい変わったか、横軸が経常利益がどれだけ変わったか。これは、アベノミクスによる累積的な円安効果を測定したものでございますけれども、右上のところにある大企業・製造業が圧倒的な恩恵を受けている。ここでご注目いただきたいのは、ブルーの丸の大きさでございますけれども、これが雇用者数を示している。つまり、大企業・製造業は、大きな恩恵があるわけですが、雇用者数は非常に少ない。他方で、左下のところの中小企業・非製造業は、あまり恩恵を受けていないけれども、雇用者数は非常に多いということですから、このアベノミクスの恩恵が大企業・製造業に集中しているということについては、一定の短期では政治の配慮というものが必要になるのではないか。

 ただ、下の図表で一番上のピンクの部分をご確認いただくと、マクロでは3兆円、企業収益が上がっている。そのうち製造業が2.2兆円、非製造業が0.8兆円、大企業は2.5兆円、中小企業は0.5兆円でございますけれども、結局、一部で言われる中小企業・非製造業にとってアベノミクスはマイナスであるという、この見方はおそらく事実関係としては間違っている。中小企業・非製造業も、わずかながらも恩恵は受けているわけであって、ただ、大企業の恩恵が圧倒的に大きいので格差は拡大している。

 ただ、例えば日銀短観等で見ても、中小企業のDIはもう何十年ぶりとかの水準まで改善しているわけでございますので、アベノミクスの基本的な方向性としては決して間違っていないということがあるのではないかということでございます。

 37ページ。左のグラフは、日本企業が国内で行っている設備投資と海外で行っている設備投資、この割合を説明する関数をつくったものでございますけれども、大体、円安が進んで2、3年たつと企業が設備投資計画を変える。徐々に国内への設備の回帰が大きな流れとして起きてくるということが想定される。

 これらの点を全部含めると、39ページ、ここではアベノミクスで好循環が起きるとき、それから起きないとき、経済モデルでどれぐらい2020年で差が出るかということを測定していますが、ベースアップが行われて、設備の国内回帰などが起きてくると、2020年の時点では26兆円〜27兆円程度、GDPの5%分ぐらいの極めて大きな差が生じてくるということがございます。

 43ページ、原油安の影響でございますけれども、左のグラフ、緑の線が世界の鉱工業生産、黒い線が原油価格ということですが、歴史的にはほとんど同じ動きをしている。ただ、2007、2008年のいわゆる商品バブルのときに、実力は80ドルぐらいだったのに140ドル台まで急騰した。この高過ぎる原因は、明らかに世界経済に悪影響を与えて世界経済が悪化したことである。現状は、緑の線で右軸を見ていただくと、実力はおそらく100ドル前後、これが今40ドル台まで下がっているわけですから、このことは、長い目で見れば日本経済、世界経済にとって非常に大きなプラスの影響を持ってくるという考え方です。

 実際、右のグラフ、縦軸が上に行くほど原油が純輸出になって、下に行くほど純輸入になる。横軸が名目GDPの規模、そして、ご注目いただきたいのは、青い丸の大きさが日本からの輸出レートということでございますが、やはり原油の輸出国は、日本から見るとあまり大きな輸出相手ではない。むしろ、横軸よりもちょっと下のところに日本の貿易相手が集中しているということですから、このあたり、日本経済にとっては原油安がかなりのプラスの効果を持ってくるという考え方です。

 そして、45ページを見ていただくと、まず左のグラフで、この原油安によって、これから物価が一時的にはマイナスに転落する。4月以降は物価が一時マイナスに転落するということでございますが、そのことは右のグラフをごらんいただくと、実質所得に対しては非常に大きな押し上げ圧力になってくる。

 ここで灰色の大きなブロックが消費税率引上げの影響、これは4月で一巡をして、物価が2%下がりますので、実質所得は2%上がってくる。さらに、緑の部分で、その他の物価が原油安で落ちつくことによって、4−6月期以降は実質所得がプラスに転換することが予想されるということです。

 全体として、50ページ目、原油安でかなり日本の成長率が押し上げられる。マクロモデルの結果でございますけれども、左上のピンクの部分、GDPは15年度が0.5%、16年度が0.4%程度押し上げられるということでございます。

 53ページ、ヨーロッパの日本化という話でございますけれども、この中で、(1)の概況ということで日本とヨーロッパを比較すると、特に物価などの部分では日本のほうがかなり良好な状況である。そして、(2)はヨーロッパのほうがいい材料。(3)がヨーロッパにとっての不安材料ということでございますが、ヨーロッパのほうが、やはり(2)に書いたようないい材料が、ファンダメンタルズということで言えば、そろっているのではないか。

 特に強調したいのは、この(2)のマル1でございますけれども、54ページをごらんください。ここでお示しをしているのが生産性と比べて時給がどうかということですが、時給は高過ぎても、低過ぎてもいけない。上の赤いところに行くと高過ぎて企業経営が苦しくなる。下の青いところに行くと、今度はデフレになって家計の生活が苦しくなる。

 日本は、90年代は上に振れて、2000年代は下に振れるという、このような動きをしているわけですが、ヨーロッパとアメリカは、比較的適正な形で賃金が真ん中の白いフェアウエーのところで管理されている。この点は、日本と比べたときに非常に大きな好材料である。

 ただ、他方で56ページ、中央銀行のGDPに対する資産の割合ということで見ると、日本が圧倒的に緩和をしているのに対して、ヨーロッパは緑の線、緩和をしていっているわけですが、まだ歴史的には緩和に対して少し慎重なところがあるわけでございますので、結論としては、ヨーロッパのほうが状況はいいが、政策対応、とりわけ金融政策のところでさらなる手を打っていくかどうかというあたりを一定程度警戒する必要があるという考え方です。

 57ページで4つのリスク要因。この中では、マル2の中国のところだけ一言申し上げたいと思いますけれども、58ページ、どれぐらい過剰融資があるかということを見ると、900兆円程度の過剰融資が存在する。最終的には2、3割が焦げつくというのが国際標準でございますので、おそらくイメージとしては200兆円〜300兆円規模、日本のバブル崩壊後の2、3倍程度の不良債権が将来的に中国で出てくる可能性を常に頭の片隅に置いておくことが必要である。

 64ページまで行っていただいて、最後にマーケットの展望でございますが、為替については、この下に3つ書いてありますように、アメリカが出口に行く中で、日銀は金融緩和を続けていく。アメリカ経済が着実に回復していく。貿易赤字が当面、まだ継続する。これらの理由から方向としては緩やかな円安の流れが想定される。

 次のページは、日本の株でございますが、オレンジの線が日本株、3本ある線がGDPのバンドということですが、歴史的には日本の株は、このGDPのバンドの中で動いてきた。例えば下限に行ったのは74年のオイルショック、2003年の金融危機、2009年のリーマン・ショックから民主党の3年間、株価はずっと陰の極にあったわけですが、今、ようやくまともな政策がとられて正常化の方向に動いている。一部のエコノミストが、株がバブルだという言い方をしますけれども、今までが逆バブルであって、現状のバリエーションは極めて正当なところで動いているという考え方です。

 若干オーバーしてしまいましたが、最後に、1、2ページのところで、全体のポイントとしては、やはり歳出のところまで切り込む形で、ある程度キャップをはめて社会保障の合理化をして、財政再建計画をつくることが重要である。

 日本経済は、着実な拡大を続けていくわけですけれども、やはり国民に耳の痛いことを言って、しっかりと社会保障改革と岩盤規制の緩和などを進める。長い目のリスクとしては、中国のバブルの崩壊、ここを常に頭の片隅に置いておく必要があるということでございます。

 私のほうからは、ご報告は以上でございます。ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。それでは、早速、ただいまの説明に関してご意見、あるいはご質問、どなたからでもどうぞ。恐縮ですが、名札を立てていただけると幸いです。加藤委員。

〔 加藤委員 〕 ありがとうございました。非常にご丁寧で、かつわかりやすい説明ありがとうございました。3点ほどお伺いしたいのですが、1点目は、13ページの社会保障のカットと成長率の行列の表は、非常にすばらしく、わかりやすいと思っております。

 これを見ると、プライマリーバランスを維持するためには、社会保障を相当カットしなければならないということだと思うのですが、例えば、この中で具体的にどのあたりを目指していけるか。例えば社会保障の伸びを1%といっても3,000億円削るのはなかなか大変なので、そういったことを踏まえて増税などの歳入増をどのような形で考えていかなければいけないのか。その辺、もう少し具体的にお教えいただきたいのが1点目です。

