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財政制度分科会(平成27年2月26日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
平成27年2月26日
財政制度等審議会


 財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成27年2月26日(木)9:59〜12:29
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

 

 

1.開会
2.事務局説明
  ・「財政健全化計画」の策定に向けて
  ・中長期の経済財政に関する試算
  ・後年度影響試算
3.日本経済団体連合会説明
  ・「「豊かで活力ある日本」の再生−Innovation & Globalization−」
4.経済同友会説明
  ・「財政再建は待ったなし〜次世代にツケを残すな〜」
5.委員からのヒアリング(中空委員)
  ・「国債の信用リスクと財政健全化〜市場のメカニズムは必要か?〜」
6.閉会

配付資料
○資料1 「財政健全化計画」の策定に向けて
○資料2 中長期の経済財政に関する試算の概要
○資料3 後年度影響試算
○資料4  「経団連ビジョン「豊かで活力ある日本」の再生-Innovation & Globalization-」(日本経済団体連合会資料)
○資料5 「財政再建は待ったなし〜次世代にツケを残すな〜」(経済同友会資料)
○資料6 「国債の信用リスクと財政健全化〜市場のメカニズムは必要か?〜」(中空麻奈 委員 提出資料)

 

出席者

分科会長 吉川 洋           宮下副大臣
大家大臣政務官
竹谷大臣政務官
岡本次長
太田次長
西田次長
新川総務課長
寺岡調査課長
山本司計課長
窪田法規課長
堀内給与共済課長
片岡官房参事官
阪田主計官
白石主計官
冨安主計官
青木主計官
井藤主計官
宇波主計官
彦谷主計官
高村主計官
小野主計官
井口主計官
中山主計企画官
分科会長代理     田近 栄治  
 委員

碓井 光明
遠藤 典子
倉重 篤郎
黒川 行治
角   和夫
竹中 ナミ 
土居 丈朗
富田 俊基
中空 麻奈
永易 克典

 臨時委員

板垣 信幸
井堀 利宏
老川 祥一
岡本 圀衞
葛西 敬之
加藤 久和
小林 毅
佐藤 主光
末澤 豪謙
十河 ひろ美
武田 洋子
南場 智子
宮武 剛


   

午前9時59分開会

〔 吉川分科会長 〕 それでは、そろそろ定刻ですので、ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多用中のところご出席いただきましてありがとうございます。

 冒頭、カメラが入りますので、そのままお待ちください。

(報道カメラ入室)

〔 吉川分科会長 〕 前回、宮下副大臣からご挨拶をいただきましたように、財政制度分科会においては、本日から、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標の実現に向けた財政健全化計画について改めて議論を行っていくことになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、恐縮ですが、報道の方はここで退室をよろしくお願いいたします。

(報道カメラ退室)

〔 吉川分科会長 〕 早速、議事に入ります。本日は、事務局から中長期の経済財政に関する試算等について説明していただいた後、日本経済団体連合会と経済同友会から、それぞれが公表したご提言について説明していただきます。その後、休憩を挟みまして、中空委員からプレゼンテーションをしていただきます。なお、古賀委員におかれましては、本日欠席のため、意見書をご提出いただいており、皆様のお手元にお配りしております。

 まず、財政健全化計画の策定に向けて、中長期の経済財政に関する試算及び後年度影響試算について、寺岡調査課長より説明をお願いいたします。

〔 寺岡調査課長 〕 毎年度、秋の審議では、その年の予算編成についてご建議をいただいていまして、春のセッションは、政府の基本方針である骨太の方針に向けて、ご紹介がありましたように今年は中期財政計画の策定に向けてご審議をいただきたいと思ってございます。その前提で、今、政府部内でどのような議論が進んでいるのか、資料に沿ってご説明をさせていただきたいと思います。

資料1「『財政健全化計画』の策定に向けて」をご覧ください。

1枚おめくりいただきまして、最初のページは安倍総理の施政方針演説でございます。改めて確認させていただきますが、一番下の段に、「来年度の27年度予算につきましては、新規の国債発行額が6年ぶりに40兆円を下回り、基礎的財政収支の赤字半減目標を達成する予算としました。2020年度の財政健全化目標についても堅持し、夏までに、その達成に向けた具体的な計画を策定いたします」と述べておられます。

 2ページ目は、昨年の年末にこの財審でおまとめいただきました、平成27年度予算の編成等に関する建議の一部でございます。その中で、27年度予算の編成のみならず、夏の計画に向けた基本的考え方をまとめていただいてございます。冒頭でございますが、「財政健全化目標の実現に向けては、1、給付と負担の両面における改革を通じ、将来世代に負担を先送りしない持続可能な社会保障制度を構築するとともに、2、社会保障以外の経費について、今後の人口減少社会を見据えた行政サービスの見直しと歳出の効率化を通じてできる限り抑制していくことを基本的な考えとする。国と地方が一体として財政健全化の取組を進める必要がある」と、基本的な考え方を整理していただいてございます。次の段におきましては、「既に債務残高を膨大に抱える我が国においては、PBが均衡するだけでは不十分である。すなわち、PBの均衡を経て、中長期的には金利と成長率の関係及び債務残高対GDP比の水準によって決まる一定以上のPBの黒字幅を確保する必要がある」といった考えでございます。

 さらにその下に、3ポツ「来夏の財政健全化計画に向けて」ということで、「政府はローマ数字2.1.で示した基本的考え方に基づき」、今ご説明した点でございますが、「来年夏までに2020年度までの国・地方のPB黒字化を確実に達成するための具体的な道筋を示した新たな財政計画を明らかにしなければならない。他の先進国同様、信頼に足る具体的な計画を示すことが、政府の財政に対する市場の信認と国際的な評価を維持する前提である」と記されております。

 3ページでございます。こちらは経済財政諮問会議に提出された甘利大臣ペーパーと呼ばれるものでございまして、政府の文章ということで提出されたものでございます。そこでは、まず夏の健全化の達成に向けた具体的な計画ということで、「基本的枠組みについての検討課題」の冒頭に、「まず財政健全化は、1、デフレ脱却・経済再生、2、歳出改革、3、歳入改革の3つの柱で進める」といった基本的な方針が述べられてございます。それから次のポツでは、「フローの基礎的財政収支に加え、債務残高対GDP比や資産負債両面を含めたストック指標なども重視する」ということ、それから、「定量的な試算をもとに計画のフレームを検討する」と、「その際、潜在成長率並みの堅めの成長率を前提とした、2020年度の国・地方PB黒字化等に必要となる必要対応額の試算を出発点とし、上記の3つの手段により確実に是正する道筋を検討し明らかにする」と、さらに、「進捗状況を毎年度レビューを行い、計画の中間時点で評価を行い、歳出・歳入の追加措置をとることを含め、2020年度の財政健全化に向けた仕組みをあらかじめ計画に組み込む」ということで、夏の計画の基本的な骨格がここで示されております。

 それから、歳出改革の中身の話の検討課題ということで、「歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの取組をさらに強化する」ということと、「具体的な対策として、支出規模の大きな社会保障及び地方財政について重点的に取り組む」ということで、その下にありますのは、社会保障、それから地方について、財審の考え方で述べられたこととほぼ同じ考え方が示されているということでございます。

 それから4ページ目・5ページ目と、参考につけさせていただいていますのは、それぞれ1月・2月の経済財政諮問会議に夏の計画に向けて提出された、民間議員ペーパーと呼ばれるものでございます。特に、4ページのものをご紹介させていただきますと、初めに、「経済再生と財政健全化の双方を実現することを目標とするということで、2020年度の財政健全化目標を堅持する。財政健全化は同じように、マル1マル2マル3の3つの柱で進めると述べた上で、具体的には経済再生と財政健全化に最大限取り組むことにより、国と地方のPB対GDP比を2020年度までの5年間で2015年度に比べ3.3%改善する」と、その内訳でございますが、消費税率10%への引上げにより1%弱程度、経済再生、歳出改革等により、各年一律ではなく、年平均0.5%程度改善することを達成することとしてはどうかと示されてございます。それから、そのポツ2つ下のところに、計画の中で、2020年度までのPB対GDP比が3.3%程度改善するための主な具体的な取組を明示すべきということでございます。1つ付言しますと、この中には実はPB黒字化という文字が出てこないことをめぐって、これはその目標が変わってしまったのかといったご議論があるのですが、総理、甘利大臣、麻生大臣が国会で何度も答弁されていますが、その点については、変更は全くないということでございます。

 それから5ページについては、「基本的考え方」の最初のところでございますけれども、まず国民、企業、自治体がみずから意欲を持って歳出効率化、歳入拡大に取り組める仕組みを整備すべきということで、いわゆる改革のインセンティブが重要ではないかという考え方で、例えば地方行政サービス改革につきましては、地域の活性化に向けて、みずから改革に取り組むインセンティブの構築ですとか、自治体の公共サービス改革、PPP/PFIといった取組が述べられてございます。それから社会保障サービス改革につきましては、地域の取組によって、医療費の地域間格差を解消するとともに、節約される費用の一部は改革のインセンティブとして抑制につなげる仕組みを構築してはどうかといった、繰り返しになりますが、改革に取り組むための、インセンティブに働きかける仕組みを考えてはどうかといったご提案でございます。

 次に資料2でございます。こちらは、内閣府が行いました、中長期試算というもので、前回、昨年の7月に示されたものを、27年度予算等を踏まえて改定されたもので、2月12日に公表されたものでございます。

 1ページおめくりいただきますと、その概要でございます。まず経済前提ですが、2つのシナリオが提示されてございまして、1つは経済再生ケースということで、中長期的に名目3%以上、実質2%以上の成長率を想定するとされてございます。実際には、残り2016から2023年度の試算期間を通じて、名目で平均3.6%、実質では2.1%の成長率となってございます。もう一つのシナリオはベースラインケースといってございます。こちらは、足元の潜在成長率並みで将来にわたって推移し、7月の時点では、参考ケースといって示されていたものよりは、若干低めの想定になってございますが、名目1%半ば程度、実質1%弱の成長率で、残りの試算期間の平均では名目1.5%、実質0.9%の成長率となってございます。夏の試算では、経済再生ケースと、参考ケースという位置づけだったのですが、今回は2つのメインシナリオを提示したことになります。その結果、試算されます2015年度の姿は、国・地方PBは▲16.4兆円ということで、目標でありました対GDP比3.3%を、ちょうどぎりぎり達成した姿となってございます。それから2020年度、後ほどまた出てきますが、経済再生ケースでは国・地方PBは9.4兆円程度、対GDP比で1.6%の赤字が残る結果となってございます。ベースラインケースでは、国・地方PBは16.4兆円、GDP比にしますと3.0%の赤字が残る結果となってございます。

 2ページ目は、ご説明しました2つのケースに沿って、成長率は今後どういった推移をするかを示したものでございます。ちなみに点線は夏の試算でございまして、2014年の成長率が若干下がったことから、成長率自体は変わってございませんが、実はGDPの実額で言いますと若干下がってございます。例えば2020年夏の試算では、名目GDPが609兆円でございましたが、この試算上、2020年の名目のGDPは599兆円になってございます。

 その次のページは国の一般会計の推移でございまして、左側は税収の推移でございます。27年度予算での税収は54.5兆円でございます。これが、消費税率の引上げを含め、約2兆円強、毎年増えた姿になっていき、2020年には経済再生ケースでは68.4兆円まで増える絵姿となってございます。申し上げましたように、点線は夏の試算でございますので、GDPの実額が若干下がっている影響を受けて、税収自体の水準は夏の試算よりも若干下がった姿になってございます。それから、右側は基礎的財政収支対象経費の推移でございまして、こちらは2015年の予算ベースで72.9兆円でございます。これが毎年、約2兆円ずつ増えていく推移をたどりまして、経済再生ケースの場合、2020年には、今よりもちょうど10兆円ほど高い82.6兆円の水準になる姿が示されてございます。他方、夏の試算との変更で言いますと、夏の試算での2020年での歳出の基礎的財政収支対象経費の大きさは84兆円でございましたので、27年度予算における歳出削減努力が反映しまして、1兆円強、2020年の歳出が少なくなった姿になってございます。

 したがいまして、4ページなのですが、主に27年度予算での歳出を反映しまして、経済再生ケースの場合の2020年でのPB赤字の額は9.4兆円でございます。これは夏の時点では11兆円でございましたので、それよりは若干改善した姿となってございますが、引き続き10兆円近い赤字が残る姿となっており、ベースラインケースですと16.4兆円の赤字が引き続き残る姿となってございます。

