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財政制度分科会(平成26年4月28日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
平成26年4月28日
財政制度等審議会


 財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成26年4月28日(月)13:00〜16:15
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

1.開会
2.事務局説明
3.海外調査報告
4.財政の長期推計
5.閉会

配付資料 
○ 資料1     レセプトデータの活用による医療の効率化
○ 資料2     海外調査出張概要
○ 資料3     海外調査出張報告(ドイツ)
○ 資料4      海外調査出張報告(イタリア)    
○ 資料5     海外調査出張報告(米国)
○ 資料6     海外調査出張報告(カナダ)
○ 資料7−1   我が国の財政に関する長期推計(概要)
○ 資料7−2   我が国の財政に関する長期推計(起草委員提出資料)

出席者

分科会長 吉川 洋           葉梨大臣政務官
香川主計局長
福田次長
岡本次長
大鹿総務課長
小宮調査課長
井口給与共済課長
窪田法規課長
堀田官房参事官
江島主計企画官
堀内主計企画官
阪田主計官
有泉主計官
宇波主計官
青木主計官
井藤主計官
新川主計官
土谷主計官
高村主計官
小野主計官
中村主計官
分科会長代理     田近 栄治  
 委員

井伊 雅子
井堀 利宏
碓井 光明
岡本 圀衞
倉重 篤郎
黒川 行治
角   和夫
竹中 ナミ
田中 弥生
土居 丈朗
富田 俊基 

 臨時委員

遠藤 典子
葛西 敬之
小林 毅
末澤 豪謙
十河 ひろ美
中空 麻奈
永易 克典
増田 寛也


  午後 1時00分開会

〔 吉川分科会長 〕 それでは、ほぼ定刻ですので、ただいまより財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様方にはご多用中のところ、ご出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日は、冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちください。

(報道カメラ入室)

(報道カメラ退室)

〔 吉川分科会長 〕 本日は、まずは先日の審議会において産業医科大学の松田教授よりプレゼンしていただいた「レセプトデータの活用による医療の効率化」について、先日22日の経済財政諮問会議で麻生財務大臣よりご提案がございましたので、事務局から説明していただきます。その後、海外調査報告の第2回目として、ドイツ・イタリア及び米国・カナダの概要について、調査された委員の方から報告していただきます。その後、休憩を挟みまして、後半ですが、起草検討委員会においてご検討していただきました「財政の長期推計」についてご審議いただきます。

 それでは早速、議事に移りたいと思います。

 まず「レセプトデータの活用による医療の効率化」について、新川主計官よりご説明をお願いいたします。

〔 新川主計官 〕 それでは、お手元の資料1をご覧ください。こちらは去る4月22日に行われました経済財政諮問会議におきまして麻生大臣より説明があった資料でございます。

 それでは、1枚おめくりいただいて、内容に入らせていただきます。1ページは、医療におけるICT(レセプトデータ)の利活用の現状ということです。ご覧いただきますように9割を超す水準で電子化が進んでおり、この電子化されたレセプト情報をできるだけ有意に活用していくことが今回の提案の主眼です。

 2ページにお進みいただきますと、「福岡横展開」の深化についてでございます。一番上の緑の四角をご覧いただきますと、福岡の先進事例を踏まえつつ、以下のとおり医療費の効率化を図るということで、先日、松田先生からもお話ありましたが、4つの内容がございます。

 まず、現在国会で審議中の医療介護総合確保法案の内容でございますが、都道府県が医療提供体制改革において「地域医療(ビジョン)」を策定する際、将来の医療機能別の必要量を定めることが予定されております。

次に、都道府県は医療適正化計画の策定主体でもありますが、今後、国民健康保険の財政運営の責任も都道府県へ移行します。したがって、提供体制のみならず、医療の適正化にも大きな責任があるということです。このマル1マル2につきましては既に政府としての決定事項ということかと思います。

 そして、新たなマル3ですが、マル1にありましたような、例えば病床数や患者数といった数量面の取組みにとどまらず、費用の面も含めまして、人口・年齢構成、あるいは疾病構造に対応する合理的かつ妥当な水準の医療需要を地域ごとに算定する必要があるのではないか、ということです。これは有名なデータですが、下の棒グラフをご覧ください。都道府県別1人当たり実績医療費を比べますと、後期高齢者のみでも、市町村国保、若い方を合わせても、1.6倍の差がございます。マル3のところの注にございますように、例えば、医療費が少ない都道府県などを標準集団として、そこから年齢・人口構成等を補正して合理的な医療需要を算定します。そして実際の乖離の原因を、レセプトデータを用いまして、例えばジェネリックの使用比率などが地域によって違うのではないか、あるいは病床数といったものもあるかと思いますが、これらを可視化させながら妥当な支出目標を設定するということになります。この支出目標の達成のためにも、レセプトデータを総合的に利活用します。

 最後に、都道府県はこれらを支出目標として、医療費を適正化していくという内容でございます。ここまでがメインになります。

3ページはフランスにおける医療費支出国家目標制度の紹介でございます。

 4ページですが、こうしたデータについては保険者も利用可能ですので、保険者については、支出目標の達成度合いに応じた後期高齢者支援金の加減算を行うことで、医療費適正化のインセンティブをさらに増やしたらどうかということです。

 最後に、今後の推進体制ということで、国においては関係大臣の社会保障の枠組みであります社会保障制度改革推進本部において、有識者を集めたチームの立ち上げを行ってはどうかということです。

 そして、補足的に5ページ以降、その他必要な給付面の取組みです。これは先日の財審において事務方としてご説明した提案内容の項目を簡単に羅列したものでございます。

 最後の11ページですが、これは福岡県のある市の特定の月におけるジェネリックの使用割合というレセプトデータを活用した事例となっており、ご参照いただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。

 続きまして、海外調査報告を行いたいと思います。まず、事務局から簡単なご説明をいただくことになっています。

〔 堀内主計企画官 〕 今回の海外出張報告は前回に引き続いて2度目の報告となります。資料2をご覧いただければと思います。前回開催の財審で土居先生、赤井先生から報告していただいた分も含めまして、概要をまとめてございます。

 本日はマル3ドイツ・イタリアについて田近委員から、マル4カナダ・米国について井伊委員からそれぞれご報告をいただきたいと思ってございます。出張者と随行者、日程、訪問先は記載のとおりでございます。

 また本日、田近委員が報告されるドイツ・イタリアの海外調査報告の関連で、前回配付いたしましたEUの出張報告資料を改めて机上配付し、お手元の一番後ろにつけさせていただいております。田近委員からのご報告とあわせて、適宜ご参照いただければと思います。

 以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 それでは、ドイツ・イタリアについて、田近委員よりご報告をお願いいたします。

〔 田近委員 〕 田近です。それでは、海外調査報告ということで、ドイツ・イタリアの報告をさせていただきます。

 使う資料は、今日の資料である「海外調査概要」と、今説明いただきました最後のほうにある前回使った海外調査出張報告(EU)、そしてドイツ、イタリアとなります。

 資料にあるように、この3月2日から8日まで、財務省のほうからは横山主査、鈴木主任と一緒に3人で出張しました。ドイツでは、短い時間でしたが、ベルリンにある連邦財務省で予算の話とかを聞きました。そこからミュンヘンへ行き、マックス・プランク研究所という非常に大きな研究所にある、2つの研究所に行ってお話を聞きました。イタリアの方は、中央銀行の財政担当のグループと会いました。それから議会予算局、そして経済財政省に行きました。

 以上が概要です。また、現地の大使館の人たちにもお世話になりました。この場をかりてお礼を申し上げます。

 まず、このEUの出張報告資料を振り返っていただきたいと思います。というのも、基本的にドイツやイタリアの財政健全化プログラムは、EU全体のフレームワークに従っており、それを踏まえてご報告したいと思っているからです。

 そこでEUの報告資料を開いていただいて、3ページの安定成長協定を巡る動きが全体のフレームワークです。安定成長協定とは、マーストリヒト基準とも言われていますが、フローでは一般政府の財政赤字がGDP比で3%を超えてはいけないと、そしてグロスのGDPに対する債務残高が60%を超えてはいけないというものです。

 しかしそのお題目がなかなか守られてこなかった。そして2001年のITバブル以降のドイツ、フランスの財政赤字が3%を超えてしまった。それから2005年には、ここに書いてあるように、構造的財政収支とは財政赤字から景気循環要因や一時的要因を除いたものですが、それを1%にとどめることという改定を経ました。なかなかその安定成長協定が守られてこない中で、リーマン・ショック以降、そのたがをはめるために、いろいろな工夫がされてきた、そのような報告があったと思います。

 経済ガバナンス六法については、これは報告があったので、私から細かなことは加えませんが、例えばそれぞれの国の債務残高が60%を超えるときには、それを一定のルールで60%に下げなさい、ということです。

 そして、財政協定とはマーストリヒトの安定成長協定に向けてのお題目ではなく、しっかりそれを実現し、そのための中期財政目標を憲法に近いものに書き込みなさいということです。

経済ガバナンス二法とは、各国の予算をEU委員会に持っていき、そこでちゃんと審査するということで、あの手この手で財政健全化を実現していくことです。

 それではドイツのところを見ていただきたいと思います。話としては、ドイツ、イタリアの話を簡単にさせていただいて、ユーロ加盟諸国の財政健全化を全体的にどう考えるか、そして日本へのインプリケーションは何かを話してみたいと思います。事実認識についてご質問があれば、答えられる限り答えますが、答えられない部分は事務局、あるいは現地に問い合わせるということにさせていただきたいと思います。

 まずドイツですが、経済状況ということで、グラフの上から順に2007年から2013年の経常収支の黒字幅、10年国債金利、そして実質GDPと見ていくと、この国は圧倒的にGDPに対する経常収支黒字が多い。足元、日本は1兆円もなく、0.7%などと日本は言っていますから、いかにこれが大きなものかがおわかりになると思います。

 金利も、日本ほどではないとはいえ、低位に安定している。成長率は、経済金融危機の後に急激なリカバリーはしたものの、近年、必ずしもそのパフォーマンスはよくないという状況です。

 2ページに財政状況の大ざっぱなことが書いてありますが、左側が歳出・歳入の動向と、一般政府の赤字の対GDP比です。今、言ったことの裏返しで、下のほうを見ていただくと、赤いほうが実際の赤字です。その赤字のときには、失業が起きたりするので、そのような部分を取り除くと構造的なものはそれほどではないと。逆のときには収入が上ぶれするのですが、2009年、2010年のときには経済が停滞して、実際の赤字が構造的なものによって大きく見えます。それ以降は、ほぼゼロとなっています。

 そして右側の債務残高の対GDP比のほうは、足元まだ60%より高いですが、それも着実に下がっているということです。

 先ほどEUの財政健全化の取組みについて述べましたが、3ページで、実はドイツはそれに先立って憲法に財政収支均衡を書き込んでいます。僕はEUの研究家ではありませんが、そのような動きが実態的にはEU全体の財政健全化を縛っていったということだと思います。何をしたかというと、連邦政府及び州政府に対して、財政収支を均等化させることを義務付けました。

 そして、この四角の真ん中あたりですが、連邦予算については構造的な要因として、毎年GDPの0.35%を超えてはいけないと。つまり景気の急激な後退等によるものでない構造的な赤字は0.35%ですよと。そのほかは、それを見直す条件が書いてあります。したがって、EUの0.5%よりももっと縛った形で書き込んでいます。

 そして、実態が4ページになります。既にこの財政状況の見通しということで、13年の一般政府財政収支は均衡、また今後も安定的に黒字で推移と。一般政府残高対GDP比は78.4%に低下し、これからも下がっていくと。そして連邦政府の財政収支対GDP比は、2010年にマイナス0.2%であったが、14年以降は均衡すると。そして州政府のほうは13年で0.1%ということで、出張のときにドイツの人たちが言っていたのは、州がまだら模様なので、この財政、平均が0.1%ですから、悪いところをどうしたらいいかという話をしていました。

 あとこのグラフは、今、申し上げた財政収支と、残高のグラフになります。

 5ページにいっていただいて、時間もないので、歳出入の内訳は触れません。歳入に関して、基本的にこの国は付加価値税、個人所得税、石油エネルギー税が大きいですね。そして法人税はわずか全体の3.1%しかないことになっています。

 6ページに、財政健全化に向けての取組みということで、閣議決定された基本方針があります。歳入のほうでは原子力発電所に対する課税、エネルギー税における優遇措置の廃止、航空税の導入、歳出の抑制としては、長期失業者に対する給付抑制と。これは結構きいているわけですね。それから行政一般の費用抑制その他で、歳出・歳入両方で財政を健全化していくということです。

 それが実際どうなったのかが7ページです。歳入のほうで、原子力エネルギー税とかを見ていくと、必ずしも予定の歳入増加規模を達成できていない。それではドイツで何が財政健全化に寄与したのかというと、結果的には思わぬ税収が入ってきたということだと思います。歳出のほうもそれほど予定どおりではなく、求職者基礎保障も、104億ユーロの削減を予定していたものが、28.8億ユーロです。総額としても160億ユーロカットの予定が、プラス63億ユーロです。

 そのようなわけで、全体的に見ると、これは重要なレッスンだと思いますが、景気がよくなって税収が増えたということが大きいのだろうと思います。いずれにしても私自身、詳しく知っているわけではないので、足りなかったりしたことはご質問ください。

 8ページ以降が、特に日本を念頭に置いて、社会保障の財政に対するリスクは一体どうだったのかということです。これも出張の間ずっと話題になっていたのですが、今日は年金、医療、介護について触れますが、年金に関してこのドイツにおいてもなかなか連邦政府からの補助金がコントロールできていないというか、まだこの年金分野における連邦政府のかかわりをどうしたらいいかという議論が続いていると言ったほうがいいと思います。

 それは金額的に見ても非常に大きくて、足元、2012年で、年金全体が2,500億ユーロということは、30兆円ぐらいになるのでしょうか。それで、連邦政府のほうが656億ユーロですから、これが8兆円ぐらい。だからドイツとしては連邦からものすごく大きな補助金が年金には出ていると。実際、ドイツの人たちに会うと、必ず年金の話と、日本はどうしているのかという話が出てきました。

 次のページの参考1ですけれども、ドイツにおける公的年金の財源は一体どうなっているのかと。日本でいうと基礎年金の半分が国庫負担ではないかということですが、ドイツではそのような給付に対して一律、国が面倒を見てあげるという考えは入っていません。ここに書いてあるように、一般的な老齢年金制度は、保険料の対価として年金が払われる。これは基本的に保険でやりましょうと。公費は保険になじまない部分を払いますと。例えば児童養育期間に対する、子供を育てている期間の保険料は面倒を見てあげましょうと。あるいはもっと政治的ですが、ドイツ併合の、東独の合併のときのコストは保険になじまないものとして連邦補助金が財源となると。

