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財政制度分科会(平成26年3月28日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
平成26年3月28日
財政制度等審議会


 財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成26年3月28日(金)13:00〜16:03
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

1.開会

2.有識者ヒアリング
・「我が国の医療制度改革の方向性を考える」
 -松田 晋哉 産業医科大学医学部教授

3.事務局説明

4.閉会

配付資料
○ 資料1    「我が国の医療制度改革の方向性を考える」(松田教授提出資料)
○ 資料2    社会保障マル1(総論、医療・介護、子育て支援)
○ 資料3    社会保障マル2(年金、生活保護)
○ 資料4    参考資料

出席者

分科会長 吉川 洋           古川副大臣
愛知副大臣
山本大臣政務官
香川主計局長
福田次長
岡本次長
太田次長
大鹿総務課長
小宮調査課長
井口給与共済課長
窪田法規課長
堀田官房参事官
寺岡官房企画官
江島主計企画官
堀内主計企画官
余島主計官
阪田主計官
有泉主計官
宇波主計官
青木主計官
井藤主計官
新川主計官
土谷主計官
高村主計官
小野主計官
中村主計官
分科会長代理     田近 栄治  
 委員

井伊 雅子
井堀 利宏
碓井 光明
黒川 行治
古賀 伸明
竹中 ナミ
田中 弥生
土居 丈朗
富田 俊基
鳥原 光憲

 臨時委員

赤井 伸郎
板垣 信幸
遠藤 典子
老川 祥一
葛西 敬之
小林 毅
佐藤 主光
末澤 豪謙
十河 ひろ美
高原 豪久
永易 克典
増田 寛也 


午後1時00分開会

〔 吉川分科会長 〕 それでは、定刻ですので、ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様方にはご多用中のところご出席いただきまして、ありがとうございます。

 審議に先立ちまして、前回はご欠席されており新たに委員に就任いただきました高原委員にご出席いただいておりますので、一言ご挨拶を頂戴したいと思います。高原委員、よろしくお願いします。

〔 高原委員 〕 ただいまご紹介をいただきましたユニ・チャームの高原と申します。弊社は大人用の紙おむつで自立支援型の排泄ケアシステムを提唱しています。これが結果的に健康寿命の延伸につながり、現政権が推進している共生社会の実現につながると考えております。この様な取組みに関連して、本分科会の臨時委員にご指名をいただいたと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 本日は、各論として社会保障をご審議いただくことになっております。まずは有識者ヒアリングといたしまして、松田晋哉産業医科大学医学部教授よりお話を伺います。その後、休憩を挟みまして、事務局より説明をしていただきます。

 なお、本日ご欠席の岡本委員より意見書を提出いただいております。皆様方のお手元にお配りしております。

 それでは早速、「我が国の医療制度改革の方向性を考える」といたしまして、松田晋哉産業医科大学医学部教授からご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

〔 松田産業医科大学教授 〕 産業医科大学の松田でございます。今日はこのような機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。今日は、私が今までやってきた研究等をもとにして考えていることを少しお話しさせていただきたいと思います。

 テーマは、ここにありますように「我が国の医療制度改革の方向性を考える」ということで、2つのことをお話ししたいと思っております。1つは欧米の医療制度改革の動向、もう1つは医療の情報化の2つということであります。ここに書いてあることが今日の2つのテーマになります。

 まず最初に、欧米の医療制度改革の動向と我が国への示唆ということを少しお話しさせていただきます。私自身は、1991年から92年にフランスに留学しまして、向こうのフランスの保健省で医系技官の見習いということをやっていました。そのときにちょうど欧州全体でいわゆるEUになったときの社会保障制度をどうするのかということが議論になっておりまして、その調査を担当させていただきました。そのときのことがベースになって今までずっと特にヨーロッパのことを調べておりますので、それをベースに少しお話をさせていただきたいと思います。

 まず医療費の対GDP割合でございますけれども、アメリカが18%ということで、それに次いでデンマーク、フランス、ドイツが12%、日本はスウェーデン、イギリスと並んで10%前後ということで、欧米の中では対GDPの割合が低いということになっています。

 最近こういう中でいろいろな国でいろいろな制度改革が行われているのですけれども、まず最初に今日お話ししたいのは、アメリカの医療保障の改革でオバマケアというものが今話題になっております。そもそもこのオバマケアとは何かといいますと、アメリカには無保険者が4,700万人ぐらいいる。アメリカの場合、基本的に多くの人たちは民間保険を購入して、それで医療保障を受けるという形になっていて、それ以外に、高齢者がメディケア、貧困者がメディケイドということです。メディケイド、日本でいういわゆる生活保護に近いものですけれども、それに落ちるほどではないけれども、いわゆる民間保険を購入できないような人たちが無保険者という形で、4,700万人ぐらいいたわけであります。民主党政権はこれを何とかカバーしようということで改革を行ってきたわけです。

 もともとのアメリカの医療保障は民間保険による保障になります。これはどういうものかといいますと、アメリカでは民間保険が医療保険を商品として販売しています。ただ、この内容は、どのような薬がカバーされるのか、あるいはどのようなところまで医療保障をやるのかによって値段が違います。それから、ご本人がどのようなリスクを持っているのか、具体的には喫煙とか、あるいは妊娠可能年齢の女性がいるとか子供がいるとなるとそれだけ保険料が高くなります。そういうものを買ってサービスを受ける形になるわけです。ただ、ここで多くの場合誤解があるのですけれども、企業に勤めている社員の場合、多くはこれが福利厚生の一環として提供されています。それに入っていない人たちは、自分たちで保険料を払って民間のサービスを買うという形になります。

 実際に民間保険に入った場合に患者さんがどのような動きをするかというと、日本のようなフリーアクセスはほとんどの場合、保障されていません。まず最初に、民間保険会社が契約している一般医にかかって、その一般医の紹介がなければ病院にかかれないという仕組みになっています。民間保険から一般医に対する支払いは、多くの場合は人頭制といってキャピテーションになります。要するに、1人当たり年間幾らという予算が決まっていて、そういう形で収入をもらうわけです。多くの場合、これに出来高払いも組み合わされます。アメリカは自由市場の国でありますけれども、医師・患者関係においてはかなりゲートキーピングがやられているという特徴があります。

 病院の場合にはこういう紹介がないと受診することができないのですけれども、ここに対する支払いは、日本ではDPCと言われていますけれども、アメリカではDRGという、いわゆる1入院当たり包括払いという形で支払いが行われます。

 これがアメリカの保障なのですけれども、ただ、多くの場合民間保険でやっていますので、やはりプロフィットを上げなければいけないということで、マネージドケアというものが入っています。医療の質に配慮しながら、なるべく患者さんが医療を使わないようにしようということを制度の中に入れているわけです。

 具体的にどんなことをやっているのかといいますと、支払者・HMOが中心になりますけれども、ここがまずサービス提供者を指定します。日本のようないわゆるフリーアクセスではないわけです。そこに対する支払いは人頭制で、多くの場合はサービス提供者のうちファーストコンタクトをとる人は、一般医になります。日本で今議論されている総合医のようなものです。まずそこにかかって、入院が必要であるという場合だけ病院のほうにかかることができるという形で、いわゆるゲートキーピングがやられています。

 それから、次のPBMは、Pharmacy Benefit Managementというのですけれども、日本のように保険収載されれば全ての薬が使えるわけではありません。要するに、保険者によってカバーしている、採用している薬が違います。これはフォーミュラリーといいますけれども、そういう形で、必ずしも日本でやられているような全ての医療がアメリカの場合には提供されているわけではありません。

 それから、利用調査といいまして、実際に個々の先生がどういう医療をやったのかということが調査されます。過剰な医療をやっているとか、過少な医療をやっている場合にはペナルティーがとられるということになります。

 それから、サービス提供に関しましても、ケースマネジメントとかクリニカルパスという形で、なるべく標準的な治療をしようということがやられています。

 あとは、代替治療の紹介とかいろいろ書いてありますけれども、アメリカでは最初から医療機関にかかることはできません。多くの場合、電話をかけて、そこでいわゆるスキルナースがいるのですけれども、看護師さんにまず相談をして、それだったら売薬で少し我慢してくださいとかいろいろなことをやりとりしながら、患者さんがなるべく医療にかからないような形でマネージするということがやられています。ただ、これは1990年代に大きな問題になりました。行き過ぎた介入によって医療アクセスを阻害してしまったために、普通であれば受けられる医療を受けられなかったために、死亡者が出たりとか、あるいは合併症が非常に重くなってしまったということがありましたし、それから、管理コストがすごく高くなるということで、最近これは少し見直しがかかっています。

 こういう状況の中で無保険者もいるわけですけれども、オバマは何をやったのかというと、無保険者に対して、まずメディケイドという従来貧困者向けにやっていたサービスを少し拡大するということをやりました。それからもう1つは、医療保険ExchangeというExchange市場をつくりまして、全ての従業員あるいは全ての国民、あるいは国民を雇っている企業に何らかの形で医療保険を購入し提供するということを義務づけたわけです。

 では、医療保険Exchange市場とは何かといいますと、インターネット上で、自分がどういう家族構成で、どういうプランを望むのかということを入力していくと値段が出てきて、それを選ぶということができるということであります。ただ、アメリカの場合、このようにいろいろな保険がありまして、給付範囲は自分がどのような保険に入っているのかによって違っているという、非常にアメリカ的な仕組みになっています。

 その対極にあるのが実はイギリスの仕組みです。イギリスはどういう仕組みであるかというと、これはベバリッジが1945年、終戦時に導入したものですけれども、全ての医療をいわゆる国の責任で税金に基づいて提供しようというもので、これはNational Health Serviceといいます。サッチャーが出るまでのイギリスの仕組みというのは、政府から地方に予算が行って、地方保健局の中に、家庭医、病院のネットワークができていて、ここが予算でマネジメントされるという仕組みでありました。医療は基本的に無料です。そのかわり、最初から病院のサービスを使うことはできません。まず最初に、アメリカのHMOと同じように自分が登録している家庭医の先生にかかって、そこで紹介された場合に限って病院に行くという形になります。

 ただ、これにはいろいろな問題がありました。どういう問題があったのかというと、過少サービスの問題です。やはり予算が限られているために、緊急性のない手術がどんどん先送りにされてしまって、例えば白内障の手術を受けるのに1年2年待つのは当たり前という状況が生まれてしまいました。もともとこれは予算でやっているために、医療の質を高めるインセンティブとか効率性を高めるインセンティブがないということで、これでいわゆるサッチャー改革が行われたわけです。

 では、サッチャーは何をやったのかといいますと、実は2つのことをやっています。1つは、医師と病院を切り離しました。医師に関してはもともとはGPだけだったのですけれども、GPと看護師さんとかソーシャルワーカーの人たちも含めてプライマリーケアグループというチーム医療の組織をつくっています。このプライマリーケアグループに予算を与えて、このプライマリーケアグループ、具体的にはGPですけれども、この人が患者さんのために病院のサービスを買うという、いわゆる内部市場の仕組みをつくったわけです。

 これによって、病院は病院間で効率性と価格の競争をやるという仕組みを導入したわけです。今までは全部予算でやられていたのですけれども、病院ごとの医療費のコスト計算をやりまして、いわゆる対照コスト表という標準価格をつくりまして、これをベースにして病院間が価格と医療の質で交渉するという競争の仕組みを導入したわけです。その情報に基づいて、プライマリーケアグループのドクターが患者さんのために病院を選択する。そうすることによって病院間の競争を惹起して医療費を効率化させようということをやろうとしたわけですが、実際には期待された競争は起こりませんでした。