 5ページが財政収支の推移で、6ページは名目長期金利と名目経済成長率の推移でございます。先に6ページをご説明させていただきます。点線に示されたものが名目GDPの成長率の推移でございます。こうした高い成長、あるいはベースラインケースの場合で言えば1.5%程度の成長をする中で、名目長期金利が、足元で0.4%のものが、来年度は1.2%、それから成長するにつれ、その成長率を追い越していくような姿で、経済再生ケースの場合ですと、2020年は4%、最後、2023年は4.6%まで上昇していく姿が示されてございます。したがいまして、これに伴いまして利払費が増加していくことに伴って、5ページにあります財政収支で言いますと、足元2015年は5.1%の赤字財政収支でございますが、これが若干、2017年、8年にかけて改善していきますが、金利の上昇に伴って利払費が増加することから、また悪化の方向に転じていく姿となってございます。ちなみに、この推計上、国債費の実額は、2015年は23.5兆円でございますが、2020年には37兆円まで増加する試算でございます。

 7ページは、公債等残高対GDP比の推移でございます。今、足元2015年は195.1%です。これが、ベースラインケースの場合ですと年々悪化していく姿になります。そして、経済再生ケースの場合ですと、成長率を高く置いていることから、今、国が発行してございます普通国債の残高は800兆円ありますが、この平均の償還期間が8から9年でございますので、金利の上昇がすぐにはきいてこない構造になってございます。数字で言いますと、加重平均の金利が1.2%程度でございますので、これが先ほどの金利の上昇に伴い緩やかに上昇していくことから、成長率が高い経済再生ケースの場合ですと、金利よりも高い成長率が確保されており、公債等残高対GDP比が緩やかに下がっていくような姿。そして、繰り返しになりますが、成長率の低いベースラインケースの場合ですと、そのまま悪化していく姿が示されてございます。

 続きまして資料3は、後年度影響試算と言われるもので、こちらは先日、財務省のほうから国会に提出させていただいた資料でございます。内閣府が行いました中長期試算との違いは、1つは、こちらの財務省の試算は国の一般会計に限ったものであるという点。それから2つ目は推計手法でございますが、2015年度の予算を前提に、その後、3年程度につきましては、各省庁から聞きました歳出見積もり等を単純に積み上げてございます。加えて、その後は、物価上昇率に伴って単純にそのまま延伸した手法を使っていますので、内閣府のモデルを使った手法よりも、シンプルなものとなっております。

 最初の1ページは経済成長率3%を前提としたものでございます。ご覧いただきたいのは、経済成長率3%を前提としても、基礎的財政収支が2020年度につきましては、引き続き8兆円程度の赤字が残る試算となっていることです。そして、2ページの方は経済成長率1.5%ケースですが、この場合ですと基礎的財政収支の赤字は11兆程度残る試算となってございます。3ページの経済指標の前提の説明は、飛ばさせていただきまして、4ページでございます。いわゆる感応度分析なのですが、想定しているものから、名目経済成長率が1%、2%上がる、あるいは1%下がった場合にどのような変化が起こるかということで、一番大きな変化は税収でございます。これにつきましては、仮に成長率が1%上がった場合には、翌年度には0.6兆円の増となりますが、2020年度で言いますと3.8兆円程度税収が増収するといった効果を見込んでございます。他方、成長率が上がれば金利も当然それに伴って動きますので、同じように金利がプラス1%、2%、マイナス1%と変化した場合の変化額を試算してございます。28年度で言いますと、プラス1%の金利の変化により国債費が1兆円程度増える試算になってございますが、2020年度になりますと、これが6.2兆円程度増えるといった試算となってございます。以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。質疑応答につきましては、日本経済団体連合会及び経済同友会からのご説明後にお願いいたします。

 それでは続きまして、日本経済団体連合会の阿部泰久常務理事、岩村有広経済政策本部統括主幹より、本年1月1日に公表した「豊かで活力ある日本の再生」についてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 経団連の阿部でございます。このような機会をいただき大変ありがとうございます。座らせていただきます。

 お手元の資料4が私どもの資料でございます。同じ中身のものを投影させていただきたいとい思います。まず今回の私どもの試算でございますが、そもそも今年の1月の初めに、経団連として2030年までのあるべき日本の姿を見据えた将来ビジョン、「『豊かで活力ある日本』の再生」というものを発表いたしました。この中で、さまざまに経済あるいは財政の将来像を予測したわけでございますので、その下に書かれる部分を中心に、今日はお話をさせていただきたいと思います。

 まず、何も改革を行わずに現状を放置した場合のケースでございます。内閣府の試算のベースラインケースよりも厳しい姿を考えております。このようなケースでは、名目GDP成長率は、辛うじてプラスではございますが1%前半であり、輸出は0%台という低い水準で継続していくと。2030年度の名目GDPが615兆円、国民1人当たり530万円程度でとどまるわけでございます。さらにPBの赤字が拡大いたしまして、長期債務残高の累増にも歯どめがかからない危機的な状況となります。具体的な数字で申し上げますと、2030年は実額3,300兆円、名目GDP比が537%という破綻状況になります。

 このような、現状を放置した場合の2030年の姿は、とても目を向けられないような惨たんたるものでございます。このような状況を何とも避けなければならないというところが、私どものビジョンづくりの出発点でございます。何としても明るい未来を開きまして、次世代に向けて活力ある経済をしっかり築きたいということでございます。これが我々の世代の責務であるということを考えて、このような危機感を、政府のみならず、企業、国民が共有して、オールジャパンで日本の再生・再興に取り組むということを考えていくわけであります。

 この経団連のビジョンの中にありまして、日本再生の大きな鍵を2つ考えております。1つはイノベーションでございます。もう一つはグローバリゼーションでございます。ここで申し上げますイノベーションは普通のイノベーションよりもやや広い意味を考えております。第1は、果敢に研究開発や技術開発に挑みまして、新しい事業や新しい産業を起こすという意味での技術革新でございますが、もう一つの意味は、今までの制度とか慣行と決別して、さらにはそこにあります国民的な意識や社会的な通念をも覆していくという、社会・制度のイノベーションまで考えております。また、2つ目の柱でありますグローバリゼーションは、日本の強みでありますとか魅力を世界に向けて発信しながら、逆に海外の活力や成長を積極的に日本に取り込んでいくということでございます。この私どものビジョンでは、このような考え方をベースに2030年までを展望いたしまして、政府、企業、国民がそれぞれ何をするべきか、可能な限り具体的に書いたつもりでございます。

 このビジョンでは、2030年までに目指すべき国家像を4つに集約しております。第1は、豊かで活力ある国民生活を実現する。第2は、人口1億人を維持し、魅力ある都市・地域を形成する。第3は、成長国家としての強い基盤を確立する。第4は、地球規模の課題を解決し、世界の繁栄に貢献する、の4つでございます。

 実は、この4つの基本的な考え方をまとめるまで、ビジョンづくりにほとんどの時間を費やしていたということでございます。経団連の榊原が昨年6月に会長に就任いたしまして、すぐにビジョンづくりに入ったわけでございますが、秋口ぐらいまで、会長、副会長等の主要な方々の議論を通じて、まさに将来像を練り直していったわけでございます。この国家像を実現するために、具体的にどのような課題があるかということ、これは5つの総合課題と、4つの大きな国家像に対応します28の具体的な個別課題に分けて提示いたしております。もしお時間があれば一度ぜひ私どものビジョンをご覧いただきまして、ご批判を仰ぎたいわけでございますが、私どもとして、このような個別の課題を全て解決していけば、明るい日本があらわれるという考え方でございます。

 今回はこの中で財政健全化に関しまして、3の、成長国家としての強い基盤を確立するというところから、(2)の財政健全化と(3)の社会保障・税一体改革につきまして具体的なご説明をさせていただきたいと思います。

 まず財政健全化でございます。健全な財政状況が、経済の持続的発展と国民生活を支える基盤となると考えております。既にもう先進国中で最悪と言ってもいい水準まで財政状況が劣化しております。財政健全化の取組は待ったなしであると考えます。具体的には、2020年度に必ずPB黒字化を達成すると。さらに、長期債務残高対GDP比の増加にも歯止めをかけるということを考えていきたいと思います。さらには2030年に向けまして、これは私ども、消費税率の議論を後ほどご紹介いたしますが、10%台後半までということを前提としてではありますけれども、PBの黒字化を維持する中で、さらに長期債務残高対GDP比を安定的に低下させていくと。できれば2030年度末で140%までに押し上げたいということを掲げたわけでございます。

 そのために何をなすべきかでございますが、第1に財政健全化目標の達成を法制化して、社会保障・税一体改革をはじめとする歳出・歳入改革を進めることであると考えております。プログラム法的なことになるかなと思いますけれども、いつまでに何をやるかということを具体的に明示したことを、法律としてきちんと確定すべきだと考えております。それを受けまして、経済界といたしましても、企業の収益を高めまして、経済の好循環を生み出すことで、税収増にも貢献していくことができるかなと考えております。

 非常に重要な課題が、社会保障・税の一体改革でございますが、国民の誰もが将来に向けて安心した暮らしができますように、社会保障・税一体改革が必須の課題と考えております。

 具体的に、到達目標といたしましては、2020年度におきましては、医療・介護におきましてマイナンバーやICTを活用しまして、給付の適正化が実現しているということ。さらに消費税率の10%への引上げによります安定税源確保と、さらなる給付の重点化・効率化によりまして、現役世代や企業が負担する社会保険料の上昇に歯どめがかかっているということ。さらには国民の一人一人が自助・自立の精神のもとで、それぞれが老後の生計や疾病などのリスクに対する備えをかためているということであります。2030年に向けましては、社会保障給付の毎年度の伸び率を、名目GDPの成長率よりも低く抑えまして2%未満とすると。結果として、2030年時点の社会保障給付費は140兆円を下回るという姿を描いております。ただ、このような状況でも国民負担率は50%台前半までに膨らんでいくかと考えております。

 やはり大事なことは、国民がそれぞれ、自主・自立、自己責任の原則のもとで、自分の健康は自分で管理をすると。このセルフメディケーション等に積極的に取り組んでいくことが必要かと思っております。その上で、社会保障給付の重点化・効率化の項目を幾つか例示しております。例えば医療におきましては、後発医療品の使用促進でございますとか、医療費適正に向けた医療保険制度の見直し、介護におきましては利用者の負担率の見直しであります。年金につきましては、給付額の改定の適正化、特にマクロ経済スライドにおきましては名目下限の撤廃でございますとか、デフレ時の本則改定の特例措置の廃止等が必要かなと思っております。これらは具体的な例というよりは、直ちにでも取り組んでいただきたい課題だと思っております。このようなことがあるということではなくて、この程度は絶対にやってほしいということを示したものでございます。

 このような改革が実現できましたらどうなるかという私どもの成長戦略でございますが、今のような課題を全て達成できると、第1にイノベーションの浸透によります生産性の向上やグローバリゼーションによります海外事業の獲得、あるいは事業環境の良好化の実現による、名目で3%、実質で2%の持続的成長が実現すると考えております。2030年時点では名目GDP833兆円、1人当たり約700万円まで拡大できると考えております。第2に、社会保障給付の重点化・効率化や、消費税率の段階的値上げ、行政改革を通じた歳出の効率化といった財政再建の取組のもとに、PBは2020年度に黒字化できると。さらに国・地方を合わせた長期債務残高の対GDP比も2030年にかけて140%程度と緩やかに低下していくことを描いております。名目3%、実質2%の持続的成長と、財政の持続可能性を確保した社会。これが私どもの考える日本経済の未来の姿だと考えております。

 ここで、このような議論の前提となる試算でございます。幾つか置いておりますのでご確認願いたいと思うわけでございますが、特にこの中で皆様のご注目を浴びるのはマル8のところかと思っております。消費税率でございます。2017年に必ず10%に引き上げると。さらにその後も歳入改革を進めなければならないと考えております。単純に機械的な試算でございますが、消費税率を置きかえまして、2018年度にさらにプラス2%、その後、2019年度から2020年度にかけてプラス1%引き上げていく。最終的には19%となりますが、この数字は単一税率を前提にとりまして、複数税率を考えておりません。単一税率を維持した上で、2025年度までにかけては19%という数字を置いております。ただ、これはあくまでも機械的な試算でございまして、足らざる部分を全て消費税で補うという場合でございます。私どもは、原始的な考え方として、このような消費税率の姿が実現できるというのはかなり困難だと思っております。そのような意味ではほかの部分での歳入構造、そしてやはり歳出構造、例えば社会保障改革でございますとか、今日はあまりご説明できませんでしたが、地方財政についても大胆にメスを入れていくことが必要かと思っております。このような試算の前提でございます。