 そのようなわけで、ここに書いてあるようにそのベースとなるものを補助してあげていますから、保険料が上がっていけば、それに従ってその部分の補助金も増えていくという仕組みになっています。では、彼らは今、何を議論しているか。これは、政治的にもおもしろいのですが、年金について非常にコンサバティブな超保守的なグループと、進歩的な革新のグループとが同時に拡大を要求している。

 保守派は母親年金ということで、今まで、92年以降に生まれた子供を養育している間には保険料に補助金を出しましょうと。それをもっと広げようという話です。これはお母さんたちを家庭に閉じ込めてしまうのでは、という話なのですが、南部のほうのグループは、それでもいいのだという意見があるとかないとかで、彼らの中で大変盛り上がって話していました。

 一方、革新派のほうは、年金は67歳まで段階的に支給開始年齢を引き上げることになっているのですが、45年間、年金保険料を払っていれば、63歳からもらってもいいのではないかと。今度はこのような形で年金拡大をしたいと。おもしろかったのは、このドイツにして、年金についてはいまだに火の粉が消えていないというか、事あるごとに出てくるということ。

 それで医療のほうですが、これが非常に私たちにとっては興味深いことだったのですが、基本的にドイツは地域と職域といいますが、地域と職域に疾病金庫というものがあります。それが、現在医療費は連邦政府がとって、必要医療費を各疾病金庫に配布するという仕組みになっています。

 また、医療支出は伸び続けているものの、連邦補助金は医療支出の伸びに連動する仕組みになっていない。どうなっているのかというと、後でグラフを少し説明しますが、連邦補助金の法定上限、これが2012年で140億ユーロとなって頭打ちですよ、というルールを決めました。

 下をご覧になっていただくと、医療費が2012年で1897億ユーロですから、27兆円とかそのようなものだと思います。青い部分が保険料ですが、その赤い部分がいわゆる連邦政府の補助金であり、日本でいう国費です。これがさすがに、僕が調べに行った昔の頃は、25億ユーロぐらいがんがん増えていたのですが、それが140億ユーロで頭打ち。140億ユーロというのは、せいぜい2兆円ぐらい。それが実は頭打ちどころか、足元ではさらに減っています。140億ユーロが連邦補助金の法定上限となっているにも関わらず、140億ユーロ払ってない。そして2013年以降の連邦補助金は115、105億ユーロと、法定上限を下回ると。

 介護保険は、日本に5年ぐらい先立ってドイツがつくった制度で、日本と似ているような似ていないような形になっています。制度的にいうと疾病金庫の上につくっていますから、保険料は、日本は40歳からですが、ドイツでは医療保険を払っている人が全員払います。そして上乗せで払う。それから給付要件も、日本は基本的には第1号被保険者、65歳以上の人が対象ですが、ドイツではそうではない。障害者も含めて払っているという違いがあります。ただ、日本よりもずっと小さな仕組みで、この下のグラフの総支出で見ると230億ユーロですから、せいぜい3兆円。日本が今10兆円になろうとしていますから、どのぐらい小さなものかはおわかりになると思います。

 さらに興味深いのは、ここに赤い色がないではないかと。連邦からの国庫負担は一円も入らずにやっていると。全額、保険料でやっているということです。もちろんいろいろな問題があって、ドイツでもこれでやっていけるのかどうかということで、保険料も若干、上がっています。

 そのようなわけで、EU全体では、安定成長協定の縛りをどうかけるかを議論してきたと。ドイツは、実はその前に自分たちで縛りをかけて、構造的な財政赤字が0.35%だと。しかも連邦はそろそろそれをゼロにできて、地方では地域格差はありますが、これから0.1%ぐらいだと。あと社会保障については、今言ったとおりです。

 次に、イタリアについて見ていきたいと思います。これまたもっとぐっとぬくもりのあるというか、人間的というか、そのような味わいのある経済なのですが、イタリアの経済状況です。

 まず経常収支の対GDP比が、さっき上にあったものが下にあって、最近、改善しているとはいえ、マイナスと。国全体としては、外からお金が入ってきていると。

 それから、国債金利はここに書いてあるとおりですが、リーマン・ショックの後、2011年、このあたりのピーク、これがこれから申し上げるようにイタリアの政策を非常に縛っています。GDPも印象的ではありますが、ここ数年、マイナスのテリトリーで動いています。

 この国で財政がどう運用されているかということなのですが、同じような図で2ページに書いてあります。ピンクのほうが、そのままの財政収支GDP比です。黄色のほうが構造的、景気循環要因を除いたものです。したがって、これはプライマリーとかそのような言葉はついていない一般政府財政収支です。だから足元、2012年をご覧になっていただくと、もちろん2009年、2010年は厳しい状態でしたけれども、その裸の数字というか、もとの数字が3%、構造的には1.4%。直近の数字は、これから述べますが、さらによくなっています。債務残高は伸びているという形にはなっています。後でそれについても述べます。

 そして3ページが、イタリアにおける安定成長協定をどう実現していくかというEUの財政協定に基づいて、憲法に書き込んだものです。基本的には、先ほどから申し上げているEUの財政協定を遵守すると。行政は欧州連合の法規と一致するよう、予算の均衡及び公的債務の持続可能性を保証するということで、EUに従いますと言っているわけです。

 それで、お話ししたかったのは4ページで、それでは、イタリアはどうなっているのかということですが、さぞかしイタリアも、ひょっとして日本に似ているのではないかとお思いかもしれませんが、大違いだということを見ていただきたいのですが、まず一般政府のプライマリーバランスは、この足元、マイナス成長の国なのですが、今、2013年、2014年で2.2%、2.6%と、予定のほうはともかく、プラスになっています。

 それから、下のほうの一般政府構造的財政収支対GDP比、図の下にあるのはもとの数字ですが、インタビューで彼らがいつも言うのは、2013年、2014年をご覧になってくださいよと。一般政府の構造的財政収支はほぼゼロのレンジに入ってきていますよと。プライマリーも黒だと。したがって、先ほどから言っている財政協定のGDP比が60%を超えたときには20年で下げていくことを彼らは実現できるのだというところで、この債務残高対GDP比も、今、2013年、2014年と伸びてはいるのですが、インタビューでも、局長さんが、見てくれと、ちゃんと下がるのだぞと言っていました。

 何ともぬくもりがあると言ったのは、足元マイナス成長で、国際収支も赤字の経済ですが、この数字を見る限りプライマリーバランスは既に黒字ですし、収支もほぼ構造的にはゼロで、残高も下がってくるというわけです。

 それから先の5ページをご覧になっていただくと、歳出・歳入のGDP比が35%とか32%って本当なのだろうかという気はしないでもないですね。これは全く自分の思い込みですが、歳入は特に税収ですのでかたいことを考えると、GDP比が多少過小推計になっているのか等、よからぬことを妄想しています。

 そして6ページからが先ほど来の歳入・歳出の取組みですが、付加価値税率を上げる、そして年収30万ユーロを超える所得者への所得税付加税とか、租税特別措置の廃止等があります。これも数字をご覧になっていただくと、租税特別措置で834億ユーロも節約できるのかなと、不思議だなという気はしました。

 そのほか、歳出の削減ということで見ていきます。これはある意味、一目瞭然です。歳入のほうも、予定したものよりも減っているし、歳出のほうもなかなかコントロールできていないと。

 年金についても、公費が940億ユーロで、足元ではドイツよりも大きいと。10兆円近い公費負担をしているのですよね。それで支給開始年齢が現在、男性及び女性公務員が66歳、民間女性労働者が62歳、自営業者が63歳6カ月というのを、2018年までに全ての人が66歳、そして2021年以降で67歳に引き上げるということで、ヨーロッパ的にいうと、この2つの国からすれば67歳ぐらいがスタンダードかなと思います。

 イタリアの医療というのは州レベルのサービスで、基本的には税ファイナンスでやっています。お金があるところまでで医療を提供するということで、これによってどれだけ追加的な財政赤字が増えるのかはわかりませんが、ご覧になっていただくと、2009年から支出額がほとんど変わっていない。1,102億ユーロが足元1,137億ユーロですから、いかに厳しいコントロールをしているかということがわかると思います。

 全体として何を言っているのかということですが、イタリアもその他の国と同じように、財政協定を踏まえて財政健全化のための方策を、健全化しますよということを、憲法に書き込んだのだと。足元の2013年、2014年は、先程から説明している通り必ずしもよくは見えていないのですが、財政当局の人などに言わせれば、将来を見てくれとおっしゃっていました。

 年金、医療、介護のほうは、私のほうから特段、これがイタリアの特色だとは申し上げることはあまりありませんが、介護は、保険制度はないと。医療のほうは州政府の予算で縛ってしまうと。年金のほうは、ドイツに比べても大きいということだと思います。

 感想は、マイナス成長が続いている経済で、プライマリーバランスを黒にして、財政均衡をここまで強烈に推し進めることが可能なのかどうかということは、出張中、向こうの人と結構ディスカッションしました。

 大体そのようなところですが、あと一言。現地で同行してくれたお2人と、現地のいろいろな方々や大使館の方などと話していて思ったのですが、結局、ユーロ、ドイツ、イタリア、フランスなどに関して、そこで何が起きていて、どう考えればいいのかということなのですが、ユーロに入って共通通貨ができて、マーケットも広がって輸出可能性も増えて、そして今までマーケットからお金を調達できなかった国も調達できるようになったと。その結果そのような国にもお金が入るようになり、バブルが起きたと。そして一部の国は放漫財政をしても金利が上がらないということで、結果的に放漫財政をし続けていたと。

 そのバブルが、実はリーマン・ショック等を契機にして崩壊したと。その後、その長期の議論といろいろな調整がありましたが、気がつけばドイツの経常収支黒字がGDPの10%もあるではないかと。日本でいうと50兆円程度経常収支が黒字なわけですよね。これで今、両極の議論がありまして、一方の極は、ドイツはもっとお金を出せと、あるいはケインジアン的に言えば、もっと拡張的な財政政策等をしろと。したがって、ドイツからもっとEU諸国に、様々なルートを通じてでしょうが、お金を出せと。

 ドイツとしては、今までもモラルハザードが起きているのに、これ以上のモラルハザードを起こすようなことをやるのかと。時間があれば関係者のステートメント等も参考にしたかったのですが、オットマー・イッシングというおもしろい人がいて、元ECBのチーフ・エコノミストだったのですが、ドイツのリーダーシップというものは、EUの国の政府や銀行をベイリングアウト、救済することではないのだと。ドイツが他の国をリードすることができるとすれば、それはグッド・エコノミック・ポリシーのモデルを提供することだと。

 それで、俺たちだって、2003年、04年に厳しい時期を過ごし、その後財政再建をしたではないかと言うわけです。ほかの国もしっかり財政再建してほしいというのがドイツの議論で、だから今、バブルが崩壊して、そしてリーマン・ショックが終わって、そしてEUのクライシスが一段落しているところで、意見が大きく分かれているのだと思います。

 所詮フィスカル・ユニオン、連邦国家ではなく、財政の財布が共通ではないところで、申し上げたようなあつれきがこれからも続いていく。EU経済全体の足元の経済は必ずしもいいわけではないので、これからヨーロッパの財政健全化計画を含めても、to be watchedというか、まだまだ目が離せない状態だと思います。

 それでは日本のインプリケーションは何なのかと。ドイツ人は、インタビューして会った限り、日本が財政拡大したことに関しては、少し不満という感じがしていて、君たちがそのようなことをやるから、EUのほかの国もまねるではないかというような、ありていに言えばそのようなことを言っていました。

 ただ、日本は大国ですから、EUの規則に縛られることはないとしても、あるいはそのようながんじがらめな規律に縛られることはないにしても、懸念としては、やはり彼らのやり方で見ていて、債務残高の対GDP比がどうなるかということがわかっていないと。フローでの管理はいろいろあるでしょうが、債務残高の対GDP比が安定化するのかどうかということが見せられていないということがやはり最大の課題の1つかなと。

 それから社会保障、特に医療、介護、これが日本では、ここで議論を蒸し返す必要はもうないと思いますが、ドイツを1つの参考にすれば、高齢化して社会保障給付が大きい国でも、それが財政リスクになっていない国もあるのだということは参考になりました。

 それから地方財政については今日、触れませんでしたが、やはりドイツでは税源を共有するという形で、連邦政府に対する地方財政、あるいは日本的に言えば交付税から来るリスクのはね返りがないというところで、社会保障、地方財政にしても、俺たちは経済モデルの範を示すことだという、それなりの自負と気持ちは理解できるのかなと思いました。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では早速、ご意見、ご質問のある方は名札を立てていただければと思います。

 井堀委員。

〔 井堀委員 〕 どうもありがとうございました。ドイツですが、今のお話ですと、財政再建を多くできたのは、所得税、法人税、付加価値税の税収が予想外に大きく伸びたと、それはその景気の好転だという話だったのです。1ページのグラフを見ると、2011年、2012年、2013年と実質GDP成長率はどんどん下がっています。実質成長率が下がったにもかかわらず、予想外に税収が増えたというのは、税収の見積もりを相当かためにしておいた結果という理解なのでしょうか。これだけ成長率が下がっていて、予想外に大きな税収が出てくるというのは、背後に何があったのかを知りたい、それが1点です。

 それからもう一つは、医療のほうですが、当面は財政支援をしなくても何とかなっているということなのですが、これは2012年までのグラフしかありません。今後のことは大丈夫なのでしょうか。要するに先ほど田近委員も言われたように、ドイツも高齢化が非常に進んでいますから、今後の中期推計等で連邦政府から財政資本を入れなくてもやっていけるような、そのような姿が出ているのかどうか、そこが1つ。

 それから最後です。簡単に、イタリアのところで、今までは財政再建の取組みが成功していなかったと。要するに予想していた歳出減と税収増が出ていなかったが、今後はそれをしっかりとやるのだというお話だったのですが、今までうまくいかなかったが今後はしっかりとやれるのだという自信の背景にあるのは何なのか、そこはどのような具合に考えたらいいのかという、この点をお願いします。

〔 田近委員 〕 繰り返し申し上げたように、ドイツ・イタリアの研究者ではないので、一般的な財政学者の多少の知識ということで聞いていただきたいのですが、歳入のほうは、2011年からしか出ていないので、急激なリカバリーというのは、2010年にものすごくリカバリーしているわけですよね。ですから2010年、それから2011年、2012年と、どの辺の時点でその予定額を見積もったのかは知りませんが、そしてどこまで計画したかはわかりませんが、やはり2009年からのV字回復というのが、彼らの歳入をぐっと上げた。

 それで、見積もりが少なくて結果的に増えたかどうかというのは、そこまで知見はないのですが、ドイツの場合、2009年からのV字回復というのが彼らの自信の裏づけになっている。

 ただ、先ほど申し上げたように、実はこれについては、中国の経済が後退したりして、輸出の問題等あり、足元はわからない。十分な答えにはなっていませんが、見積もりに対して過剰に増えたかどうかは、事務の方にまた調べていただくとして、私からは、やはり2009年からのV字回復かなと。