 これにはいろいろな理由がありまして、イギリスには日本のようにたくさん病院があるわけではありませんので、患者さんとしては近くの病院に行きたがるということもありまして、なかなかうまくいきませんでした。あとは、管理コストが増大したということがあります。ただ、サービス量は増加しました。このように、イギリスの場合には、部分的に市場主義的な改革によってサービスの向上を図ろうとしたのですけれども、この効果は部分的にしかならなかったということであります。

 次に、最近よく取り上げられるフランスの医療保険制度についてご説明したいと思います。フランスの場合は、日本と同じように、職域の健康保険をベースにしています。全ての国民は、自分が所属している企業、あるいは自営業者の場合はノンノンという仕組みがあるわけですけれども、そこに保険料を払います。

 その保険料に基づいてサービスが提供されるのですが、ここで日本との違いが2つあります。1つは、日本の場合には、第三者支払いといって、患者さんが医療機関にかかった場合にはそこで一部自己負担を払うだけで、残りは医療機関が保険者に請求するのですけれども、フランスの場合は償還払い制ですので、一旦ここで全額の支払いを行います。それで、患者さんの責任で保険者に償還を求めるという形になります。ここは日本と違うところです。それからもう1つ違うところは、自己負担分を補填するための実は補足保険制度があります。これは非営利の共済組合団体がやっているのですが、多くの場合は企業の労働契約の中で提供されるのですけれども、自己負担分を補填する、いわゆる非営利の保険制度も発展しています。

 フランスの制度は、ジュペプランという1996年のものが基本になるのですが、経済が悪くなってきて、失業者もふえてきて、被保険者の保険料という形で財政を賄っていくことがなかなか難しくなってきました。一方で、高齢者がふえてきて、年金ももらっている。それから、フランスの場合には、働いてはいないのですけれども資産収入がある方たちがかなりいらっしゃいます。

 そこ、今までは保険料をいわゆるサラリーからとっていたのですけれども、それをやめて、国民が資産収入も含めて1年間幾ら稼いでいるのかということをベースにして、これを一般福祉税という税金の形で被保険者の保険料をとるという仕組みに変わっています。そういう意味で、ここの部分でイギリスに少し近いような、部分的に税金に基づいた仕組みになっています。

 企業は相変わらず保険料を払っています。この全体の保険料は、日本との比較でいうと大体18%ぐらいになります。一般福祉税部分で被保険者がサラリーの6%ぐらい払って、企業が12%ぐらいを保険料として払うということになります。これが高過ぎるということで、今、フランスは国際競争力が少し落ちているという問題があります。

 あとは、フランスの場合には、外来医療に関しては従来出来高払いが原則でした。しかも、日本と同じようにフリーアクセスです。患者さんはどの医療機関にもかかっていい、病院、診療所にかかわらず、あるいは診療所ではどの先生にもかかっていいということが原則でありました。ところが、いわゆるドクターショッピングがフランスにおいても医療費が膨らむ大きな原因だということで、改革が行われてきているわけです。これについては後ほどお話をしたいと思います。

 それから、ドイツです。ドイツは日本の制度のもとになったものなのですけれども、なかなか難しいところがあるのですが、2点だけ申し上げます。1つは、ドイツの場合には州単位で医療保険が賄われているということです。州単位で州の保険協会という保険者の集まりと医師組合との間で協議を毎年やって、いわゆる上限価格つきの出来高払いという形で支払う。これはどういうことかといいますと、あるところまでの予算みたいなものがあって、その上限を超えてしまうと、今まで1点10円だったものが1点9円になるという支払い方式になります。いわゆるフローティングポイントというやり方をとっています。

 もう1つは、アメリカと同じように、保険者を競争させることによって医療費の適正化ができるのではないかということで、今、ドイツでは住民がどの保険者に入るかを選べるようになっています。医療保険者間で競争させることによって、医療費全体を適正化しようということを試みています。

 今、世界的にも一番注目されている国が実はオランダであります。オランダはかなり社会実験をやっていまして、オランダの仕組みは世界中の医療保障の研究者が注目して研究をしているものです。これはどういう仕組みかといいますと、オランダの場合は、医療保険を基礎的保険と任意医療保険に分けています。基礎的保険は国が定めているのですが、定額保険料と収入に応じて払う保険料で賄うもので、いわゆる一般的な医療はこれで賄われます。それに加えて、アメニティーとか医師を指名する権利とか、そういうものを持った保険をオプションとして各保険者が提供します。このオプションのところで競争させることによって、国民が保険者を選ぶということにしています。それから、保険者間でクリームスキミングといったことが起こらないようにするために、リスク構造調整をやっています。

 オランダの仕組みはなかなかおもしろくて、これは、Managed Competitionというのですが、まず例えば病院の支払いに関していいますと、国が定める公定価格の上限があります。例えば虫垂炎の手術でしたら幾らという価格の上限があります。その価格を上限として、医療保険者が医療提供者と価格交渉をするという仕組みが導入されています。例えば国が定めている虫垂炎の手術の値段が100万円だったとします。ところが、ある医療保険者は、これを病院と交渉することによって80万円で提供する、ある病院は90万円で提供すると、そういう形で医療保険者の間で価格を交渉する。その情報に基づいて被保険者とさらに契約を結ぶという形で競争をやっているという仕組みが導入されています。これは価格を管理した上で競争させる、Managed Competition、管理競争という仕組みになっています。

 あとは、オランダにおける特徴として、ゲートキーピングがやはり入っています。これはどういうことかといいますと、イギリスやアメリカのHMOと同じように、患者さんが自由に医療機関にかかることはできません。自分が登録している先生にまずかからないといけない。病院にかかる場合にはその先生の紹介がないとかかれないという、こういう仕組みをとっています。

 これを、少しまとめてみますと、欧州では実は1970年代からかなり医療財政が厳しくなっていまして、経時的にいろいろなことをやってきています。第1期が大体70年代から80年代ですけれども、このときにはマクロレベルで医療費を抑制しようということで、例えば病院の総枠予算制とか、あるいは医療計画で病院建設や高額医療機器の制限をやっています。それから、医師収入の抑制、医師教育体制の再構築ということで医学部定員をかなり削減しました。しかし、これはなかなかうまくいかなかった。

 第2期になって、今度は予算制の弊害、具体的には長い入院待ちの問題が出てきましたので、ミクロレベルでの効率化をやろうということで、このときにサッチャー、レーガンのやり方になりますけれども、市場主義的な競争を入れよう、あるいはマネジメント改革をやろうということをやってきました。これは行き過ぎた部分もありました。

 1990年代になると、今度は優先度設定ということをやり始めています。これは、この時期にいわゆる情報技術が急速に進歩しましたので、それぞれの医療提供主体がどのようなサービスを提供しているかということがかなりわかるようになってきました。それに基づいて医療サービスを合理化するということをこの時期にやっている。この時期に特に入ってきたのが医療技術評価です。例えば新しい薬が入ってくる。これがほんとうに幾らの価値があるのかということを評価して値決めをしていくという仕組みが、特にイギリスのNICEというところを中心に入ってきて、これがオランダやフランス、ドイツにも広まります。これが大体1990年代になります。しかし、これもなかなかうまくいきませんでした。

 2000年代以降は、どこの国でも、高齢化の問題と失業者の増大のために、社会保障制度のサステナビリティーが非常に大きな問題になってきました。その中で、質の高い医療を提供することで医療費が適正化できるという内容の文献、研究がかなり出てきて、医療保障の質保証をやっていこうと。これは背景には消費者主権主義的な運動もあります。その中で、Value for moneyという考えが出てきまして、Valueを測定するために医療の可視化を進めようということが随分進んできています。

 それから、もう1つこの時代の大きな流れとして、後でご説明しますけれども、コミュニティケアとか代替政策、それから、緩やかな総額管理、これは支出目標の設定ですが、こういうものがいずれの国においてもとられるようになってきています。

 まず代替政策をご説明したいと思います。これはSubstitutionといって、一番最初に1987年のオランダのデッカープランで提案されたものです。これは何かというと、今まで入院医療でやっていたものを外来医療へ、それから、専門医が診療していたものをプライマリケアへ、医師によるプライマリケアから看護職によるプライマリケアへ、長期療養型医療施設から福祉施設、そして、在宅ケアへというように、サービスの質を落とすことなく、より費用効果的なサービスに利用者を誘導していこうというプログラムです。これが今のヨーロッパにおける医療政策の1つの大きな柱になっています。

 例えばどんなものがあるかというと、やはり入院医療がどこの国でも非常に高くつくということで、フランスでは在宅入院制度が始まっています。これはすでに1971年から入っているのですが、特に最近高齢化が進んだことでかなり拡大してきています。これは、従来入院でやっていた医療を、患者さんの家のベッドを病院のベッドとみなして、患者さんの自宅で入院医療をやろうという仕組みです。提供されているサービスは、化学療法とか抗生物質投与とか、日本でいうといわゆる一般病床や療養病床でやられているものが中心になります。これによって病院の医療費を削減しているわけです。これは日本にとっても非常に大きな示唆があるのですが、これは後ほどまた触れたいと思います。

 それからもう1つは、やはりコミュニティケアです。これは生活圏域でプライマリケアを中心とした総合的な医療介護サービスを提供しようということです。これは、高齢化が進んできて、医療と介護を別々に考えることに、もう無理がきている。高齢者はいろいろな医療ニーズを持っているわけですので、その人たちに総合的なサービスを提供するということで、総合診療医を中心としたかかりつけ医と、それに訪問看護・訪問介護が組み合わされたサービスを在宅でやっていくと、こういう仕組みが進みつつあります。

 この過程で家族とかコミュニティの役割がもう1回かなり見直されています。今までインフォーマルケアと言われていたものをセミフォーマルケアという形で、ある程度ペイドワークにしていこうということが行われています。これは、例えば在宅にいる高齢者の方が自分の配偶者あるいは自分の親戚をいわゆるケアワーカーとして雇うことができる。それに対していわゆる保険者からお金が払われる。そういう仕組みが入ってきて、要するに、家族をいわゆるケアラーに育てていこう、それに経済的にインセンティブを加えていくということが行われています。これもいわゆる代替政策の一環であります。

 それからもう1つ最近言われているのが、本人の役割の重視です。セルフケアをもっとやりましょうということが言われています。これはセルフメディケーションということになります。ただ、何も知識がない人にセルフメディケーションと言ってもだめです。例えばイギリスの場合にはグループプラクティスが中心になるのですけれども、イギリスの一般医の診療所は、日本のように1人の先生が1人で開業しているわけではありません。大体、4人ぐらいのGPと1人の看護師がコンビになってグループ診療をやっています。その中で、そこにいる看護師さんがいわゆる療養上の健康教育をやる、そういうことでセルフケアを支えるようになっています。

 あるいは、フランスでは、日本のような門前薬局ではなくて、それぞれの住民がかかりつけ薬局を持っています。そこで大体どういう薬を飲んでいるかということがトータルで管理されていますので、そこで健康教育、セルフメディケーションに関する教育をするという、そういうサポート体制がとられています。