 実は内閣府の試算が2月に出まして、ベースラインケースより私どものシナリオは厳しくて、経済成長ケースよりは楽観的だということになりましたけれども、基本的な考え方はそれほど違っていないかと思っております。単に経済成長を維持するだけでは財政再建はできないというところははっきりしていると思っております。それに加えて、更に歳出構造・歳入構造と、両面やっている改革を今から始めなければならないと考えております。これが、私どもが日本の将来のためにビジョンに掲げております財政の姿でございます。以上でございます。どうも、ご清聴ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。続きまして、経済同友会副代表幹事、岡本委員、河口大輔マネージャーより、本年1月21日に公表されました「財政再建は待ったなし」についてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

〔 岡本委員 〕 まずはこのような発表の場を設けていただきましてありがとうございます。同友会では、お話にありましたように、財政再建は待ったなし、次世代にツケを残すな、このような形で発表しましたけれども、その背景について少しお話をしたいと思います。

 昨今の財政に関する議論では、2020年度までの国・地方PB黒字化のみがいわば目的化されており、それも達成できるかどうかおぼつかない、このような状況下にあると思います。既に、残されている時間はあと5年となり、目前に迫っております。このような状況のもと、我々経済同友会は3点、政府が明確な回答を示すべきであると考えました。第1点は、まずは目標たる2020年度の国・地方PB黒字化を一体いかなる形で実現するのか。その方法、内容などを具体的な数値をもって示すこと。第2点は、2020年度が終着駅ではない。それ以降、例えば2030年を展望するとどうなるのか。時間軸の洗い替えを行う必要があるのではないか。第3点は、その際、相変わらず基礎的財政収支をベンチマークとするのか、より根本的に財政収支とするのか、あるいはほかにあるのか。このような点で目標軸の洗い替えをする必要があるのではないかということでございます。以上の3点を、間近に迫った財政健全化計画にぜひとも反映させていただきたい。これを行うことによって、国民に対して危機的状況を強く訴える。そして、そうした環境を整備する中で、国民の理解と後押しを受けて、政治が待ったなしの財政再建に着手し、まさに次世代にツケを残さないよう真剣に取り組むことを求めるものであります。

 我々は経済団体でありますが、経営に携わる構成員一人一人が現状を憂い、総意をもって本提言を出すことにしました。そのようなことですので、この提言はポイントのみを示したものであり、可能な限りシンプルな構成として、国民の理解と受容をいただくことを目指したものとなっております。それでは、河口マネージャーから説明をいたします。

〔 経済同友会(河口マネージャー 〕 それでは、提言の説明をさせていただきます。本日は資料5に加えまして、サマリーの1枚物、参考資料3もつけさせていただいておりますが、資料5に沿ってご説明をさせていただきたいと思います。

 それでは資料5の3ページ、図表4をご覧ください。GDPと比較した租税収入・社会保障支出・社会保障以外の支出を比較したもので、我が国は社会保障支出のみが中位グループに位置し、税の観点からは中福祉低負担という分類となり、このアンバランスの是正が必要となります。

 次に5ページ、中段の図表6でございます。こちらで、三位一体取組のイメージを現状の規模感に基づき示しております。つまり、毎年40兆円の赤字に対して、経済成長で4、5兆円、消費税率引上げで5兆円程度、歳出削減はほとんど見込めず、三位一体の取組を総動員しても全く追いつかないといった状況でございます。このことからも、成長だけに頼った財政再建は不可能であり、苦い薬である歳出削減・歳入拡大を同時に進めていくほかないことを示してございます。また、国の保有資産の売却をすれば債務返済の問題は片づくという意見もありますが、その下、図表7の、国のバランスシートによりますと、477兆円の負債超となっており、さらにその額は年々増加してございます。

 少し飛びまして14ページになります。ここでは4章にて、財政再建先送り論への反論を行っております。簡単に題名だけ追わせていただきますが、(1)大部分を日本人が保有しているから、日本国債は安全? 1枚おめくりいただきまして、(2)経済成長無くして、財政再建なし? (3)国の資産を売却すれば、債務返済は可能? (4)経済成長による税収増で、金利上昇を吸収? 再度1枚おめくりいただきまして、(5)将来的には高齢者の減少によって財政再建が進む? の5つでございます。

 20ページをご覧ください。財政の将来試算でございます。ここでは4つの前提を置き、2020年度を押さえつつ、2030年度までの財政の将来試算を実施しております。その中で最も理想的なシナリオのAは、三位一体、つまり高成長、歳出・歳入改革が進展し、21ページ右上の図表27にありますとおり、2020年度にPB黒字化を達成するといった内容でございます。前提となる数値は20ページ中段の表のとおりとなりますが、シナリオAでは、毎年、名目3%の成長、社会保障を毎年5,000億円削減。これは対前年比、実額で5,000億円少なくするということではございません。一般会計ベースで毎年8,000億円、地方分を含むと1兆円超と言われる社会保障の自然増の伸びを緩やかにするイメージでございます。つまり、削減の取組を行った後も総額としては緩やかに伸びていくという形になります。また、歳入面では消費税を、2020年度では13%、最終的には17%まで引き上げることとしております。これらの諸前提は極めて困難であり、現実離れしているという反論があるかもしれません。ただ、これは、2020年度の国・地方PB黒字化達成を具体化することはそれだけ困難であるということが示されているとも言えようかと思います。また、2020年度の国・地方PB黒字化が達成されたとしても、その先の2030年度までを見渡しますと、国債利払いを加味した財政収支については、こちらは右側のページ、図表29にありますとおり改善は進まず、債務残高についても、左下の図表30のとおり、増加に歯どめをかけることができないという厳しい結果となります。

 次にシナリオBでございます。こちらは2020年度の国・地方PB黒字化の達成はできないものの、財務残高対GDP比が今以上に拡大しないことを目標としたケースでございます。これは毎年、名目2%の成長、社会保障を2,000億円削減、消費税率を13%まで引き上げることが必要となります。しかしながら、社会保障関係費の削減につきましては、小泉内閣でも年間2,000億円規模の取組を途中で断念せざるを得なかったという過去の経緯から見ますと、この案ですら難しいと受けとめられかねません。

 次にシナリオCです。こちらは財政に関する努力がほとんどなされない、いわば自然体のケースでございます。社会保障では特段の歳出削減がなされず、消費税率は10%への引上げ以降、追加の引上げは行わない想定となります。

 シナリオDはゼロ成長。財政リスクを意識した金利上昇が発生し、改革は停滞、一部後退といったリスクシナリオとなります。

 なお、右下の図表31は債務残高対GDP比となりますが、理想的な想定のAで初めて明確な低下トレンドをたどることが可能となります。Bで辛うじて横ばい、C及びDでは発散の経路に乗ることとなります。

 22ページをご覧ください。抜本的な改革に必要な視点、絶対に取り組むべきことについてです。必要な視点として、税負担の適正化の観点から、制度としての強化及び捕捉漏れへの対応を提言いたしました。また、中長期的な取組とするため、財政健全化法の制定などを提言しております。

 24ページをご覧ください。こちらでは、(3)直ちに取り組むべきこととして、消費税率の引上げ、右側25ページに移りまして、社会保障分野全体の見直しを挙げております。その中で、25ページのローマ数字小1)医療・介護分野の給付抑制、利用者負担増についてご説明いたします。後発医薬品の利用促進、受診時定額負担、平均在院日数の減少、外来受診の適正化、70〜74歳の医療費自己負担の3割化、75歳以上の医療費自己負担の3割化、要支援・要介護1・2の給付抑制、介護サービス自己負担の2割化。以上、2013年3月に提言させていただきました8つの項目につきまして着実な実現を求めております。なお、私どもの推計では、これらの施策を全て実現した場合、公費ベースで年間8兆円程度削減が可能と見込んでおり、規模としては試算のシナリオA、毎年5,000億円の削減を行った場合と同程度と見込んでございます。提言の説明は以上となります。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。それでは、初めの事務局のご説明、それから日本経済団体連合会及び経済同友会からのご説明に関して、どなたからでもご意見、ご質問がございましたらお願いします。毎回同じですが、名札を立てていただけると幸いです。では佐藤委員。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。ではできるだけ手短に、3点ほど。今日の経団連と同友会からの説明の歳出抑制の主眼はおそらく社会保障だったと思うのですが、やはり、先ほど阿部さんからもちょっと言及はありましたが、地方財政をどうするかというところも財政健全化の重要なメニューになってくると思います。奇しくも今、地方創成というのが言われており、来年度は地方財政計画に1兆円上乗せ等、地方財政のたがが緩む懸念がありますので、地方財政を含めた財政の健全化への目配りが今後必要になってくると思います。

 特に地方財政に関して、高齢化もそうですが、インフラの高齢化という問題も彼らは抱えていますので、これから公共施設などをどうやって修繕するか、やめるかということも含めて、かなり選択と集中が問われている分野だと思いますし、うまくいけば、まさに経済成長の好循環にも乗るし、悪くいけばただのばらまきということにもなると思いますので、ここのところをもう少し、我々としても詰めていく必要があると思いました。

 次に、2点目なのですが、社会保障を5,000億円抑制するといった、大きな目標を立てることは大変大事だと思うのですが、それを実行するためには、大きな数値目標を個別の事業に落として、どれを切るのかといった、何らかの戦略マップが必要になってくる。平均在院日数を減らすと言うは簡単ですが、それをどうやるのか。例えば今であれば地域医療構想などの中に織り込まれていくと思うのですが、どのようにそれを実行していくのか。やはり実行の姿を明確にしていくという。マクロの数値目標から、どのように個別のミクロの事業につなげていくのかと。ここを少し意識しないと、実効性はなかなか担保できないと思います。そのためには行政事業レビューや政策評価を徹底するべきだと思います。

 また、これしかないといった形で財政再建のメニューを言うよりも、幾つかのメニューを見せることが大事だと思います。それはやはり消費税率引上げと歳出カット。消費税率引上げによる増収分をもっと増やして歳出カットを抑制するとか、消費税率引上げが嫌なら歳出カットをもっと増やすのだとか、社会保障が嫌ならばこちらの分野を減らすのだとか、幾つかのメニューを見せて国民に問うというスタンスが要ると思いました。

 最後に少しけちをつけるみたいで悪いのですが、先ほど内閣府の試算で、経済成長が高くなれば公債残高の対GDP比が低減していくというのが最後の図に出ていたと思うのですが、これは事務局からご指摘のあったとおり、金利が今、低いので、それによるボーナスだと思うのです。おそらく2023年までの試算ですが、これをもっと伸ばしていけば、どこかでまた上がるのではないかと思うのですが、この図を見せると、あ、何だ、何もしなくても、経済さえ成長すれば公債残高の対GDP比が減るのではないかという、少し誤ったメッセージを送りかねない気がしたので、留意が必要かと思いました。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では続いて、南場委員、井堀委員、加藤委員の順で。

〔 南場委員 〕 一点目。楽観的なシナリオにおいても、2020年度の目標達成に向けて9.4兆円足りないとのことだが、それをどのように埋めていくのかということの検討状況をお聞きしたい。経団連の試算も同友会の試算もそうなのですが、全てうまくいってぎりぎり何とかなるかといった厳しい状況ですので、バッファーを積んでおく必要があると思うのです。そのように、9.4兆円以上を生み出す施策を検討する必要があると思うのですが、具体的な施策の検討状況を知りたいです。

 2点目。民間企業も国民も地方もこれに協力してやっていかなければいけないと思いますが、私のような民間企業の立場で申しますと、社会保障費や財政の健全化に向けて貢献する事業が、しっかりと利益を生む事業として成り立って、それが実際に財政に大きなインパクトを与えるというビジョンを掲げて取り組んでまいりたいのですが、それを動機づける規制緩和などの施策について考え方をお聞きしたい。

 3点目は意見です。私はここで言われているシナリオよりも実際はもっと悲観的ではないかと思っています。というのは、IT領域で国際競争している者として、日本の産業の競争力、特に今後大きなバリューを形成するIT領域の競争力の低下に危機感を感じています。私の立場から言うと、ITエンジニアの底力というか人材力が極めて危ぶまれている。2020年を超えて30年という視座で取り組む必要があるという指摘もありますが、そういった長期的な視点で考えたときに、産業の競争力を維持するために、例えばソフトエンジニアですとかコンピューターサイエンスの人材がどれぐらい要るのかとか、起業家をどれぐらい排出したいのかという、人材ポートフォリオの考え方が日本はほとんどないのが問題です。人材というと、すぐ若者・女性・外国人という話になるのですが、コンピューターサイエンティストが20万人足りなくなるぞという話がアメリカからは聞こえてくるのですけれども、日本も日本の産業競争力を強化する上での人材ポートフォリオのビジョンを持って、ぜひ2020年を超えて30年、35年に向けて、このような人材を強化していくのだ、そのためには大学教育がこう変わるべきという議論が行われるべきと考えています。