 2つ目が、9ページでインフラの更新需要の話をまとめていただいているのですが、これは、将来的にどの程度、歳出改革のほうに影響を与えるのかという、その辺りについて何らかのお考えを教えていただければと思います。

 3点目は、これは、おそらくいろいろと対象が違うと思うのですが、将来不安が貯蓄率を押し上げているという分析ですが、例えばSNAだけ見ていきますと、もちろん企業はすごい黒字ですけれども、家計貯蓄率はマイナスになったという形で、貯蓄率の低下というのが一般的に言われている中で、どのような形でこれを解釈すればいいのか。

〔 吉川分科会長 〕 では、熊谷さん、お願いできますか。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 わかりました。まず、13ページの全体のマトリックスですが、この示すところは、例えば経済財政諮問会議などで幾つか試算を出していますが、かなり楽観的なシナリオだとして横軸のマル1ぐらいのイメージであって、それほど成長が伸びないというシナリオだとマル3とかマル4ぐらいのイメージ。大体、彼らが計算している社会保障の動きなどと私どもの試算は比較的平仄が合っているわけでございますが、その意味では例えば横軸でマル1という相当な高成長を達成しても、かなり社会保障のところを削っていく必要が出てくる。

 4%となると額にして約1兆円のイメージですから、小泉さんのときに年間2,200億円削って、現実の事実関係はそうではないわけですが、おそらく自民党の中では、その2,200億円削ったことが1つの遠因になって政権交代したという、ある種の社会保障はタブーだといった考え方が蔓延している。

 ただ、そこまで今の日本の財政状況は甘いわけではなくて、やはり具体策としては、例えば支給開始年齢を今、65歳に向けて上げているわけですが、諸外国はもっと67歳、68歳に向けて上げているわけですから、これはやはり70歳に向けて上げていく。

 それから、年金の課税をもっと適正化していく。マクロ経済スライドも、結局は、ほんとうにすぐ発動するわけではなくて、最終的な落としどころとして、まとめて発動する形になってしまったわけですが、そこも本来的には、しっかりと発動していく。

 例えば国民会議などでいろいろと社会保障のところで議論されていますが、これは、口の悪い人に言わせると「竹槍戦略」という命名をされている方があって、例えば紹介状がない大病院の自己負担を増やすだとか、給食のところの負担を少し増やすだとか、そのような小さなところ、それはそれで重要なのですが、やはりマクロ経済スライド、支給開始年齢、年金課税という、そのような国民にとって耳の痛い大玉のところをしっかりとやらない限りは、試算上財政再建はできないということだと思います。

 それから、公共投資の部分は、単純に9ページの部分で見て、大体、60年代から70年代の前半ぐらいにかけて、非常に大きな橋梁だとか、その他の建設があったわけでございますから、これが、そのまま来るということであれば、到底賄えないインフラの更新需要が出てくる。その意味では、例えば橋を3本かけたところを1本残していくだとか、なるべく補修を中心にしていくとか、PFIなどによって民間の力を入れるだとか、そのような工夫をして、なるべく国費を投入しない形でやっていく。ここは、最終的には政治の決断であり、また、民度の問題になると思います。

 それから、家計の貯蓄率については、全体の数字としては確かに下がってきているわけですが、要因分解をすると、先ほどご説明した図表で、本来、高齢化がこれだけ進んでいるのであれば、もっと下がるのが自然である。ところが、将来が不安であることによって、本来下がるべきところが下がっていないということですから、ここは、ある種の非ケインズ効果が期待される状況であって、むしろ、国民に正面から状況を話して財政再建をしっかり行っていくことが、長いスパンで見れば日本経済にとってプラスではないかという考え方です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。司会ですが、関連して1点、クラリファイング・クエスチョンさせていただきたいのですが、社会保障に関連した13ページ。お答えの中で小泉内閣時代の改革について言及があったのですが、あのときの2,200億円というのは、自然体で仮に1兆円ぐらい伸びるのを2,200億円くらい伸びを抑制し、8,000億くらいに抑えるということだったわけですよね。13ページの黒三角は純減ですか。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 これは、純減ですね。自然増から比べてではなく、純粋な額としてという。ですから、非常に切り込まないと厳しいという現実ですね。

〔 吉川分科会長 〕 わかりました。どうもありがとうございました。それでは、お待たせしました。古賀委員、中空委員、井堀委員。

〔 古賀委員 〕 ありがとうございました。ご説明、ほんとうに大変ありがとうございました。2点質問させていただきます。

 1つは、金利の関係でございます。長期金利の上昇が見込まれるという言及がございました。そのような意味では、今後の全体の財政運営を考えたとき、政府の利払い増加への対応について、何かお考えがあればお聞かせを願いたいと思います。

 もう一点は財政規律の問題です。この場でも幾度か議論になるのですが、年度の当初予算の段階では財政規律について非常に意識をする。しかし、特別会計、補正予算を含めた全体予算の中では、どうも規律の意識が緩んでしまうという課題が、この場でも出てくるのですが、トータルでの財政規律について何かいい方策、手法などの、お考えがあればお聞かせを願いたい、この2点でございます。

〔 吉川分科会長 〕 お願いします。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 ありがとうございます。まず金利については、このところ日銀がほとんどの国債を買うことによって金利を低く抑えていましたので、これだけ借金が積み上がる中で利払いは少ないわけですが、日銀が出口に行けば、少なくとも金利は2%を超えて、将来的には4%、5%という可能性があるわけですから、その意味では、債務の残高が利払い費に従来以上に大きく波及するという懸念が出てくる。これを抑えるのは、なかなか難しいところはあるわけですが、1つは、理財局などがやられていると思いますが、金利が低い今の段階で、なるべく長いところで調達をして、そこで金利が上がったとしてもすぐに波及しないような、デュレーションをつくっていくということ。

 もしくは、財政の規律を維持する。結局、これだけ黒田総裁が大胆な金融緩和ができる前提条件としては財政規律が維持されていることが絶対条件である。日銀がほとんどの国債を買ってしまうわけですが、その日銀の持ち主は実質的には国ですから、そこがたこ足配当のようなものだと思われてしまうと、一気に国債の信任が崩れる。だから、大胆な金融緩和と財政規律の維持は、黒田総裁が何度もおっしゃっているように絶対にセットとしてやっていく。そこが重要になるのではないかと思います。

 財政の規律のところは、まさにご指摘のとおりで、マスメディアなども含めて慣行として、当初の予算は非常にチェックをして、いろいろと報道もあるわけですが、補正予算になると、どうしても季節の風物詩のようなところがあって短期間でやると。短期間だから、雑多なものが入って、どうしても現実問題としてチェックが甘くなってしまうというところがあるわけですから、補正予算も含めて、しっかりと管理をするような仕組みをつくる。もしくは、補正予算自体が問題だというぐらいの意識が必要である。

 そして、全体として、おそらく補正なども含めた形で何らかのキャップだとか、ペイアズユーゴールール的なものを、細かい費目まで落とし込めるかどうかは別として、全体のマクロの歳出の部分では、つくっていくことが必要ではないかと思います。

〔 古賀委員 〕 ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 では、中空委員、お願いいたします。

〔 中空委員 〕 ありがとうございました。私、初めて熊谷さんのプレゼンを聞いたのですが、すごい上手で、だから執行役員になるのだなと思って聞いていました。最初の前半の財政のところはもう100%アグリーなのですが、エコノミストの方なので、いつも私が変だなと思っているところについて幾つか答えをいただければと思います。

 34ページですが、実質賃金の国際比較があります。実質賃金は、これから4月になるとプラスに入るという議論はよくわかるのですが、このような3要素で分けていくということも理解はしているつもりです。労働生産性を上げるということは非常にわかるのですが、よく考えると、何をすれば労働生産性は上がるのかと。例えばIT化とかデジタル化とか、そのような話、あるいはロボットを使うとかなってくると、人が要らなくなるのではないか。そのような一般的な疑問にはどうお答えになるか、ひとつ教えていただきたいです。

 例えばTPPをやったら、ほんとうに全てのいろいろなものが解決してくのか。基本的には、何をやると、こういったものがドラスチックに変化していくのか、コメントがいただければと思います。