 それから、全体をコーディネートする組織がつくられるようになってきます。例えばこれはフランスにおける保健ネットワークですが、従来、医療と保健、福祉がばらばらに提供されていた。その結果いろいろなサービスが重複されているということもあり、それではいけないということで、日本でいうと大体中学校区に1カ所、保健ネットワーク事務局がつくられています。そこには、医師、看護師、ソーシャルワーカー、PT/OT、臨床心理士が勤めていて、そこに疾病金庫、日本でいう保険者、それと自治体から予算が来て、そこで総合的なサービスを必要とする人のためのケアプランをつくって、それに必要なサービスを張りつけるという総合的なサービスを提供するという仕組みが始まっています。Réseau de la santéというのですけれども、今、このネットワークそのものに実はお金がつくという形で動いています。日本でいう地域包括ケア体制をどのように考えるかということに関して非常に参考になる取組みだろうと思います。

 それからもう1つは、アメリカでもPatient centered Medical Homeというものが今あります。Medical Homeと書いてありますけれども、家ではありません。これは何かというと、ネットワークです。要するに、患者さんを中心にして、その人に、開業医、それから、看護師さん、PT/OT、ソーシャルワーカー、そういう人たちがグループをつくってネットワークをつくります。そのネットワークで例えば複合ニーズを持った高齢者の治療をやるわけです。今、このネットワークに対して保険者が認証して、このネットワークに対して支払いを行うという、そういうグループプラクティスを支援するような仕組みができています。

 これは、カナダの家庭医グループというものが1つの参考になっています。これはどういう仕組みかといいますと、カナダも日本と同じように1人の先生が1人で開業するというソロプラクティスが中心だったのですけれども、ソロプラクティスだとなかなか総合的な医療ができません。地域の急性期病院がハブ診療所をつくって、OSCARという共通の電子カルテ、これは無料の電子カルテなのですけれども、これで診療所間をつないで、グループで患者さんを診る。グループで看護師さんを雇って包括的な医療をやっていこうという仕組みがつくられています。こういうネットワークに対して診療報酬がつくという仕組みができているのですけれども、これも非常に参考になる仕組みではないかなと思っています。

 それから、いろいろ飛びますけれども、こういう過程の中でどこの国でも今こういうことがやられるようになってきているわけですが、まず、予算制はどうしても年度末に医療費が足りなくなるとか、あるいは先に使ってしまう人が出てきてしまうということでなかなかうまくいきませんでした。ただ、そうはいっても、どのぐらい医療がかかるのかということの推計がなければ政策はできませんし、医療費の適正化策の効果をはかることもできません。

 例えばフランスの場合には、1990年代に医療の情報化が非常に進みましたので、その情報をもとにして次年度各部門ごとにどのぐらい医療費がかかるのかということを推計して、それを国民議会で議決して医療支出目標として決定するということをやっています。これがずっとモニタリングされていまして、これを大幅に超えることが予想されるときには、例えば疾病金庫の理事長が、もう少しジェネリックを使うようにしようとか、いろいろな抑制策を提案することができるような仕組みになっています。

 フランスにおけるもう1つのポイントは、かかりつけ医制度の導入です。フランスには従来、医師を選ぶことの自由というフランスの開業医が非常に大切にしてきた原理があります。ただ、これが患者さんのドクターショッピングを誘発しているということで、これを改善しない限りなかなか医療費の適正化は難しいのではないか、あるいは医療の質の評価も難しいということで、フランス政府はずっとこのかかりつけ医制度を導入しようと試みてきました。実際にはこれはずっと失敗してきているのですが、2004年のブラジ大臣のときに成功しました。

 彼は何をやったのかというと、16歳以上の全ての国民にかかりつけ医を持つことを義務づけました。かかりつけ医を経由して例えば専門医、あるいは病院にかかった場合には、この専門医に患者は協定価格を払えばいい、いわゆる公定価格を支払うだけで済むという、そういう仕組みになっています。ところが、もしこの患者さんがかかりつけ医をバイパスして最初から専門医や病院にかかってしまうと、国が定めている価格以上の請求を専門医の人がしていい、いわゆるペナルティー的な支払いを求めるという仕組みをつくりました。これはいわゆる患者による医師の選択の自由を阻害していません。それから、かかりつけ医に選ばれるのはGPであっても専門医であってもいいということもありまして、医師会、患者もこれを了承し、これが現行制度になっています。こういう緩やかなかかりつけ医制度が今フランスで導入されている仕組みになります。

 以上をまとめてみますと、医療制度改革の動向なのですけれども、両極端にイギリスとアメリカがあります。イギリスは税金が基本で、民間保険がこれを補足しています。アメリカは民間保険が基本で、税金によって下支えをしています。この間にフランス、ドイツ、オランダがあるのですが、オランダは急速にアメリカのほうを向きながら、マーケットに基づいた改革をしようとしています。フランスは逆に、保険料に基づいてやっていくということが、やはりこれだけ失業率が高くなってくる、あるいは高齢化が進んでいるということで難しくなってきて、むしろ税金によって医療費を賄うという方向に動きつつあります。ドイツはどっちつかずでうろうろしています。ただ、イギリス自体も、税金を基本にしているのですけれども、効率性を高めるためにかなり市場主義的な手法を取り入れていますので、マネジメントの手法としてはイギリスもアメリカの手法を学びつつあると、このような形でだんだん真ん中のほうに来ているというのが今のヨーロッパの状況です。

 近年の欧州の医療制度改革の特徴ですけれども、責任化原則ということが言われるようになってきました。政府、保険者、医療提供者、被保険者・家族・国民、それぞれが何をしなければいけないのかということがかなり明確に議論されるようになってきています。

例えば保険者ですと、財政の健全化、アクセスの保障。

 次の医療提供者に対しては、やはり質の保障と効率化をきちんと求めるということがどこの国でも言われるようになってきています。例えばその極端な例がアメリカのペイ・フォー・パフォーマンスです。パフォーマンスのいい医療提供者に対してはより多くの支払いをしましょうという仕組みです。ただ、それができるためには、情報を標準化して、それを透明化しないといけませんので、そういうことが進んできています。

 それから、被保険者・家族・国民に関しては、きちんと保険料を払うこと。その中でアメリカやオランダ、それから、シンガポールで導入されているものとして、Medical saving accountがあります。これも非常におもしろい仕組みでして、医療費の支払い、医療費の自己負担を目的として強制的に貯蓄をさせるという仕組みです。アメリカは特にこれを採用しているのですけれども、いわゆる免責制度があります。最初の100万円までは自己負担が生じるというものですけれども、その自己負担を払えるようにするために、強制的に医療費の自己負担のための貯金をさせるという、Medical saving accountというものも入ってきています。

 日本でもこういう仕組みを議論することが最近多いのですけれども、やっぱり歴史的視点が欠けた制度論は誤りやすいということに注意が必要だろうと思います。各国の医療制度には歴史的理由がありまして、それは理念に裏打ちされています。ドイツ、フランスは職域連帯ですし、イギリスは地域連帯です。アメリカはそもそもピューリタン革命で、ピューリタン、清教徒の移民によってできた国です。国を信用しない、個人の自立があるわけですが、それぞれの成り立ちが違いますので、それぞれの国でやられているものをすぐに日本に入れられるわけではない。

 あともう1つ、Physician feeとHospital feeの分離という話が日本でもよく言われるのですけれども、日本の場合にはこれは難しいだろうと思っています。なぜかといいますと、欧米の病院はもともと箱物であるわけです。もともとは教会が経営していた、いわゆる貧困者とか、あるいは行き場のない高齢者を収容する施設として欧米の病院は発達しています。そこに、外部の自由開業医である専門医が契約に基づいてそこを利用するということが一般化してきましたので、Physician feeとHospital feeが分離できます。日本の場合にはもともと診療所の発展系として民間病院、医者の教育を目的としたいわゆる公的病院という形で発展していましたので、もともとが病院の勤務医、ホスピタリストとして発展してきましたので、その中でPhysician feeとHospital feeを分離するというのは少し難しいだろうと思います。ここは少し間違えないようにしたほうがいいのかなと思っています。

 ここまでをまとめますと、欧米の医療制度改革を見ると、やはりどこも医療・介護サービスを総合的に提供する、そのために総合診療医をつくっていくということが入ってきています。それからもう1つは、代替政策です。今まで医者がやっていたもので看護師がやれるものは看護師に、医療がやっていたもので福祉に回せるものは福祉に、それから、介護職の方がやっていたものでもし家族がやれるものがあるなら家族に、入院から在宅へという形で、代替政策がかなり進んできています。この流れから日本が学ぶべき点もあるのかなと思います。

 それから、今これだけ財政が厳しくなってきている以上、ある程度支出目標みたいなものは設定しないといけないだろうと思います。それがなければ、いろいろな政策の効果も評価できません。そういう意味では日本もNational Databaseとかいろいろなものが出てきて、大体どの領域でどのぐらい医療費がかかるかということを推計できるような情報基盤はできてきていますので、そういうものも目標値として入れるということはこれから考えなければいけないのではないかと思います。ただ、そのためにも、医療・介護情報の活用が必要だろうと思います。

 2番目が今日の一番お話ししたいことなのですけれども、では、情報化はどうするのかという話をさせていただきたいと思います。

 いろいろなことが言われているのですけれども、実は日本には非常にすぐれた情報がたくさんあります。例えば日本のレセプト、医療機関が保険者に出す請求書をレセプトといいますけれども、このレセプトは非常にすぐれた情報源です。まずは何がすぐれているかというと、日本のレセプトには、レセプト病名という問題はありますけれども、まず病名がきちんと書かれています。これは当たり前のように思うかもしれませんけれども、フランスのレセプトには病名が記載されていません。これは個人情報だということで入っていません。ただ、日本はレセプトに病名が入っています。加えて、日本は出来高払いをベースにつくってきましたので、この患者さんにどういう医療行為が行われたのかということが薬も含めてわかるという非常に細かい情報源になっています。しかも、2年前の改定によって、それをいつやったのかが日単位でわかるということになっています。

 これだけのデータが、病院は99%、調剤薬局も99%、診療所も95%が電子化されて、標準化された仕組みとして集積されている。実はこれだけの細かい医療情報のデータを持っている国は日本以外ありません。ところが、こういう貴重な情報があるにもかかわらず、日本はこれが活用されてきませんでした。その理由は、情報は標準化されているのに、それを活用する仕組みは標準化されてこなかったからです。これを変えなければいけないということで急性期病院のほうでやってきたのがDPCというもので、そのDPCを活用したいろいろな情報化の技術をつくって、全てのレセプトを電子化したものがNational Databaseになります。繰り返しますけれども、日本には非常にすぐれた医療情報があります。ただ、それがこれまで活用できてこなかった。これをどのように活用するかということが、これから一番考えなければいけないことだろうと思います。

 この辺は簡単に行きたいと思います。DPCとは何かといいますと、レセプトで上がってくる情報は非常に複雑です。量がたくさんありますので、それを簡単に病名と行われた医療行為の組み合わせでグループに分けてしまおうと、これがDPCの考え方です。例えば胃の悪性腫瘍、開腹胃全摘術という形で患者さんをグループに分けるわけです。このように単純化することによって情報の使い勝手がとてもよくなります。

 ただ、単純化はしているのですけれども、日本のレセプトには病名が入っています。それから、Eファイルといってコストデータも全部入っています。それから、Fファイルといって、いつ何をやられたのかという、非常に細かい医療行為の情報があります。こういうものを組み合わせることによって、医療費の中身あるいは医療のプロセスを分析することが可能になるわけです。