 医療のほうは、1つもう少し言わなければいけなかったのですが、ドイツで、公費に関しての議論が日本と違うということは重要だと思います。よくなじむ、なじまない論を彼らはやった結果、子供の医療費は、公費から出ている。子供は、保険料を払わないで給付をもらっているのだから、それに対しては公費を出そうと。そのような意味で、一つずつ、なじむ、なじまないを判断して、それで公費を出していこうということなので、そうするとご質問は、高齢化して、高齢者に対して医療は増える。日本の後期高齢者医療制度のように、自己負担1割で、保険料1割でやっていこうと、億万長者の高齢者を含めてと、そのような議論は彼らにとってなじまない議論だと思います。

 だからなじむ、なじまないをどこまで高齢者について議論するかと。たまたま2年前ぐらい、僕はスイスに行ったのですが、スイスはもっと厳格にやっていて、高齢者とは貧しい人ではないとスイスなんかでは言っていて、ドイツも、ここからは私の単なる思いですが、高齢者に関して日本のように後期高齢者への給付を5割も国が払ってしまうという考え方自体あり得ないと思います。

 イタリアのほうはまさに、井堀さんも一緒に行かれれば、僕と同じような質問をしたと思うのですが、最後に財政省の局長さんに会って、何年か前に、彼はイタリア中銀のエコノミストで、一橋大学からだと言ったら、「お前と会ったな」などと言われて、議論して、彼の答えは「2年後に来てくれ」と。

 だから井堀さんが言ったことと全く同じことを僕も言って、足元やはりマイナス1.9%、このようなマイナス成長で、これだけ財政締めて大丈夫なのかということは、僕もそう思ったし、やはり財政協定を憲法に書いてしまった以上、財政省としてもそのように答えざるを得ないということで、数字どおりならば大変な緊縮財政をしていると思います。

〔 吉川分科会長 〕 岡本委員。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

 今、先生のお話を聞いていますと、ドイツもイタリアも財政健全化策における歳入増加、歳出抑制の取組みは、予定していた効果を上げていないと。逆に言うと、経済成長や景気が持ち上げているのだというようにも聞こえるのですが、そうすると日本の場合も、結局は経済が成長しないとだめなのだということと少し似てくるような感じがするので、私はそこを危惧しているのですが、ただそうは言っても、構造的財政収支ですか、要するに景気関係や何かを除いたような収支でも、イタリアでもドイツでも結構頑張っているところを見ると、歳入・歳出のほうでもある程度の努力をしているのではないだろうかと。この予定していた効果が結構高いところで、そこまでは行っていないということで、それなりに評価されているのかどうかということが1つの質問です。

 2つ目は、やはり憲法に書いたり、あるいはいろいろと収支均衡の法律をつくったりということについて、国民がどの程度、理解して賛意を示しているのかと。例えば日本であれば、1997年の例の財政構造改革法がせっかくできたのに、1998年になったらすぐにそれをつぶしてしまったと。マーストリヒト基準の中のフロー3%、ストック60%、これらはみなさん国民レベルで理解しているから、通りやすいのかどうか。日本の場合にはそのようなバックアップといいますか、そのようなものがないですから、その中でフロー8%とかストック200%を平気でやっているわけですので、この辺の国情といいますか、その法律が通るときの雰囲気ですとか、これらにおける日本へのインプリケーションといいますか、参考になるものがあればと思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうぞ。

〔 田近委員 〕 最後のほうからいくと、ドイツはただでもユーロの中でいい目を見ているのではないかという圧力があり、もっとお金を出してという声がずっとあって、その中で、彼らとしてはやはりその範を示すと、財政、ユーロの信任を保っていくためには、自分たちが範を示すということで、先ほど申し上げたように、財政協定の前に彼らはもっと高いハードルで、つまり一般政府の財政赤字が、構造的財政赤字を0.5%ではなくて、連邦政府の構造的財政赤字を0.35%で縛ったわけですよね。

 そのとき僕も行って、何を言っているのだろうと思ったぐらいだったのですけど、それが実行に移されてきて、しかも実現していくというところで、インプリケーションはというと、やはりドイツはそれなりのドイツの事情があったと。ただ、ポイントはそれだけではなくて、ほかのEU諸国がこれを守らないと、やはり自分の国の金利がはね上がってしまう。ユーロの信任も問題だということで。だから、ドイツの先行したこの財政協定的なものの憲法の書き込みに、他の国が従ったということだと思います。

 あと歳入・歳出のほうですが、これももう何年か前に付加価値税を上げているし、だから歳入の改善の取組みはずっとやってきたと思います。それと、僕の知っている限られた知識の中では、単に景気がよくなったからというのではなく、景気がよくなったときに上がるべく、準備をしてきたのだろうと思います。

 歳出のほうは、見る限り、日本で言う社会保障のどこをカット、地方財政のどこをカットという形ではもうないですよね。長期的失業者に対する給付の見直し、これはそれでも3兆円ぐらいがゴールなのですが、あとは日本風に言えばほとんど、行政の改革や防衛費ですから、歳出のほうは、先ほど申し上げたことと一部触れますが、日本的なリスクは抱えていないと思います。

 ただ、歳入増に結びつくところはもう既に幾つか手は打ってきていると思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうぞ。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。

 私は、特に今の先生の報告にというよりは、聞いていて非常に勉強になったのですが、金融のマーケットでは少し違うというか、もう少しイタリアに対しては、なぜ数字が合ってきたのだろうという疑問が相当あって、その辺を少し追加させていただきたいと思います。

 今、レンツィさんという新しい政権になっているのですが、この人に対して何かやたらと大きな期待感がある。この人が多分、財政再建をしてくれるのではないかというようになっています。これがほんとうにできるかどうかというと、ベルルスコーニの後、次から次へと政権がかわってきて、次こそはという期待感があるだけで、これもどうなのかなという気持ちはしています。なので、2年後見てくださいという強気の発言も、少し何か眉つばな感じがいたしました。

 あとイタリアですと、基本的にはいろんなルールに縛られて、きちんと数字は上がってきているのですが、ユニットレーバーコストがすごく高くなっているという大問題を残しています。この構造問題は全然解決していなくて、結局、財政再建ができている国というのは、例えば企業部門であったり、どこかに大きなきしみが残っているだけなのかなという気もしながら、聞かせていただきました。

 マーケットでは金融の財政の数字が合ってくると、比較的いいと捉えられるので、金利も下がってきているのは確かなのですが、このユニットレーバーコストという大問題については、また新たに見られているということも見ておいていただきたいと。

 ということで、結局、財政再建については多次元方程式を一気に解かないと、結局は狙い撃ちされるのではないかということを蛇足ながらつけ加えさせていただきます。

〔 吉川分科会長 〕 ほかにいかがでしょうか。

 田近先生、1つよろしいですか。ドイツについてですが、財政歳出膨張圧力からすれば、高齢者、年金、医療が中心だということは理解できるのですが、ドイツは日本より出生率が低いですよね。人口減少が大きい。このような中で、ドイツは日本でいうところの子育て支援のようなことはあまり議論していないのでしょうか。

〔 田近委員 〕 非常にいい質問だと思いますが、すみません、今回、それは焦点を当てなかったので。

〔 吉川分科会長 〕 財政よりは社会保障の世界での話かもしれませんね。

いかがでしょうか。よろしいですか。

 では続いて、今度は井伊先生から出張の報告をお願いいたします。

〔 井伊委員 〕 井伊でございます。今回、初めて財政制度の海外調査をする機会をいただきまして、大変勉強になりました。事務局をはじめ、皆様に感謝申し上げます。

 資料2にありますように、財務省から河村課長補佐と高橋主任とご一緒しました。訪問先は、資料2にあるとおりです。ちょうど私たちが出張した時期が大統領の予算教書の発表と重なり、残念なことに保健福祉省は都合がつかず、面会ができませんでしたので、後ほど既存の資料で概要を報告させていただきます。

 まず米国に関してですが、資料5に沿ってご説明します。米国に詳しい方も多いと思いますので、お気づきの点などありましたらご指摘いただければと思います。

 まずスライドの1ですが、最近の米国の経済状況ということで、2008年9月のリーマン・ショックの影響を受けて、実質GDP成長率が急激に落ち込み、2009年はマイナス成長、経常収支については恒常的に赤字という状況です。2009年1月にオバマ大統領が就任して、リーマン・ショック後の景気回復の低迷に対応するため、2009年2月、大統領就任直後に米国再生・再投資法を成立させ、経済対策を実施しています。その後の実質GDP成長率に関しては、この黄色い実線にありますように2010年に2.5%と低成長から脱却し、それ以降は回復傾向にあります。

 2014年の実質GDP成長率に関しては二つ指標をご紹介します。大統領のもとで予算教書を作成する政府側、大統領府行政管理予算局、OMBの予測では3.1%、一方で、議会予算局、CBO、これは立法府の予測です。議会が予算法案を作成するためのデータを提供しているCBOでは2.4%と見込まれています。

 2ページ目の米国の財政状況の概要ですが、レーガン政権期に国防費の増加や大幅な減税措置などによって、財政収支がかなり悪化したのですが、1990年代に歳出抑制や増税に積極的に取り組んだ結果、好景気ということもあり、連邦政府の財政収支は1998年に黒字に転じて、2001年まで黒字が継続しました。その後、2000年にITバブルが崩壊して、2001年9月に同時多発テロがあり、2001年、2003年のブッシュ減税、そして2003年3月のイラク戦争による国防関連の支出増加によって、2002年度からは再び赤字に転じています。

 加えて、2008年のリーマン・ショック以降オバマ政権での再生・再投資法による歳出増・歳入減によって財政収支が急激に悪化し、債務残高も年々増加しています。

 近年、2013年度は歳入の大幅増と歳出抑制の組み合わせにより財政収支が大幅に改善しています。詳細は後ほどスライドでお示しします。

 3ページ目の財政健全化目標ですが、まず前提として、日本と米国では予算制度が全く異なり、米国においては議会が予算案を作成し審議・議決を行います。よって政府が作成する予算案である大統領の予算教書は参考資料にすぎません。

 2014年3月に公表された直近の2015年度大統領予算教書、これは私たちが滞在中に公表されたものなのですが、これには具体的な財政健全化目標は記載されていませんが、前年までと同様、引き続き財政赤字を削減する姿勢が示されています。

 前年度の2014年度大統領予算教書、これは2013年4月に公表されたものなのですが、10年間で合計4兆ドルの連邦政府の財政赤字を削減する目標が掲げられていました。2015年度大統領予算教書においては、追加で約1.4兆ドルの赤字削減策が掲げられています。2015年〜2024年度の10年間で約5.3兆ドルの財政赤字が削減されると見込んでいます。

 4ページ目は、記載されているとおりです。

 5ページ目は、近年の財政収支の改善状況です。2012年度から2013年度にかけて、財政赤字のGDP比が▲6.8%から▲4.1%と大幅に改善しています。これは歳入の大幅増と歳出抑制の組み合わせによるものですが、意図した政策の効果があったというよりは、景気回復などの要因によるところが大きいと言えます。特に歳入に関しては2兆7,740億ドルと前年度に比べて3,250億ドルも増加しています。これは前年度比で13.3%増です。歳出については825億ドル減少し、前年度に比べて2.4%減少しています。歳入増加と歳出削減の割合は大体8対2で、8割が歳入によるもの、2割が歳出によるものとなっています。

 2015年度大統領予算教書によりますと、今後10年間で財政赤字の対GDP比が▲1.6%となる見込みとなっています。2013年度における財政収支改善の主な原因として、歳入の主な増加要因、歳出の主な減少要因はこのスライドの青と赤の枠の中に入っておりますので、ご覧ください。

 次のページが近年の財政健全化に向けた取組みについてのご紹介です。まずは2011年予算管理法についてです。2011年度の予算に関しましては、年度開始後も民主党と共和党両党が歳出削減幅をめぐって対立し、債務上限問題なども重なって、対立は顕著なものになり、結局この予算管理法の策定に至りました。この法律におきましては財政赤字削減に関して2段階の規定をしています。

 第1段階が、マル1に当たるもので、2012年度から2021年度の10年間に裁量的経費に上限(Cap)を設定して、累計0.9兆ドルの歳出抑制を行うというものです。裁量的経費の説明はスライドの3ページの「【参考】米国予算の概略」のところにあります。裁量的経費とは、毎年、歳出予算法で決められる経費で、議会の議決を経る必要があるもののことです。つまり第一段階では、例えば国防分野の歳出などに関してCapを設けるということになります。

 6ページに戻っていただいて、マル2にあります第二段階では2013年1月以降の9年間、年金、メディケイドなどを除く全ての歳出について一律に削減をします。これは強制歳出削減と呼ばれ、Sequestrationと英語で呼んでいるものなのですが、この実施によって、累計1.2兆ドルの歳出抑制を行うというものです。

 強制歳出削減の発動時期については、後ほど紹介する2012年米国納税者救済法によって、2013年3月まで2カ月間、発動を延期され、その後、発動しています。このマル1マル2、2段階の財政赤字削減策によって、2012年度から2021年度の10年間でベースラインと比べて合計2.1兆ドルの歳出抑制を見込んでいます。

 この歳出抑制の額については、一番下の※印で説明されていますが、経済成長等を織り込んだ見通しであるベースラインと比較したものであって、前年度の実際の金額と比べているわけではないことに注意していただければと思います。ですから実額ベースでの削減額ではなくて、何もしなければこれだけ増えていくところ、その増加額を削減するという意味での削減額になっています。

 7ページが、健全化に向けた取組みのマル2です。2012年の米国納税者救済法ですが、2012年末から2013年初めにかけて、ブッシュ減税などの各種減税措置の失効や強制歳出削減などが始まるということで、いわゆる財政の崖ですが、急激な財政緊縮が見込まれたということ、民主、共和両党とも中長期的な財政健全化への取組みを行いつつ、経済への悪影響を回避すべきという認識では一致していたのですが、富裕層に対するブッシュ減税を延長するかどうかで対立して、その後、この納税者救済法の策定によって両党の妥協が図られ、財政の崖が回避されたということです。

 この法律では、非富裕層へのブッシュ減税の一部を延長しています。富裕層に対する実質的な増税の実施です。具体的には所得税減税については世帯年収が45万ドルを超える人には延長はされません。

 次に、2013年の超党派予算法ですが、これは3ページの米国予算の概略の最後のところにも記載していますが、昨年10月に、医療保険制度改革、オバマケアの取り扱いをめぐって、民主、共和両党が対立して、17年ぶりに政府機関の閉鎖、シャットダウンを招くということになったのですが、深刻化した債務上限問題とともに、並行して上・下両院の調整が行われて、超党派による合意が成立して、この超党派予算法はそのときの合意に基づくものです。