 最後に4点目。これはリクエストですが、財政破綻の怖さが国民になかなか伝わっていません。特にマスコミは社会保障費や地方の開発など全てにおいて本当に手厚い手当てが必要と伝えがちです。ですから歳出を削減していく方向の施策は、なかなか理解が得られにくい。それは、根本的に、財政が破綻するとどのような怖いことが起こるのかを、一般の国民が全く想像できないからだと思うのです。そこはもう少し踏み込んで、国がこのようになって、あなたの生活はこうなるのですよというシナリオを示していかないと、これから何年にもわたって、改革に向けて国民も一致団結して取り組んでいくという雰囲気ができないと思います。コミュニケーションプランが重要だと考えますす。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。4点ありましたが、3点目、4点目はご意見ということで。最初の2つはご質問だと思いますので、事務局からお答えいただけますか。

〔 寺岡調査課長 〕 2020年度の国・地方PB黒字化に向けての具体的な道筋がどうなっているかということだと思うのですが、まず甘利大臣ペーパーに示されておりますように、1つは成長によって税収を高くしていく。2つ目は歳出改革を進める。3つ目は歳入改革、これは具体的には増税と言っていいと思いますが、そういったことを進めていくということだと思ってございます。それで、今置かれている状況で言いますと、まずマル1でございますが、ベースラインケースの場合、成長率が1.5%、経済再生ケースの場合は平均で3.6%と申し上げたように、マル1は財政再建に必須だと思いますが、再生ケース以上に高い想定を置くということは、やや現実的ではないことから、まずマル1は一生懸命頑張って経済再生ケースに持っていくということだと思ってございます。それからマル3につきましては、次の消費税率の引上げの時期、これは示されてございますが、それを迎える前の現時点の段階で、更にその先についてご議論するのは難しいと思うので、マル2の歳出改革を中心に夏までは議論を進めていくことになろうと思ってございます。9.4兆円という数字が歳出改革の対象としては、あまりに大きいのではないかということだと思いますが、先ほどお示しさせていただきましたように、今の中長期試算の前提は、足元の75兆円程度の歳出が、今後5年間で10兆円増えていく姿になってございます。加えて、これは国の会計でございますが、地方の会計には約100兆円歳出がございます。これも同じように、年々、毎年、数兆円の規模で伸びる試算になってございます。つまり9.4兆円という数字をどのように捉えるかでございますが、それだけ大きく伸びていく歳出をどのように抑制していくかという議論でございますので、数字上は歳出の様々なシナリオが書けるのだと思ってございます。他方、先ほどご指摘がありましたように、それについての具体的な方策が、妥当性があるのかどうか。そういったものを、具体性のある方策を今後夏にかけて検討していくということを進めていくということだと思ってございます。

 それから2番目にいただきましたのは、企業について、利益を生むような施策をあわせて展開する必要があるのではないかというご指摘ですが、1月30日の経済財政諮問会議において民間議員ペーパーに示されている考えは、歳出効率化・歳入拡大に取り組む仕組み、今後、その夏の計画を決め、それを実行していくに当たって、民間の需要の分野が広がる施策をあわせて考えていくということが基本に示されているので、こちらも夏に向けて具体的な方策を詰めていくということだと思ってございます。

〔 吉川分科会長 〕 では続いて井堀委員、お願いします。

〔 井堀委員 〕 3つの試算は、それぞれ前提のもとでは、非常にもっともらしい重要な試算だと思うのです。3つほど質問があります。

まず、消費税の税収増の効果の話ですが、経団連の試算では明示的に、消費税率を引き上げたときに軽減税率の措置は考慮していないという話です。軽減税率だと税収が減る可能性がある。あるいは消費税率を引き上げたときには当然、それにあわせて、歳出あるいはマクロ経済の環境の落下を防ぐための歳出増という対応が実際の財政運営ではとられてきたわけです。消費税率引上げに伴う財政負担あるいは軽減税率に伴う税収減に関して、何らかの考慮をしたのかどうか。あるいはこの試算はそのようなものを一切考えていなくて、機械的に消費税率を引き上げたときに、例えばGDP比で0.5%程度の税収が増えるという前提でやったのかどうか。

 次に、経済成長率が上がれば基本的に財政状況がよくなるというのは、どこの試算でも出てきているのです。例えば経団連の試算ですと、TFPが1.8%まで上がれば何とか3%を超える経済成長率が実現できるのです。特に2030年、あるいはそれ以降のことを考えたときに、ベースラインケースに相当する現状を放置したというか、改革がそれほど進まなくて技術進歩が進まない場合の前提が少し楽観的かなと思います。中長期試算については経団連や同友会の試算も、2030年ぐらいまで0%以上の経済成長を想定しているのですが、常識的に考えて、経済活性化がうまくいかない現状ケースで人口は減っていくわけですから、労働による経済成長の効果はマイナスになる。資本に関しては、貯蓄は減っているわけですから、TFPが本当に高くない限り長期的には経済成長は実現しにくいと思います。経済成長がマイナスになったときのシナリオをベースラインとして置いて、そのときにどの程度財政が厳しいかということも出したほうがいいのではないか。

 最後に、次世代にツケを残さないというのは非常に重要な財政再建のメリットだと思いますが、それを国民にわかってもらうためには、次世代に実際どの程度ツケを残さないで済むのか。要するに、国の財政状況は破綻しませんという形のシナリオは出てくるのですが、将来世代の人にとって、こういった財政再建のシナリオが実現したときに、実現しなかった場合に比べてどのくらいメリットがあるのか、あるいはないのかという、そこのところの試算を出さないと、特に若い人から財政再建への理解は得られないと思うのです。その意味では、難しいのは重々承知しているのですが、各世代別に、特に将来世代にとって、財政再建のメリットがどの程度あって、あるいはしないことのデメリットがどの程度あるのかを、社会保障あるいは税負担等を通じて何らかの定量的な資料を出していただきたい。そうすると、財政再建をすることで、どの程度将来世代にツケを残さないというメリットがあるのかが、よりわかるのではないかと思います。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 1点目はご質問だと思います。内閣府の試算で、消費税率引上げの影響が軽減税率の場合どうなのか、あるいは歳出に与える影響ですか。いずれにしても事務局からお答えいただけますか。

〔 寺岡調査課長 〕 1点目は、消費税率引上げに伴う軽減税率の議論が反映されているかということなのですが、これは含まれておりません。2点目、それとあわせて社会保障の充実が、消費税率の引上げに伴って、予定されるものが入っているかというご質問ですが、こちらは入ってございます。これはすなわち、10%段階では2.8兆円分を、子ども・子育て、医療・介護、それから年金に振り向けることが政府のプログラムで決まってございますので、こちらの歳出増については中長期試算上、織り込んでございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では続いて岡本委員。

〔 岡本委員 〕 24ページの同友会の数値ですが、消費税率の引上げに際しての軽減税率問題は、我々としては、低所得者対策としては給付付き税額控除を採用するべきであって、軽減税率ではないと。次にその水準ですが、これについてはいろいろな考え方があるわけで、我々としては簡素な給付措置という非常に少ない額があり、そのレベルでいいのではないかということで考えております。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では経団連。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 経団連の現状放置ケースが甘いのではないかとのご指摘でございますが、これはまさに、現状を出発点としてそのまま横伸ばししているだけでございまして、今の金利でございますとか、あるいは為替、あるいは原油の価格等、さらには人口の将来も、悲観的に見ますとまた全然違う形にはなってくると思います。

〔 岡本委員 〕 それから今の点ですが、井堀先生のお話はよくわかるのですが、ここでのPBバランスを実現するというのは、どのような環境下にあるかということに視点があるわけで、その場合に今の名目成長率3%を今後ずっと続けるのは本当に大変なことなのですが、それが実現したとしても5,000億円の削減と、消費税率の引上げが必要だということを言っています。これは非常に困難な数値ですし、名目成長率を上げるというのが大変だということはわかるのですが、これを全部やることですよというPBバランスのしんどさを強く訴えているということであります。それから、これはA、B、C、Dまでやったのですが、Dのシナリオでもう右ページの試算結果を見るとめちゃめちゃなわけでして、これをさらにもっとひどいのを出せということまでいくのかということです。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。加藤委員。

〔 加藤委員 〕 ありがとうございます。最初に、大変心配したのは、最近、巷間では、財政健全化目標に対して、債務残高対GDP比に変えたほうがいいのではないかとか、あるいはまた違う形で指標を考え直したほうがいいのではないかといった議論がたくさんあります。これは、ここにいらっしゃる委員の先生方はもうご案内のことだったと思うのですが、基本的に債務残高の対GDP比とPBは全く違う指標でありまして、例えば債務残高というのは分子に利払費も入っておりますし、GDPと債務残高は、両方とも財政としてどこまで操作できるかという、経済学の操作変数という言い方をすると、これはなかなか操作できるものではありません。ですから、財政健全化目標と言ったときには、これはPBの黒字化ということしか基本的にはないと思っております。ただ、巷間では、経済成長ということを考えれば、これは絶対に低下していくのだとか、あるいはとどまるだとか、いろいろな議論はされていますが、まず操作できないということと、それから先ほどありましたように、金利と成長率、ピケティではありませんが、rとgは独立ではなくて、成長すれば金利が上がるということを考えるとなかなか制御できない。さらにこれを目標にすると、例えば現状維持、195%でいいのか200%まで認めるのか150%まで下がるのか、非常に恣意的な議論になりやすいのかなということがあって、それを危惧しているということが1点目であります。

 2点目は、これは実は井堀先生がおっしゃったことと同じなのですが、こういったものは2020年がゴールではないし、2030年、2040年と長い目で見ていく必要があるのですが、そのときに世代ごとにどうなっているのか。井堀先生がおっしゃったように、これは私も同じようなことを申し上げようと思った、世代会計をやるべきだろうと思っています。ただし、過去における世代ごとの給付と負担のことを考え出すと大変なので、これから先のことだけでもいいので、現役の世代、これから生まれてくる世代、さらにその先の世代、そういったことを考えていかなくてはならない。それを見ていくためには、もう少し長期の試算も必要なのかなと考えております。以上、2点でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。板垣委員、永易委員の順に。

〔 板垣委員 〕 ご説明ありがとうございました。いろいろな考え方が盛り込まれていて非常に参考になるのですが、まず1つ質問です。経団連の阿部さんから説明があった部分で、試算の前提条件のところで、消費税率を19%までということ、これは単純な計算であると。それ以外の選択肢もありますということなのですが、例えば税という点で言うと、消費税以外に何らか別の所得もしくは相続系の税の問題を考えていらっしゃるのか。ここに書いていないけれども検討していらっしゃるのかどうかを質問したいと思います。

 それから名目で3%の成長ということが、政府系あるいは民間系のデータの中のあらゆるところでちりばめられていまして、それが達成できないとだめというのが大体の論調だと思うのですが、そもそも3%の成長が達成できるのかどうかという基本に立ち返ってこの場で議論しないと、財政健全化のほんとうのシナリオは描けないだろうと考えております。

もう一点は、それを前提として一生懸命やっているアベノミクスという今の政策そのものの妥当性。それしかないというならそれでもいいと思いますが、私はその妥当性には若干疑義があると思っています。そのようなところから、根っこから議論しないといけないと思っております。質問にのみお答えいただければと思います。

〔 吉川分科会長 〕 お願いします。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 消費税以外の選択肢ということであれば、個人所得税しかないと考えております。具体的には、まず公的年金等控除の見直し、所得のさらなる見直し、それから資産性所得に対する課税強化。この3点の組み合わせを全てやったとしても、おそらく3兆、4兆が限界だと思います。やはり消費税にかわる税収をもたらす税はもうないと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では永易委員、お待たせしました。

〔 永易委員 〕 いろいろなご説明をありがとうございました。非常に参考になりました。今回は初回でもありますし、各論の世界は別として、マクロの世界、大きい考え方からスタートするという気がしております。ただ、その大前提としては、板垣委員も言われたとおり、このシナリオです。やはり、成長路線とベースラインのシナリオ、それと経団連さんとか同友会さんから言われたシナリオ、みんな違います。しかも大差があります。我々が議論するときのスタート台ということですよね。ここをはっきりさせないと議論にならないのではないかという気がいたします。その点についても、どこをスタート台にすべきということでも、ものすごく議論はあると思います。だから、何本もシナリオを書くのか、やはりメインにして、最悪のときにはこのようなこともあるよという形でやるのか。そのようなところがスタート台にならないと、今後の議論はうまくいかないのではないかという気がするということを1点申し上げておきたいと思います。