 これは少し飛ばしたいと思いますけれども、このDPCという枠組みが入ったことによって、急性期病院に関しては9割以上の医療行為がもう目に見えるようになっています。

 では、これをどのように使っていくのかということでこの4つを例に少しお話をしたいと思います。まず1つ目が、DPCとNational Databaseを用いた医療資源の適正配分の議論です。今、私たちは、厚生労働省のほうで研究費をもらって研究をやっています。これは何をやっているのかといいますと、地域医療ビジョンが今度走るわけですが、その枠組みの中で医療資源をどのように適正配置していくのか、そのための方法論を考えるということをやっています。DPCデータを用いて救急とがんの診療体制を把握して、National Databaseで実際どのようになっているのかを見て、それにいろいろなシミュレーションを組み合わせて、各地域ごとに、領域ごとにどういう問題があるのかを可視化していくということをやっています。これを少しお話ししたいと思います。

 福岡県でいろいろとやらせていただいているのですけれども、福岡県にはいわゆる医療を提供する基本的な単位として二次医療圏が13あります。その中で京築医療圏をベースに例としてお話ししたいと思います。この京築医療圏というのは、福岡県の中では医療提供体制が少し弱いところです。交通の便も少し悪いところです。ここをずっとお手伝いしていますが、例えばNational Databaseとかレセプトとかそういうものを使って何ができるかということをお話ししたいと思います。

 まず厚生局に行きますと、どこにどういう医療機関があるかが全部わかります。これをマッピングすることによって、医療資源の現状の配置が把握できます。

 ここから、MDCについて少し説明させていただきます。DPCでは全ての患者さんをコードに分けるのですけれども、その上の二桁がどの領域の病気であるかということを示しています。これを主要診断群、MDCといいます。関心のあるところだけ見ていただけたらいいと思うのですけれども、例えば01というのは神経疾患で、脳梗塞みたいなものはここに入ってきます。

 まずこのDPCのデータを使いますと、この圏域、周辺の圏域も含めて、どこの病院が何をどれだけやっているかということがわかります。例えばこの京築医療圏では、新行橋病院と小波瀬病院があるのですが、この2つの病院で年間で大体6,000件強の入院医療を提供しています。ここで1つポイントになるのは、見ていただきますと、全ての色が出ていますので、とりあえず全診療科対応の入院医療ができているということがわかります。

 同じように救急を見てみますと、2つの病院で大体2,000件強の救急をやっていて、M12が産婦人科なのですけれども、産婦人科を除けばほとんど全ての救急をやっていることがわかります。要するに、ここでわかることは、京築医療圏のこの2つの病院で救急医療はきちんとそれなりに全科対応できているということがわかります。ただ、問題は、それがボリュームとして十分なのか。

 これをNational Databaseで把握することができます。National Databaseというのは、これは今、厚生労働省の保険局総務課が、いわゆる高確法に基づいて全てのレセプトデータを集めて、データベース化したものです。本来は医療費の分析に使われるものなのですが、これが研究目的とか、あるいは都道府県の行政利用、具体的には医療計画の策定に使われるようになりました。

 何をやったのかといいますと、こちらの表側、こちらが患者さんが住んでいる医療圏になります。棒グラフの棒ですけれども、これがどこの医療圏で医療を受けたかということをあらわしています。例えば一番下の京築医療圏ですと、京築医療圏で救急で入院した人たちというのは、実は半分しか京築医療圏に入院できていない。残りの20%が北九州医療圏、30%が大分県の北部医療圏、隣の県に入院しているということがわかります。そうすると、この京築医療圏というのは、全ての診療科に対応できるだけの一応医療機能はあるのですけれども、ボリュームとして救急医療に関しては半分しか提供できていないことがわかるわけです。

 これを消防庁のデータで見てみます。今、実際に私たち、消防庁の全ての救急搬送のデータをいただいていますので、その中のデータを使って、電話がかかってから現場到着、現場到着から収容、電話がかかってから収容までの平均時間を計算することができます。例えばこの京築地域は29.6分ですので、県全体の平均よりも1分ほど長くなっています。やはり半分の人たちが圏外に出てしまうので、どうしても長くなってしまう。

 これが特に小児科で深刻でして、小児科になりますと、県の平均は27分なのですが、覚知から収容が京築医療圏では34分かかってしまいます。ここで大事なことは、覚知から現場到着は7.2分ということで、救急隊としては到着までの時間は県平均より短い。ところが、到着してから収容するまでが約30分ということで、要するに、運ぶのにすごく時間がかかっていることがわかります。

 もう1つ注目していただきたいのが、搬送件数が460件になっています。これは管内搬送です。管内の病院に運ばれた場合には実は22分で済んでいます。でも、運ばれているのは45人だけです。要するに、先ほど見ていただくと460人の新生児・乳幼児の搬送があったにもかかわらず、京築医療圏の中では45人、要するに、10%しか搬送できていないということがわかってきます。これで管外に搬送したものを見ると35分ですので、要するにここから何がわかってくるのかというと、福岡県には実は4つも医学部があります。日本全体で見るとかなり医師の数が多いところなのですが、それでもこのように医療を十分に適正にできない地域があるわけです。

 これは今まで感覚的にはわかっていました。でも、データがなかったためにこれを改善しようという具体的な行動が起こせなかった。しかし、やはりこれは4大学の小児科がきちんと考えなければいけない問題だろうと思います。こういうデータに基づいて関係者間で実際に議論を始めて、この解決のための今の対策を関係者を協議しているところです。

 次は、保険者レベルでの医療・介護レセプト情報の統合の話をさせていただきます。真ん中ぐらいのところでもお話ししましたように、日本には非常にすぐれた医療情報があります。ところが、今までこれが活用されてきませんでした。これがいけないということで、もともとは県の事業として始めたのですが、今は4大学プロジェクトといって、九大と産業医大と久留米大学と福岡大学の共同プロジェクトとしてやっていますけれども、いわゆる医療のレセプト、調剤のレセプト、介護のレセプト、特定健診のデータ、これを全部個人レベルでつないで、それを分析するという、そういう仕組みをつくっています。

 これが初期画面です。これを使うと何ができるかということですが、例えばこういう形で、これは行橋市というところですが、傷病別にどういう医療費の構造になっているということを分析することができます。例えば神経疾患を選んだ状態で薬剤費の分析画面に行くと、こういう分析ができます。例えばこの地域では、薬剤費がこの10月に2,600万円ぐらいかかっているのですが、ジェネリックは280万円分しか使われていません。11%です。でも、仮にもし代替可能な薬を全てジェネリックにかえると、大体600万円ぐらい削減できます。こういう分析が実はデータベースをつくることによって簡単にできるようになります。

 こういうデータを持つことで、例えば地区の薬剤師会と協議して、医療の質に配慮しながらジェネリックの使用を促進する。そうすると、要するに、医療の質を担保しながら医療費の適正化ができるわけです。今まではこういうデータがなくて、患者さんにジェネリックをもっと使いましょうと言うだけですと、患者さんは自分が飲んでいる薬をかえることができるのかどうかわからない。むしろ地域全体でジェネリックにかえることによってどのぐらいの適正化ができるのかを関係者間で共有して、その合意に基づいてやっていくという、そういう仕組みをつくられなければいけないだろうと。それができるための情報を実は日本はもう持っているということであります。

 あとは、このように介護給付費を分析することもできます。

 それで、例えば個人レベルをつないでいると何ができるかというと、このように、脳梗塞で在宅にいる方が介護給付費として何を使っているかという、そういう分析もできるわけです。脳梗塞の患者さんは、その状態に応じて医療か介護、あるいはそのどちらか、あるいはその両方を使っています。ですから、もし脳梗塞の地域におけるいわゆる社会保障への負担を議論するのであれば、その両方を把握できなければ意味がないわけです。医療費が下がってもその分介護費が上がってしまえば、これは意味がありません。トータルとしてどのようにするかということを考えるための議論をするためには、やはりこの両方をつないで分析できるという仕組みをつくらないといけないわけです。

 そうすると、こういう形で、例えばこれは在宅で、脳梗塞で、介護保険と医療保険をどのくらい使っていて、さらに医療費としては、薬剤費としてはどのくらい使っているのかと、こういう形で要介護状態になった高齢者が受けているサービスの全体像が把握できます。その全体像を把握した上で、何をどうすれば適正化できるのかということが議論できるようになるわけであります。要するに、保険者レベルでこういうプログラムをやって、将来の医療・介護費の集計をして種々の対策の効果を評価する、こういう保険者レベルPDCAサイクルを回すための枠組みをつくっていかないと、やはり質に配慮した医療費の適正化はできないのではないだろうかと思います。

 あとは、質の評価があります。医療の質の評価が今かなり重要視されているわけですけれども、例えばこういうデータがあります。マクロレベルの評価ですけれども、これもレセプトを使っています。これは平均搬送距離です。これは、DPCのデータなのですが、DPCは患者さんの住所地の郵便番号が入っています。研究員にがんセンターの石川先生という先生がいるのですが、彼が何をやってくれたかというと、日本全国の全ての郵便番号で代表される地域の重心と各病院の距離を全て計算してくれています。

 その結果を用いてやった結果なのですが、これは何をやったのかというと、脳梗塞で救急搬送された患者さんの平均距離を都道府県別に求めて、それと都道府県別の脳梗塞の年齢調整死亡率の相関を見たものです。搬送距離が長い地域ほど実は死亡率が高くなっています。これはマクロのデータですので、その妥当性はやはりミクロでまたきちんと見ないといけないのですけれども、仮にもしこれが事実であるとすれば、医療へのアクセスの良し悪しが本人の死亡確率に関係しているという、国民の間での平等性ということで非常に大きな問題になるだろうと思います。

 それから、こういうデータを使うとほかにもいろいろな分析ができます。例えば医療計画ができてもう既に30年ぐらいたつわけですけれども、その当初から医療機関の機能分化と連携を図りますということがずっと書かれています。あるいは、在宅を進めますということがずっと書かれています。ところが、今までこれは、全く評価されてこなかったのです。単なる作文でした。ところが、レセプトを使うことによって、こういう地域医療指標をつくることができます。例えば連携に関していえば、入院患者さんに関しては今、連携に対する点数がついています。そうすると、入院している患者の中でどのくらいの患者が連携に関するレセプトが出ているかということを見れば、地域別の連携のレベルを評価することができます。

 例えば福岡・糸島は5.1ですので、これは福岡・糸島で入院している患者さんの20人に1人は連携の対象になっているということを意味します。ところが、宗像医療圏はゼロですので、1件も対象になっていない。連携をやっているとやはり在院日数は短くなります。こういうデータを示しながら、なぜ連携が進まないのかということを各地域の関係者に考えていただく。あるいは、在宅患者も、福岡・糸島医療圏では7.1%ですので、14人に1人の患者さんは在宅医療を受けています。ところが、八女・筑後では1.8%ということで、50人に1人の患者さんも受けていない。この差が何なのかということを医療者に説明責任を持ってもらうことがこういう指標をつくってできるわけであります。

 あとは、これもまたおもしろいデータです。これは、DPCのデータを使っています。いわゆる医療の質の評価になります。例えばこれは、虫垂炎という、いわゆる盲腸と言われているものです。そういうものを手術したときには、そこの感染が起こらないようにするために予防的に抗生物質を投与します。外科系のガイドラインとかアメリカのCDCのガイドラインでは、そこで使われる抗生物質がペニシリン系かセフェム系第1世代、第2世代という少し安い薬を使うことになっています。しかも、1日投与が原則です。