 この法律では、裁量的経費に関する強制歳出削減額を2014年度と2015年度に限り合計630億ドル緩和、つまり歳出は増加。一方で、2014年度から2023年度の10年間で義務的経費、主に年金や医療費を抑制するとともに、税外収入を増加させることで850億ドルの収支改善を行って、差し引き約220億ドルの収支改善を見込んでいます。

 最後に、2015年度大統領予算教書ですが、これに関しては、やはり3ページに記載しました通り、あくまでも議会が予算案を作成して審議・議決を行うための、政府から議会に対する提案にすぎないのですが、今回、新たに2015年度から2024年度の10年間で約1.4兆ドルの赤字削減策が提案されています。

 具体的な例としては7ページの最後に書いてある2点です。1点目がメディケア、メディケイドなどの政府保健プログラムの改革です。例えば包括払い制度の導入などの亜急性期ケアです。亜急性期ケアとは、アメリカの入院期間が短いため退院した後のケアのことです。そのような亜急性期ケアに包括払いを導入するなどのメディケアの効率化や、低所得者への後発薬品への使用促進などが挙げられています。

 2点目は、富裕層をターゲットにした税制改革でバフェット・ルールの導入や富裕層への税制優遇措置の縮小となっています。

 次のページの財政健全化に向けた取組みマル3では制度的なものについてご紹介します。1点目は、義務的経費に係るPay-As-You-Go原則です。根拠法は2010年Pay-As-You-Go法で、次に説明するCap制とともに90年代に導入されたものをオバマ政権になってから復活させています。このPay-As-You-Go原則とは、新規の政策や制度変更によって義務的な経費の増加や減税を行う場合に、同一年度内にその歳出増や歳入減に見合った措置を実現するというものです。つまり総枠をまず考えて、例えばある項目の支出を増やすときや減税をするときに、代わりに支出を減らす項目を明らかにするということです。

 2点目が、裁量的経費に係るCap制です。根拠法は、6ページで紹介した2011年度の予算管理法です。裁量的経費に上限を設けて、この上限を超える歳出予算法が成立した場合、裁量的経費に対する一律削減を実施するものです。

 3点目が債務上限で、米国では債務の上限を法定化しており、この上限に達しない範囲でしか公債発行ができないようになっています。2013年秋には、先ほどもお話ししたように、債務上限問題が深刻化して、債務上限到達によるデフォルトの懸念というのが高まったのですが、その後、継続予算決議及び債務上限延長法の成立によって、2015年3月まで債務上限の規定は適用しないことになっています。

 債務残高の金額は年々増加しており、この右下の図にありますように2014年3月末現在で17兆5,545億ドルとなっています。

 次が社会保障に関してです。先ほどお話ししましたように、今回の出張では残念ながら、保健福祉省と都合がつかずに面会ができませんでしたので、既存の資料で概要をまとめました。米国では、政府は原則として個人の生活に干渉しないという自己責任の精神と、連邦制で州の権限が強いということが、社会保障制度のあり方にも大きな影響を及ぼしています。この結果、年金、医療の両分野において、民間部門の果たす役割は大きくなっています。

 まず年金ですが、公的年金制度としては、大部分の有業者に適用される老齢・遺族・障害年金(OASDI)が挙げられます。OASDIの受給開始年齢については、2003年から2027年までに65歳から67歳へ段階的に引き上げます。なお、2013年では66歳となっています。企業年金制度は公的年金に上乗せされるものとして発達しています。

 医療保障は、民間医療保険制度を中心に行われています。公的医療保険制度としては、高齢者の医療を保障するメディケアと、一定の支給要件を満たした低所得者に医療扶助を行うメディケイドが挙げられます。メディケアに関しては、メディケア・パートA、B、Dなどがあります。メディケイドは、通常の医療サービスをカバーするだけでなく、メディケアがカバーしない長期ケア・介護もカバーしています。

 近年、米国では国民皆保険を目指して、医療保険制度改革を実施しています。内容は、メディケイドの対象者の拡大、民間保険が提供されていない個人に対して医療保険が手ごろな価格で選択・購入できるサイトの開設、医療保険エクスチェンジの開設などの取組みを実施していることはご案内のとおりだと思います。

 次に、公的年金や公的医療に対する財源に関して簡単にご説明したいと思います。年金に関しては、現役世代が納付する税率12.4%の社会保障税によって高齢者に対する年金給付を実施しています。これは日本の社会保険料に相当していて、現役世代が支払う社会保障税がその時点の高齢者の年金として支払われています。

 社会保障税などの歳入が歳出額を上回る部分は社会保障年金信託基金(OASDI Trust Fund)に積み立てられ、同基金に積み立てられた資金は全て米国債により運用されます。

 公的医療に関して、メディケアは連邦政府が運営しています。メディケア・パートA、これは強制加入の病院保険で社会保障税、メディケア・パートB、これは外来医療を保障する任意の加入で保険料と連邦政府の一般財源、メディケア・パートD、これは外来患者の薬の代金で、保険料と連邦政府の一般財源により賄われています。

 メディケイドは州政府が運営をしていて、州政府の一般財源と連邦政府の負担により賄われています。2015年度大統領予算教書においても、メディケア・メディケイド関連支出については今後増加していく見通しが示されています。

 最後にポイントを3点、まず一点目として近年、アメリカの財政収支の大幅改善は、意図した政策的取組みによるものというよりも、景気回復などの要因によるものが多いといえます。

 2点目に、他方、議会が予算案を作成し、審議・議決を行うため、政治的対立に起因する財政運営の不安定さはあるものの、Cap制やPay-As-You-Goなどの制度が財政の赤字を抑制する上で役立っています。

 3番目に、社会保障制度に関しては、年金・医療分野ともに民間部門の果たす役割が大きいことが特徴です。無保険者の解消に向けた医療保険制度改革を実施中ですが、同改革に対する与野党での対立の中、増加する見込みである医療関連経費にどのように対応していくのかが今後の課題となっています。

 特に私は医療制度に関心があるので、オバマケアに関して詳しく議論したかったのですが、保健福祉省を訪ねることができず、こちらでの議論はできませんでした。ただ昨年から今年にかけて現地の新聞、ワシントン・ポストだとかニューヨーク・タイムズとかウォール・ストリート・ジャーナルなどでも、米国の医療費の伸びが50年ぶりに減少したということが非常に大きなニュースとなっています。これはリーマン・ショックの後の不況の要因だけではなく、オバマケアの成果もあると学術論文などでも評価されているようです。

 では、カナダのほうに移ります。カナダですが、まず1ページ目で、2008年9月のリーマン・ショックの影響により、実質GDP成長率が急激に落ち込み、2009年にはマイナス成長、経常収支についても2009年以降は赤字になっています。その後、実質GDP成長率については2010年に3.4%と低成長から脱却して、それ以降は回復傾向にあります。

 2ページ目を見ていただきたいのですが、カナダにおきましては1990年代に実施された一連の財政健全化策により、1997年度以降、2007年度までは財政収支は黒字、現在もG7の中で最も良好な財政状態を維持していると言えます。

 2008年に発生した世界的な経済・金融危機により税収が減少する一方で、景気対策により歳出を増加させましたので、12年ぶりに財政収支が赤字になり、それに伴い債務残高も増加しています。2008年度が28.2%、2009年度に33.1%といった具合です。

 3ページ目は財政健全化目標です。1つ目は、2015年度までに連邦政府の財政収支を黒字化させ、2つ目は、2021年度までに連邦政府の債務残高の対GDP比を25%まで縮減するという2つの財政健全化目標を掲げています。この2つの目標は直近の2014年2月に公表された2014年度予算計画においても掲げられています。予算計画は、財務省が主体となって作成するもので、閣議決定されるものではあるのですが、法的な拘束力はありません。2014年度予算計画においては、両目標とも達成できる見通しが示されています。

 次のページは、記載されているとおりですので、適宜ご覧いただければと思います。

 5ページ目が具体的な財政健全化に向けた取組みです。カナダの予算は、大きく分けると3つに分けられます。1点目に年金や児童給付など個人への交付金、2点目に医療、社会福祉などの州政府等への交付金となっています、そして3点目に直接プログラム支出、これは一般行政経費や国防、国営企業などに係る経費です。

 カナダでは、1990年代の初頭に、米国の景気後退による輸出の低迷やメキシコの経済危機等、かなり深刻な経済状況になり、一般政府債務残高がG7でイタリアに次いで悪い状況にまでなったと。当時の自由党政権がプログラム・レビューと言われている既存政策の徹底的な見直しや州政府などへの交付金の抑制によって財政収支を黒字化させて、財政健全化を達成しています。

 その後、リーマン・ショックによって財政赤字に転じていますが、現在、財政収支均衡に向けた取組みが進められています。2010年度予算計画においては、景気への配慮から、増税はしないで、マル1の個人への交付金とマル2の州政府などへの交付金は削減しないという方針を決めていて、それ以降、マル3の直接プログラム支出の抑制を中心に、財政健全化を進めています。歳入増加策としては、税制の抜け穴防止をはじめとした措置がとられています。カナダ財務省にヒアリングをしたところ、現政権の公約として、ここで説明したような財政健全化策の方針を定めていて、個人への交付金や州政府などへの交付金についてはGDPの伸び率と連動させて伸ばしてもよいということになっているそうです。そのためにGDPの伸び率という全体の制約をはめているそうです。

 1990年代の財政健全化策では州政府への交付金などについても削減を実施したのですが、今回の財政健全化策はそれに比べると規模も大きなものではなくて、経済に対するネガティブな影響は少ないと考えているとのことです。

 次のページが、近年の財政健全化に向けた具体的な取組みですが、まずは歳出抑制策の1つとして、2007年に導入されました、戦略的見直し、Strategic Reviewについて説明をしたいと思います。この制度の導入の当初は、財政収支は黒字だったのですが、将来的に赤字に転ずることが予測されているため、導入されています。

先ほど見た予算のマル1マル2マル3の中で3番目の直接プログラムの支出を対象としていて、その98%をカバーしています。連邦政府全体の施策を4年間のサイクルでレビューをします。直接プログラム支出の5%の削減を目標として、各省庁がレビューを行って、国家財政委員会事務局との協議を踏まえて、最終的に各省の大臣が削減を行います。これまで4回の戦略的見直しが実施されて、7年間で約110億カナダドルの歳出抑制が見込まれています。

 初年度である2008年度は歳出抑制によって生まれた余剰額を各省庁における他の重点分野へ再配分することを想定していたのですが、ちょうどリーマン・ショックなどが起きて、それに伴う財政収支の赤字を受け、抑制額は均衡予算達成のために用いられることになったそうです。

 7ページ目で、この戦略的見直しに続く歳出抑制策としてStrategic and Operating Reviewが2011年度予算計画において実施を提唱されています。均衡財政の達成に向けてさらなる見直しを行い、直接プログラム支出における支出管理だけではなく、主に運営経費、経常経費を削減するというもので、2012年度から14年度の3年間でレビューを行い、2012年度予算計画によれば、年間52億カナダドルの歳出抑制が見込まれています。

 具体例としては、ここに書いてありますように1セント硬貨の製造費用の高さに鑑み流通を廃止して、他の材料に変更するとか、在外の公邸を売却するなどです。

 次に、歳入増加策については、先ほど説明しましたように税制の抜け穴防止を中心とした取組みが行われています。2014年度の予算計画によれば、2006年度予算計画以降、85の措置が導入されました。具体例に関しましては、脱税を助長する不正ソフトの所持・販売などへの罰則強化などです。

 次のページからが社会保障です。カナダでは憲法上、老齢年金などが連邦政府の管轄とされる一方で、保健医療、公衆衛生、福祉などその他の社会保障のほとんどは州政府の管轄とされています。年金は、主に連邦政府の所管事項となっていまして、1階の基礎年金部分と2階の報酬比例年金部分の2階建ての構造になっています。1階部分は国内居住要件を満たす全ての者に対して支給される老齢所得保障でOASと言われているものと、低所得者の年金受給者に対する補足的所得保障でGISと呼ばれているものの2つによって構成されています。2階部分は、被用者及び自営業者が加入するカナダ年金プラン(CPP)などによって構成されています。

 2012年度予算計画によって、2023年4月からOASとGISの受給開始年齢の65歳から67歳への引上げ開始が決定されていて、2029年1月に完了する予定です。

 医療に関しては、州政府の所管の事項となっていて、医療についてはほとんどが公的財源で自己負担は無料となっています。これは前回、説明があった英国と同じような制度です。この国民医療制度はメディケアと呼ばれていて、居住要件を満たせばこの医療保険の対象になります。なお、在宅ケアや薬剤、歯科などについては民間保険や自己負担により部分的に対応ということで、在宅ケア、薬剤、歯科などについて公的な財源も投入されています。

 例えば在宅ケアは、9割が公的財源で1割がプライベート。プライベートとは自己負担額であったり民間保険料であったりすると思います。処方薬は公的財源とプライベートが5対5、歯科に関しては、子供に責任はないということで、子供の自己負担額は無料ですが、成人してからの虫歯などは本人の責任ということで、公的財源が5%、残りの95%がプライベートで、これは主に民間保険になっていると思います。低所得者などについては、公的財源で負担するケースもあります。

 連邦、州・準州と合わせて14名の保健大臣がいて、州ごとの政策の方向性を統一させるために保健大臣会合というものを開催して、連邦政府は取りまとめを行いますが、意思決定には参画しないそうです。

 次に、社会保障の財源ですが、過去5年間の歳出の推移を見ますと、医療・社会プログラム支援のための福祉政策のための移転、年金(高齢者給付)などの社会保障関係支出は毎年増加しています。年金は1階部分のOAS、これは老齢所得保障、及びGIS(補足的所得保障)は連邦政府の一般財源(租税)で賄われています。2階部分のCPPと言われているところは、保険料及び積立金の運用収益などにより賄われています。

 医療は原則として州政府が財源負担をしています。州の財政責任が非常に明確になっています。連邦政府からはCHT(Canada Health Transfer)などの交付金により、財政的な支援も一部実施されております。

 最後のポイントですが、カナダでは年金や児童給付などの個人への交付金、医療、社会福祉などのための州政府などによる交付金については削減しないという方針を定めていて、直接プログラム支出という連邦政府の裁量的経費に的を絞った歳出抑制を中心に、財政健全化を進めています。

 直接プログラム支出を対象とした歳出抑制の取組みである戦略的見直しに加えて、運用経費にも着目したStrategic and Operating Reviewが継続的に実施されるなど、地道な歳出抑制努力が行われています。

 社会保障制度におきましては、連邦政府と州・準州政府との役割分担が明確に分かれていて、医療・保険サービスの運用・実施について、州・準州政府みずからの責任で行うため、連邦政府は財政リスクを負わないという仕組みになっております。