 それから、35ページ目ですが、企業部門はアベノミクスの政策の中でかなり無理をさせられているという印象を私は持っていて、その中で大企業は非常にいい業績になってきた。円安も原油安も効きました。これは非常にわかります。

 しかし、この表にあるとおり、中小企業などは苦労をしておられる。中小企業の数字的には、先ほどのご説明の中で上がっており、成果もあると。しかし、差があるからよくなく見えるというご説明だったのですが、おそらく、このままでいいわけはなく、大企業の利益がもう少し中小企業に行くためには、どのような施策があると、熊谷さんとして何かいいアイディアがあれば教えていただきたいと思います。

 それから、37ページ目に行きます。海外投資を国内へ回帰するという議論について、私はかなり疑問を持っていて、かつても、ほんとうだったら海外に工場を持つべきなのに無理やり日本に持たされた面があって、だからこそ、特定のセクターではありますが、電気セクターなどはかなり苦労したということだと思っていて、確かにこれから円安がずっと、長期的には進むと思いますから、それほど違っていないのかもしれませんが、やはりグローバル化を張っていく中では、為替差損はそれほど大きな問題ではなくなってくるはずだと。基本的に工場などは、需要に見合ったものをつくるべきなので、国内回帰という議論は果たして正しいのかどうか。あまり行き過ぎてしまって、民間企業の方が、国内回帰しなければならないのかと思ったら、それはそれでリスクなのではないかと常々思っているので、そこをお答えいただきたい。

 最後、43ページです。原油安が日本経済を下支えというところですが、これはほんとうにそうだと思います。原油安があったおかげで、消費税率引上げの先送りもファイナンスできたと認識をしています。

 しかしながら、原油安とは、やはり世界経済から見ると、サウジアラビアはいいとして、ロシア、ウクライナ、それから、今にも潰れそうなベネズエラなど、たくさんの国の疲弊が出てきています。

 日本経済はいいかもしれないが、ほかが悪くなったら、不確定要素として、そちらが膨れてくるはずだと思っているのです。その問題を熊谷さんの説明の中でどのように押さえ込むか、そこの説明もお願いしたいと思います。以上、4点、お願いします。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 まず34ページで、生産性をどのように上げるかということですが、これは国際比較をしてみると、製造業はそこまで低いわけではなくて、非製造業のところの生産性が低いという問題がある。1つには、ITの装備率が非製造業のところで低い、そこがかなり特徴として出てくるわけですから、例えば大手の小売はITを入れていますが、地方の商店街などではあまりITが活用できていないだとか、もしくは医療・介護その他では必ずしもITをうまく活用して、人の適正配置などができていないということがありますので、1つはITを入れること。

 あとは、今の構造改革の中ではどちらかというとホワイトカラーエグゼンプションのことが話題になっているわけですが、私は、むしろ雇用の最も重要な問題は、判例の4要件があって、企業が追い込まれてからしかリストラができないということ。むしろ、景気がいいときに、伸びている分野に社会的に人を配置転換できる、このような攻めのリストラができるような、これは解雇の金銭的解決まで含むことですけれども、そこまで、この安倍政権が踏み込めるかどうかということがポイントである。

 あとは、資料の中では81ページをごらんいただきたいですが、やはり女性の活躍は非常に重要なポイントであって、縦軸が経済のレベル、横軸が女性が活躍しているかどうかですが、やはり緩やかな右上がりの均衡線が引けて、女性が活躍している国ほど経済が非常にいいということがある。これは、ミクロで見ても、いわゆるなでしこ銘柄などと言われる、女性が活躍している企業ほど業績がよくて株価が高いわけですから、そのあたりのITだとか雇用の改革、女性の活躍などをやっていくことがポイントではないか。

 それから、35ページで、中小企業のところへの波及ということですけれども、ここも冷静に見れば中小企業の業況感はかなりよくなっているということがあって、例えば昨年の4月、春闘で3分の2の企業が賃上げを行った。それから、4割の中小企業がベースアップを行っているわけですから、今まででは考えられないようなレベルでよくなっている。

 ただ、これからの問題としては、やはり基本的な考え方としては同一価値労働同一賃金の原則、同じ働きをすれば、ベースの部分では同じ給与を払っていく、そのような状況をつくっていくことが、まず分配面での基本と思いますし、中小企業が非常に多いわけですから、地方の再生をすることがポイントになる。

 例えば73ページ、74ページ。73ページで、上のグラフは80年代から90年代の動きで、ここは県ごとのばらつきが少なかった。そして、下半分の2000年代にかけては県当たりのばらつきが非常に出ている。

 これをまとめたのが74ページですけれども、74ページの右のグラフは1人当たりの雇用者報酬を3大都市圏とその他で比較しているわけですが、所得が地方で伸びていないのは、緑の部分の分配に問題があるわけではなくて、赤い部分、成長のところが地方で最大の問題になっている。

 ですから、考え方としては、このページの一番下に書いてありますけれども、分配政策ではなくて、成長戦略をやっていく。これは、おそらく今、石破大臣がやられているPDCAサイクルを回すということに尽きると思いますけれども、例えば秋田の大潟村だとか、幾つかの成功例の共通要素を機能的に検討して、それぞれの地域にある程度合うような、そのようなものを地域の人が主導する形でやっていく。そこの地方の再生が、もう一つ大きなポイントではないか。

 それから、37ページの海外投資ですけれども、ここは実は私がよく使っているグラフで日本と海外のGDPの比率が1本の線、もう一本の線は空洞化の状況、この2つの線を重ねると、実は2007年ぐらいまではほとんど同じ動きをしてきた。経済実態に見合う形で、ある意味で生産設備の最適化が進んできたわけですけれども、問題は2009年の民主党政権成立以降、いわゆる追い出し5点セット、七重苦の問題があって、この2つの線が完全に乖離してしまった。経済実態に合わない形で悪い空洞化が起きて、そこから空洞化が進行してきたわけですが、今、安倍政権がプロビジネスの政策に転換することによって行き過ぎた空洞化が適正化している。

 ですから、おっしゃるように電機などは、産業競争力係数などで見ても、これはなかなか容易には戻りませんが、その他のところで悪い政策によって、行き過ぎた部分は着実に戻ってくるだろうという考え方です。

原油は、世界全体で見ると、今ぐらい原油が落ちると200兆円ぐらいのお金が産油国から非産油国、先進工業国に移転をする。産油国よりも先進工業国のほうが経済効率だとか、投資効率は明らかにいいということですから、200兆円の移転によって世界経済全体にとってはプラスである。IMFも0.3〜0.7%世界経済が上がるということですが、おっしゃるように一部のベネズエラ等での影響はあるわけですが、これはあくまで経済の部分の話です。

 もう一つ言えることは、グラフで見ていただきたいと思いますが、61ページ。ここで縦軸が危機に耐える力、横軸が健全性。ほとんどの新興国は、昔は左下のところにあって、丸が小さかった。外貨準備高のバッファーが小さかったのですが、ほとんどの国が右上に来て、しかも丸の大きさが大きくなっている。アルゼンチンだけはいかんともしがたい状況ですが、その他の国はファンダメンタルズが非常によくなっていますので、よほどのことがない限り新興国が危機に入る可能性はそれほど大きくはない。ただ、一部の産油国は常に動きを警戒する必要があるという考え方です。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では、井堀委員、角委員の順番で。

〔 井堀委員 〕 どうもありがとうございます。簡単なコメントを3つ。

まず、13ページの今までも出てきました社会保障抑制、伸び率と経済成長率の関係のグラフです。社会保障抑制が財政再建の鍵だというのはそのとおりで、私も社会保障費を抑制するべきだと思っているのですが、この試算は社会保障費の伸び率と経済成長率をそれぞれ独立に置いて、その相関を見たということですね。

 1つ気になる点は、社会保障費を抑えることが経済成長率にどのような影響を与えるのか。あるいは、それに対して何らかの試算がされたのかということ。要するにマクロで見ると、社会保障費は移転支出ですから、社会保障費を抑制するということは実質的には形を変えた増税と同じです。よって、非ケインズ効果が働けば増税しても財政再建のメリットが出てくるので、経済成長率は落ちないと思うのですが、試算をするときに社会保障費の伸び率を抑えたことが経済成長にどの程度悪い影響を与えるかについて、何らかの試算をされたのであれば、それについてお伺いしたい。