 それと、これは質問なのですが、秋の陣の最後のときにも申し上げたと思うのですが、成長路線をとった場合の税収の弾性値ですが、これは非常に捉え方が難しいと思うので、何十年でとる、直近でとるで、ものすごく差がありますよね。おそらく、このシナリオは全体として弾性値1ないしは1.1ぎりぎりで、そのような形なのでしょうが、直近をとれば1.5ぐらいあるわけで、そのあたりをどのように考えたらいいのかということは、少し冒頭にご説明しておいていただきたいと思います。後半のところは質問です。

〔 吉川分科会長 〕 では、税収の弾性値について事務局から。

〔 寺岡調査課長 〕 ご説明させていただきました内閣府の中長期試算は1.0、財務省の行いました後年度影響試算は1.1を置いてございます。これは歴史的には、非常に成長率が安定していて税収の伸びも安定していたバブル経済の前、80年代から90年冒頭にかけての数値でございます。その後は成長率が若干、乱高下する。要するにマイナス成長を迎える中での税収の弾性値は非常に不安定ですので、その前の時代の数値を使っています。加えまして、今の税収構造で、消費税が一番大きなウエートを占めてきていますと、弾性値は1そのものに近いものでございます。

 その他の税につきましては、所得税は限界的には税率が上がる構造になっていますので、これをどう考えるかというのはありますし、法人税は、特に景気の回復期におきましては、赤字企業が黒字に転換する過程で税収の弾性は確かに大きく出るということがございます。そういったことを考えると1.1は低いのではないかという議論は、特に景気の回復期におきましては当てはまるのだと思ってございますが、長いトレンドをとると必ずしも、それよりも高い数値になるかどうかは疑問であると思います。そして、我々、財政当局としまして、税収の伸びはできる限り慎重な見通しを立てた上で財政計画を立てる必要があるのでございますので、いずれの試算におきましても1.1あるいは1.0を使わせていただいているといったことでございます。

〔 吉川分科会長 〕 では続きまして、小林委員、武田委員、田近委員の順で。

〔 小林委員 〕 ありがとうございます。1つ、これは意見。それからもう一つは質問です。

意見というのは、甘利大臣ペーパーの中で、進捗状況を毎年度レビューし、必要な対応をして、それから次の仕組みを考えるということがあるのですが、レビューするといっても、予算ベースでやるのか決算ベースでやるのか。決算ベースでやるとかなりタイムラグがあって、あっという間に5年たってしまって何の意味もないのではないかという。そのあたりを考えれば、私はここの席で何度も言っているのですけれども、決算の速報値が出せないのか。そうしないと結局、おくれてしまうのではなかろうかということを一言申し上げたいと思います。このレビューは大事だと思いますので、それを有効にするためには、そのようなことを本気で考えないといけない時期が来ているのではないかと思います。

 それから、これは最初に佐藤委員がご質問されたことと重なるのですが、経団連さん、それから同友会さん、地方財政を財政健全化の観点から何か検討されているとか、あるいは今後検討する予定だとか、そのようなのは何かあるのでしょうか。もしよろしかったらお答えいただければ。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では経団連さん、同友会さんの順でお答えいただけますか。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 地方財政につきましては、別途、地方制度全体の議論の中で検討しておりますが、非常に難しいのは、はっきり申し上げまして、全ての自治体が存続するという前提ではもう議論できないということでございます。

〔 岡本委員 〕 地方財政については、これも取り組まなければならないわけですが、まずは社会保障が一丁目一番地であるというときに、この社会保障でどれだけ、地方財政でどれだけとかいうと、ますます話は複雑になってきますので、とりあえず社会保障だとどのような数値になるのか、本当に毎年5,000億円ずつ抑制できるのかといった点からスタートしないと、混乱を招くということです。応用問題として、社会保障ではここまでしか対応できないので地方財政はこのようにしようとかいったことは今後展開すると思いますが、今の時点でやるべきことは、やはり社会保障を浮き彫りにしていくことだと思います。いずれにしても、先ほどからもある、名目成長率3%ができるかという話については、それだったら社会保障5,000億円、できるのかと。消費税率も17%まで上げられるのかと。どれもこれもほとんど難しい話で、それでPBがようやく黒字になるという、そこを指摘しているわけでして、この3%が甘いとか言われますが、これを16%にしても、マイナスでもいいですが、そこをスタート台にして果たして描けるのかと。そうしたら、社会保障については1兆円、2兆円、毎年やらなければいけないと。このような絵になりますので、これでは現実的ではないのではないかと考えております。

〔 吉川分科会長 〕 武田委員。

〔 武田委員 〕 どうもありがとうございます。私からは意見を2点、申し上げたいと思います。まず1点目は、財政健全化に向けての考え方でございます。私も、先ほど甘利大臣からのペーパーということでご紹介いただきました3つの改革、すなわちデフレ脱却と経済再生と歳入改革の組み合わせで行っていくことが重要であると考えています。特にデフレ脱却に関しましては、もちろん名目GDPで税収増につながるという部分もございますけれども、加えて年金のマクロ経済スライドがデフレ下の中でずっととまってきたということを考えますと、そういったことが発動されて、高齢化が進む日本の中で社会保障の持続性に資するという点では、そこは重要な点になってくるのではないかと思います。

 その点で、本日ご説明いただきました経団連様と経済同友会様の試算というのは大変示唆に富むものではなかったかと思います。手前みそで大変恐縮ではございますが、実は同じようなことを弊所、三菱総合研究所でも昨年の4月に行っておりまして、成長と消費税と、それから社会保障の抑制。先ほど岡本様からもご説明いただきましたけれども、さらにそれに複数つけますと非常に見えにくくなるということと、あと最初のやはり一番の問題は、これから自然増で社会保障が増えていくというところにあると考えまして、その3つで行っています。その後、環境が変わりましたし、また2月に中長期試算が示されましたので、それを踏まえて再計算を今行っているところでございます。公表前の数字ではございますけれども、その結果を申し上げると、実は名目3%のときの数字は、もう全く経済同友会様の値と同じでございます。びっくりするぐらいぴったり、13%と5,000億円の削減ということで、同じ試算結果がございます。ただ、先ほどから出ているように、では果たしてその3%で大丈夫なのかというところがございまして、私たちも組み合わせとして2%の名目GDPだとどうかということでやっていまして、つまり実質1程度で、プラス物価分を合わせて名目2%程度で考えてみますと、正直申し上げると消費税はさらに、結果を申し上げれば14、15%の間になりますし、社会保障については8,000億円という結果になります。なので、逆に言うと、それが難しいということであるならば、他の歳出項目の削減に踏み切らざるを得ないというメッセージとして私たちも捉えておりまして、その厳しさ、その中から選択しなければいけないのだというところを、国民にどのようにうまく伝えていくのかというところが非常に重要だと思います。

 それから2点目でございますが、経団連様からご説明いただいた、明るい未来を切り開いて、子や孫、さらにその次の世代へ活力ある経済社会を引き継いでいくことが我々の世代の責務というのは、まさにそのとおりであると感じますし、その責務だということに加えて大事なのは、経済再生、つまり成長の源泉となるイノベーション力です。そのイノベーション力を生み出していくには、今の若い世代が将来に不安を抱えたままであると、そこは生まれてこないと私も感じています。したがって、先ほど井堀委員から少しお話がございました、世代間会計でデータも用いてクリアにしていくというのは、夏までの作業というわけではないかもしれませんけれども、近いうちに必要であると私は考えておりまして、私の記憶では内閣府さんが計算しているのが2005年の時点でとまっていますので、そこをもう一回、そこからの変化も踏まえて明らかにして、それをたたき台に、それもあわせて国民で議論していかなければいけないと思います。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では田近委員。

〔 田近委員 〕 今日は経団連の阿部さん、それから同友会の岡本さんと河口さんから、経済と財政健全化のビジョンについて伺ったので、質問させていただきたいと思います。お2人の報告を非常に興味深く聞いたのですけれども、1点目、阿部さんの財政健全化の9ページ、企業のところで収益力を高め、経済の好循環を生み出すことで税収増に貢献。そのとおりで、そのために法人税減税もしているわけですが、私の質問は、経団連サイドでこうおっしゃったときに、一体どのようにして法人税が減税されるのかと。収益力が高まるのかと。そのとき、どのように経済の好循環が生まれるのかぜひ伺いたい。

 2点目は、法人税減税が、時間をかけて最終的には25%まで下げていくということですが、そのときの財源をどうお考えになっているのか。この2点を伺いたいと思います。

 それから同友会のほうも興味深く伺いました。1点目は、22ページに、抜本的な改革に必要な視点、絶対に取り組むべきことと、非常に勇ましく書かれているのですけれども、そこなのですけれども、今日は全体的なことなので、歳出と歳入をあわせて質問させていただきますけれども、「制度としての強化」というところに、「消費税率の引上げ」、「現役世代以外に担い手を拡大するとともに、直間比率の是正にも効果」と書かれたときに、では所得税は減税するのか。後ろのほうで、今度は給与所得控除を見直すと言ったわけですから、この場では経済活性化がポイントだと思いますけれども、どうお考えか。

 2点目は、消費税の細かなことは、今日は議論しないつもりですけれども、免税点の引き下げとおっしゃっていますけれども、たしか今、1,000万円ですよね。これをさらにどの程度下げようとお考えになっているのか。この問題を考えようとすれば、最終的にはインボイスを入れるしかないのではないかと私は思います。

 それから3点目、捕捉漏れの対応と書いてあるのですが、税には公正の観点という、誰もが認める重要な点がありますが、ここで同友会がおっしゃっている課税漏れというのは一体何をイメージされて、どのように徴税強化されているのか、少し具体的にお話しいただきたいと思います。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 税は必ずしもこの分科会のメーンテーマではないのですが、簡潔にお答えいただければと思います。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 簡単にということで、まず収益力を高め経済の好循環を生み出すと。具体的には、これは雇用とか賃上げあるいは配当等という、さまざまな成果の分配につながるということでしか説明できないと思っております。

 それから法人税率でございます。私どもは2018年度以降、1%下げて終わると。これは法人税の自然増収の半分ぐらいを使うという前提で計算しております。

〔 経済同友会(河口マネージャー 〕 税負担の適正性ということで、あくまで方向性・視点の提示ということにとどめてございまして、今回、制度としての強化のところにありますとおり、例えばこのような取組が考えられるということで、税体系全体を俯瞰する形で、それぞれの整合ですとかそれぞれの水準というところの議論まではできていない。今後の検討課題として残っている状況でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

〔 岡本委員 〕 それはあるのですが、これは財源的な問題でということになるときに、この計算の中でそんなに数値としては出ないので、ここはあくまでもまとめた形でやっております。それで、その1,000万円がどうこうというのは、今後、税を細かく詰めていくときに、ここで受けるのかどこで受けるのかということはあるのですが、やはり項目としてはこれは立てなければいけないということで取り組んでおります。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。ではお待たせしました。老川委員、富田委員、末澤委員の順でお願いします。

〔 老川委員 〕 今日は経団連さん、それから同友会さん、それぞれご説明をいただきまして大変ありがとうございました。シナリオとか数字は違いますが、おっしゃっていることの基本は全く私も同感で、要するに消費税率を10%に引き上げなくてはならないどころの話では済まなくて、もっと消費税率も十数%は必要だし、それから成長に期待するだけではだめだと。やはり財政再建をもっと切り込んでいかなければできないのだと。その場合の社会保障あるいは地方が重点になると。これも本当にその通りだと思います。

 問題はそれをしっかりと、今、各委員からもご指摘がありましたように、国民の皆さん方にどう伝え、理解していただいていくかということだと思うのですが、その点で、お願いというか意見として申し上げたいのは、今、田近委員が、好循環をどう実現するのだとおっしゃったのですが、まさにそこのところで、現に今、金融緩和でお金はたくさん余っている。それが企業の内部留保としてたまっていて、いわゆる設備投資とか、通常の経済政策で言えば消費と設備投資に回るべきものが、どっちにも貢献していない。ここのところがいま一つ、経済の実感としてよくなったなと、あるいはこれで少しいいほうに向かうのだなという気分が全然出てこない原因と思います。このような状態なので、ここを何とかしていかないと、ただ、甘い考えではだめだよと言っているだけだとなかなか理解が得にくいのではないかなと思います。そのような意味で、今、経団連さんのほうから成果の配分という形で、おそらく賃金のほうにということで、これは大変必要なことだと思うのですが、それだけではなくて、それももちろんそうですけれども、設備投資。これも、個々の企業からするとなかなか簡単には踏み出せない。特に海外への生産拠点の移転その他いろいろありますから、昔と大分、経済を取り巻く環境が変わっていますので、そう簡単には、企業家の立場からすると、簡単に、よし、いこうなどという気分になれないというのも、そのとおりだと思うのだけれども、そこを政策としてどううまく誘導していくか。この辺りがこれからの大きな課題なのではないかなと考えておりますので、経済団体さんのほうもその辺を意識されて、経済界としてもこのようにやっていこうなどとか、このようにやりたいと思うけれども、その場合にこのようなことが政府としてやってもらいたいところだとか、何かそのようなことを言っていただくと、より説得力が増すのではないのかなと思いますので、お願いに近い意見でございますが、一言申し上げたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、富田委員。