 最初のほうで申し上げましたように、カナダでは中期見通しが法的な拘束力を持たないのに、なぜここまで財政規律を維持しようとするインセンティブがあるのかということにとても関心があり、いろいろなところで聞いたのですが、1990年代の初めにカナダ経済がかなり深刻な状況になり、国内だけでなく、海外のメディアなどでも、カナダはもう二流国だとか途上国と同じだとかさんざんに言われて、そのときの教訓が非常に大きいとのことでした。

 日本へのインプリケーションとしては、いろいろ考えられるのですが、1つはカナダの政府間財政での交付金の決め方が日本の交付税とは異なり、基本的には各州の人口のみに左右されていて、カナダは先住民がいますので、先住民への配慮などはあるのですが、それ以外の固有の事情は特に考慮されていないということです。ですから連邦政府と州政府の役割分担がはっきりしていて、州の財政責任も明確になっています。

 かつては州の赤字補填のためにも交付金が出されていたので、連邦の負担が重くなって、責任も明確にされなかったということなのですが、現在のように人口で標準化した後は州の財政責任となり、いずれの問題も解決したということです。

 日本の医療制度改革などに、ずっとかかわってきて、なかなかうまくいかない理由はいろいろあると思いますが、1つ大きな理由として、日本の場合、地方財政が地方法人税と地方交付税頼みになっていて、限界的な財政責任がなく、地方財政の運営が放漫になりやすいことが非常に大きいのではないかなと思っています。

 以上、報告させていただきます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では早速、質疑に移りたいと思います。

 田中委員、富田委員。

〔 田中委員 〕 非常に緻密にご説明いただいて、ありがとうございました。大変勉強になりました。

 今の北米のご説明と、先ほどのヨーロッパのところを、フラッシュバックするわけではないですが、何となくたすきがけでイメージしながら聞いていたのですが、やはりこの話を伺うにつけ、どうして日本は、という疑問が残ります。その上での質問をさせていただきたいのですが、たしか橋本内閣のときには財政構造改革法が決定され、それから小泉さんのときには骨太の2006ですか、ここで一律の削減目標が掲げられましたけれども、結果的に目標達成していない。その理由は何か、そして何が教訓であるのかということ。それから2番目としては、ある種、閣議決定されても法律で定められていても、何となくほごになってしまい、流され、責任の所在がはっきりしないのは何故なのかと思いながら拝聴していました。その上での質問なのですが、アメリカの財政削減目標とは、現在しっかりと機能しているとご判断されていますか。判断されているとすれば、その理由は何か、あるいは危なそうだなとお考えなのであれば、その理由を教えていただけないかということです。

 2番目の質問は、欧州にも関連するかもしれないのですが、法律で明文化されたこの財政規律目標を守れなかった場合には、どのような対応策があるのかないのかについて、北米と、それから可能であればヨーロッパについて、特にヨーロッパは憲法に書かれているわけですから、お伺いしたいと思います。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ご意見の部分も大きかったかなと思っていますが、お答えに。

〔 井伊委員 〕 前半は私も関心があるところなのですが、アメリカは、先ほどもお話ししたように、削減部分の8割の原因が歳入で、2割が歳出ということで、かなり景気がよくなっていることに依存しているかなと思います。

 ただオバマケアに関しては、先ほど申し上げたように、大胆な改革をするということなので、賛否両論はあるようですが、やはりアメリカは特に医療保障に関して州によってかなり制度が異なっており、州ごとの政策変化だとかデータに基づいた分析や研究などに基づいて提案されていますので、質を保ちながら医療費を削減していくということは、専門家の間でもかなり評価されているところがあると思います。医療費に関しては、景気がよくなったから自然に改善したというよりは、努力によるところが大きいと思いますが、全体の予算に関してはかなり景気に依存しているというのが私の印象です。

〔 吉川分科会長 〕 富田委員。

〔 富田委員 〕 今の点とも関係するのですが、欧米の財政収支を考える場合にはやはりリーマン・ショックの影響がものすごく大事だと思います。アメリカも、2009年からものすごく拡大していますよね。そのころはファニーメイやフレディマックを国有化したり、カーメーカーを救済したり、非常に大きな財政支出があったわけで、それがだんだん回復してきているということなので、それらの金融費用にかかわる部分を抜き出して考えなければいけません。ヨーロッパについては、イタリアやドイツでは構造赤字と循環赤字に分けてお示しあったのですが、アメリカにおいてもリーマン・ショックに係る財政収支への影響ということで別途まとめていただきたいと思います。井伊先生のほうはもっと構造的・長期的な問題としてのところをお調べになられて我々にいろいろと教えてくださったと思うので。

 ついでなのですが、ヨーロッパも同じ観点で、リーマン・ショックの影響はすごく大きいはずなので、財政収支に金融危機がどのような影響を与えたかといったことと、今日はギリシャのお話はありませんでしたが、ギリシャの問題はイタリアやスペイン財政に大きな影響があったはずで、それが端的には0.5%という形で憲法に盛り込まれるということになったわけです。そのような観点で考えると、イタリアについてあまり改革はないというお話も伺いましたが、ギリシャみたいになったら誰も助かる理由はないわけでして、そこは厳しい節度が働いているのではないかと類推するのですが、そのあたりもお聞かせいただけたらと思います。

 お願いします。

〔 吉川分科会長 〕 ほかの委員の方々のご意見もありますから、末澤委員、井堀委員、小林委員の順で。

〔 末澤委員 〕 今の点に関して申し上げますと、富田先生がおっしゃったように、やはりリーマン・ショックの影響が相当大きいと思いますね。この8ページの右下にありますように、米国の債務残高はリーマン・ショックまでは相当伸びが緩やかだったのですが、リーマン・ショックのところで、金融安定化絡みの資金も入っていますので、急激に債務残高が増えている。またその前のイラク戦争、アフガン戦争の影響もあるわけですが、その影響で、おそらくアメリカは政治的には、共和党内でいわゆるティーパーティーと呼ばれる小さな政府派が相当重きをなし始めて、その影響で最近は財政削減に対する関心が強まっていると。

 2012年にシーリングを上げたときにも、当時は一応、歳出削減の担保をとると。これは超党派の合意がなければ、トリガー条項といって、仮の歳出削減策を別途決めていたのです。これはおそらく日本では過去なかったと思いますが。それが結局、超党派の議論がまとまらなかったので、昨年の年明け、少し延長されて、3月からいわゆる先ほどの強制歳出削減がスタートして、相当大きなカット。国防費が大体半分を占めるわけですが、例えば米軍のほうでも中東に置いている空母艦隊が1つ減った等、いろいろやりまして、相当大きな歳出カットがなされているのは事実だと思います。

 これと景気回復も相まって、今は足元、急激な財政収支の改善が起きていると。そのような意味では、リーマン・ショック後の大きな政府以降、議会のほうで歳出削減に対する声が強くなったことが、最近の歳出削減の大きな誘因となっているのは事実だと思います。

 そこで1点ご質問なのですが、米国の場合は、日本と違って、予算の作成を議会でやると。議会でつくる場合は、当然いろいろな情報収集、分析の機能が必要で、それでCBOという事務局が設定されているのですが、このCBO、またOMB、いずれも年に3回とか4回とか財政経済見通しを出していまして、私もずっとフォローしているのですが、毎回、相当ずれがあります。

 つまり議会において与党がマジョリティーのときでも、そうでないときでも相当ずれがあって、単年度の収支見通しも進行年度も相当違うと。着地の見通しもかなりずれがあって、そのような意味では独立性が担保されているとは思うのですが、このOMBとCBOで人事交流があるのか、ないのか。

 OMBのほうは、政府任用ですから、今の財務長官もやっていますが、変わるわけです。しかしその独立性とは、何かCBOのほうで担保されている人事的な仕組みなどはあるのでしょうか。

  必要があれば追加資料で。

〔 井伊委員 〕 はい、次回にでも追加資料で提出します。

〔 吉川分科会長 〕 今日は長期推計もありますので、井堀委員、小林委員、中空委員、簡潔にお願いします。

〔 井堀委員 〕 1つは、今抱えているアメリカの景気回復の効果ですが、確かにリーマン・ショック後の回復が財政健全化にきいているというのは、そうだと思います。しかし今日のお話ですと、2012年から2013年にかけて極端によくなったという、3%ぐらいですか。2011年から2012年に確かにGDP成長率は上がっていますが、2012年に極端に成長率が上がっているわけではありません。2011年から2012年、GDPが増えたことによって自然増収が起きたというのは、定性的にはわかるのですが、2010年、2011年と比べると、2012年から2013年が極端によくなっているので、それはどの程度、定量的にきいているのかなというのが、1つです。

 それからもう1つは、8ページの債務上限の話なのですが、これを来年の3月まで適用しないということなのですが、その後はどのような扱いになっているのか。何かその後について今、議論があるのでしょうか。要するに適用しないということは、それ以降に関してはまた適用する話をすると、それも当然、織り込んで行動されているのかどうか。

 それからカナダです。確かに連邦政府に関してはしっかりとやっていると思うのですが、問題は、その社会保障の年金は州政府に行っているわけですね。州政府のほうは多分、均衡財政でやっていると思いますが、問題はその高齢化等の財政リスクを州政府が負っているときに均衡財政でやっていて、各州がしっかり対応できているのかどうかということです。要するに連邦政府からの交付金を一定に置いているわけですから、いろいろな変動要因があったときに、州政府みずから努力しなければいけないわけですが、州政府の財政に関する取組みに関して何かヒアリングされているところがあるでしょうか。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 時間が限られていますので、次回にでも、宿題をお答えするということにしたいと思います。

 小林委員。

〔 小林委員 〕 私は質問ではなくて意見であります。これまでずっと海外からの調査報告を聞かせていただきまして、どうもご苦労さまでした。

 それで、やはり景気回復要因が大きいということで、先ほど岡本委員からのご指摘もあったのですが、そこにスポットが当たってしまうと、財政健全化はどうなのかという話が出てきかねないと。ただうちの財政審議会も、経済成長は重要であるけれども、それだけでは足りないということをこれまでも常に強調しているわけで、今日のお話などを聞いていても、景気回復しているから、財政健全化の手を緩めているという話にはなっていないですよね。やはりそこはきちんと、景気は回復していても財政健全化、例えば強制歳出削減とか目標とかはしっかりやっていると、やはりこの部分は言わなければいけないのではないかなという点があります。

 それと、これに関連して、特に質問というわけではないのですが、もしこの後でわかれば追加で皆さんに出していただきたいのですが、前回、古賀委員からも指摘があったのですが、財政健全化に対して国民がどれだけ理解しているのか、あるいは政治家が理解してそれを進めているのかはわかりませんが、かなりきつい財政健全化をやっているということですね。

 先ほどカナダのケースで、1990年代の教訓が生きているというお話がありましたが、これが議員の間にあって、それが進められているのか、それともそれが国民の間にまで浸透しているのか。もし浸透しているとすれば、それはどのような形で浸透していったのか。これはもしかすると今後、日本の財政健全化を考えていく上で大きなポイントになるのではないかなと思いますので、もし調べられれば、今日でなくても結構ですので、教えていただきたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、時間がありますので、中空委員、田近委員、ごく簡潔にお願いします。

〔 中空委員 〕 時間もあるので、一言だけです。

 債務上限問題の話がありましたが、金融のところでも、債務上限問題を設定していることで、アメリカはやはりいい国だと言われていて、トリプルAだとみんな思っていたのですね。

 このような上限を設定するということは日本でもやったらいいのではないかと投資家の人もみんな言っていて、私もそうではないかとずっと思っていました。ところが去年の10月のシャットダウンのときにわかったのは、結局それを政治的なところで握るのはどうなのかという話になってきまして、この話を格付機関などにぶつけ、それでトリプルAでいいのですかという話をすると、2つのことを言いました。結局、何があっても外からお金が入ってくる仕組みはできていることと、政治力が圧倒的に強いということ、この2つがあればそれでいいのだという話をしていたのですね。

 ですので、日本の場合にこれを使えるかというと、何となく疑問が残る面があり、政治的にがっつり行かないと、債務上限問題があって、ほんとうに次はどうなるのか、デフォルトかという話になると、それはそれで恐ろしいということを、枠組みとして、日本に応用するときの話としてお伝えしたいと思いました。

 以上です。

〔 田近委員 〕 小林さんに対する今の時点でのお答えですけれども、私の説明も足りないというか、一部言ったと思うのですが、ドイツの場合、やはり2003年、2004年ぐらいにかなりやって、付加価値税も上げたと。上げて、一部は財政健全化に使うということもして、あと失業給付に対する取組みがあってと。だから、その後、リーマン・ショックになって、景気変動による赤字が出てきたけど、好転したときに、それまでの取組みが生きてきたというのはあると思います。

 いずれにしても、資料に、予定されている歳出・歳入の取組みと実績が11年から書いてあるので、細かくはできないでしょうが、リーマン・ショックの前ぐらいからさかのぼって議論したほうがいいと私も思いました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 では、時間も押していますので、前半の議論はここまでとします。2人の先生、どうも貴重な出張報告をありがとうございました。

 3時間コースですので、一応、休みをここでとって、3時再開でいきたいと思いますので、よろしくお願いします。

( 休 憩 )

〔 吉川分科会長 〕 では、よろしいでしょうか。皆さん、席に着かれたでしょうか。後半、始めたいと思います。

 後半は、財政の長期推計について審議を行います。こちらの長期推計につきましては、これまで小林委員、田近委員、土居委員、富田委員に議論をしていただき、事務局と取りまとめていただきました。皆様、お忙しいところありがとうございました。

 それでは早速、富田委員よりご説明をお願いいたします。

〔 富田委員 〕 お手元に資料7−1、そして7−2がございます。7−1はA3の3枚紙でして、その1ページ目が全体の議論を要約したものでございます。2枚目、3枚目が試算の結果であります。

 最初に資料7−2をご覧いただきたいのですが、そこではまず私どもが参考にいたしました欧州委員会による長期推計について紹介し、そして、我が国で長期推計を行います場合の前提を述べております。

 そして7ページ以下が試算結果であります。まず7ページから18ページまでは、社会保障基金を含めました一般政府ベースでの推計であります。そして19ページ以下が社会保障基金を除きました国・地方政府ベースでの推計であります。

 そしてそれぞれ一般政府ベースの推計と国・地方政府ベースの推計につきましては2つの経済前提を置いてございます。1つ目は、7ページ目をご覧いただきますと、実質経済成長率1%、名目経済成長率2%というケースです。そして、2つ目は、実質経済成長率2%、名目経済成長率3%です。ともに名目長期金利につきましては3.7%に置いてございます。

 以上、たくさんのケースがございますので、まず、欧州委員会による長期推計についてご説明申し上げます。1ページであります。

 欧州委員会は、2006年以降、3年に一度、推計を行っております。推計と申しましても、EU加盟国それぞれにつきまして人口構成の変化を踏まえた財政収支を展望しまして、財政指数を見まして、それが持続可能かどうかを推計しております。