 それから、2番目は、さっきの原油の話です。43ページの左側のグラフを見ると、トレンドとしては世界の、要するに生産の全体的な動向と原油価格はほぼ並行して動いていて、ここ半年ぐらいが特に乖離が激しいということです。もちろん原油安は日本経済にプラスになるというのはそのとおりです。問題は、この乖離、要するに原油が今、極端に下がっているということが逆バブルだとすると、またもとに戻る可能性もあるわけです。日本の財政再建を視野に置いた10年、20年のオーダーで考えたときに、原油安のメリットがどのくらいこれから続くのか。あるいは続かなくなって、もう一度原油がもとのトレンドに戻るとすると原油安のメリットが逆にきいてくる可能性もあるので、そのあたりのリスクをどのように考えておられるのかということ。

 それから、3番目は、今日はあまり触れなかったのですが、消費税率の引上げの話です。8%に上げるときも議論になったと思うのです。今度、2017年4月に10%に上げることになっているのですが、仮にこれが予定どおり上がらなかったときにどの程度マーケットにインパクトがあるのかについて、何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 なるほど、わかりました。まず、1点目の点は、実はここでお示ししたのは社会保障費と経済のそこのフィードバックは入っていない試算になるわけですが、私どもの中期モデルというものがあって、そこの中では若干のフィードバックを考えながら計算しているというのがありますので、ちょっと今、数字は持ち合わせていないのですが、そこの部分はある程度の大きな関係が出てくるのではないかと思っています。

 それから、原油については、43ページですが、確かに2007、2008年の時期を見ますと原油が実力よりも非常に高くて、もちろんリーマン・ショックの影響もありましたが、その結果、世界経済が急速に悪化をした。ですから、今回もシェールガスなどがあることを勘案しても実力は80ドルぐらいだということですから、おそらくこの後、長い目で見れば世界経済がよくなることによって、今のフェアバリューの100ドルよりも高く上がる可能性が出てくる。

 ただ、OPECのいろんな話などで見れば、当面、1、2年ぐらいは安くて、むしろ3年〜5年ぐらいで非常に大きく上がってくる可能性がある。

 そのときの影響は、50ページの左下のピンクのところ、大体、原油が落ちることで経常収支はGDP比で2%程度、つまり10兆円程度改善するわけですが、これが悪化する方向に来ると経常収支の赤字化の可能性が出てきますから、それこそ財政だとか国債市場のところに原油が上がることが悪影響を与える。その可能性が3年〜5年程度のスパンでは警戒しないといけないのかなという印象です。

 それからあとは国債市場、これは、民間の家計の金融資産の貯蓄と国の債務、これがどのような関係になるかということが一つのポイントだと思いますが、お互いにグロス同士で見ると、おそらく、2020年代の半ばぐらいに家計の資産より国の負債が多くなって、ネット同士で見ても2020年代末にかけてはネットでの位置づけも逆転するということですので、その意味では、長く見たとして猶予はおそらく10年程度、マーケットが少し早く反応すれば5年程度、ということがあるわけですので、リーマン・ショックのような状況ではなくて、ある程度まともな経済状況で先送りをすれば、そこは日本の財政再建に対する意思が疑われて、国債が少し前倒しで大きく崩れるリスクが出るという考え方です。

〔 吉川分科会長 〕 角委員。

〔 角委員 〕 35ページでアベノミクスの結果が出ておりましたが、関西で関経連がこの1月に賃金引き上げに関するアンケートをしますと、大企業よりも従業員1,000人未満の中小企業のほうが今年の春闘については賃金を改善するという企業の比率が高いのです。中小企業のほうが賃上げに対して積極的な企業が多いというデータが出て、私もびっくりしたのですが、やはりいかに労働市場がタイトになっているかということの証左だと思います。

 それと、言いにくいのですが、サービス産業の生産性が諸外国に比べてあまりに低いのですよね。ですから、ここをおっしゃるように改善したいのですが、例えばホテルの宿泊価格一つとっても、国際的な価格を見たときにかなり価格差があるので、同じ人間が働いていても、IT化もかなりやっているわけですが、なかなかそこの生産性が上がってこないという悩みがあります。

 それと、70歳の問題もまさに私は同意見なので、それに向けてどのようにこれから運動を起こしていくべきかということが悩ましいところなのですが、ぜひとも何かいいお考えがあればということと、13ページの純増純減ということであるならば、要するに現在の給付ベースで大体110兆円ですよね。これが2025年には約150兆円になるだろうと言われていて、今のまま放置すれば、2020年にはそれが幾らぐらいであって、それを幾らに抑えれば、例えばこのシナリオマル2で言いますと、マイナス4%であれば、ほぼプライマリーバランス均衡ということですので、いわゆる社会保障費を幾らにすれば均衡するのかという実数で教えていただければありがたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ちなみに、最後の点は、社会保障の給付全体ですか。

〔 角委員 〕 給付全体です。

〔 吉川分科会長 〕 ここでの社会保障というのは予算の中のあれでしょう。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 はい、そうです。

〔 角委員 〕 そうですが、給付費をどれぐらいの水準にすれば。

〔 吉川分科会長 〕 パーセントですね。その点も含めて、どうぞ。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 まず、人手不足の問題は、88ページのところですが、ブルーの点が12年末、安倍政権が成立したときの人手不足度合い、赤い点が足元の人手不足度合いで、差をとったものがピンクのところです。

 ごらんいただくと、やはり中小企業のところでかなり人手不足感が強く、おそらくそこでも人を集めるために賃上げの動きがかなり出てくるというのがある。

 業種でいえば、例えば次のページで、縦軸が賃金レベル、横軸が人手不足の度合いですが、やはりどちらかというと右側のところにあるサービス関連や小売、建設等々、このあたりを中心に人を集めざるを得ないので、これから賃上げの動きが出てくるのではないかと思います。

 また、サービスの部分の生産性でいえば、日本の場合には、1つは少し供給過剰な部分もあると思いますし、例えばマクドナルドなどでスマイルはゼロ円、サービスはタダといった文化が定着しているところがありますから、ある意味で適正なサービスには適正なお金を取っていくといった、企業サイドの価格の値づけの行動のようなものをミクロサイドで進める必要があるのではないか。

 それから、13ページのところは、具体的な全体の額はいま持ち合わせていませんので、必要があれば額を後日お伝えしたいと思います。

〔 角委員 〕 ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 では、倉重委員。

〔 倉重委員 〕 3点お聞きします。

 第1点は、ドーマーの原理ですが、データとしては、日本でも過去ありましたが、世界的にもなかなかもう通用しない。なぜ、そうなったのか。規制金利がなくなったからなのか、要するに資本主義的な世界がある程度の発展段階になったから、それは難しいのか。

 それと、アベノミクスというのは、基本的には成長にウエートを置いて、そこで財政再建していくという方式なので、むしろドーマーの原理が成立することに乗っかって議論している気が私はするのですが、それについてどう思われるか。

 第2点は、今のお話を聞いて、日本が異質だと思ったことは2つあります。1つは、本来、社会保障にお金がかかって、しっかりと負担すべきところを先送りしてきたということと、やはりこれだけ国債を抱え込みながら低金利で済んでいるという、この2つのデータが異質だと感じたのですが、それぞれの本質的な原因は何なのか。

 第3点は、熊谷さんの話は非常によくわかって、アベノミクス的転換をしたがゆえに日本経済が再生し、注文はあるにしても、基本的に構造的にはいい変化をしたというお話だと思いますが、万が一民主党政権がそのまま続いていて、そのような政策転換がなかったときに、今おっしゃったような基本的なデータはどのような状況になっていたのか。

〔 吉川分科会長 〕 では、簡潔に。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 わかりました。

 1点目は、やはり昔の規制金利の時代はドーマー条件を満たすこともあったのですが、金利が自由化してくると、理屈からいえば名目成長率などにリスクプレミアムが乗って長期金利になるわけですから、昔、与謝野・竹中論争というものがありましたが、私は、やはり与謝野さんの言っていることのほうが正しいと思って、本来の自然な姿に戻っていると。

 安倍総理がドーマー条件を満たすことを考えているかどうかは、私からは判断しかねるところがありますが、ブレーンの方がそのような趣旨のことをおっしゃる方がいらっしゃいますから、もしかすると、そのようなお考えでやられているところはあるのかもしれないと思います。