〔 富田委員 〕 今日お話しいただきました試算は全て、先ほど老川委員がおっしゃったように、経済再生等のビジョンを実現した上でも、2020年度の国・地方PB黒字化実現という健全化目標が達成できないことが確認できたのは大きな点だと思います。

議論のスタート台の話が出ました。これは私のこの紙の読み方ですけれども、甘利大臣の提出資料の中に、議論の出発点といたしましては、潜在成長率並みの固めの成長率を前提とした必要対応額を試算とする。試算でいけば16兆4,000億円でして、経済再生ケースは9兆4,000億円。ですから、経団連のビジョンが実現し、政府の再生シナリオが実現すれば、PB赤字が7兆円縮小するという前提が置かれているように思います。それは前提とするのか、我々としてはその16兆4,000から議論するのかということも必要だと思うのです。そこで考慮すべきは、これまで昭和50年に赤字国債を発行し出してから、また橋本龍太郎総理のとき、平成9年に財政構造改革法をつくり、小泉首相のときに骨太2006をつくって、いずれも実現していないのです。どんどん高齢化が進み、少子化が進み、段々と本当のリミットが来ていて、今回は、まず財政健全化の入り口であるPB黒字化を実現しなければ本当にいけないわけでして、そのときに高めの成長率を前提としていいのかと。先ほど南場委員のご指摘があったような、IT人材だって足りないではないか。つまり潜在的な成長力に懸念が持たれるようなことも考慮して、幅広に検討することも大事だと思うのです。そのときに、あまりにも改善幅が大きいと実現できないのではないのかということなど、そこらを我々としてはやはりいろいろな意見を幅広く、ほんとうに、成長率が高い再生シナリオでいいのかどうかといったことも含めて検討する必要があるのではないかということでして、また財政健全化のメリットについても、これまでどちらかといえば健全化しないと大変なことになるということで議論してきたように思うのですが、それはもちろんそうなのですが、そこをどのようにしっかりと訴えていくかも含めて検討する必要があるのではないかと思います。

〔 吉川分科会長 〕 末澤委員。

〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。本日、4つの試算をいただきましたが、やはりどの試算も成長率についてはやや楽観的といいますか、現実と比べると相当難しい前提だと思います。それでもやはりPB黒字化はなかなか難しいということで、マーケットでも、今回の2020年度のPB黒字化については相当厳しいという見方が一般的だと思います。おそらく要因は2つあります。先ほどの成長率の話と、もう一つは消費税率引上げが先送りされたことです。これは甘利大臣も、先々週の会見でも、基本的には10%前提とおっしゃいましたので、そうすると、やはり成長率を引き上げるということになるのですが、内閣府の今回の試算も、内閣府の説明では、たしか名目3.5%、実質2%強の成長率は、1983年から93年の平均を使ったというお話がありまして、これには2つ問題があると思われます。1つはバブル期を挟んでいるということ、もう一つは生産年齢人口が、95年までは増加が続いていたということ。ですから、かつての人口増加期の成長率であるということです。ただ、今後20年度、25年度を見渡しますと、2022年から25年にかけていわゆる団塊世代の方々が後期高齢者に変わっていかれると。ですから、今後の高成長を実現するには、私は個人的には相当、人口政策が重要になって、これは特に2030年代、40年代、50年代と団塊ジュニアの高齢化を展望しますと、より重要になると思うのですが、今回いただいた、経団連さんと同友会さんの試算で、人口動態の先行きの見込み、ないしは政府も2060年にかけて1億人の人口を維持するという目標を出していますが、それについて何らかの施策が盛り込まれているのかどうか、その点をお伺いしたいです。

〔 吉川分科会長 〕 では、お答えをお願いいたします。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 まさに経団連ビジョンの4つの柱の一つが人口1億人を維持するということでございます。現在、人口問題について、これは実は岡本さんに委員長をお願いしておりますので、4月中、5月には提言を出すつもりでございますが、具体的には、少なくとも人口1億人に給付できるような具体的な施策を提言してまいりたいと思います。現状でもかなり厳しいことがわかっておりますが、場合によっては、外国人の活用を含めて検討させていただきたいと思っています。

〔 岡本委員 〕 今度は経団連の立場でお話しします。よく言われるように、1億人を維持するのは、自然体だったら8,700万人になってしまうので、要するに1,300万人増やすことだと。これは東京の人口と同規模を増やすということで、ようやく1億人だということを考えると、一体どのようにやるのかということが、ほとんど解答がない。だからどのような案をつくるかというので困っているのです。ただ、GDPが3%上がるかどうかというのは、少子高齢化の問題をどう考えるか。要するに労働数がどうかとか、あるいは1人当たりの労働のイノベーションがどうかとか、全部が組み合わさって3%なのです。ですから、この3%の実現は、もう無理ではないかと言われていますが、政府としては、これをやると言っているので、少なくともその中身で、例えばTPPでも農業改革でも何でもありますけれども、そのようなのを総動員してこれを実現しようということを言っているわけです。その中でやはり一番問題なのは少子高齢化という、生産労働力をどのように増やすかということで、そうするとやはり外国人材のインバウンド、受け入れとか、あるいはその延長など、いろいろなことは考えているのですが、なかなか人口の減少について、これで本当にここのところがうまくいくというのは、実際は難しいと思います。何しろ、GDP、本当にこれは3%まで上がるのかというのが、ここで議論する話なのかどうかはちょっとわからないのですけれど、やはりこれはもう真剣にやらないといけないとは思っています。ただ、とりあえずここでは、3%とこれだけ政府が言っている中では、それをやったとしても無理なのだということを強く言うというのがポイントではないかなと私などは思っています。

〔 寺岡調査課長 〕 内閣府の中長期試算の前提は、詳しくは参考資料1にあります。その8ページをご覧ください。ここにマクロ経済に関する前提が書かれてございます。まず経済再生ケースの場合、全要素生産性上昇率は、ご指摘がありましたように、2020年代初頭にかけて2.2まで上昇するという前提で、83年から93年の平均をとったものです。次に労働力のところも、足元の性別・年齢・階層別労働参加率が徐々に増加していくような、いわば政府の子ども・子育てですとか、そういった政策の効果を反映して、ここに具体的な数字がありますけれども、例えば30から34歳女性の労働参加率は、13年度から現在の70%程度から81%程度まで徐々に上昇するような前提を置いてございます。一方、ベースラインケースは、一番下でございますが、足元のTFP上昇率は足元の水準で横ばい。次のページにありますが、労働力のいわゆる労働参加率も、足元の水準で横ばいといった前提を置いているということでございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。倉重委員、お待たせしました。

〔 倉重委員 〕 今日のお話、特に経団連と同友会のお話は、内閣府の見通しも全て含めて、一言で言えば、大体一緒なのですが、両提言でも触れられている通り、いかに国民的な課題にするか。それで、両団体とも、民間のオピニオンリーダーとして、どうすればいいのかという知恵をぜひ、ありましたらいただきたいです。要は、先ほども出ているように、特に経済界に対してはインセンティブを与えたらいいのか、あるいは、今のまま放置しておくとこれだけ大変なことになるという形を国民に知らしめる、脅威というインセンティブを与えるのか、いろいろなやり方があると思うのですが。いろいろ言っていても、なかなかそれが様になってこないところに問題があると思うのですが、それについての知恵。特に政治に対して、政治が法案を出してまた引っ込めたりとか、いろいろな形でなかなか前に進まないのも、政治の原因もあると思うのです。その裏には民意があると思いますが。政治に対して、例えばちゃんと取り組まないと献金を少し下げるとか、そのようなことも含めていろんな知恵があると思うので、その辺りをぜひ何か、今日せっかく来ていただいたので、お伺いしたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ではお願いします。

〔 経団連(阿部常務理事) 〕 今、一番大事なことは、国民が危機感を共有するということだと思っております。現状を率直に各層の国民にご理解いただくことが必要でありまして、ご指摘のとおり、ある意味で最後は政治の決断ということになります。私どもは、政治寄附と政策は関係ないと明言しておりますので、そのようなことは決していたしませんが、やはり政策としては、特に財政健全化法の早期制定をお願いしたいと思っています。

〔 吉川分科会長 〕 岡本委員。

〔 岡本委員 〕 インセンティブか脅威かという話ですが、インセンティブは今まで山ほどやっているのではないでしょうか。しかし、それによる効果が出ていないというのが現実であって、私としてはこれ以上、インセンティブの話に持っていっても仕方ないのかなと思っています。むしろ脅威なのですが、これはマスコミにも協力してもらわないといけないと思います。ここにおられる委員方はきっちり言ってくれるのですが、新聞にはあまりその辺が書かれておらず、もう少し新聞に、もっともっと単純にしながら訴えていってほしい。我々もこれはそのつもりで書いているのですが。だから、ものすごくこれは捨象して専門的に細かいことは一切除いているのですが、このような形で、できるだけテレビと新聞に訴えてもらって、それで国民が大変だと思ったら、それが政治の後押しとなり、選挙のときも少し雰囲気が変わってくると思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では、よろしいでしょうか。

 それでは、これで前半の議論を終えたいと思います。経団連、同友会のプレゼンテーション、大変、私どもの参考になったと思います。改めましてありがとうございました。(拍手)

 それでは、少し時間が押していますが、ここで小休止ということで、どうでしょう、10分前ぐらいから再開ということにします。五、六分休憩といたします。

午前11時43分休憩

午前11時50分再開

〔 吉川分科会長 〕 よろしいでしょうか。それでは後半の議論を再開したいと思います。

 では、中空委員にプレゼンテーションをお願いいたします。

〔 中空委員 〕 「国債の信用リスクと財政健全化〜市場のメカニズムは必要か?〜」というタイトルで書いてございます、資料6をご覧下さい。先ほど来あったお話とは少し異なっております。というのも、先ほど来のお話は、一個一個は本当に正しくて、中長期的な話なのですが、私が今からお話ししますことは、現実の話で、非常に短期的な今のことです。そのことと、去年の12月に日本国債の格付が引き下がりましたが、これに対して大きな影響がなかったと見られていることについて、いやいや、意外とあるのですということを今日はお話ししたいということでございます。

 最初にお話ししておきたい点がございまして、今日「市場のメカニズムは必要か」というタイトルなのですが、これをなぜわざわざ書いたかというと、ある非常に有識者の方なのですが、この会にはおられませんが、その方に、債券マーケットがおかしいという話をしたことがあるのです。そうしたら、債券マーケットならおかしくても、株式市場が強いからいいではないかと。日本は健全だという言い方をしていたのです。なので、有識者が受け入れてしまうところはあるのですが、そのようなことを言う人もいるということで、債券市場がそれほど、おかしくなっていても大丈夫ではないかという見方をする人は確かにいるのですということが1点。

 それからもう一点。このところ、マイナス金利とか長期金利は低金利になっていて、日経新聞などの「経済教室」でも、3回にわたって上・中・下と特集があったのをご覧になっていると思うのです。特に第3回の「下」にあったラインハートさんの議論というのは割と的を射ていると思うのですが、それを簡単に言うと、マイナス金利は果たしてニュー・ノーマルと言えるのかという議論をしていて、それをするためには2つやるべきことがあったと。最近の流行りとしては、債務削減を促すという観点から金融抑圧というのをやるのですよというのがあるわけなのですが、その金融抑圧を成功させるためには2つ条件があって、1つは国債の捕らわれの投資家をつくってそれを維持することだと。もう一つはマイナスの実質金利を継続して税を課していくことなのだと。その1つ目のほうの、捕らわれの投資家というところなのですが、日本にはいっぱいいるわけです。日銀が今そうですし、それ以外の、永易さんの横で言うのも何ですが、銀行の方も、それから岡本さんの生保さんもみんなそうでして、その中に組み込まれてしまっているわけです。その面がやはり大きくあります。それは、皆さんがそのような捕らわれの投資家として期待されるプレーをしてくれるがゆえに今のマーケットは何とかなっているのですと。言い方を変えると、皆さんが、ではもうやめたとなってくると、これは成り立たないマーケットになっていて、それぐらい無理をしているということです。

 もう一つ言えるのは、それでも日本国債のマーケットは、財務省が発行したい債券の額を全部消化さえできればいいということを大前提にしてしまうと、結局、例えば東京三菱、5,000億持ってきなさいということを決めてしまえば、割り振ればできないわけではないのです。ですので、市場がゆがんでいること、メカニズムが必要なのかどうかということをほんとうは考えないといけない。しかし、私は今日はマーケットの立場からお話をさせていただくので、そのような意味では市場のメカニズムは必要なのですと。今申し上げたような枠組みなどで処理していくのはやはり健全ではないし、市場メカニズムが崩れてしまうと財政規律もなくなっていく。ここは大変重要なポイントなので、市場のメカニズムは必要なのですということでお話を始めさせていただきたいと思います。