 ところが、これは日本の大学病院なのですが、見てみますと、このように、下のほうは大体こういうガイドラインに沿った抗生物質の使い方をしています。ところが、上のほうは、これは最初からセフェム系の第4世代、オキサセフェム系、カルバペネム系という非常に高額な抗生物質を使っています。このようにレセプトを使うことによって、適正化できる部分を明らかにすることも可能なわけです。

 あとは、こういう医療の質評価をつくることもできます。医療の質評価に関しては日本は欧米に比べておくれていたのですけれども、DPCが一般化したことによって、DPCのデータを使って、ここにあるようないろいろな医療指標をつくることができるようになりました。例えばこれは実はホームページで公開されています。乳がんの患者さんに対してどのぐらい乳房温存手術がやられているか、これは、DPCのデータでつくれますので、こういうものが実名で公開されています。

 そういうことで、こういう情報を使っていろいろな適正化ができるわけですけれども、ただ、医療費の適正化に関しては幾つか考えなければいけないことがあるだろうと思っています。まず1つは、適正化の意味の再確認です。これはやっぱりValue for moneyだと思います。削減する部分もありますし、増額する部分もあるだろうと。

 あとは、負担に関する責任範囲に関する議論です。いろいろ言われますけれども、実は日本の患者ぐらい広い範囲の医療サービスを受けている国民はいません。例えば日本では保険収載されれば全ての抗がん剤が使えるわけですけれども、アメリカの民間保険ではそもそも高額な抗がん剤は使えません。それから、イギリスのNHSでも高額な抗がん剤は使えません。要するに、収載されているからといって使えるわけではない。

 ところが、日本は収載されれば使えるわけで、しかも高額療養費制度がありますので、月々10万円ぐらいのお金がマックスということになるわけです。実際受けているサービスが500万円でも1,000万円でも10万円払えばいいという、そういう仕組みになっているわけです。実はどのぐらいの医療費がかかっていて、それを誰がどのように負担するかという議論をきちんとしないといけない時期にもう来ているのではないかと思います。

 あとは、Valueの可視化が必要だと思います。そのためには、質評価の方法論の標準化・一般化が重要ですし、そのためにはやはり日本には医療情報、レセプト情報という非常にすぐれた情報があるわけですので、そういうものを使いながら、きちんとValueの可視化をやるということが重要だろうと思っています。

 その上で、保険者レベルでの医療の質保証をきちんとやらないといけないだろうと思います。患者さんがなぜ病院に行ってしまうのかということを考えないといけないと思うのですが、やはり患者さんは何となく暗黙のうちに、病院のほうが診療所よりも医療の質が高いと思い込んでいるのではないかと思います。仮に開業医レベル、いわゆるクリニックの医療の質をきちんと評価するという枠組みを入れないで患者さんを病院からクリニックに戻そうとしても、これは難しいだろうと思います。いわゆる診療所でやっている医療の質の評価を制度的に入れていかないと、やっぱりきちんとした流れはつくれないだろうと。そうすると、欧米でやられているような、きちんとしたPeer Reviewが必要だろうと思います。

 やはり現行のレセプト点検というのは、医療費を削るということが主眼であって、医療の質保証のツールにはなっていないだろうと思います。結果として何が起こっているかというと、この医療行為を正当化するために、病名何々疑いという形で追加するということで、情報の質も落とす形になっています。そうではなくて、やはり質保証のツールということで、Peer Reviewみたいなものをきちんと入れていく。保険者レベルで集めたデータを使って、地区の医師組織による体系的なPeer Reviewを入れていくということが必要なのではないかなと思います。これは現行の仕組みを使えばできることです。

 あとは、こういうレセプトの情報というのは過去のデータです。でも、これから地域医療をやるわけですので、将来どうなるかということを考えなければいけません。このためのデータも日本はとてもいいものを持っています。それは何かというと、患者調査と病院報告です。こういうものは今まで使われてきませんでした。こういうものを使って何ができるかということをお示ししたいと思います。

 例えばこれは福岡・糸島医療圏の人口推移ですが、こんな形になっている。これが人口ピラミッドですが、人口の推計と、それから、現在の患者調査のデータ、それから、病院報告のデータを使うと、仮に現在の傷病別の入院受療率、外来受療率が変わらないとするならば、将来どういう状況になるかということの推計ができます。それをやったのがこれです。例えばこれは福岡・糸島医療圏の傷病別の外来患者の推計です。どういう患者さんがどのぐらいふえてくるのか。

 外来はいいのですけれども、ポイントは例えば入院です。入院でいいますと、これから福岡・糸島医療圏は、人口がふえる上に高齢化が進んできますので、高齢化に伴ってふえる疾病がふえてきます。具体的にいうと肺炎です。肺炎と脳梗塞、骨折が大体60%から80%ふえます。この患者さんをどのようにするのか。この傷病構造は地域ごとに異なりますので、こういうものを地域ごとに推計するための仕組みが必要になってきます。

 これを前提として実際に患者数がどうなってくるかを推計すると、こういうデータになってきます。急性期でもかなりの数が必要なのですが、それ以上にこれから高齢者がふえますので、療養病床が必要という、こういう推計になってきます。ただ、これは現実的ではありません。

 そうすると、これだけふえてしまう患者さんを現状の病床数で賄おうとすれば、平均在院日数を短縮するしかありません。これをするためには何が必要かというと、基本的には在宅医療をきちんとやれる仕組みが必要だということになってきます。この在宅医療は、今、入院でやっている医療の延長線上としての在宅医療になりますので、こういう仕組みをどのようにつくっていくかということを今から考えていくことがポイントになろうかと思います。

 このように、日本には医療の情報、非常に使える情報があるのですけれども、これまでは使われてきませんでした。その一番大きな理由は、やはり使うための枠組みが標準化できてこなかったことだろうと思います。せっかく情報のフォーマットが統一され、標準化されているのに、その使い方が標準化されてこなかったために日本では使われてこなかった。そこをやることによって、より客観的な議論ができるようになるのだろうと思います。

 ただ、そのときに注意しなければいけないのは、やっぱりレセプトあるいは医療に関する情報は極めて個人的な情報ですので、それがきちんと守られるような仕組みをつくらないといけません。例えばフランスにはCNILという組織があります。このCNILという組織は、情報と自由に関する全国委員会といって、こういう個人情報を扱う場合には必ずここの許可を得なければいけないという仕組みになっています。だから、日本においても、レセプトの活用を進めていく場合には、多分片方でこのような個人情報を守る組織をきちんと体系化していく必要があるだろうと思います。

 あともう1つは、やはりいろいろなところにばらばらに情報があるというこの状況が非常にまずいと思います。詳しくはもう述べませんけれども、国に1つ保健情報機構みたいなものをつくっていただいて、そこで一括して情報をまとめて分析をして、それを求めに応じて、各レベルの行政機関や、あるいは医療提供者団体に提供する、そんなことをやっていくということをこれから考えなければいけないのではないかと思っています。

 最後にこれを申し上げたいのですけれども、医療の目的は単なる病気の治療なのかということは考えないといけないだろうと思います。やはりこれから経済活力を維持するためには、労働力を確保しないといけませんし、労働生産性を上げないといけない。Ageless社会を実現しようとすると、働くことを支援する医療が必要になってきます。これは、諸外国でかなりやられるようになってきています。実は病気の影響というのは、休業、Absenteeismよりも、いわゆる労働生産性が落ちるPresenteeismの方が大きいという報告が出ています。例えば英国においては大体年間で15兆円ぐらい失われているだろうと。ということで、働くことを支援する医療の役割をもう少し重視すべきではないかということがあります。

 これをどうするのかということで、臨床的な治療のアウトカム指標として、労働生産性の評価が重要になっているだろうと。そういうことに応えるために、これは最後、宣伝なのですけれども、私どもの大学で産業保健ビッグデータをつくっています。私どもの大学は産業医をつくる大学ですので、こういうデータを集めて、労働生産性、働くことを支援する医療のあり方をこれから研究してやっていきたいと思いますので、それについてもまた結果が出ましたらご報告させていただきたいと思います。

 これは最後、まとめです。詳しくは述べませんけれども、一言でいいますと、日本はすぐれた医療情報を持っています。しかも、これだけの細かい情報がこれだけ大規模に集められている国というのは実は世界中探してもありません。ところが、それを活用するための枠組みが標準化できていないために、非常に残念なことになっています。やはり今この時期にこれを標準化して、それを使うことによって医療保障・介護保障のサステナビリティーを維持すると同時に、やはり医療の質そのものを高めていく努力が必要なのではないかなというふうに考えております。

 以上であります。少し長くなってしまいましたけれども、これでご説明を終わりたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうも松田先生、大変インフォーマティブなご説明ありがとうございました。松田先生はご所用で2時半前ぐらいにここをご退出していただきますので、20分程度ですか、質疑を行いたいと思います。どなたでも、名札を立てていただければと思います。

 井伊委員、お願いいたします。

〔 井伊委員 〕 松田先生、お話どうもありがとうございました。先生が最初にお話しされた緩やかな総額管理制度の導入は私も賛成でして、ぜひデータの整備や分析を進めるべきであると思っています。それをまず最初に申し上げて、あと幾つか疑問点というか質問がありますので、ご意見お聞かせいただけれるでしょうか。

 例えば44ページで、松田先生のコメントが、「以上の分析から、医療資源に恵まれているはずの福岡県でも、県内における資源配置が適切でないために、京築医療圏のように救命救急、特に小児救急で解決すべき課題があることがわかる」とあるのですが、私はこのデータを見ていて実は何が問題なのかよくわかりませんでした。30分の搬送時間が問題なのかどうか。

 そして、専門家である松田先生が問題であると言うと、皆、とても大変だと思ってしまうところはちょっと怖いと思うのですけれども、この30分の搬送時間が長いことで、生命を落とした人が何人いるのかとか、重篤な症状になった人が何人いるのかということは、レセプトデータやDPCデータからはわからないと思います。ですから、何が悪くて何がよいのかといった基準がないところで、単に地域間のばらつきがあることだけを問題として、そして、解決すべきかどうかということは検討しないで、とにかくばらつきを解決しましょうという政策手法はもう少し慎重に考えたほうがいいのではないかなとこの44ページのコメントを見て思いました。

 レセプトデータやDPCデータは確かにすばらしいデータではあるのですが、これからは医療の必要度はわからないのではないかなと私は思っています。レセプトデータやDPCはどれだけの医療が利用されたかはわかりますが、どのぐらいの医療が必要なのかとか、どの医療が無駄なのかということは、このデータからはわからないと思います。日本は自由に患者が医療機関を受診できますので、患者の需要がコントロールされていないところでのデータですので、それをもってほんとうに必要なサービス量が把握できるとは限りません。利用量と、必要量を区別して議論しなければいけないのではないかなと思いました。

 それで、54ページのところに総合的保健プログラムの実践ということで人口構造の将来推計なども出されていますけれども、現在の医療の使われ方が効率的なものなのか、そうではないのかということ、そういう物差しがない中で、医療資源にたまたま恵まれてぜいたくをしているところ、そうでないところも一緒にして、現在の費用に将来の予測人口を掛けたら将来の医療費・介護費になるというのは正しいのかなと疑問に思いました。