 持続可能かどうかは、端的には、現在の債務残高が将来のプライマリー黒字でもって返済できるかどうかということです。それを操作可能な推計の方法といたしますために、欧州委員会では、年によって手法は異なりますが、2012年に公表された最新のバージョンでは、2030年に、マーストリヒト条約が定める政府債務残高の対GDP比を60%とするために、必要とされる恒久的な財政収支の改善幅を各国ごとに提示いたします。

 もう一つ、S2という指標は、将来にわたっての無限期間で一般政府債務残高の対GDP比を安定させるために、現時点で必要とされる恒久的な収支改善幅でございます。これは毎回、同様の手法で計算されておりますので、過去との比較が可能でございます。

 そして、このS1につきましては、必要な収支改善を直ちに2015年度から行うのではなく、6年間かけて、つまり2015年から2020年の6年間に段階的に行うとしております。段階的に行いますと、その間、利払費という国民負担が発生し、最終的に必要な収支改善幅が大きくなりますので、その増加分を遅延コストと呼んでおります。

 そして、このS1、S2という指標は次の構成要素に分解されます。別の言い方をいたしますと、これらの合計がS1あるいはS2となります。まず、IBP(1)でございますが、これは現在の構造的基礎的財政収支赤字の対GDP比でございます。先ほど来、欧州出張でご報告がありました景気循環や一時的な要因に伴います財政赤字というものを調整しております。

 IBP(2)は、現在の債務残高の対GDP比を維持する、例えば現在100%の国だと、それを維持するためにどれだけの基礎的財政収支黒字が必要かということでありまして、その計算方法は、この下にございますように名目長期金利から名目経済成長率を引いて、それに債務残高の対GDP比を掛けたものでございます。

 そしてCODは、先ほど申し上げましたけれども、段階的な収支改善を行う場合と直ちに収支改善を行う場合と対比したときに、追加的に必要になる収支改善幅であり、これを遅延コストと呼んでおります。

 そしてDR、Debt Reduction Requirementですが、これは欧州委員会では2030年に60%ということですので、60%に引き下げるために必要な収支改善幅であります。

 そして欧州各国とも程度の差はあっても、高齢化の進展に備えるということで、高齢化に伴う将来の歳出増というものを、各国ごとに計算しておりまして、それに対応するために必要な収支改善幅がCost of Agingであります。

 右のページをご覧いただきますと、例えば先ほど出張報告がありましたドイツでありますと、65歳以上人口の比率は、上の段の真ん中でありますけれども、2010年の20.6%から2060年には32.8%に上昇いたします。そして年金・医療等推計をいたしまして、合計いたしますと、2010年には対GDP比25.1%であった年齢関係支出が2060年には30.5%と増えます。他の国も同じように推計がされております。これは推計といっても、現在の各国の社会保障制度を前提に、各国政府と欧州委員会との間でやりとりをされて、試算されたものでございます。

 次に、欧州委員会の報告書の経済前提を3ページでご覧いただきます。各国ごとに経済前提は異なるわけですが、EU加盟国全体につきまして加重平均したものがここの平均値でございます。

 実質経済成長率は2020年代以降、1.5%程度、そして名目経済成長率は3.5%、GDPデフレーターは2%、名目長期金利は5.1%となっております。そして、この5.1%と3.5%という金利と成長率の格差というものが、この以下の試算において極めて重要な要素になります。これは1.6%であります。

 なお、後ほどご説明いたしますが、我が国の場合、この金利と成長率の格差は、資本移動が自由になった1980年代の前半から今日までの平均で1.5%程度でございます。

 財政前提は、財政支出を「年齢関係支出」と「非年齢関係支出」の2つに分けます。「年齢関係支出」は、先ほど2ページでご覧いただきましたような前提でございます。そして「非年齢関係支出」、及び政府収入につきましては、各国それぞれ構造的なものを設定し、それを推計期間中、GDP比一定と想定してございます。なお、これは一般政府ベースの話ですので、政府収入の中には、税収の他に社会保険料が含まれます。

 その結果、得られましたS1及びS2という持続可能性を示す尺度はこの図表のとおりでして、右4ページをご覧ください。S1を国際比較しております。これは2030年に債務残高の対GDP比を60%にするために、2015年から20年の間に改善すべき収支幅であります。キプロスやベルギーが非常に大きく、下のほうにございますドイツ以下のところではマイナスとなっております。なお、欧州委員会のレポートには、マイナスがついているから財政を緩めていいとは書いてありません。これはターゲットではなくシーリングだというように示しております。

 表を右の方にご覧いただきますと、S1についてですが、Debt Reduction Requirementがマイナスというのは、現時点において既に債務残高の対GDP比が60%以下だということを意味しております。それからS2についてですが、無限時点先における政府債務残高の安定のためには現時点でどれだけ収支改善をしなければならないかということを示したものでして、S2は、EU平均で2.6%と計算されておりまして、その内訳として、IBPが0.5%、それから高齢化に伴う歳出増に対応するCOAが2.2%と計算されております。

 以上の欧州委員会の方法を踏まえまして、我が国に適用して推計しましたものが5ページ以下でございます。5ページにございますように、経済前提でありますが、2023年度までは、本年1月20日に内閣府から発表されました「中長期試算」の「経済再生ケース」の経済前提を用いております。それ以降、つまり2024年度以降は実質経済成長率1%と2%という2つのケースを想定してございます。

 そして2024年度以降は、名目長期金利を3.7%と置いておりますけれども、これは2009年に厚生労働省より公表された「年金財政検証」のものでございます。このような経済前提とともに、財政につきましては、「年齢関係支出」等の推計方法につきまして欧州委員会と同じ方法で前提をおいてございます。

 我が国の高齢化率をご覧いただきますと、2010年の23.0%が2060年に39.9%というように大幅に上昇いたします。先ほど2ページでご覧いただきました欧州各国に比べて、今後も高齢化が非常に急速に進んで、2060年に40%近くまで上昇するという想定でございます。

 そして「年齢関係支出」は対GDP比で、2010年度の22.6%から2060年度には30.5%となり、50年間で8%も上がることとなっております。その推計の方法につきましては右側のページにございまして、公的年金についてはマクロ経済スライドを適用する前提で推計しております。

 そして、要約版のほうの資料7−1にお移りください。2ページ目をご覧ください。2ページ目の試算結果(2)必要な収支改善幅というところをご覧ください。ここでは実質経済成長率2%、名目経済成長率3%のものを提示してございます。

 下のグラフからご覧いただきますと、右下を先に見てください。現在の制度・施策がそのまま継続された場合には、グラフの一番上に試算マル1のベースラインとして示している姿になります。実質経済成長率2%、名目経済成長率3%という前提でもってしても、試算マル1ですと、債務残高の対GDP比は現在の200%を超えたぐらいのところから、2060年度にはグラフのはるか上のほうに行ってしまいます。計算上ですけれども、608%と試算されます。私は古今東西にこのような事例は見たことがございません。

 今回の推計では、S1の算出において、これを2060年度に100%にするという試算前提を置いております。2060年度に債務残高の対GDP比を100%に引き下げるためにどうするかということで、方法は基礎的財政収支を改善するしかありません。グラフの左側をご覧ください。赤い線をご覧いただきますと、これは縦軸が基礎的財政収支の対GDP比でして、それが2020年度のマイナスのところから改善して、2026年度に一定幅改善しております。これを必要な収支改善幅と申します。つまり債務残高の対GDP比を100%とするためには、2021年度から2026年度の6年間で基礎的財政収支を対GDP比で何%恒久的に改善する必要があるかというと、11.94%でございます。

 試算結果の黄色の部分をご覧いただきますと、現行制度・施策を前提として、収支改善を行わない場合、「年齢関係支出」と利払費の増加でもって、債務残高の対GDP比は発散いたします。幾何級数的にその比率が増えてしまう。ただし、これは机の上の計算です。市場からより高い金利を求められ、それまでに多分、破綻してしまうということになります。

 そして債務残高の対GDP比を将来にわたり安定させるために必要なS2は10.57%となっております。

 今後、中期財政計画を踏まえて収支改善を行い、2020年度に国・地方の基礎的財政収支黒字化目標を達成したといたしましても、高齢化の進展に伴う「年齢関係支出」と利払費の増加により、結局、債務残高の対GDP比は発散してしまいます。これが試算2のケースのベースラインです。

 具体的に申し上げますと、試算2のケースは、下の左側のグラフをご覧いただきますと、2020年度のところで基礎的財政収支がほぼ均衡してございます。「中期財政計画」では基礎的財政収支の黒字化が目標となっておりますが、ここでは一般政府ベースであり、社会保障基金を含んでおりますので、2020年度の基礎的財政収支は若干のマイナスになります。試算マル2のベースラインをご覧いただきますと、2020年度に基礎的財政収支黒字化を実現しても、その後に更なる収支改善を行わない場合には対GDP比で8.2%の収支改善が必要となってまいります。

 続きまして、次のページ、試算結果(3)をご覧ください。今、ご覧いただきました試算マル1や試算マル2をどのように評価すべきかということで、左側の図をご覧ください。S1指標の国際比較で、フランス、イタリア等欧州主要国において、2015年から2020年の間に必要となる収支改善幅と比較しています。我が国につきましては、試算マル1は11.49%とありますが、これは2021年度から2026年度における収支改善幅です。その右に試算マル2として、先ほどの8.2%に3.3%が上乗せされています。この3.3%は、2ページ目左下のグラフで2020年度に赤い線と青い線のところでギャップがあり、それが3.3%でして。この試算マル2は、2020年度に「中期財政計画」を達成する場合であり、そのために、このオレンジの部分、3.3%の収支改善が必要であることを示しています。この基礎的財政収支の黒字化は財政健全化の一里塚であって、さらに2021年度から2026年度の間に対GDP比で8.2%の収支改善が必要だということです。

 その意味でございますけれども、右のグラフをご覧いただきますと、各国の租税・社会保険料負担の対GDP比に、今申し上げましたS1、つまり必要な収支改善幅を上乗せしております。上乗せの意味は、我々は選択肢を持っておりまして、歳出の削減でこれを縮小することもできますし、社会保険料の引上げという対応もございますし、税負担の引上げもございます。ご覧いただきますと、それらを足し合わせた日本の負担率は、フランス、イタリアと同じ程度の負担となるということです。

 最後に、感応度分析でございます。ここまでは、実質経済成長率2%、名目経済成長率3%で2020年度に国・地方の基礎的財政収支が均衡することを前提としたケースについてでありましたが、最初に、成長率が変わった場合にどうなるかということで、仮に名目経済成長率2%が2060年まで続く場合の必要な収支改善幅は、8.2%であったものが、10.24%に拡大いたします。S2は7.21%だったのが9.15%に拡大いたします。

 次に、出生率が高位となり死亡率が高位となった場合ですが、収支改善幅はわずかに縮小するに過ぎません。

 それから金利が上昇、あるいは低下した場合でございます。この黄色い部分は、先ほど申しましたように名目経済成長率3%、名目金利3.7%で、金利差は0.7%となっており、過去の実績から比べてもかなり小さくなっておりまして、これが1.7%という過去の平均並みになったといたしますと、8.2%ではなしに10.89%の収支改善が必要ということになります。

 最後に、2060年度の債務残高の対GDP比の水準を100%ではなく、200%、つまり現状から見るとほぼ横ばいにするという場合であっても、今後の高齢化の進展に伴う「年齢関係支出」の増加の影響がありますので、200%に保つために必要な収支改善幅は、ここにありますように5.85%ということになります。

 一応、私からは以上です。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 早速、議論に移りますが、私のほうから一言、補足させていただきますと、この分科会の委員の皆様方はもう既にご存じのことかもしれませんが、財政の健全さを確保するためには、もちろん毎年のフローの収支の改善も必要ですが、債務残高の対GDP比の水準が安定して低位にならなければいけないということがあるわけです。

 この点に関しましては、皆さんご承知の通り、現在、政府は「中期財政計画」で、2015年度までに国・地方の基礎的財政収支の赤字対GDP比を2010年度比で半減し、2020年度までに黒字化し、その後の債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指すという目標にコミットしているわけですが、2020年度までの黒字化の目標については"黒字化"と言葉であるわけですね。それからその後につきましては、債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指す目標についても、言葉による目標があります。当審議会では、このような目標に関しては定量的な数字に基づく議論をすべきだというご意見がかなりあり、欧州委員会では、先ほどご説明がありましたが、3年に一度、もう既に説明のあったS1、S2の推計をやっているということでありましたので、我が国についても欧州委員会に倣って、今回の長期推計を行うに至ったわけです。

 結果については既にご説明のとおりですが、では皆様方、どなたからでもどうぞご意見をお願いいたします。

 田中委員、どうぞ。

〔 田中委員 〕 始まる前から、お隣で田近委員が「荒唐無稽だから」とおっしゃっていましたが、やはり説得力があるなと思いながら聞いていたのですが、2つの全く別の種類の質問があります。

 1つは、今後この結果をどのように使っていくのか、ということです。

 それから2番目は、少し具体的な質問なのですが、先ほど試算結果のところで、出生高位と死亡高位に関しての試算をしてくださったのですが、ここの試算のときには、この従属人口指数ですけれども、これは15歳以上65歳未満を労働力人口として、計算されているのかどうかという点です。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 2点目は事務局ですかね。

〔 堀内主計企画官 〕 2点目のご質問につきましては、15歳以上65歳未満を労働力人口として計算しております。

〔 吉川分科会長 〕 それで1点目については大事な点だと思いますが。

〔 富田委員 〕 荒唐無稽というのは冗談でおっしゃったのだと思っているのですが、やはり、一歩先しか見えないよりも、先を見て今を生きるのが人間なわけでして、大きな姿、大局観を持って考えねばならないと考えております。早い話、私の経験で申しますと、二十そこそこの学生などは、自分は年金を受給できるのだろうかということが非常に大きな心配なわけです。

 多分、それを決めるのは国民だからということが答えなのですが、それだけではなしに、年金を受給できるようにする、あるいは医療費の制度を守るためには、財政が持続可能である必要があるわけでして、そのような財政が持続可能な条件ということを具体的に示したいということが第1です。

 第2に、今、我が国政府は2020年度までの、国・地方の基礎的財政収支の黒字化ということを内外に公約しております。それではそれが全てなのかということを、永遠の相の下とは言いませんけども、もう少し長い目で見てみようと試算したものです。

 試算の方法についても当然いろいろなことがあるのですが、連邦政府としての役割を期待されている欧州委員会が、各国政府に対して提示している方法で以て分析し、評価している方法というものを使わせていただいているわけです。

 したがって、どう使うかということは大事ですが、これは広く国民に、学生含めてご議論いただくための材料と思っております。

〔 吉川分科会長 〕 これは、先ほどもお話ししたとおり、経済財政の議論ですから、数字がないと建設的な議論はできないということが出発点ではないでしょうか。そのために我々は数字を出して、それが建設的な議論の材料になることを期待していると私は理解していますが、よろしいですか。