 ページをめくっていただきまして、1ページ目です。ギリシャ及び欧州のCDSスプレッド推移を最初にお話ししたいと思うのですが、足元、ギリシャの話がまた出てきています。ギリシャがおかしい。ギリシャが言っている主張がほんとうに厚かましいのですが、そのことを言い始めると、また切りがないぐらい私はしゃべってしまいそうなので置いておきます。ただ、ギリシャの財政再建の必要性はまた出てきていて、それによってマーケットではギリシャのこれからのことが心配になっているために、1ページ目の左半分の、CDSのスプレッドとありますけれど、信用力が疑われて、わーっと広がってきましたという表でございます。また2000ベースみたいなすごいところまで来ましたねということです。それに対して右側、ギリシャを除くCDSを見ていただくと、それほど大きく動いていないことがわかります。なので、財政再建ができなさそうとか、やはりユーロから脱退だという話になると、一気に信用力は落ちていくことを見ていただいています。

 2ページ目に移りますが、今度はギリシャ国債の話です。少し解説を書きましたが、まず左の表からご覧いただきたいと思います。ギリシャ国債の利回りというところで、青と赤とグリーンで分けていますが、青いところが2010年6月です。ですので、かなり正常にみんなが捉えられているときは、ギリシャ国債はこのような利回りを示していたのです。一方、財政再建もできなさそう、ユーロから脱退するかも、デフォルトリスクも出てきたなとなってくると、ギリシャ国債の利回りが、この赤いところに一気に飛んだわけです。総選挙とその後の支援枠組みをめぐる不透明感からギリシャ国債は暴落しましたというのがこの絵になります。徐々に変わってはいくのですが、デフォルトの織り込みが起こると普通は何が起こってくるかというのを書きましたが、残存年限にかかわらず価格がほぼ一定で取引されるようになる。マーケットとしては、いつデフォルトしてもリカバリーレートを見るようになりますので、そのような取引に変わっていきますという絵でございます。一方、もう一個の下なのですが、足元ではグリーンの線に変わってきているわけで、支援延長に向けた動きが好感されて、利回りも低下、落ち着きを取り戻していますという表になっています。ここでご覧いただきたかったのは、このように財政の問題が出てきたりいろいろなリスクが出てくると、国債のマーケットがビビッドに動くということ。これは、もう一回またギリシャが出ていますということでご覧いただきたいと思っています。

 さておき、日本の話なので、JGBの話、日本国債の話もしていこうということで、3ページ目ご覧いただきたいと思います。

 「JGB金利の期間構造」というところです。このカーブを見ていただくとわかるのですが、期間が延びれば普通、金利は上がっていくので、きれいなカーブを描くのが普通なのです。1月16日、マイナス金利が出ていますが、このときの青い線と、これはもう明らかに異常ですし、現状、2月16日の金利の期間構造をとっていますが、グリーンの線をとってもそれほどいいとは言えない。どこが問題かというと、普通のきれいなスムーズなカーブにはまずなっていないということ。1−2年の近辺の形状がかなりゆがんでいるということ。それから5年−6年についても、ほかの年限の金利差と比べて過度に抑制されてしまっているということ。なぜかというと、需要があるからですと。日銀が買ってしまっているからというのがマーケットでの解説になっていくのですが、普通の市場の構造ができておらず、誰かががっと買ってしまうので、崩れたカーブになっているということ。言い方を変えると、最低が引かないマーケットになっているということになります。

 4ページ目に当たりますが、現状で、JGBの10年金利は日本のCPIと比べるとどうかということで、左の半分の表をご覧いただきたいと思うのです。今の足元の状況は、JGBの10年金利のほうがCPIよりも低いというところまで来てしまっています。これは人為的に抑えられているという解説を私はしましたが、このような状況は必ずしも日本だけが異常な事態ではなく、イギリスでの例もあります。右の半分がそうなのですが、ちょうどイギリスは、2011年の8月ぐらいから2013年の8月ぐらいまでは青い線のCPIのほうが、薄い線の10年国債金利よりも高いです。ここは何が起こったかというと、結局、イギリス国民が、景況感が悪くなって、非常に苦労したという事態が起こったのです。ただ、このときは、最初は普通に金利上昇によって、その後はCPIの下落によって逆転事態が解消しましたし、その後の状況の苦しさを除いて考えると、一見、事なきを得ているのですが、やはり日本はこのような状態の中に入ってきているし、人為的に抑えたということは過剰な抑制をしていますので、市場は想定外の形で反応することがある。言ってしまうと、結果的には成長がそがれていくし、デフレを脱却できないということになるのではないかなと我々は予想しているところでございます。

 さて、少し見方を変えて、債務残高という目線に変えていこうと思うのですが、先ほどのご説明の中にも金利が低かったので利払費が低いということがあったと思います。そのことで5ページ目にご説明をしたいと思っております。この表が何を言っているかというと、見ていただきたいところはまずグリーンの線の利払費のところです。足元、低金利なので、利払費が低く抑えられていたことがよくわかります。しかし、この青い線が金利で、左軸になっているのですが、ぐっと下がってきた。これはどこまで下がるのですかということが1点です。マイナスにどんどん突っ込むかというと、それは基本的にはないはずなので。そうすると、金利の低下にはもう限界が来ていて、過去最低のこの金利水準なのですが、この利払費がこのままでいけるかというと、それは少し楽観的な前提にも見えてくる。その実、利払費が多少ですが上向いてきていることがわかると思います。

 3つ目のところ、割とインフレ派の人には多い議論ではあるのですが、日銀保有分への利払いは、結局のところ国庫に返納されるからいいではないかと言う人もいますが、これは金融政策の独立を確保する観点では当てにしてはいけないと思いますので、利払費の低下には相当、限界がきているということです。

 6ページ目ですが、もう一つ言えるのは借り換えリスクの話です。債務残高が膨張してきていますが、これに対して借り換え債の発行額を高水準で推移させてきました。発行規約においては、残存を伸ばしていて非常に賢いやり方をしたし、逆に言うとこれしかやりようがなかったと私もマーケットも思っていて、その意味では仕方がなかったと思うのですが、対GDP比でも20%を超える水準になってきています。市場の変動に対しては脆弱なところ。しかも残存構成を長期化しているのはいいのですが、長期化して買ってくれる、普通の日銀以外の投資家というと、基本的には生保しかいなくて、その生保がどこまで買えるのだという話になってくると、それも相当程度、難しいことになってきていると思います。ですので、一般的には、それぞれのALMにマッチングするようにうまく市場が動けばいいのですが、そうではなくて市場をこなしたいがために人のALMを買いに行くような動きが何となく見受けられて、これはやはり無理を通し過ぎな面が出てきているということでございます。

 少し目線を変えます。格付が下がったことによっての影響ということで、7ページ目に行きます。格下げの影響は、基本的にはあったと思っています。左上、格付の推移という表がございます。これを見ていただくと、喫緊では12月1日に格付が下がりましたので、そのような意味では、この影響が本来はあったはずなのです。しかしマーケット的にも、あるいは株のマーケットは一切合財、これを無視していて、格付が下がった日に株価が上がったというのは忘れがたい記億ではありますが、そのような状況だった。しかし実際はそうでもなくて、このページの右の上の表、バーゼルローマ数字3標準的手法のソブリン向けエクスポージャーのリスク・ウエートという表をご覧いただきたいと思うのです。日本の銀行は、日本国債を持つ上ではこの基準を持っていないのですが、海外勢の金融機関、例えば標準的手法をやっている銀行が日本国債を保有している場合はどうなるかというと、ここに書いてあるとおり、5つの格付機関からとっている下から2つ目、これは5つしかないので下から2つ目をとることになっているのですが、下から2つ目のリスク・ウエートをリスク・ウエートとして読み直すことになっています。そうすると、日本の国債は、ムーディーズが下げたことによって下から2つ目もAクラスに入ってきているので、海外勢から見て、標準的手法で海外勢の銀行がもし日本国債を持っている場合は、リスク・ウエートが一気に20%に上がったということです。もちろん、それが現実的かと言われると、標準的手法でやっているような海外金融機関がたくさんの日本国債を持っていると考えるのは、まともではないので、大きな影響はないとは言えるのですが、言ってしまえば、日本国債がリスクアセットだとみなす1つのポイントだということです。

 それからもう一つ、左の下なのですが、イギリスの銀行課税の際に使うマトリックスという表があります。これはイギリスが2011年に導入している法律に基づいているのですが、これは何を言いたいかというと、イギリスの銀行は、バランスシートがきれいであるために、持っているリスク資産に関しては、バランスシートに載っているものは課税しますと言っているのです。ですから、バランスシートに置く資産に対してはものすごく神経を使っているわけです。これはイギリスのマトリックスなのですが、どう見るかというと、ここも先ほどのバーゼルローマ数字3と同じような考え方で、クレジット・クオリティー・ステップとありますが、少なくとも2つの格付機関がステップ1というのをつけていないと、いいものだと。無税では扱ってくれなくなるのです。ちなみにフィッチは、日本の格付はAプラスですし、ムーディーズもA1、S&Pが辛うじてAAマイナスで残っていますが、DBRS、一番右のやつはAHです。すると、今の日本の国債の現状は、1つしかステップ1が残っていないことになりますので、イギリスの銀行から見たらリスク資産になってしまうのです。起きていますのは、例えばイギリスの銀行が、もう日本国債はやめたといって撤退する動きが出てきています。既に幾つかの銀行が撤退を始めています。

 それだけではなくて、右の下のほうにポツがいろいろ書いてありますが、3つ目、各種契約における格付トリガーというものもあって、日本国債は格付が高いということで、いろいろな金融商品の担保、保証文言などに入ってしまっているのです。そこを、格付が下がったことによってもう一回書き直すという作業がたくさん起きています。これは日本国債の格付が下がったからなのです。加えまして、日本国債の格下げによる、格付への影響もありました。銀行も多くの銀行は格付が下がったと思います。生保もそうです。ですので、日本国債の格付が下がったことによって全く影響がなかったかというと、そうではなかったということです。何といっても日本国債の市場から撤退を決めた外資系がいるということが、大きいニュースだということです。先ほど捕らわれの投資家という言い方をしましたが、そのような投資家が無理に買っているマーケットの中で、証券会社がいなくなって、引き受ける人が減ってくれば、無理やり何かをするしかなくなってきてしまうわけです。そのような異常事態になっているということが1点。

 8ページ目に移りますが、これは国債の信用プレミアムをあらわす超長期スワップ・スプレッドの表でございます。わかりにくい表なので少しだけ説明をしますが、これは何を言っているかというと、銀行間取引金利をベースにしたスワップ金利というものがありまして、普通はリスクフリーな商品、金利であるJGBを引く。その差額がここに出ているわけです。JGB30年の国債信用プレミアムを使っていますので、基本的にはJGBの金利がスワップ金利などよりも低いわけです。そうであると正常なので、この表で見ていただくと、マイナスが大きければ大きいほど正常になるはずなのです。日本は青い線で、ドイツはグリーンの線です。足元のグリーンをご覧いただくと、ギリシャに財政健全化を要求するドイツがみずから示す財政健全化を一生懸命示していますから、国債金利については信認が得られていて、いい感じに進んでいます。

 一方、日本は、足元で見ていただくと、残念ながらまたJGBが上がってしまっていて、スワップ・スプレッドよりも上がってしまっています。ここではマイナスになっていないということです。ちなみに、この超長期スワップ・スプレッドは、非常に雑駁な代替指標にはなりますが、その国の銀行の信用力を示すと考えてもよいものなので、信用が落ちていることを日本については示すし、ドイツは安定していることになるわけです。これは後からの講釈になってしまうのですが、青いところで日本を見ていただくと、確かによくなった、下向き矢印をつけたところは、消費税率引上げによる財政改善を織り込んだときにはこの指標は大分下がってきていて、消費税率引上げの延期を決めたときには、ここは上がっているのです。マーケットは財政再建に対してきちんと正しい反応をして評価をしているということです。現状が随分おかしいということをご覧いただければと思います。