 もう1つは、この分析はやはり病院に偏っているような印象を受けます。診療所の効率化をしっかりやらないと病院に結局負担がかかってしまうというご指摘、先ほど松田先生おっしゃいましたけれども、病院医療は比較的病名を確定しやすい。がんであったり、脳梗塞であったり、確定しやすいわけですけれども、先ほど松田先生が、欧米でも代替制ですか、入院から在宅、プライマリ・ケアの比重がどんどん高くなってきているというお話をされました。日本でも確かに高齢化が進んでいくと幾つもの疾患を持った高齢者などが出てきますので、そういった実態把握をするのに、患者分類が非常にいいかげんなのが大きな問題なのではないかなと思います。一口に胃潰瘍といっても、単におなかが痛いだけなのか出血しているだけなのか千差万別なので、レセプト病名で区別ができない。そうした状態で幾ら統計をとって分析をしても、どこまで意味があるのかなと思いました。

 いろいろ申し上げたのですけれども、こうしたデータベースを国レベルでつくって、地域によって医師の診療法がどれだけ違うかを示すことはほんとうに重要で意味があることだと思います。ですから、私は、1点松田先生のプランに欠落をしている重要なことは、入院医療に関してはご提案のようにDPCのコードをつければいいのですが、外来コードに関してはぜひ、松田先生、ヨーロッパのことにお詳しいので、プライマリケアのコード分類がありますので、それに基づいてデータを収集する。それで患者分類、診断分類が外来に関してできれば、包括化までの道筋がぐっと近くなるのではないかなと思います。以上です。長くなりまして、申しわけありません。

〔 吉川分科会長 〕 レセプトデータもパーフェクトではないということもしれません。それはそれとして、時間が限られていますので、松田先生、恐縮ですが、ほかの方のご意見もいただいた上で、最後に先生のほうから取捨してお答えしていただくというのでよろしいですか。あるいは、個別のほうがよろしければ。

〔 松田産業医科大学教授 〕 まとめてで大丈夫です。

〔 吉川分科会長 〕 よろしいですか。

 では、とにかく時間が限られていますので、ご質問のある方、簡潔にお願いできればと思います。

 佐藤委員、お願いいたします。

〔 佐藤委員 〕 では、簡潔に。まず20ページですけれども、緩やかな総額管理、1つのアイデアだと思うのですが、この具体的な実効性について。フランスにおいて、この下のほうにありますように、仮に目標を大幅に超えることが予想されるときに抑制策を提案すると。提案するのは自由なのですけれども、それはどうやって実行するのか、何らかのペナルティーを伴うものなのかということ、そこはどういう担保があるのかなということです。

 それから、62ページのところで、Valueの可視化が必要であると、その通りだと思います。そこで、医療の適正化につながるということが欧米の経験としてあると。先生、前半のほうでは、競争は必ずしも医療費の適正化につながらなかったというご指摘だったと思うのですが、それでは、質の向上が適正化につながったという何らかのエビデンスはおありなのかなということ。

 それから、最後にあった、医療の目的として、就業とか労働生産性の担保ということは非常に重要というのは、経済学でいうと健康資本に関わるお話だと思うのですが、これを考えるのであれば、いわゆるプリベンティブケア、予防医療も重要になってくるかと思います。ここでは、情報の活用として医療と介護の融合ということは確かにそのとおりですけれども、もう1つ、健康管理といいますか、予防とか健診とか、こちらとの情報の統合は果たしてできるのかということについて、もしご見識があればお願いしたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、田近委員。

〔 田近委員 〕 手短に。今日は松田先生、ありがとうございます。我々と私の役割は松田先生の話を財政の話にどう翻訳するかということで、翻訳間違いがあるかもしれませんけれども。松田先生がおっしゃる、こんなにいいデータがあるのになぜ日本の保険者は使わないのだと。使わなくてもいいと思っているから使わないのだろうと。というのは、それが緩やかな総額管理と絡むのでしょうけれども、やはりそれぞれの保険者が予算で縛られているわけではなくて、結果的にかかった費用を公費で分けたり、あるいは国保の場合だったら最後はまたさまざまな支援があるということで、そういう意味では総額管理がされていない。

 では、総額管理をどうやってやるのかということで、1分ぐらい。12ページを開いていただきたいのですけれども、それはある日突然、日本の医療を40兆円にストラグルするという、結果的にはそうかもしれませんけれども、そのメカニズムというのはもう少しわかりやすいかなと思います。12ページはオランダの場合で、これをお金に翻訳していくわけですけれども、下に「被保険者/患者」とあります。実はこの絵をこう描いたらもっとわかりやすいなと思うのですけれども、ピンクの上に「医療基金」とあります。そこにみんながお金、保険料を払うわけです。そして、その払った保険料が医療保険者1、2、3に配分されていくというわけです。

 問題は、緩やかな総額管理とはどこかというと、基金からそれぞれの保険者に払われるお金がバジェットになる。出来高ではなくて、それぞれお幾らかかりますかね、それでやってくださいと。それで結果的に足りない部分は、被保険者/患者から保険者に別のルートで払われる。そうすると、問題は、緩やかな総額管理がどう行われているかというと、被保険者/患者から集められた保険料がそれぞれの保険者に、「おたくは高齢者をいっぱい抱えているから、1人当たりコストがかかりますね」「おたくはそうではないから」ということでバジェットで与えられる。それぞれの保険者がそれぞれ抱えている患者のリスクに相応したバジェットが与えられているので、そのもとでしっかりした医療をやろうではないかと。では、医療をしっかりやるには、やはり松田先生のところへ行ってGPCの使い方を教わらなければいけないと、そういうメカニズムが出てくる。

 だから、私は松田先生が非常にいい報告されたと思っているのですけれども、松田先生のお話を具体的にどういうメカニズムで日本でやっていくのか。それは一朝一夕にはできないですけれども、私の聞いた今日のお話のポイントは、やはりここにある保険者の予算ができていない、まずはここに予算をつくっていこうではないかということで私は伺いましたし、財審の皆さんには、松田先生のお話はそういう形で我々の財審の議論のど真ん中にあるということを申し上げました。

〔 吉川分科会長 〕 どうも。

 土居委員。

〔 土居委員 〕 ご報告ありがとうございました。田近先生の話にもう一段加えて、財審としてということで翻訳をするならば、欧米の制度を拝見しましたけれども、日本の、もう1つ欧米にない、かつ財審として非常に重要なポイントになるだろうと思うのは、保険者と国との関係であります。保険者は、先ほどご紹介ありましたように、我が国でも職域と、あとは地域、いわゆる国民健康保険、これがあるわけです。

 国民健康保険は市町村が営んでいて、結局のところ、保険者は保険者としての機能を果たすべきだということ、欧米の機能に学ぶところであるわけですが、あいにくスケープゴートがあって、国費、つまり、国からの税金を使った医療費の補助があるから、保険料をあまり上げなくても医療はどんどん提供できるということで、結局、保険料を上げたくなければ、国費に何とかスケープゴート的に負担をつけ回せないかという動きがあるというところは欧米にない問題で、これが欧米と日本とを対比する上でも非常に重要なポイントになってくる。だからこそ、できるだけ質を落とさずに医療を提供できる方法を真剣に考えなければいけないということだと思います。

 それで、2つポイントがあったと思うのは、代替政策を欧米ではやっていて、我が国でも一体改革でそちらの方向にかじを切ったという意味では非常に重要なポイントになってくると思いますし、今ある医療情報でも十分に分析可能で、これを生かせば、質を保ちながら医療費の管理ができるということが示唆されたというところは非常に重要なポイントだと思います。

 その上でお伺いしたいのですけれども、15ページにフランスの在宅入院制度がある。これは我が国でも、入院から在宅へと言っていて、代替政策をよりうまくやっていく意味では重要なポイントだとは思うのですが、病院には、ある種の規模の経済といいましょうか、多くの患者を集めることによって患者1人当たりにかけるコストが下げられる面もあるわけですが、在宅医療をこれから推進していく上で、我が国においてどういうことに気をつければ、代替政策として成功できるのかというところを教えていただきたい。

〔 吉川分科会長 〕 赤井委員。

〔 赤井委員 〕 では、簡単に。25ページのところで、歴史的な視点が重要だということなのですけれども、その中で、連帯の理念は共有されているのかということがあって、やはりこの連帯の理念を日本は持っていく方向なのか、今おっしゃられたことも近いと思うのですけれども、例えば23ページでいうと、日本はどこに位置してどちらの方向に行くべきなのか、連帯の理念は共有できるのかできないのか、共有していくべきなのか、それとも、できないということを前提に置いて考えていくべきなのか、その点について教えてください。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、松田先生、お時間の許す限りお願いします。

〔 松田産業医科大学教授 〕 最初の井伊先生のご質問ですけれども、客観的には、組み合わせで見ていくことしか方法はないだろうと思っています。それぞれがやはり完璧なデータはありませんので。

 救急に関しては、国際的にも30分の圏域が、一応目安になっています。二次医療圏というのは基本的な医療が完結しなければいけない圏域ですので、そこで救急を30分以内で回せるような仕組みをつくらなければいけないだろうと。

 組み合わせることによって何がわかるのかというと、少し省略してしまった部分があるのですが、京築地域で子供の小児救急が460件ぐらい発生していて、そのうちの1割しか管内で診られていないということが問題なわけです。もう少しデータを出すと、小児科の入院が実は京築では1件もありません。入院が全て圏外に出ていってしまっている。これはやはり問題だろうと思います。こういう組み合わせによって、何が足りないかを見ていくことが大事だと思います。

 それから、日本の医療情報でレセプト情報にいろいろと疑い病名とかが入っているのはご存じのとおりなのですが、では、新たに情報をつくることができるかというと、これはやはり難しいだろうと思います。そうすると、今の枠組みの中で診療所から保険者に出ている情報の質をいかに高めていくかという視点でやっていくべきだろうと。

 そうすると、これはやはりPeer Reviewを入れるしかないだろうと僕は思っています。Peerが入る、要するに、他の医師の目が入ることによって、情報の質がよくなってくると思いますので、そこをどうしていくか。そこに多分、先生が言われたようなプライマリケアの分類を入れていくということはそのとおりだろうと思います。それから、診断名の担保は、行われた医療行為である程度できますので、そういうものを使っていけばいいのかなと思います。

 それから、フランスの総額規制が行われなかった場合どうなるかということですが、逸脱した医療行為を行った者に対しては、疾病金庫の理事長が経済的なペナルティーを課すことができるということは一応定められています。しかしこれは今まで発動されたことがありません。ただ、基準に沿った医療をやらなかった場合には発動することができるということになっています。

 それから、Valueの可視化ですけれども、やはりまずこれをどうしていくかということは非常に重要だろうと思います。そのためにも、エビデンスを出していかなければいけないのですけれども、欧米ではかなりもう出てきています。実際にこれは、そういう専門ジャーナルがあるのですけれども、そのようなものも見てみると、例えばジェネリックを使うことによって医療の質は落ちない、要するに、コストパフォーマンス、エフィシェンシーがよくなると、そんなことも出ていますし、アクセスをよくすることによって死亡率が下がっている。このような質に関するものは出ています。

 それから、労働生産性のところでプリベンションのところですけれども、これはいわゆるディジーズマネジメントということでありますが、これはなかなか難しくて、それが効果があるという論文もありますし、ないという論文もあります。日本では何ができるのかというと、実は特定健診のデータはつないであります。特定健診のデータをつないでありますので、そこでプリベンション、予防活動にきちんと行った人とそうじゃない人で比較をすることはできるようになっています。実際、介護予防の事業に乗った人と乗らなかった人でその後の介護保険の使用率は変わらないのですけれども、それに乗った人のほうが悪化度が低いという結果は一応、まだプリミティブなものですけれども、日本でも出せています。