 それから、先送りというのは、これは、あえて誤解を恐れずに言えば民度の問題ということがあるのではないかと。「朝三暮四」という言葉がありますが、結局、猿が朝3つもらうのがいいか、夜4つもらうのがいいかというレベルでのメディアでの議論、消費税には絶対反対して、どんどんあらを見つけて足を引っ張っていくような、それから、消費税増税したから日本が長期低迷に陥ったといった、そのような事実関係と異なることを大々的に言うだとか、そのあたりを含めて、やはりマスコミの責任だとか、民度だとか、そのようなものがある。

 あと、今まで低金利でもってきたのは、先ほど五角形の図表で示しましたが、今までは、あのような「茹で蛙」構造、じりじりと悪くなっていく構造だったのですが、これからは少子化で貯蓄は取り崩されて、経常収支は赤字化の可能性が出るので、その構造変化を踏まえた上で政策対応が必要である。

 そして、民主党は、完全のオフレコの世界であれば言うことはたくさんあるが、全体としては、企業が悪いやつらで、家計は善良なやつらといった、勧善懲悪的な二元論が、経済政策の根底にあったのではないか。

 ところが、家計と企業は、市場を通じてつながっているわけですし、一人の人が昼は企業で働き、夜は家計になるわけですから、車の両輪であって、そこをしっかりとやらなくてはいけない。非常にバランスの悪い分配政策だけが行われてきたという、経済政策面では、そこが問題だと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では、土居委員のプレゼンもありますが、1点だけ、コメントをさせていただきます。

 先ほどの倉重委員の最初の質問ですが、資料の1ページの一番上にある不等式、要するに長期的に見ると金利のほうが成長率を上回る、これは一体どのような感じか。先ほど規制の話もあって、それももちろん関係するでしょうし、今、逆転しているというのは、つまりは成長率のほうが金利より少し高いこともあり得るというのは、熊谷さんのお話にもあった日銀の超金融緩和の影響などがあると。

 しかし、長期的に見れば金利のほうが高いという、ドーマーの名前、ドーマーは70年ぐらい前の経済学者の名前ですが、現代版がピケティの不等式です。金利がR、成長率がG、帰りがけに本屋さんに寄っていただいて、平積みされている雑誌をごらんになると、RがGよりも大きい、これが資本主義の長期的な姿であると。

 この点については、ほとんどの経済学者がアグリーしていることではないでしょうか。もちろんハウマッチの問題はありますが、長期的に見れば金利のほうが成長率よりも大きい。

 ピケティは、ご存じのとおり所得分配に関していろいろな議論をしているわけですが、我々に直接関係しているのは財政ですが、やはり長期的に成長率が金利を上回るというのは無理筋というのが経済学の普通の考え方だろうと思います。

 それはそれとして、お待たせしました。土居委員、お願いいたします。

〔 土居委員 〕 機会をいただきまして、ありがとうございます。お時間もございませんので、早速、資料2をもとにしてお話をさせていただきたいと思います。

 私もかかわりまして、総合研究開発機構の研究会で6人の経済学者による共同提言を1月と2月に公表させていただきました。原本は、お手元にもございます緑色の2つの冊子でございますが、今日は資料2の横長の資料に基づきましてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、おめくりいただきまして2ページ目でございますけれども、共同提言を、このようなメンバーで発表させていただきました。

 3ページ目です。そもそもこの共同提言を出した動機ですが、これは、委員の先生方にはもう釈迦に説法ですけれども、団塊世代が75歳以上になって社会保障費が増大すること。それから、そもそも異常なほどに積み上がった債務残高。そして、今後、インフレ期待の上昇、デフレ脱却後の日銀の政策転換、高齢化による国内貯蓄の減少という3つのいずれか1つでも発すれば、将来的に金利上昇のリスクが高まるという背景がありますから、早期に財政健全化が必要であるということです。

 前回の事務局からの説明にもありましたように、楽観的な経済成長の見通しを立てても、2020年度のプライマリーバランスの黒字化はまだ目途が立っていないという姿が4ページ目、それから5ページ目にございます。いろいろな考え方の組み立て方はあると思いますけれども、仮に名目経済成長率が3.5%前後に推移して、2020年度を迎えたとしても9.4兆円のプライマリーバランスの赤字が残ってしまう状況でありますから、これ以上さらに高い経済成長率を期待しない限り、この9.4兆円は、経済成長によって増税しないでも収支が改善することはあり得ないということですから、残された方法は、この9.4兆円をいかに歳出削減か増税か、その組み合わせによって解消するということと思います。

 6ページ目ですが、結局のところ、債務残高対GDP比が発散しないようにすればいいわけだから、基礎的財政収支を黒字化するかしないかは二の次であって、債務残高対GDP比が下がりさえすれば、それでいいではないかといった見解が世の中で示されたりしていますが、決して、そうではないということを少し掘り下げてお話をさせていただきたいと思います。

 7ページ目で、これも先ほどご紹介した内閣府の今年2月の中長期試算の数字でありますが、これを経済再生ケースで捉えますと、もう既に2014年度以降、その比率は下がることが試算で出ております。極端に言えば、基礎的財政収支の黒字化という目標を放棄して、債務残高対GDP比だけ下がればそれでいいのであれば、何も改革をしなくてもなし遂げられるという非常に低過ぎるハードルを自ら課してしまうというわけでありますが、ご承知のように、釈迦に説法ですが、歳出構造の改革、社会保障の改革、さまざまに取り組む必要があるわけでありまして、財政健全化という一つ強い動機とあわせて、さまざまな改革も着手していく必要があると思います。

 そして、8ページですが、後で詳細は申し上げますけれども、公表されているデータをそのまま分析もせずに、単に2つの変数の相関をとっただけで基礎的財政収支を改善しても債務残高対GDP比の改善にはつながらないかという批判をする向きもあります。しかし、それは誤りであって、基礎的財政収支の赤字をこつこつと減らしていくことによって、債務残高対GDP比は抑制されていく、そのような構図になっているということを申し上げたいと思います。

 8ページ目の赤い箱で囲っているところでありますが、詳細は細かい数式になりますので、その細かい数式を解いた結果ということで、この赤い箱の中に書いております。つまり、去年から今年にかけて債務残高対GDP比がどれだけ増えたか、減ったかという変化幅は、今年の基礎的財政収支赤字対GDP比と、あと、金利と成長率、これらは先ほど吉川会長からもありましたどちらが大きいか小さいかという、その要因の2つの要素から構成されているということであります。

 少し例えて申しますと、お風呂の湯船の中にお湯を入れる。その蛇口から出てくるお湯がまさに基礎的財政収支の赤字であります。これが多いと、当然、お風呂の湯船にたまるお湯がどんどん増えていくことになります。たとえて言えば、湯船にたまるお湯の量が債務対GDP比です。ところが、その蛇口を閉めようとして赤字を減らしていけば、湯船にたまるお湯の増え方が減っていく、このような対応関係になっています。

 ただし、後でもう一つ、特殊要因という話をいたします。ただ、蛇口だけからお湯が流れ出てくるわけではなくて、風呂おけを持ってきて、蛇口とは別に風呂おけからお風呂の湯船にお湯を注ぐと、これまたお湯の量が増えるという関係もありまして、それも含み込んで湯船にたまったお湯の量が幾らあるかという計算を実際の統計ではしております。

 ところが、その風呂おけからお湯をどれだけ足すかということは、プライマリーバランスとは全く関係ないところの要因なわけです。つまり、プライマリーバランスの赤字は、あくまでも蛇口をひねって出てくるお湯の量であります。ですから、そのお湯の量をどうコントロールするかということと、風呂おけからどれだけお湯をつぎ足すかということとは別にして考えなければいけないということであります。

 この赤い箱で囲っている部分は、風呂おけから入れるお湯の足した量は含まれていません。風呂おけから臨時的にくみ入れる、そのようなお湯は、統計上は特殊要因でありますので、そのような特殊要因を取り除いてもなおきちんと蛇口をひねったら、湯船にたまるお湯の量がうまくコントロールできるのかを測らなけれならないということであります。