 ここまでは実は日本の信用力がどう見られているかということでもありました。この超長期スワップ・スプレッドの状態を見ていただくと、結局は、金融機関のファンディングコストも相当上がっていくという話になっていくのですが、少しその金融機関の状況ということで、9ページ目になりますが、ご覧いただきたいと思います。今までは日本国債の信用力の話を基本的にはしてきたつもりなのですが、これが金融機関にも影響するということで、例えばこのページの左半分の表は、国内銀行の海外支店の勘定を書いてあります。今、日本はやはりパイが小さくなってきていて、利益を上げようと思うとどうしても海外に行くということになっていくわけですが、預金を集めて海外で貸し出しをするとしても、そこにはまだ差があって、貸し出しのほうが多いものですから、やはり差額の分はファンディングしなければならない。これが、今、銀行が置かれている状況でございます。

 そのような状況の中で、借入れや債券発行をしたりしていかなければならないのですが、右の表がそれを示していますが、ドル円の通貨スワップのマーケットの表を見ていただきますが、グリーンの線に比べてやはり2月19日時点のドル円の通貨スワップマーケットは大変苦労していることがわかります。例えば、アメリカの金融機関がゼロでファンディングできても、日本の金融機関は例えば1年物を調達しようと思っても40ベーシス余計に払わなければファンディングできないという状況を示しています。それほどハンディを持たされているということです。これは金融機関が悪いのではなく、元を正せば、財政再建ができなくて日本国債の格付が下がっているところからきているものと読み込むこともできますので、ここは十分見ていく必要があるということでございます。

 このような状況が長引きますということで、10ページ目に行きます。債券の利益は景気後退時の本当は頼みの綱なのです。大分、銀行のバランスシートに特化した言い方をしてしまっていますが、これはどう見るかというと、赤い線が右軸の税引き前当期純利益です。青い線が国債等債券売却益や償還益です。これは反対にしていますから、収益が上がらないときはそこを一生懸命出して頑張ったことが見えてくるわけです。今は、収益が銀行は上がっているのでいいですが、ここまで利回りが低下してしまうと、この国債等債券売却益・償還益で、何とか帳尻を合わせようということは基本的にはできなくなってきている。現水準では、利回り低下余地が乏しくて、損失の埋め合わせは難しくなってきているということもあります。債券マーケットにいてくれる投資家の数がどんどん減ってくると、流動性がつかなくなるわけです。流動性がないマーケットはとても恐ろしいマーケットということになってしまうので、そこにいてもらおうと思っても、正常にポートフォリオを回せるかというと、回せない金利の状況に来ているということです。

 ですので、冒頭に申し上げましたが、国債を消化するためだけのマーケットだと考えて、全て決め事のように割り切って何とか消化しろとなれば、できないことはないと思うのです。しかし、それが正常なマーケットかというとそうではない。やはり市場メカニズムがないといけないということでお話をさせていただきました。現状は、市場メカニズムが相当なくなっていて、結果、もう投資家の人たちも苦しくなっている。ポートフォリオをつくり直すごとに相当な難しさが来ている。ですので、2030年などという話を我々が考えている一方で、もしかしたら目先二、三年の中で、金融機関が業績立ち行かない可能性が十分出てきたということです。ですので、債券マーケットからの声は、株が大丈夫だったらいいという人も大勢いる中ではありますが、かなりのゆがみできしんできていますので、その声を聞いていただきたく、今日はお時間を頂戴しました。以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。では早速、ただいまのプレゼンテーションに質疑を。土居委員、お願いいたします。

〔 土居委員 〕 プレゼンテーション、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。中空委員のプレゼンテーションに触発されて、2点ほどコメントを述べさせていただきたいと思います。

 中空委員の資料の5ページに、先ほどもご指摘がありましたように、日銀が国債を買い入れているから、利払費は結局は国庫に返納されるので問題ないと言う方がいてという話もありました。そのような誤った俗論をきちんと論破しないといけないと思います。

 2点ほど論破しないといけないものがあると思っているのは、まず1つは、国債を日銀が買い入れたならば、それは国民の負担にならないのだという俗論であります。全くナンセンスなのは、何のために日銀が国債を買い入れているかということを、自ら言ったことを、言ったはたから忘れているという論理不整合性があるということです。つまり、日銀が国債を買い入れているというのは、デフレを脱却させるためだと。デフレを脱却させたら、もしそれが成功したらどうなるかというと、インフレになるわけです。インフレになったときに、キャッシュを持っていた民間の主体がどれだけあるのだということです。結局、インフレになると当然、金利がついている国債のほうが民間の経済主体は欲しいわけであって、現金は必要はないわけですから、日銀はその段階で本当に安定してインフレになれば、売りオペをしなければいけないということになるはずです。売りオペにすれば、結局、これだけ発行している国債は民間の手に渡り、民間の手に渡ればきちんと国はその償還をしなければならないということですから、そこでやはり国民の財政負担というのが利払い及び元利返済のために生じてくるということです。日銀に未来永劫、塩漬けにするように買い入れさせるというのは、デフレを脱却させたいからやっているということだったとすれば、それは論理矛盾になってしまうわけです。未来永劫、塩漬けにできればいいのだけれども、できるというのはデフレは脱却しないということを言っていて、自分たちで、日銀にもっと国債を買い入れてもらえばデフレは脱却しているのだと言っている側からすると、論理が矛盾しているということですので、結局のところは、もしうまく国債買入れなどの影響によってデフレが脱却できれば、確実にその後は国民の負担によって国債を償還ないし利払いしなければいけないということになることを、すっかり忘れているという問題がこの俗論にはあると思います。

 ちょっと関連が薄いかもしれませんが、もう一点申し上げさせていただきたいのは、先ほどの前半の議論とも重なるのですが、PBの改善が図られても、債務残高対GDP比は結局悪化しているではないかという下らない論があるのですが、それも全く間違っていると。結局、債務残高対GDP比とPBとの対応関係というのは、政府の予算制約式、歳入イコール歳出から解き起こせば、確実にPBが改善する分だけ債務残高対GDP比が増加しないようにできるわけですが、実際はPBの収支と関係ない部分で、例えば国と地方の債務ということであれば、地方自治体の減債基金というものがあって、その減債基金によって債務を返済していたりということになるので、PBと必ずしも整合的でない特殊要因が発生しており、一見PBは改善しても債務残高対GDP比は悪化しているではないかなどという話がありますが、これはきちんと、調査会にもデータを出していただいて、PBの黒字化は大事だということを強く訴えていくためにも、論破していただいて、地ならしをしていかなければならないと感じました。

〔 吉川分科会長 〕 武田委員。

〔 武田委員 〕 先ほどは大変貴重なご説明をありがとうございました。大変興味深く拝聴いたしました。その上で1点、意見を述べさせていただきたいと思うのですが、国債市場のメカニズムが働いていない点については、確かにそのとおりであるとは思います。しかし、デフレが15年続いてきたというのも、世界の経済を見ますと、それもまた異常な状態でございまして、その脱却を試みようとしているのが現在の日銀の政策ではないかなと思います。したがって、ではどうするかという点が大事ではないかと考えていまして、普通ではない状況から抜け出すということを試みようとしているわけですから、ある意味、正直申し上げると、できるだけ短い期間にしなければいけませんけれども、そういった金利形成のゆがみが多少生じていたとしても、しっかりまずデフレ脱却・経済再生につなげていくというところはやり続けなければいけないと思います。しかし、さはさりながら、先ほどから中空委員からご提示いただいた、財政に対するリスク認識が広がっているというのも注意しなければいけなくて、大事なのは、日本銀行が買っているから国債に対するリスクがない、あるいは金利上昇することはないのだと勘違いすることではなくて、むしろ表面化はしていないけれども、その水面下ではリスクプレミアムが高まっているかもしれないということを、政府ないしは国民全体で認識しなければいけない点ではないかと。つまり、デフレ脱却を目指すと同時に、その間、日本の財政に対する信認は絶対崩してはいけないのだということです。それは、その間といいますか、その先もそうなのですけれども、そこをしっかり進める。つまり、デフレ脱却・経済再生を進めるためにも、財政健全化計画が必須なのだという捉え方をしたほうがいいという感想を持ちましたので、意見として述べさせていただきました。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では、岡本委員、富田委員の順に。

〔 岡本委員 〕 捕らわれの投資家と。まさにおっしゃるとおりでして、日本国債の格付けが下がると、日本生命の格付けも下がっていくのです。つまり、日本国債をたくさん持っているという理由で下がる傾向があって、これは、下がるとどうなるかというと、例えば起債するときなど、スプレッドがものすごく乗ってしまって、このようなばからしいことはないということで、国債を売ろうという気持ちにはなるのです。なるのだけれども、それをどこに持っていくかというと、融資がほとんどない中で、外債・外株とか、あるいは有価証券と。ところが、国際的にはそのようなものは全て、リスク資産です。リスク資産だから、ここに持っていってしまうと、いわゆるソルベンシーマージン比率とか、このようなものは下がってしまうのです。それで、国債は今のところ、まだ安全資産なのです。だから、これを持っていると、安全比率は高いです。今、国際的に進んでいるところの、日本国債はほんとうに安全資産か、これもリスク性資産ではないかということになってくると、そのような形でどうしようかというのはあるのだけれども、一応、国際的な安全性を評価する基準という中では今のところそうなっていますので、ではやっぱり国債を持っていようかということで、捕らわれだけでもなくて、結構考えてはいるのです。けれども、今言った基準・規制との関係がどうかということがかなりあるので、国債については、ではできるだけ、リスク問題はあるけれども、金利がつくよねということで、超長期債のほうにシフトするというのが現実だと思うのです。ただ、おっしゃるように、日本国債は非常に危ないのに、リスク性資産とそうでない資産をどのように切り分けるかは、状況によって変わってきていると思います。証券会社の方もよく、何かあったら生保ということでお願いされてしまうのですけれど、それも捕らわれの投資家かなと。

〔 吉川分科会長 〕 では、大分、時間が押していますので、富田委員、黒川委員。簡潔にお願いいたします。

〔 富田委員 〕 ありがとうございます。金利が非常に低いので、なかなかリスクを見ることができないのですけれども、今日のお話ではスワップ・スプレッドとかCDSスプレッドで日本国債のリスクが確認できるということだと思うのです。また金利が低いがゆえに、財政の状況がなかなか政治に、また国民にも伝わりにくい状況にある。今日は2月26日です。思い出せばといっても、僕は生まれていないのですが、日本銀行が政府から引き受けた国債を市場で売却していたのですが、昭和10年にその売却率が非常に低くなったのです。それを、財政を健全化しろというシグナルとして高橋是清大蔵大臣は受けとめ、そしていわゆる軍蔵対立といって、大蔵省と軍部と、予算折衝で対立いたしまして、それが二・二六事件の1つの背景になっているというのが通説でございます。ということで、何が言いたいかというと、今はデフレ脱却の大号令のもとに金利が需給の面で非常に低くなっているのですけれども、巨額のプライマリー赤字という財政の状況を伝えるパイプがあまりない。だから、それを我々はいろいろな観点から伝えていく必要があるのではないか。そういたしませんと、ほんとうに大変な状況になってしまうということを示しているのだと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。では黒川委員。

〔 黒川委員 〕 中空委員、どうもありがとうございました。大変興味深く拝見いたしました。先ほど土居委員のご質問あるいはご意見がありました5ページの、日銀の独立性の問題に関連して、捕らわれの投資家という点では日本郵政も有力な投資家でございます。この日本郵政の民営化問題がかなり具体的になってきたわけですが、この郵政の国債の金利に関する、あるいは信認に対する影響は何かございましたでしょうか。わかっておられましたら教えていただきたい。以上であります。

〔 吉川分科会長 〕 では最後、中空委員。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。今の国債の持ち分が大きく変わってきています。今までメガバンクで何十兆も、一時は80兆も持っていたと思うのですが、今はもう30兆円程度まで下がってきています。その一方で、郵貯簡保のところは100兆円持っていますので、そのような意味でポートフォリオのつけかえが起こっているということだと思います。なので、おっしゃるとおり、たくさんの持ち方が変わってきた。やはり、捕らわれの投資家と別に言ったわけではないのですよ、岡本さん。私が言ったのではなくて新聞で書いてあっただけなので。ですが、そのカテゴリーに入る人でないところに、やはりたくさんのお金がシフトさせられている面もある。逆に言うと、まともな資本市場の論理の中で動く人たちが持てなくなった分を誰かが持たないといけないので、その誰かというのが、また新たな捕らわれの投資家が実はあらわれているということで、名前が出てきたのではないかなとは思っています。でも、いろいろありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。では、時間になりましたので、本日の議論はこれまでとさせていただきます。

 毎回のことですが、本日の会議の内容の公表につきましては、大変恐縮ですが私にお任せいただき、会議後の記者会見でご紹介させていただきます。会議の個々の発言につきましては、皆様方から報道関係者等に対してお話しすることのないよう、ご注意いただきたいと思います。

 次回は3月18日、水曜日、13時から予定しておりますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

午後 0時29分閉会

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