 それから、先ほどの予算に関して、11ページの図でいうところのいわゆるCVZ、こういうものを日本にどうつくるかということが、おっしゃられたように、全体的な予算管理といいますか医療費支出みたいなものを管理して、保険者間の財源調整をやるためには必要だと思いますので、制度論としてどのようにやるかをぜひ考えていただきたいなと思います。

 それから、在宅入院に関してですけれども、施設に入れたほうがいいのではないかという話もあるわけですけれども、実は在宅入院が発展してきたもう1つの理由は、療養生活の質です。やはり入院でずっと診ることよりは、やはりご自分の家で治療を受けられるのであればそのほうが望ましいという議論があります。

 日本の場合、どのようにやるのかというと、今日は時間がないので細かいことは話せないですけれども、私は今、介護保険のほうでつくられてきている小規模多機能施設をどのように活用していくかが1つ鍵になってくるのだろうなと思います。具体的には、看護師さんが管理者である小規模多機能施設あるいはシェアハウスみたいなものをつくっていって、状態が悪くなれば自宅ではなくてそこに行って、状態がよくなればまた自宅に戻る、地域の中にそういう柔軟な仕組みをどうつくっていくかが大事だと思って、多分それが日本の在宅入院制度になるだろうと思います。

 それからもう1つ、連帯の理念ですけれども、私はやはり日本は連帯の理念で行くべきだろうと思います。ただ、これをどのようにやっていくかということで、これは権丈先生が非常に努力されています。私、フランスで医系技官をやったときに非常にびっくりしたことがあります。それは何かというと、ちょうど学校保健の担当をさせられていたので小学校に訪問したことがあったのですが、そこで小学生が壁新聞をつくって、税金がどのように使われているかを発表するという授業が行われていました。そこに税理士の方や税務署の方が来て、やっているわけです。

 よく考えてみると、日本では生活者になるための教育が義務教育の中でやられていないのですよね。税金がどう使われているかとか、社会保障がどういう仕組みなのかということがほとんど教育されていない。しかし、これが多分連帯というものを考えるための基本になるのだろうと思います。そういう意味で、義務教育の中で連帯の具体的な表現としての社会保障のあり方をきちんと教育するということをしなければ、やはりなかなかこの連帯の概念を皆さんで共有することが難しいのではないかなと思いますので、ぜひそこは教育からやらなければいけないのではないかと考えています。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 先生、最後に1つだけ。来年度からソーシャルセキュリティナンバー、社保番号が入るということで、一言、この社保番号も先生がお考えのプランにコントリビューションすると期待されるものでしょうか。

〔 松田産業医科大学教授 〕 今、自分でこういう医療情報のシステムをつくっていて一番苦労するのが、異なった制度間のひもづけなのですね。例えば国民健康保険は世帯単位で被保険者番号が振られます。後期高齢者は1人で、介護も1人なのですけれども、これをつなぐという作業が結構大変です。それから、74歳の方が75歳になってしまうと国保から後期に移るのですけれども、その瞬間につなぐことが難しくなります。そうした意味で、社会保障番号があることによって連結ができるようになりますので、そういう意味では個人情報の保護に最大限の配慮を図りながら、その使用の一般化を考えていただけたらいいなと思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。大変勉強になりました。本日は、松田先生、私どもの審議会に大変インフォーマティブなプレゼンテーションをしていただきまして、ほんとうにどうもありがとうございました。

 では、ここで、私どもは3時間コースですので、10分程度休憩に入りたいと思います。

( 休  憩 )

〔 吉川分科会長 〕 それでは、そろそろ後半の議論に入りたいと思います。よろしいでしょうか。

 後半は事務局の説明ですけれども、事務局の都合により順番が少し変わります。まず社会保障マル2(年金、生活保護)について、土谷主計官よりご説明お願いいたします。

〔 土谷主計官 〕 厚労第二担当の土谷でございます。どうぞよろしくお願いします。お手元の資料のうち、社会保障マル2という番号が振られた資料をご参照ください。

 1ページ目をおめくりいただきますと、年金については、ちょうど今年が、5年に1度の財政検証の年に当たりますので、取り上げさせていただいております。1ページ目、現行の年金制度の仕組みです。今の年金制度の仕組みは2004年に抜本的に変わってございます。医療・介護などの社会保障制度ですと負担がどこまでふえていくのかということが大きな懸念材料になるわけでございますが、年金については、制度上は先に負担を固定しまして、その範囲内に給付を抑えていくという仕組みがビルトインされているところでございます。左側の負担サイドのほうにつきましては、消費税率の8%の引上げによりまして、基礎年金国庫負担2分の1の財源が確保されてございますので、負担のほうの財源の土台、これはある程度固まったところでございます。

 これからの課題は、給付のほうの調整、具体的にはマクロ経済スライド、これは毎年大体1.2%ほどずつ年金の額を抑制していくという内容でございますが、これを着実に発動していくということが負担と給付の帳尻を合わせるための大前提になっているわけでございます。ただ、マクロ経済スライドが導入されて10年たっておりますが、まだ1度も発動された実績はございませんで、今のままでいけば、来年初めて発動できるのではないかというような現状でございます。

 ちなみに、1ページ目の一番下でございますが、5年前の財政検証の結果でございます。所得代替率と書いてございますのが現在の所得に対する年金の水準でございますが、これが足元の62.3%が約30年後に50%まで下がっていく。マクロ経済スライドが発動されることによって、実質2割程度年金の水準が切り下がっていくと。これによって負担と給付がバランスするという見通しになっていたわけであります。

 以上の仕組みを前提といたしまして、右側、2ページ目でございますが、昨年の国民会議報告書におきましては、年金分野については残された課題が4つあるということで整理されてございます。左側と右側で若干性質が異なってございます。左側は、今申し上げたとおり、将来的に年金の水準が、マクロ経済スライドが効いてきますとこれは下がってまいりますので、マクロ経済スライドが効いていく中で年金の水準をどう確保していくのかという内容の改革として、左側の例えば支給開始年齢の引上げとか厚生年金の適用拡大、こういったものが位置づけられるわけでございます。左側の改革につきましては、実施時期は少々先かもしれませんが、いずれも働き方に関わる改革になりますので、それなりに準備期間をとる必要があるということを考えますと、検討については早急にきちっと開始しておく必要がある課題だと思ってございます。

右側の2つの課題でございますが、むしろこれは今、足元の年金の水準、これが相対的にやはり恵まれた姿となってございますので、この相対的に恵まれた年金の受給者について応分の負担をしていただくという改革でございますので、これについては一刻も早い実施が望まれる課題だと考えてございます。

 3ページ以降、もう少し具体的にご説明させていただきます。まず年金制度でございますが、支え手がどうなっていくのかということが非常に重要になります。左下のほうでございますが、団塊の世代、この世代のことがよく社会保障の関係では話題になるわけでございますが、団塊の世代、今年には全員65歳入りをいたしますので、そういう意味では支えられる側にもう既に回ってしまうということになります。

 次のメルクマールとして大きなものが団塊のジュニア世代。右のほうにございますが、この方々が2030年代の後半には65歳入りすることになります。そういたしますと、その前の、具体的には遅くとも2035年をめどに、やはり社会の支え手を増やしていく必要があろうかと思っております。

 右側、4ページ目でございますが、2030年の労働市場を厚生労働省のほうでシミュレーションしたものでございます。右側の絵の左側の図でございますが、現状のままの労働参加率で推移いたしますと、就業者数は820万人ほど減少することになってございます。これでは当然経済のほうはもちませんので、もう少し労働参加率を促進すればどうなるかということで上積み部分を示したものが右側でございます。どこに期待できるかというと、やはり女性の活躍の推進と、高齢者ということになっているわけでございます。

 こういった先々の認識のもとで、年金制度としてどう関われるかということでございます。次のページ、5ページ目をおめくりいただきますと、まず高齢者についてでございます。高齢者につきましては、2025年度まで65歳まで雇用と年金を延長していくと、こういうことは既に決まっているわけでございます。そういう意味では、65歳までの方の活躍を保障することについては制度上それなりの担保ができているわけでございますが、ただ、今ご説明申し上げた状況を考えますと、果たして2025年度以降も標準的な引退年齢が65歳のままでよいのかどうか。平均寿命は引き続き延びてございまして、女性については平均寿命が90歳時代を迎えるという見込みでございますので、もう少し引退年齢の引上げを検討する必要があるのではないかと。

 幸いということでございますが、6ページ目をごらんいただきますと、日本の高齢者の就労意欲は非常に高く、70歳以上まで働きたい、あるいは働けるうちはいつまでもという方が合計で6割を超えている状況でございます。さらに、右側の表でございますが、これは65歳以上就業率と75歳以上の医療費の相関をプロットしたものでございますが、就業率が高い県ほど医療費が少ないというような相関関係も出ているところでございます。

 7ページ目にお移りいただきまして、そういった形で仮に標準的な引退年齢を引き上げるということができれば、これは年金制度上どういう意味を持つのかということを整理したものが7ページ目でございます。この絵を見ていただきますと、冒頭申し上げましたとおり年金の給付財源は一定でございますので、黒枠の財源の一部、支給開始年齢が右にずれますと、灰色の部分の財源が一旦節約されるような姿になりますが、この部分の財源が活用されて、年金の給付水準が引き上がるという効果が期待できるわけでございます。さらに、支給開始年齢を引き上げた年数分について、就労することによって厚生年金に加入できれば、その分の年金の上積みも期待できるということになるわけでございます。

 ちなみに、下に一応備考でつけてございますが、支給開始年齢を68歳まで引き上げることができれば、代替率が8.2ポイント改善するというような試算も示されてございます。支給開始年齢の引上げは、マクロ経済スライドによって所得代替率が低下していくことが見込まれますので、そうした中で所得代替率の確保につながる施策として重要ではないかと考えているところでございます。

 8ページ目ですが、諸外国、アメリカ、イギリス、ドイツにおきましても、67歳あるいは68歳までの引上げが今、進行中でございます。ただ、支給開始年齢となりますと、当然、就労の話と関係してきますので、実際の決定から引上げの開始まで、右から2つ目の箱のあたりですが、10年以上の時間がかかってございます。したがいまして、2020年代後半を見すえるといたしましても、10年ということになりますとあまりもう時間は残されておりませんので、早急に雇用の関係も含めて検討を深めていく必要があると考えてございます。

 次のページをおめくりいただきまして、9ページ目でございます。こちら、高齢者に続きまして、女性でございます。女性の活躍の推進、これは各方面で議論されているところでございますが、左側のグラフは、よく言われております、いわゆるM字カーブの問題でございます。30代、40代で女性の労働力率が低下するということでございます。こうした女性の就労を阻害しているような要因を、さまざまな形あると思いますが、除去していく必要があろうかと思ってございます。

 年金制度でそれに関わりますのが、右側の10ページ目をごらんいただきますと、右側の左の絵でございます。ここは130万円のところで黒い線が引いてあろうかと思います。これがちょうど3号被保険者と1号被保険者の境目でございまして、この枠を超えますと、130万円以上の年収になると自ら国民年金に加入する必要が出てきますので、追加的な保険料が発生するけれども年金の受給額は変わらないということで就労の阻害要因になっているのではないかという指摘がされているところでございます。