 特殊要因ということで10ページでございますが、風呂おけは、もちろんくみ入れるだけでなくて、たまっているお湯をくみ出すという方法もありまして、例えば風呂おけを使ってお風呂にたまったお湯をくみ出すのは、郵政民営化に伴って、本来、政府の債務であったものを郵政の組織が移しかえられることによって債務が対象外になるということがありますので、対象外になった債務は、一旦たまったお風呂のお湯から風呂おけを使ってくみ出されるということです。

 ほかにも逆にくみ入れるということもありまして、この特殊要因を除去するとどうなるかということで、12ページでございます。12ページに、そもそも蛇口から入ってくるお湯の量が縦軸、つまり、プライマリーバランスの赤字が縦軸であります。そして、横軸は、たまっているお湯の量がどれだけ増えたかということで、債務対GDP比が去年度と比べて今年どれだけ増えたかということであります。これは、右に行けば行くほど去年度より今年度大きく増えた、左に行けば行くほど今年度は去年度よりもあまり増えなかった、このような関係であります。

 これがプラスである限り増えているということです。もしうまく財政運営ができれば、債務残高対GDP比が減らせるということですけれども、減るというのは、この横軸がマイナスの値になるということですので、実際は1998年〜2013年度までの日本の財政ではマイナスになったことは残念ながらないということであります。

 この結果を見ていただくと、右上がりの関係がごらんいただけると思います。つまり、基礎的財政収支赤字を減らせば債務残高対GDP比の増え方が小さくなる、このような関係になっておりますので、13ページに書いてありますけれども、基礎的財政収支の改善は、債務残高対GDP比の改善に貢献しているということでありますので、基礎的財政収支の改善は極めて重要な取組です。

 そして、14ページ以降は社会保障改革の話をしております。非社会保障支出には歳出削減の余地が限られているので、自ずと社会保障にメスを入れることが求められる。そこで、先ほど角委員からもご質問がありましたが、公費ベースに直したときに社会保障費、国と地方合わせておそらく十数兆円ぐらい2010年代後半で増加すると見込まれております。

 そのようなことで、先ほどの内閣府の中長期試算と整合的な数字で申しますと十数兆円程度増えるという自然増の中で、幾らぐらいの増にとどめるかが社会保障改革では重要だと。もちろん自然増を削減するということですので、社会保障を削減するという言葉をどうしても使わざるを得ません。そういたしますと、弱者を切り捨てるとか、医療や介護の質を低下させているのではないかといったことを連想させるのですが、我々の提言では、そうでない方法があると申し上げております。

 15ページであります。削減の金額まずありきとなりますと、どうしても先ほどの批判を甘受せざるを得ないということがありますので、まずは、我々は社会保障の姿をどちらの方向に導くべきなのかということで、我々の共同提言では、医療、介護、年金の3つの分野では、次のような方向性が我が国にとってあるべき姿ではないかと考えたわけであります。

 これは、我々だけが言っているわけではなくて、例えば社会保障制度改革国民会議なども同様のことを言っていたりします。医療は、国民会議の言葉をかりれば、病院完結型から地域完結型へという形で、できるだけ住まいの身近なところで医療が受けられる方向に改めていくことが大事だと。それから、西日本と東日本で同じ病気でも治し方が違ったりして、一人当たり医療費も違ったりするといったことを改めて、診療を標準化していくという方向にもっていくことはどうかということであります。

 それから、介護も、要介護認定がルーズになっている地域があったりするので、これをさらに精緻化することと同時に、重度者へのケアに重点化していく。

 そして、年金は、長い目で見ますと、老後の所得保障の強化と世代間での財源分担をきちんするということなのですが、今から着手しても2020年度までに年金の改革によって収支改善の貢献ができる部分はどの程度あるか。先ほどもお話にありましたが、年金の支給開始年齢の引上げなど、方法はいろいろありますが、5年で成果が出るほど早い成果は期待できないので、5年以内に成果が出るとすれば、より多く年金収入を得ておられる高齢者に対して、公的年金等控除の圧縮をすることは考えられるだろうと思います。

 削減ばかりだと思われても違いますので、16ページでございます。これは、共同提言をもとにして私が個人で書かせていただいたものです。給付抑制・効率化は経済成長や格差是正にも資するのであります。例えば経済成長でいいますと、保険料負担の軽減を通じて事業主保険料の負担軽減によって経済成長に資すること。それから、医療・介護の業務の生産性向上を通じて成長に貢献することがあります。

 もう一つ、これらは逆進性の強い保険料を負担軽減--負担軽減といっても、大きく増えるところは小さく増えるのにとどまるという程度でありますが、大きく増えていれば、さらに逆進性が助長されていた保険料を、その逆進性を緩和することができて格差是正に役立つことがあろうかと思います。

 そして、具体的な歳出削減がどの程度出るかという試算を我々はいたしました。17ページ目にあります社会保障改革と削減額の例示であります。医療提供体制の改革によって0.8〜2.7兆円。ジェネリックの普及によって0.3兆円〜0.5兆円、これは、我々財審でももう何度となく議論している話であります。それから、調剤薬局の技術料や過剰投薬を抑制することで0.8兆円程度、2020年に向けて削減効果が出ると思います。

 医療提供体制の改革について、一言だけ申し上げたいと思います。18ページ目にありますように、医療費は同じ病気で診察を受けても、地域差がある。

 さらに、年齢補正をした19ページ目でごらんいただきますと、俗に西高東低と言われます。年齢補正後でも、西日本のほうが平均よりも高い1人当たり医療費になっています。その理由の多くは、19ページ目の棒グラフが示しておりますように入院のところで生じていますので、入院にまつわる1人当たり医療費の地域差をベストプラクティスに近づけていけば、その分、患者の医療には差し障らない形で、治療もきちんとしながら医療費を抑制できることがわかると思います。

 20ページ、21ページは、同様に地域差がありますので、このような地域差を縮めていくことによって、過剰に出ている医療費を患者に迷惑をかけることなく、さらに言えば医療機関の経営にも配慮しながら削減できるということだろうと思います。

 そして、22ページは介護と年金であります。介護の給付については給付の効率化、特に軽度者のサービスにおいて専門職でなくボランティアでもできるものについては、ボランティアに委ねることによって給付費は出さなくてもケアはできる。このようなことになりますので、そのような工夫がまだできる余地が1.1兆円ぐらいあるだろう。それから、公的年金等控除の圧縮によって0.4兆円は出るだろうと思います。

 25ページでありますけれども、基礎的財政収支黒字化目標を必ず達成するということは、私たちとしても願っているところでありまして、これを達成するには、先ほどの金額を合計いたしましても3.4兆円〜5.5兆円という金額になります。5.5兆円というのは、特に医療費の地域差を縮めることなのですが、5年でなし遂げろと言われるとなかなか厳しいぐらいの金額でありますけれども、やってできなくはないので、何とか頑張っていただきたいということであります。仮に5.5兆円まで削減額が出ない場合には、さすがに赤字を残したままにするわけにはいかないと思います。例えば消費税率を2%前後引き上げるなどの追加的な対応が必要だと思います。

 そして、最後になりますけれども、26ページであります。これは、社会保障・税一体改革でも、その枠組みが構築され、我々としても、引き続きその枠組みで財政運営を考えていくべきではないかと考えています。社会保障給付の財源のために消費税を安定的に確保するとともに、社会保障以外の支出については消費税以外の税収で財源を確保することを通じて財政収支を改善するということ。それから、増加する利払費への対応という、この2つの分野、社会保障と非社会保障で、それぞれの果たすべき役割を分担することを通じて財政規律が確立できるものだと考えております。以上です。ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。どなたからでもどうぞ。田中委員。

〔 田中委員 〕 土居先生、ありがとうございます。お風呂で解説いただいたのは初めてでした。大変わかりやすかったと思います。今、先生のご説明の中で、特に社会保障の中の医療分野に関しまして申し上げたいと思います。

 医療分野に関しては、今、先生もおっしゃったと思うのですが、サービスの質を向上させることによって、量的に削減できるという非常に希有な領域ではないかと思います。ただし、その説明の仕方が、これは既にメディアでもかなり取り上げられていますし、この数年の財審の議論の仕方においても、基本は支出削減の議論に傾斜していたと思います。

 医療というのは、患者たり得る国民の納得感というのが不可欠で、この納得感という言葉を使うのは、理性的に理解するということを超えて、本人の、あるいは家族の生き死にに関わるところですので、どう納得してもらうかという説明に工夫が必要だと思います。