〔 田中委員 〕 そのことについてなのですが、いわゆる専門家の間、有識者の間で議論の題材として使うのと、これを広く国民に知ってもらうために、ある種のプロパガンダとして使うのとでは、アプローチが全然違うと思いますので、やはりこれの使い方というものをもっと戦略的に検討する必要があるのではないかなと思います。

〔 吉川分科会長 〕 わかりました。角委員、岡本委員、井堀委員、田近委員。

〔 角委員 〕 どうもありがとうございました。

 数字は非常によくわかるのですけれども、この差を具体的にどのようなメニューで埋めていくのかという議論にまで進んでいかないとあまり意味がないと思いますので、例えば20%なり10%という必要な収支改善幅を、どのようにして埋めるのかという提言をしていただく必要があるのではないかなということが1点です。

 それと、長期推計によってこのまま行けば日本は破綻するということが非常によくわかるのですが、ただその国民の理解という意味で申しますと、もう少し中期的な指標といいますか、内閣府の「中長期試算」では、「経済再生ケース」であっても、2020年度に国の一般会計で10兆円、国・地方政府で12兆円の赤字が残るということになっております。

 そうなると、やはり急激に社会保障費を減らすということは不可能でしょうから、どうしてもこの10%の消費税率をさらに15%に上げる時期が来ないと、国・地方の基礎的財政収支の黒字化の約束はできない。15%に上げる以上は、社会保障と税の一体改革という意味で、かなり社会保障に厳しく切り込んでいただかないといけないのではないかと思います。

 そして、本年2014年には、私ども団塊の世代、つまり昭和24年生まれが65歳になります。ということは10年後の2025年には全員が75歳を迎えます。社会保障費の給付総額が110兆円から150兆円に増えて、その40兆円増えるうちの30兆円は医療・介護ですから、これにメスを入れないとどうしようもないということは明白ですので、ぜひともこの次の消費税率を上げる議論のときに大胆に社会保障について切り込んでいただきたい。

 この間、富山県の知事の話を聞いたところ、富山県は生活保護率が0.33%で、日本一低い。それはいろいろな理由があるのでしょうが、女性が非常によく働いているということも1つの要因です。先ほど人口比でCapをかぶせるというような議論がありましたが、例えば大阪府はその10倍ぐらい生活保護を受けているわけですけれども、一定以上多い分については、自治体が責任を持ってその分は負担して、いわゆる総額は人口比でこれだけしか渡さないというようにすれば、少しは改善されて、公平な制度になるのではないかと思います。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

〔 岡本委員 〕 定量的な数値を見てやるべきだと私もずっと言っておりましたので、このような数値が出てきて議論することができるということは大変よかったと思います。それとともに、今までの審議会での議論がかなり具体的な形でここに出ておりますので、私たちがとても納得できる数字だなと思っております。

 とりわけこの大判の下から2段目のところに、経済成長率の上昇や人口動態の改善が収支改善幅に与える影響は大きくないと、一方で既に債務残高が膨大であり、金利の変化が与える影響は大きいと。これは私は非常にぴったりきまして、先ほども言いましたが、経済成長率があればみんな解決するのだといいますが、経済成長率があれば、必ず金利は上がるものですから、そういった意味ではそこはそれほど大きくはないだろうなと。

 逆に経済成長率がそんなにない中で、財政がおかしくなって、金利が暴騰すると、これはもう決定的です。私もいつも言っているのですけれども、金利が暴騰したら企業も大変だし、金融機関も大変だし、もちろん財政も大変だしと、三者総痛手になるわけだから、これについてはほんとうに考えていかないといけない。

 日銀も結構、国債を買うでしょうけど、それにも限界があるという中で、金利の暴騰ということは常に金融機関は考えておりますので、この辺のことは、これは過去からも言われているのですが、経済成長と金利を整理しながら、世の中に述べていくということは極めて重要だと思います。

 ただ、先程も田中委員からもありましたけれども、これをどこでどのようにやっていくかということで、欧州委員会では3年に一度とありますけれども、このような数値を、政府に出すとか、あるいは経済財政諮問会議などで議論するとか、何らかの流れというものをつくっていって、より国民に浸透させていくという必要があると思います。

 それから、1月に内閣府「中長期試算」が公表されましたが、そのときと現在を比べて、アベノミクスの効果があって、かなり変わってきているのかどうか、あるいは税収等の弾性値が変わってきているのかどうか、これが少しわからないので、もしわかれば教えて頂きたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 富田委員。

〔 富田委員 〕 最後の点ですが、まずここの経済前提は、2023年度までは今年の1月20日に発表されました内閣府「中長期試算」の「経済再生ケース」を前提としております。したがって、アベノミクスの効果がどうだというわけではなく、その数字そのものを使わせていただいています。2024年度以降については2ケースあって、名目経済成長率2%の場合と3%の場合。ここでお示しさせていただきましたのは、3%のほうの場合です。

 それから弾性値ですが、ここでは税収弾性値は一切考えておらず、政府収入、すなわち税、社会保険料及びその他収入につきまして、景気循環などの一時的な要因を除いた構造的な部分を将来にわたって対GDP比一定と想定してございます。

〔 吉川分科会長 〕 では井堀委員。

〔 井堀委員 〕 大体のところ、非常にもっともらしい数値ではないかと思うのですが、2020年度までの話ですと、消費税率を10%に上げるということは既に織り込んでいるわけなので、必要な収支改善幅が対GDP比で10%ポイントぐらいだということは、消費税率に換算すると20%ぐらいということで、仮に消費税でやるとすると、10%のところが30%ぐらいの税率にすれば何とかなるということ。

 そう考えると、そんなに悪い、悲観的なシナリオではないのではないかと。ほかの税を一切増やさなくても、消費税率を30%に上げれば全部うまくいくというのは、悪い数字でもないのではないかという気もします。

1つ質問は、2021年度から2026年度までの6年間で段階的にやるということですが、この調整期間を長期化すると試算結果にはどのくらいの影響がでるのかということ。要するに、2020年代の初頭に集中的に財政再建をして、その後はそれを維持するというと、財政を引き締める時期がそのときに集中している。それからもう一つは、年金に関して、マクロスライド制をきかせて、要するに年齢の影響はあまりきかない形になっているのですが、そのときに、将来の年金代替率50%は維持されているのかということ。

 それからもう一つは、実質経済成長率が2%のケースと1%のケースをやっているのですが、もう少し悲観的に、仮にゼロにすると、必要な収支改善幅はどの程度になるのかということ。基本的にはこれが更に2%ぐらい悪化すると考えていいのかどうかということ。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 お答えできるところで。

〔 富田委員 〕 まず、2020年代の初めに一挙に財政健全化を行います。資料7−2の15ページをご覧ください。これは名目経済成長率3%で、今までご覧いただいたのはS1です。それで8.2%を2021年度から2026年度までかけてやるのですが、2021年度に、一挙にやりますと、遅延コストがありませんので、7.62%というように少なくて済みます。逆に、段階的な収支改善の期間を長くやれば8.2%よりは大きくなるということです。

〔 吉川分科会長 〕 それでは、田近委員、倉重委員。

〔 田近委員 〕 私もこのグループの中でずっと数字も見てきたのですけれども、まずこの推計の重要な点とは、仮に「中期財政計画」を踏まえて収支改善を行い、2020年度の国・地方の基礎的財政収支黒字化を達成したとしても、債務残高の対GDP比は発散するというのが第1点。

 それから、荒唐無稽というのは、概要資料の方に記載されているのは実質経済成長率2%、名目経済成長率3%のケースで必要な収支改善幅は11.94%ですが、実際経済成長率1%、名目経済成長率2%のケースではこの改善幅14.05%であり、対GDP比14.05%に名目GDPをかけた実額は、すごい数字だなと。

 それはそれで、先ほどから議論になっている、この推計結果をどのように活用するのかということでしょうが、もちろん財審の場で歳入面についてどれだけ議論できるかということはあるとは思いますが、歳出面については今まで議論してきた、社会保障、特に医療、介護、そして地方財政、これはもう今まで以上に腰を据えて取り組まなければいけないなと。

 先ほど麻生大臣が提出された資料「レセプトデータの活用による医療の効率化」のご説明にもありましたけれども、例えばこの頃、具体的なことで申し上げると、介護給付と同時に医療給付がされている場合が多いわけですよね。例えば、有料老人ホームに行くと、そこに医者が来て、月に何回も診療している場合もあるので、やはり医療・介護で一体的に医療供給がどうあるべきかどうかも含めて、さらに議論していかなければいけないということが第2点。

 それから、もしこの数字が少しずつ市民権を得るならば、まさに今、申し上げた点を含めて、財審で議論を深めなければいけないと思います。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では倉重委員、お願いします。

〔 倉重委員 〕 このような長期推計が非常に重要なものだということは理解しました。そして、国・地方の基礎的財政収支黒字化の後は、債務残高の対GDP比の数字が非常に重要になってくるということも理解できました。

 ただ、何もしなかった場合の最悪のケースを先ほど富田さんがおっしゃっていましたが、計算上は600%になる。しかも先ほどおっしゃった200%を維持しようと思っても、5%程度改善しなければいけない。これは20、30兆規模の収支改善を行わなければいけないということを考えると、200%から600%の幅で現実には推移するのではないかという推測も出てくるのですが、この数字の意味をもう少しはっきりさせないと、その恐ろしさといいますか、インパクトが伝わってこない。

 債務残高の対GDP比が600%になると、財政はどうなるのか。現在でも我が国の債務残高の対GDPは200%を超え、他の先進国から突出した形で経済財政運営を進めているのですが、それだったら300%でも400%でも大丈夫ではないかと考える人もいると思うので、その辺のしっかりとした明確な中身、どのようなことが起きるのかということをまず我々は指摘しなければいけないと思うのですね。

 プラスアルファ、先ほど田中さんがおっしゃったように、どのようにして戦略的にこの数字を生かしていくのかを考えていく際に、国民に対して単にこの数字を出しても、ひどいなとは思いながらも、どうしたらいいかわからないわけですよね。それはやはり政治家に、先ほど小林さんもおっしゃいましたが、間接民主主義を通じた政治家、この財政状況の原因者であり、かつその解決手段を持っている政治家に専門的に議論してもらう場を、財審として進言されたほうがいいと思うのですね。

 例えば、参議院の特別委員会とかそのようなところがあるものですから、このデータがほんとうに荒唐無稽なのかどうかも含めて議論していただきたいと思いました。

〔 吉川分科会長 〕 富田委員、600%というのは机上という表現を使われていたと思うのですが、600%までビジネスアズユージュアルで行くということはあり得ないということですね。

〔 富田委員 〕 はい、私が知ります限り、ナポレオン戦争後の1815年のイギリスの債務残高の対GDP比が大体3倍ほどです。しかし、歳出のほとんどが利払費だったので、財政収支を均衡させると巨額の基礎的財政収支黒字が発生いたしまして、その100年後の1914年にはGDP比30%にまで削減されております。

 何が言いたいかというと、金利というものは何人たりとも1人の力で、それがスターリンであれレーニンであれ、決めることはできず、マーケットで決まるのです。

 戦前の我が国、日本国内におきましては10年国債の金利が3.5%ほどの水準で管理されていましたけれども、それは資本移動を完全に管理していたから可能だったのでありまして、資本移動を禁止して、どんどん日本銀行が買っていけば、金利は管理できる。日本国民が購入できるのは大日本製鉄か帝国窒素か日本国債でして、それらしか買えないわけで。しかし、そのときのロンドンのマーケットでは日本国債の金利というのは20%、30%、40%に上昇していくという形で、もう既に早い時期から破綻が読まれておりました。これはドイツの国債も国内では低く、自由なロンドン市場では高いということでして、やはり国債金利というのは管理できません。

 ですから、ここで債務残高の対GDP比が608%とか400%とか言いましたのは、全て机上の計算です。

〔 吉川分科会長 〕 少し待ってください。土居委員、遠藤委員。

〔 土居委員 〕 ありがとうございます。私も起草検討委員としてこの推計にかかわらせていただきまして、いろいろな含意を引き出すことができるのではないかと思います。

 もちろんそのメインの数字としては、おそらく資料7−1のA3の2ページのところにあるように11.94%という数字であり、この意味は重いということはあろうかと思いますけれども、先を見て今を考えるという立場でいえば、先ほど来、各委員からのお話を伺っていると、この数字に込められた意味を今すぐ足元でどう理解すればいいかということになると、なかなかすぐにいろいろなアイデアが思い浮かばないということであるならば、私自身の解釈として1つ考えられることは、試算マル1ということで11.94%という数字が出ていますけれども、試算マル2ということで、8.2%という数字があります。

 つまり今、安倍内閣で「中期財政計画」として2020年度までに国・地方の基礎的財政収支黒字化を目標に掲げており、仮にこれを達成できたとすれば、この11.94%という数値は8.2%まで下げられると、つまりこの収支改善幅が4%近く下げられるということではないでしょうか。足元の2010年代後半に、頑張って国・地方の基礎的財政収支の黒字化に向けて努力すれば、将来その分の恩恵が得られるということだというメッセージは1つ重い意味を持っているのではないかと私自身は思っております。そのような意味でも、2060年までにというお話になると、大分、遠い先のことに思いをはせなければいけませんけれども、2010年代の取組みとして何をすべきかということを考える上でのやる気の引き立て方といいましょうか、2020年代後半以降に必要な収支改善幅が4%近く下げられるということならば、今、2010年代後半に国・地方の基礎的財政収支の黒字化に向けて頑張ろうというものとしてもこの指標は使えるのかなと私自身は思っております。

〔 吉川分科会長 〕 遠藤委員。

〔 遠藤委員 〕 ありがとうございます。

 土居委員と全く意見が同じになってしまいまして、私も2020年度までに国・地方の基礎的財政収支の黒字化を達成すると、4%も楽になるというレトリックの使い方があるのではないかなと思いました。この数字自体は大変インパクトのある数字で、やはり投票行動に移る有権者の方々にもきちんと知ってもらうという必要性が十分にあるデータだと思います。

 それで今、経済産業省がOPEN METIというデータベースをつくっているのですね。これは民間のライゾマティクスというところがやっていまして、可視化データが非常にすばらしいものでして、情報プロジェクトで非常に見せ方がきれいなものになっているのです。

 それは、ネットを通じてばっと、政府のデータでありながら広まったという、一時期少し話題になって、タレントのPerfumeの演出なんかをするようなライゾマティクスという会社なのですけれども、これだけのデータがあって、いつもサイトを開くと財務省のデータは非常に手に入りやすくなって、数字的にはあるのですけれども、図表として可視化できるような工夫が何かあれば、もっと広まっていくのではないかと。