 私ごとですけれども、私も昨年、妹を末期がんで、在宅で看取ったということがありまして、そこはひしひしと感じるところであります。そのような視点から、土居先生のおっしゃっている医療の地域型と標準型の問題について、私なりに意見を述べさせていただけたら幸いです。

 まず、患者の視点とは、単純に言えば、どれだけ患者に寄り添ってくれているかというところであります。その視点で、先ほど先生がおっしゃった地域型への転換ということを考えますと、やはりプライマリーケア、これはかかりつけ医、総合診療専門医とも言われている医師や在宅系の看護師の登用を増やし、これを基本に医療制度を大転換する必要があると思います。今日はあまりご説明されませんでしたけれども、高機能の病院を中心とした制度に今なっていますから、それをいかに在宅型、あるいは地域型に変えるのかというところで、さまざまな岩盤を克服しなければならないと思います。

 換言すれば、高度の医療機関というのは、難病を治すところですから、じっくりと患者に寄り添う余裕がないです。実は訴訟が起こっている多くの問題は、医療過誤ではなくてコミュニケーションギャップだということも聞いています。

 他方でプライマリーケアの中でも、在宅医療というのは、基本は治すというよりはケアをするところであり、ターミナルケアもここで行われていますので、医療の方法も患者に寄り添うというところがベースになっています。今後の超少子高齢化の中でケアを必要とする高齢者が増えますし、また、がん難民つまり、治る見込みのないがん患者は入院ができず行き場を失う人々の数も増えているそうです。こうしたニーズに応じて、医療体制をいかにプライマリケア型に転換をするのかということが大きな鍵になっていると思います。

 もう一つが標準化の問題ですが、私は、診療と薬と医療機器の2種類に分けて申し上げたいと思います。

 私どもの財審の議論でも、ジェネリックの話は相当されてきて、ある種の共通の理解ができていると思うのですが、先ほどの試算を見ていても、ほんとうはジェネリックだけではなく、先発薬品も含めてトータルで考えることが求められていると思います。海外と比較しますと、非常に高額の、一部の病院でしか使われないような薬が一般の町中のクリニックでも普通に使われているのが日本の現状です。また医療機器についても、高度な医療機器があればあるほど患者さんが集まるという、ある種のマーケティング的な視点から、それを導入する傾向もあります。ここでは、海外でも導入されている費用便益分析を薬と医療機器にもきちんと入れて、さほど高いものが必要でないところについては、それなりの薬を投じていくといった整理整頓が必要になっているだろうと思います。

 それから、プライマリーケアの診療について申し上げたいと思います。私も経験しましたけれども、地域のかかりつけ医というのは、きのうまで大病院で麻酔科医だった方が退職をして、町中で開業する。そこから急に内科になったり、皮膚科になったりするので、その専門医としての訓練を受けているか、ましてや在宅医としての訓練を受けているかというと、その義務化がされていません。ですから、医療のサービスの質に差があるというところについては、私は、実は大きな原因として教育が欠けているということがあるのではないかと思います。

 そのような意味で、議論の展開の仕方を量を削減をするということだけでなく、質を転換することとセットで議論できるのなら、社会保障制度改革のところも、もっと国民の理解が得られるような議論に展開できるのではないかと思います。

〔 吉川分科会長 〕 いずれ、我々のこの財審でも、量についてはヒアリングが必要だと思いますが、続いて竹谷大臣政務官、佐藤委員の順でお願いいたします。

〔 竹谷大臣政務官 〕 ご説明ありがとうございました。また、先ほどの熊谷執行役員からも大変すばらしいお話を伺わせていただきました。

お二人にお伺いしたいのですが、財政再建の必要性については、この場では誰しもが賛同するところだと思うのですが、一歩ここを出て、土居委員も税と社会保障一体改革の委員会などでも参考人としてお越しくださっていたと思いますけれども、消費税率引上げに対して非常に抵抗感が議員の側も持っている人が多いということで、私も野党でありましたけれども、あのとき賛成討論を怒号の中でやらせていただいた経験がありますけれども、国民の側で、歳出削減には総論賛成だが各論は絶対反対と。そこから選ばれた議員も、そちらに寄ってしまう中で、金利がまだ低い状況で、将来金利が上がると大変だという財政危機、この認識の共有を国民に図っていくには、私たちはどのように運動していけばいいのだろうか。そのような悩み、思いを持っておりまして、これをお二人の委員に伺いたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、熊谷さんから。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 これは、ほんとうに難しい問題で、私自身は、最終的には広い意味での民度の問題。おそらくマスコミの責任だとか、教育の責任だとか、そのようなものはさまざまあると思うのですが、結果において、それは誰でも税が上がらないに越したことはないというのは当然あると思うわけですが、それでも、今を基準にして、今から税負担が増えるからいいかどうかと言われれば、それは誰でもが嫌なのだけれども、今の状況が持続可能か、世代間の公平性を考えたときに、公正な配分になっているか。

 要するに負担が増えるかどうかではなくて、あるべき姿はこうであって、そこに向けて改革をやっていくといった、そこを国民で共有できるかどうかだと思います。

 その意味では、例えば政府サイドでいえば、単純に税が上がるよりは、これが広い意味での世代間の公平の問題につながっていき、また、消費税には水平的な平等だとか、幾つかの長所があるわけですから、そのような長所をちゃんと説明した上で、足らざるところは歳出構造や、税制の構造全体の中でやっていくといったことを地道に国民に対して説明をしていく。

 政治家のスタンスとしてはポピュリズム的なやり方をやめて、国民に正面から耳の痛いことを言う、それがほんとうの政治のリーダーだと思いますので。

〔 吉川分科会長 〕 では、土居委員。

〔 土居委員 〕 ありがとうございます。まず、私が強調したいのは、残念ながら今の社会保障の財源を、今生きている世代で賄え切れていない。赤字国債などで後世にその負担をツケ回していることを直視していただくということです。

 結局のところ、子孫に迷惑をかけながら今の社会保障を維持しているということで、それに同感していただける高齢者の方がいらっしゃるとすれば、多少は今生きている人たちの間で負担を分かち合って、子や孫に迷惑をかけないようにすればいいではないか。そのようなことで、負担増も多少はやむを得ないと思っていただける賢明な高齢者の方々に、訴えるというのはあると思います。

 ただ、最近、残念ながら少子化で、高齢者にとって自分の血がつながった孫も減っているということで、今の私の訴えが心に響かない高齢者の方もなかなか多くいらっしゃるのではないかと思います。つまり、極端に言えば、何で我々に負担を求めるのか、子孫のことなどどうでもいいではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 ただ、賦課方式という仕組みで大半の社会保障は成り立っていますから、子や孫が見放すと、今の社会保障給付がきちんとできなくなりますよと。一番わかりやすいのは、年金保険料をなかなか払ってくれない若い人たちがいる。それは年金財政を大きく揺るがすほど深刻ではないにしても、やはり若者の社会保障に対する不信が募れば募るほど、どうしても社会保障の給付のための財源が賄い切れなくて、きちんと賄えれば、もう少し社会保障給付がかゆいところに手が届くように出せるのに、若い人たちが反目することで、それが増やせないといったことも今後ますます起こってくる。だから、それを防ぐには、今のうちから若い人たちに対して高齢者も負担しているのだということを、人生の先輩として範を示していただく必要があるのではないかと。自分を守るためには、負担増も甘受しないと自分の身を守れないというところはあると思います。

 そして、最後に1つですが、増税の前にやることがあるという言葉が、単なる先送りの悪魔のささやきということを理解していただくということです。これは、政治家の先生からお話しされるわけにはなかなかいかないので、学者とかマスコミがそう言うべきだと思うのです。つまり、例えば議員定数を削減することをやってからではないと増税など受けられないとおっしゃる方がいらっしゃいますが、それは一体何年前からずっと言い続けてきたのか。その繰り返しで、結局、ここまで来てしまったではないか。それは我々学者ででも、きちんと申し上げていきたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。では、佐藤委員、宮武委員、富田委員。

〔 佐藤委員 〕 まず、1点目。さっき民度の話が出ましたが、問題は、民度よりミスコミュニケーションにあるのではないかと私は思っています。というのも一体改革との関係を考えたときに、おそらく、今日の熊谷さんも土居先生も同意見だと思うのですが、全体としては社会保障を切らなくてはいけない、他方では消費税率を引き上げなければいけない。しかし、一体改革のときに我々が言っていたことは何だったかというと、社会保障のために消費税を上げるのではなかったでしたっけ、と。