 それと可変の指数についても、ここは出生の高位、死亡高位みたいなものも出ていますけれども、例えばこれを社会保障でいじってみたらどうなのかとか、教育でいじってみたらどうなのかとかという自分で設定できるような変数があれば、もう少しファンシーなデータになるのではないかなと。それも1つの現代社会への知らせ方のツールかなと思っていまして、一応そのOPEN METIを、私もびっくりしたサイトでしたので、ご紹介させていただきました。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では、葛西委員、小林委員、田近委員。

〔 葛西委員 〕 この資料は大変有意義だと思います。これを生かす方法というのは、今、2020年度以降の収支改善幅というお話でしたけど、そのような形だと、もうまた来年の今ごろは忘れているということになると思うのですね。ですから何か直ちに具体的で分かりやすい行動を起こすのがいいのではないかという気がします。

 国鉄で、私が分割民営をやったときは、翌年から採用をゼロにするということと、設備投資をゼロにするということを打ち出しまして、これは分割民営ができるまでは継続されるという形で、出口を出たときが救われるときだというようにしたのです。

 そのようなことを、この国の財政の場でどのようにしたらいいかというのは専門家の方が考えるしかないのだろうと思うのですが、例えばシーリングというようなやり方はもうやめて、もっと戦略的・重点的に来年から何か優先順位をつけていくといった、具体的で分かりやすい形にしない限り、世論はすぐ問題を忘れてしまうというような感じがいたしました。

 以上、感想であります。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 小林委員。

〔 小林委員 〕 この推計を出すときに少し考えたのは、今後の予算編成、あるいはその仕上がり、それから決算とか、それらを見るときの1つの物差しになればいいなと。ここに届くようにするにはどうすればいいのか、結果としてこれがこの道筋に適合しているのかどうか、そのような物差しになればいいなということがありました。

 今後、ここに出てきた推計を、例えば毎年の決算のときに、何年の決算はこの推計に照らし合わせるとどうだったのだろうかというような落とし込みができるようになれば、1つの使い道として有効ですし、それを公表することで、国民に対しても今の日本の財政状況から見た今年の予算、あるいは何年のときの補正も含めた決算はこのような状況でしたということが明確になる、そのような推計になっていけばいいなと思っております。

 少し委員として感想を言わせていただきました。

〔 田近委員 〕 ごく手短に。倉重さんは、まずこのままでは発散してしまう、そして実際の狙い目みたいなものは、債務残高の対GDP比率が200%から600%の間かなといったことをおっしゃっていたと思うのですが、後で技術的なことは必要なら担当の方に説明していただくとして、このS2というものは、実質経済成長率2%、名目経済成長率3%、名目長期金利3.7%と据え置いたときに、将来的に債務残高の対GDP比がずっと安定していくには幾ら今の収支を改善しなければいけないかということで、実は債務残高の対GDP比が発散しないためには、置いてある経済的な予見で、250%を狙おうよとか、300%を狙おうよというのは、予見を変えなければいけない。

 それで、結果的にはこの予見のもとで最終的な債務残高の対GDP比も100%ぐらいなのですよね。

〔 堀内主計企画官 〕 今、大判で示させていただいていますものですと、S2の収支改善を行う場合、債務残高の対GDP比は2060年度以降には120%程度で安定します。

〔 田近委員 〕 ですから倉重さん、そのようなことなのです。

〔 富田委員 〕 今のことについて。それは「年齢関係支出」なども実際に推計しているのは2060年度までであって、そこから先がどのようになるかということは、出生率がどうなるかという影響も出てくるので、そこまで長いところまでは保証できるものではなくて、2060年度までのインプットデータで計算したら120%ぐらいだということなので、それほどS2を強く言えない。永遠の相の下でスピノザ的に大丈夫だというふうに言えるかというと少し難しくて、向こう50年間ぐらいの機械的な計算だということです。

〔 吉川分科会長 〕 では、永易委員、増田委員。

〔 永易委員 〕 非常にインパクトのある数字を見せていただきましたけれども、もちろん欧州委員会でも使われている数字ですから、これはものすごく意味のある数字だということは非常によくわかります。

 ただ、各委員の方が言われているとおり、変数を少し変えれば大きく変わります。特に金利などは少し変えればものすごく変わるでしょう。それで思うのは、この50年というサイクルは大事なことですよ。ただ、これが社会一般の人にとってどのような意味なのかと考えますと、欧州ではこうやっているから日本でもこれというのはいかがなものかという気がします。

 もしこのようなものを何か使うのであれば、同じような論法で、10年前、20年前から指標をとったとしたらどうなっていたか、そのときには何が悪かったのか、そのような分析もないと、将来的に50年後こうなりますよという数字は、インパクトはあるのですが、国民の心に届くような気がしない。

 それよりはむしろ今、言われている2020年度にここまでやるにはもう少し足りないのだけど、ここまで行きましょうという議論のほうがよほどみんなに伝わるのではないかという気がします。ただこのような数字が大事だということは非常にわかるので、過去形というのは少しお願いしましたけれども、常にこのような数字を持っていると、次、5年後、10年後にも非常に威力のある説得要因になるので、そのような使い方のほうがいいのではないかという気がいたしました。

〔 吉川分科会長 〕 どうぞ、富田委員。

〔 富田委員 〕 2007年にもこの欧州委員会の方法で我が国について推計を出しました。当時は2011年度までに国・地方の基礎的財政収支の黒字化を前提とし、「年齢関係支出」については、厚生労働省の受益と負担の見通しという数字を前提につくりました。

 結果がどうだったかということなのですけれども、厚生省の数字よりも、今回の推計のほうが対GDP比で増加幅が4%から5%大きいのです。しかも名目GDPの見通しは、リーマン・ショックのせいだということの説明が普通なのですが、随分、大きく異なります。それで5%ほど違ってきております。

 今のところは、先ほどの倉重さんのご質問もあったのですけれど、日本はまだ大丈夫だというのは、世界の投資家から見れば、まだまだ日本は消費税率の引上げの余地がある。それがアンカーになって、低い金利で推移してきた。そのことにずっと助けられてきたのだけど、ほんとうにやるのですかと。10%になった後、さらに2020年どうですかと、25年問題のときはどうですか、そのようなことが問われてくると思うのですね。

 ですからシャクトリムシみたいに2015年、2020年ということではなしに、やはり大局的にどうなのかを国民は知るべきだと思うのです。人間というのは見たくないものは見えないらしいのですね。そうではなくて、やはり我々は見たくないものも見ていく必要があると思います。

〔 永易委員 〕 おっしゃることは大変よくわかります。別に非難しているわけでも何でもありません。このような試みは非常に大事だし、ケースで把握していないと、定性的なことばかり言っても始まらない。ですからこの委員会でもいろいろな方策が出てまいりましたよね。このようなものがやはり一つ一つの効果として積み上げられてケースになってくるわけですよね。

 ですからそのようなものが非常に大事だということでありますので、過去のものがないのでこれは信用できないということを言っているのではなくて、説得性を持たせるためには、そのような示し方をしないと、将来、発散ですよという出し方は、決していい方法ではないのではないかということを申し上げただけです。

 そんなに意見が違っているわけではないと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では増田委員。

〔 増田委員 〕 時間が過ぎているようなので、簡潔に申し上げます。

 定量的にこうした分析をするのは極めて重要でありますし、中の前提条件も、極めて中立的に、例えば政府の方針に従った経済成長も実質経済成長率2%、名目経済成長率3%のような前提は、少し高いとは思うけども、極めて客観性の高いデータだと私も思います。

 一方で、そのことは今まで何人もご指摘されたように、このような数字を読み取る人も、正直、国民の中で少ないですし、それをうまく解説する仕方がきちんと洗練されてでき上がっているとは、なかなか思えない。したがって、この数字、データをどのように翻訳して伝えるかが極めて重要になると思う。これも皆さん方おっしゃるとおりだと思うのですね。

 財審ですから、定量的な議論は必ず必要でありますので、このような議論を連綿と積み上げていくことをこれからも私はやるべきだと思いますが、どうしても財審、あるいは財務省から出る数字というのは、偏見とは言いませんが、色メガネで見られるというのも、また一方の事実だろうと思います。

 ですから、こういったことは政府、これは中央政府、地方政府束ねて、両方が取りかからなければいけないことではありますが、今でいえば官邸といいますか、政府全体でこれを共有して、次の作業につなげていくような仕掛けがないと、財政を健全化することを、歳出を抑制したい財務省サイドが出した数字という、あえて言えば極めてうがった見方によって消し去られてしまうのではないかと。それを大変、恐れますので、少なくとも政府がここまで危機感を持って、総力を挙げてこの問題に取り組むというメッセージが伝わるような、そのような仕掛け、そのような場と、それからそれにふさわしいやり方、すなわち財政のこのような問題というのは、我々の一人一人の国民の生活をどうするかということによって大きく変わってくる部分もあって、これは今までの社会保障、当然、切り込むということを前提にはしていると思いますが、そのことがどう変わるのか、あるいは社会保障のみならず、ほかの部分の歳出を変えることが、それぞれの生活でどのように影響が出ているかという、そこの議論なしには最終的な財政健全化ということはできないと思います。

 これをやり始めると、とんでもない議論になることは重々承知していつつも、やはりそれに触れるような何かがないと、この議論は進んでいかないと思うのですね。次はやはりそのような工夫というか、せっかくここまで来たものが、今のままですと、これまでのようなインパクトしか与えないということを何か乗り越える方策は、やはり考えていくべきではないかと思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 では、予定された時間になりましたので、最後に政務官から。

〔 葉梨大臣政務官 〕 時間も過ぎておりますので、手短に私からもご感想を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、富田先生には、我が国の財政に関する長期試算、ほんとうにご労作ありがとうございました。またチームの先生方にも大変感謝を申し上げたいと思います。

 2020年度までの国・地方の基礎的財政収支の黒字化が極めて大切である、なぜならば、黒字化したから終わりではなくて、まさにそれから後のほうが大変だということを定性的にも、定量的にも非常にわかりやすく示していただきまして、ほんとうにありがとうございました。

 ただ政務の話が大分、出ておりますので、私の自重自戒も込めて申し上げますと、全部とは言いませんが、政治家の中には、一旦、閣議了解とかしてしまいますと、もうそれができたものだとあたかも思ってしまう方がいらっしゃって、飽きっぽいところがございます。実際問題として、この2020年度の黒字化についても、内閣府の試算を使わなければいけないところがあるわけです。現在、この10年間の潜在成長率は資本投資と生産性で、1.1%ほど上がったけれども、生産人口減がマイナス0.3%きいていると。内閣府の試算では、それを何とかこれから2020年度までに、資本投資と生産性向上で2.6%、女性を参加させることによって人口減によるマイナスを0.1%まで抑えようとしています。ただ、正直申し上げて、今、生産年齢人口の中で74%が既に働いておりますから、女性をどんどん参加、仕事させるといいましても、あと何年、どれだけ伸び代があるのか。それぐらいの危機感があるところなのです。

 ですから私も含めて、役所サイドとしてなかなか言うのはきついところがあるのですが、ほんとうに今の政府の試算でも相当高いレベルのところを言っているのだということを各政治家みんなが共有するような何らかの形の説得の手段というのも、インフォーマルな形でつくっていかなければいけないなと思います。

 その上で、2020年度の黒字化自体も極めて大きな作業だという認識を、そしてまた必要な作業だという認識を、やはり政治家の中でも醸成する必要があるかと思います。また、富田先生のこの数字も、内閣府の試算を使わざるを得ないところがあるわけですが、ほんとうに2060年度まで名目経済成長率3%、実質経済成長率2%が可能かどうかという問題があるわけです。これは我々が言える話ではありませんし、また先生方がおっしゃられる話ではないですが、人口は2050年になると約9,500万人になり、2060年になると約8,500万人になる。そのようなときに、今のGDPをほんとうに維持できるかどうかという、また別の問題が出てまいります。

 となりますと、この試算というのは、非常に楽観的な成長率に基づいても、これだけ大変な数字が出てくるのだというようなことも含めて、やはり国民にわかっていただくということが必要なことなのかなと。私どももまた政務として努力をしなければいけないなと感じます。

 前回、私は出席させていただかなかったのですけれども、前回の海外調査の説明を事務方から受けまして、また本日もお聞きかせいただきまして、大変参考になりました。先生方からも幾つかお話が出ておったのですが、私自身の個人的な経験で申し上げますと、昭和50年代の半ばに霞が関に入りまして、当時、中曽根行革の時代でございました。中曽根行革が始まりまして、平成元年ぐらいに何とか赤字国債の発行がゼロになりました。おそらくそのときの財政健全化は、海外の経済学者の方々が見たら、日本は自分で努力したというよりも、経済成長によって財政が健全化したという評価になったのだろうと思います。ただ、霞ヶ関の中におりました身からすると、シーリングが始まり、行革の臨調もございました。行革の意識というのは当時、様々な形で高まっていたということもまた事実だろうと思うのです。それを忘れてはいけない。

 また、私は2003年に初当選いたしまして、2006年の歳出・歳入一体改革にも携わらせていただきました。当初、小泉内閣が出てまいりましたときは、「聖域なき構造改革」で言う「聖域」とは、どちらかというとその前に景気対策で公共事業を増やしたことに、マスコミの焦点は行っていたのですけども、実際、2006年の歳出・歳入一体改革に携わってみますと、当時から社会保障以外の何物でもないということを感ずることができました。

 私もそのとき初めて知ったのですが、社会保障の自然増が毎年1兆円だと。ほんとうにそのような国が他にあるのだろうか。多分ないだろうと思います。やはりある程度、下世話に国民にもわかっていただくという意味でも、他の国において今、社会保障の自然増というような議論がほんとうにあるのだろうか、自然増というのがあるとしたら、大体どれぐらいの金額なのだろうかという観点で海外調査の資料を見させていただきますと、どうも日本と大分、違っているのかなと。

 ですから、そのあたりの説明の仕方も含めて、私自身も政務の立場として大変参考になりましたし、また勉強にもなりました。単に勉強するだけではなくて、しっかりと我が国の経済再生と、それから財政再建のために役立てる議論を、政治の立場としてもしていきたいということを申し上げまして、私からの感想と御礼のご挨拶とさせていただきます。

 ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 今回の春の審議は3月10日にスタートですが、総論、各論、海外調査報告等を積み重ねてまいりました。今後は取りまとめに向けての案文作成が必要になりますが、この案文をご検討いただく委員につきまして、前回お願いしました小林委員、田近委員、土居委員、及び富田委員に引き続きお願いすることにしたいと思いますが、この点、よろしいでしょうか。お認めいただければと思います。

(「異議なし」の声あり)

〔 吉川分科会長 〕 4先生には、今日のこの長期推計でも大変ご尽力いただきまして、引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、次回は5月19日15時から、この会議室で開催いたします。

 また、本日の会議の内容の公表につきましては、毎度のことですが、私にご一任いただき、個別に記者の方等にお話をすることのないよう、ご注意いただければ幸いでございます。

 時間、大分超過しました。申しわけありませんでした。

 では、散会といたします。

午後 4時15分閉会

財務省の政策