 ここでの議論は、国民目線からすれば、消費税率を引き上げて、社会保障をカットするという、どうもつじつまが合わない議論。だって、充実してくれるから、消費税率の引上げにみんな同意したのではなかったっけという、ミスコミュニケーションはあると僕は思います。

 もしこれから社会保障を削減するべき、他方では消費税率の追加引上げは、やむを得ないということであれば、社会保障と消費税の関係はもう一回整理し直したほうがよくて、もちろん全く無関係なことをしているわけではなくて、我々は将来の社会保障を守るために、現在、消費税率を引き上げて、財政再建をするのだと言えばいいことなので、我々が見るべきは、今の社会保障の充実ではなくて、将来の社会保障をどう守るか。そのようなメッセージをしっかりと伝えていけるかどうかが、国民からの同意にかかわってくると思います。

 2つ目は、改革は誰もだめだとは言わないと思います。改革の方向は、このとおりだと思います。ただ、問われるのは、これを、政治的な判断ではなくて、制度的にどうやって実現するかというとき、今の制度でできるのか。それは、今の診療報酬体系も含めて見直すべき部分があるのか。

 それから、個別な事業まで落としていったときに、どの事業を充実させて、どの事業を切るべきなのかという戦略マップといいますか、大きなマクロの目標で社会保障を抑制するのであれば、個別の制度、事業に落とし込んでいったときに、果たしてどこを見直していくのかという、上から下をつなげていかないと、実効性が担保できないのではないかという気がします。

 よくPDCAといいますが、PDCAはマクロで回すのは大変で、やはり事業ベース、せめて施策ベースまで落として初めてうまく回るものなので、その辺の関係はしっかりとつくっていかないといけないのかなと思いました。

 あと最後、先ほど政務官からの質問で国民にどうやって財政再建に合意いただけるかというときに、私、最近思うのはワーク・ライフ・バランス、意外と大事だなと思っていて。というのは、日本人は忙し過ぎて、仕事に疲れて家に帰って、10時のニュースを見て、何となくその気になって終わるという、あまり社会のことを考えない、暇がない。うちの学生を見ていても、インターンシップとか就活に忙しくて、世の中のことは考える暇がないということで、もう少し時間をつくって、ポリティカルライフをしっかりと考える時間を国民に与えることが重要だと個人的に思いました。

〔 吉川分科会長 〕 基本的にコメントとさせていただき、宮武委員。

〔 宮武委員 〕 新参者なものですから、前回も今回も報告とご意見を拝聴しておりました。私なりにまとめると、財政再建のためにみんな等しく我慢しろ、みんな少しずつ貧しくなろうと、このようなことを皆さん異口同音におっしゃっているのですが、戦時においては欲しがりません勝つまではという運動は強制的に成り立ったわけですが、平時において欲しがりません財政再建まではという大衆運動は、最初から成り立たないですね。そんなものに入りたい人、誰もいないわけでありまして、よっぽど志が高いか、やや変人、奇人的な人しか来ない。

 そうすると、運動そのものや、訴え方をお変えになったらどうですか。要するに最初から我慢しろというのではなくて、今、喫緊の国家全体の危機としては、財政危機もあるけども、もっと深刻なのは人材危機ですよね。このまま少子化が続いていけば、人材は量的にも質的にも落ち込んでいく。そこから立ち直れなくなる。今立ち上がって、政府がおやりになっている子育て支援、それから、もっと視野を広げて高等教育分野までずっと広げた、大きな意味での次世代の育成支援というものをまず掲げて、そのために皆さん、年金も、医療も、介護も我慢してくださいよ。年金については、より若い世代の保険料収入から成り立っている賦課方式ですから、子供が生まれなければ年金はもちませんよ。医療・介護も爆発的ニーズが増えていくけれども、そのニーズに応じて現場で働く若者たちがいなくなったら大変でしょうと、このような形で働きかけていく。

 そのことが大事であって、前回、経済同友会の岡本さんがペーパーをお出しになりまして、財政再建は待ったなしと。非常に簡潔な内容でよかったのですが、岡本さんは、これをやらないと、あなたの孫の首を絞めることになりますよと、このようにおっしゃっているのですが、孫が生まれなければ絞めようがないわけでございまして、その孫がいないというところが今、大変な問題になっている。そこに焦点を絞った形で運動を組み直されたらいかがかと思っております。以上であります。

〔 吉川分科会長 〕 どうも貴重なご意見、ほんとうにありがとうございました。では、富田先生。

〔 富田委員 〕 簡単に3点申し上げます。

1点目は、今日の土居先生の7ページです。PB赤字は大きいのに政府債務残高対GDP比が減っているというグラフです。これは、先ほど熊谷さんがおっしゃったように国債の発行年限の長期化をしているので、金利が上がっても根っこから国債残高全部の利払費が上がらないということだけでして、このグラフ、もう少し後ろまで計算するとGDP比は上がるので、やはり土居委員がおっしゃったようにPBの黒字化が必要だということです。

 それから、11ページに表があるのですが、先ほどお風呂のご説明だったのですが、ちょっと私はよくわからなかったのですが、結局はPB赤字を国債で埋めるのか、それ以外のものでどこかからお金を持ってくるかによって違っているというグラフです。正直に国債を発行すれば、きっちりと対応できるわけです。逆に変なものを持ってくるから、負担がないのに歳出が拡大できたと思い込んで、その後の財政収支を悪化させる等の問題を生んでいます。

 もう一点は提案ですが、財政健全化の話を進めていると、これまでもずっとそうだったのですが、政府にはまだ資産がいっぱいあるではないか。だから、資産と負債を考えていく必要がある。特に、先ほどからお話があるように耳ざわりのよくない国民負担に直結することの議論を避けるために、この資産改革の議論がなされてきたように思います。

 確かに不要であって非効率な資産があれば、それは改革すれば財政健全化につながるのですが、そうではないものは、ほんとうにためにする議論であったように思うのです。そこらも実態はどうなのか、事務局において整理していただいて、ご報告していただければと思います。

 個別のきっちりとした議論を積み重ねていくことが、先ほど政務官がご指摘になられたご懸念の問題に対する答えだと私は思います。必ずわかってもらえると信じておりますので、着実な議論をここで進めていきたいと存じます。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。3点目は、具体的な提案をしていただきまして、財政健全化の議論の中で政府は資産を持っている、グロスではなくてネットで見れば日本の財政まだ大丈夫だといった議論も時々ありますから、ぜひ事務局と相談して、この問題を取り上げたいと考えております。どうもありがとうございました。

 政務官からは、ご自身の政治家の役割というお話もあったのですが、少し前に来日されたメルケル首相は、何年前か忘れましたが、当時、野党の党首で、当時のドイツの付加価値税、日本で言う消費税率、当時たしか16%だったですかね。それを18%だか19%に上げるということを野党党首として国民に訴えて、ドイツの場合、医療保険が大きな問題、医療保険をサステーナブルにするという、そのためには日本で言う消費税率を16%から18%か19%に上げる必要があるということを訴えて、現職はシュレーダー氏だったですか、を選挙で破って首相の座につかれて、翌年でしたか、それをそのまま公約どおり実行したということがあったと思いますから、日本の政治としては範とすべきだと感じます。

 では、これで議事を終わりますが、本日はお二人の方にプレゼンテーションしていただきました。とりわけ外部の有識者として熊谷さん、大変すばらしいプレゼンテーション、有益な議論ができたと思います。貴重な時間を私どものために割いていただきまして、ありがとうございました。

〔 熊谷チーフエコノミスト 〕 ありがとうございました。(拍手)

〔 吉川分科会長 〕 本日の会議の内容の公表につきましては、恐縮ですが、私にご一任いただきまして、会議後の記者会見でご紹介させていただくことにさせていただければと思います。会議の個々のご発言につきましては、皆様方から個別に報道関係者等に対してお話をすることのないようお願いさせていただきます。

 次回は4月6日、月曜日、10時から予定しておりますので、よろしくお願いいたします。時間を少し超過してしまいましたけれども、どうもありがとうございました。

午後 3時09分閉会

 

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