 その解決策として、右側の絵でございますが、赤枠で囲いましたところ、こうした形で厚生年金のほうに加入することができますれば、ちょうど黒い線の及んでいる範囲が狭くなっていると思いますが、女性の就労の阻害要因を幾分でも緩和できるのではないかということで対応が進められているところでございます。一体改革の中で、2016年10月に約25万人拡大するということがこれは既に決まってございます。この法律が通ったのが2012年でございますので、こちらも実施に4年ほど時間をかけてございます。さらなる適用拡大ということでございますが、少々先ということになるかもしれませんが、検討については早急に進めていく必要があると思ってございます。

 11ページ目おめくりいただきまして、こちら、もう少し足元の話でございます。マクロ経済スライドは大変よくできた仕組みでございますが、1つだけ難点があるとしますと、物価・賃金が上昇した範囲でのみ調整を行うということでございますので、この調整が不十分になりますと、給付財源は一定でございますので、結局、今の年金受給者の方の年金の水準が高くなって、将来の年金の水準が低くなるということになるわけでございます。さらに世代間の不公平を悪化させる要因となるということでございますので、この見直しは極めて重要であると考えてございますし、幸い、今、物価・賃金が上昇基調にございますので、見直しの環境が整っているというふうな見方もできるのではないかと思っております。

 12ページ目、年金課税ということでございます。こちらも今、社会保障全体として負担能力のある高齢者については負担をお願いしようという流れの中で、年金課税については、やはり現役の方と比べれば、公的年金等控除など恵まれているところがございます。このあたりについても見直しをしていく必要がございます。

 以上の課題の検討に資するよう、今、厚生労働省のほうで具体的な財政検証の作業を進めてございます。ここにございますとおり、13ページ上に8パターンございますが、8種類の経済前提を定めているところでございます。おそらくこの結果が5月あるいは6月ごろに出てまいりますので、秋以降、本格的に政府内で検討を進め、年末に制度改正について結論を得るというようなスケジュールでございます。年金については以上でございます。

 続きまして、生活保護でございます。生活保護につきましてはリーマンショック後急増したわけでございますが、足元の伸びは、景気の回復基調に伴いまして、特に現役稼働層の受給者の伸びは落ちついているところでございますが、高齢者の受給者は引き続き伸びてございまして、全体としては伸びのペースが緩やかになったという傾向でございます。

 生活保護につきましてはこれまで累次見直しを行ってきてございます。14ページの右上の円グラフでごらんいただきますと、2つの大きな支出、医療扶助と生活扶助でございますが、これについては一定の見直しを行わせていただいたところでございます。年末に向けましては、残された課題ということで、緑の枠の住宅扶助、住宅手当でございますが、それ以外の細かな加算、こういったものについて見直しをお願いしていきたいと思ってございます。

 17ページまで飛んでいただきまして、住宅扶助をはじめとします生活保護については、既に財審で累次のご指摘を頂戴しているところでございます。今回新しい材料といたしましては、財務省のほうで既存のデータを用いまして、こういった住宅扶助などの水準がどうなのかというものを点検してみたところでございます。具体的に住宅扶助について申し上げますと、住宅扶助は上限の範囲内で実費が支給されるという仕組みになってございますので、こう申し上げては何ですが、生活保護の受給者の方からしますと、家賃を安くするというようなインセンティブが働かない仕組みになってございます。右上の細かい字ですが、実際に4割ぐらいが上限の前後に張りついているような実態になってございます。したがいまして、この水準が適正であるということは極めて重要でございますが、残念ながら、左の下のほうに書いてございますとおり、住宅扶助基準の水準の検証は今まで行われてきてございません。今回、左のグラフでございますが、財務省で既存のデータを用いて点検してみたところ、限られたデータではございますが、2割程度高いのではないかという結果が得られたところでございます。

 18ページ、19ページ、これもそれぞれ、子供のいる世帯への加算扶助とか、19ページにつきましては冬季加算、これは冬の暖房の掛かり増し費でございます。これについても細かな説明は省きますが、いずれも財務省のほうでデータを用いまして検証してみましたところ、やはり生活保護受給者の受給額のほうが同じぐらいの所得の方の消費額を上回っているというような結果が得られました。生活保護の水準につきましては、厚生労働省のほうで専門的な検証を行った上で見直すということになってございますので、今回このデータを提示させていただいて、厚生労働省のほうで早期な検証を行うよう求めてまいりたいと考えてございます。以上でございます。

〔 新川主計官 〕 続きまして、資料2、社会保障マル1をごらんください。資料が前後いたしまして申しわけございませんでした。

 1枚おめくりいただきまして、総論的な部分、改革の基本的方向性ということで全体を俯瞰した図が1ページにございます。現状、給付と負担の均衡が不可欠ということでございますが、まず給付面におきまして、均衡をとっていくために必要な改革、赤枠でくくってございますが、イ、ロ、ハ、ニと4つ示してございます。内容についてはこの後より詳しくご説明したいと思いますが、この4つ、公的な保険あるいは給付でどこまで面倒見るべきなのか、それから、特に医療・介護ですが、提供体制をいかに効率化していくのか、それから、診療報酬・介護報酬の抑制とその抜本的な見直しが必要ではないか、それから、重要な役割を担う保険者機能の発揮・強化、こういった点が必要ではないかということでございます。

 それから、負担のほうをごらんいただきます。保険料負担あるいは公費負担ということであります。保険料につきましては今後、高齢化の進展に伴ってより引き上がってくることもございます。そうであればこそなおさらということでありますが、保険料による支え合いの維持・強化ということで、負担能力に応じた負担あるいは支え手をふやすと、こういった内容。それから、公費につきましては、将来世代に先送りすることなく、給付と負担の均衡をきちんととっていくということでございます。

 その意味で、2ページをごらんいただきますが、これは消費税率が仮に10%に上がった姿を前提にした今般の一体改革の給付と負担の公費の部分でございます。10%に引き上げましてもなお19.3兆円の不均衡が生じている状態でございます。

 1枚おめくりいただきまして、3ページ以降は、先ほどの給付面での4つの改革について総論と各論で申し上げます。3ページ目、全体を俯瞰して、介護保険も一部含みますが、我が国の医療保険制度の特徴ということで模式図のようなものが描いてございます。赤でくくったところが日本の特徴と言えようと思いますが、国民皆保険、フリーアクセス、自由開業制、出来高払いといったところだと思います。非常にいい側面もあります。例えば患者側にとっては、保険が適用されて比較的低い負担で、自由にフリーアクセス可能だというところで、医療機関にかかりやすい仕組みができている。それから、提供側も自由に開業して、診療の量に応じて出来高で、たくさん診れば診るほど支払われると。こういった構造にございますから、こういった部分について一定の、例えばフリーアクセスであれば緩やかなゲートキーパー機能とか、医療機関の側も必要とされる部分の提供体制の再編のようなものが必要でしょうし、診療報酬の支払い方についても出来高要素の見直しが必要になってこようかと思います。

 4ページは、これは公的給付でどこまでカバーすべきかということでございます。中ほどは既に対応を行いつつあるもの、70−74歳の医療費自己負担とか、あるいは介護について一定以上所得者の負担割合、これについては今、国会に法案を提出しているところでございます。

 なお残された課題といたしましては、下にございますように、例えば70歳以上の高額療養費で外来と入院で違った水準になりますけれども、負担能力という面でいけば、ここをそろえていく必要があるのではないのかと。それから、一旦検討されましたが、受診時定額負担です。少額の負担であっても、例えば1回100円といったようなご負担を広くお願いする。あるいは、後ほど申し上げますが、大病院にいきなり来られた外来の患者さん、こういった方々についてはやはり一定のご負担をお願いするということが必要ではないかということでございます。

 続きまして、5ページ、引き続き、公的給付範囲の見直しであります。保険の範囲ということで、介護に関して現在法案を提出してございます。例えば軽度介護を受けられている方、あるいは特養に入り得る方、あるいは診療報酬の中では、例えば市販品類似薬に対する保険を提供すべきか否かということで、来月からの診療報酬改定ではうがい薬のみの処方については保険適用から除外するといった対応をしてございます。

 なお残された課題といたしましては、ジェネリックを超えた部分の薬剤使用ですが、ジェネリック価格を超えた部分についてまで公的保険で見る必要があるのかどうか。それから、うがい薬以外の市販品類似薬、例えば湿布薬とか漢方薬、こういったものに対する公的保険の適用を行うべきかどうか、こういった検討が必要だと考えます。

 さらにということでありますが、6ページ、混合診療といいますか、保険外併用療法の対象について今さまざまなセクションでご議論がなされているところでありますが、私どもとして特に関心ありますということで、黒ポツ2つ目をごらんいただいて、高度医療などの評価をするための評価療養というものがありますが、それを保険適用するか否かという検証に当たっては、費用対効果を厳しく検証していただきたいと。ともすれば効果のみのほうの検証は行われますが、それに見合った費用なのかどうかといった検証が特に必要と考えます。

 さらに、新しい技術の採用を見るのであれば、当然既に保険適用になっている薬剤とか医療技術、これについても費用対効果の低いものは外していく。あるいは、より低いコストでより同じような効果を出すことができる技術があるのであればそちらのほうに代替をすべきで、古い薬剤なり技術については除外すると。逆評価療養という名前をつける方もいらっしゃいますが、こういったことを検討する必要があるのではないかと思います。

 それから、混合介護は制度上は許されているわけでありますが、それをより普及・促進するための施策。あるいは、保険が適用になるという意味であれば、医科、歯科、調剤以外も、例えば柔道整復にも保険が適用になりますけれども、規模をごらんいただきますと4,000億を超える規模になっております。診療所部門だけとりましたら小児科を超えるような規模になってきておりますので、こういった部分についての適正化も重要な課題になりつつあるということであると思います。

 次のページをごらんください。7ページ以降は今度は医療・介護の提供体制の効率化ということでございます。グラフがございますが、病床数と1人当たりの実績医療費の関係を棒グラフと折れ線グラフでお示ししてございます。病床数が多ければ1人当たり医療費も多くなるということが明確に見てとれますので、提供体制の効率化が給付の抑制に大きく寄与することが明らかであろうと思います。7ページの下は、昨年来財政審においてもご議論いただきました病床の再編に関するもの。これは関係法案の提出を今やっているところでございます。

 8ページ上をごらんいただきますが、さらにということで、プログラム法で検討項目になって来年の国会に法案提出を予定しているものでございます。例えば入院時の食事あるいは居住費、こういったものについても在宅との均衡を図っていく必要があろうと思いますし、先ほど申し上げました、大病院にいきなり外来患者さんが来た場合、これについては大幅に患者負担引上げを行うべきではないかと。それから、先ほど来ご議論のありました、データの活用による医療・介護サービス提供体制の制御といったことが課題になってまいります。

 それから、8ページ後段でありますけれども、終末期医療の問題ということで、財政論としてどうするかということはデリケートな問題ではありますけれども、ファクトとして、今、年間100万人強お亡くなりになる方がいらっしゃる中で、この死亡数が150万人を超えてくると。病院完結型の医療から地域完結型の医療へ移っていくという流れの中でこれをどうしていくのかという問題があろうと思います。

 次のページでございます。9ページ。国保の都道府県化ということで、あえてここは、提供体制の改革の中に書かせていただきました。国保の都道府県化には、保険単位を大きくすることで保険財政の安定化を図るという側面もありますが、さらに医療提供体制に関して実質的な行政権限を持っております都道府県に財政責任を持っていただくということで、より効率的な提供体制に向けてのインセンティブを持っていただくと、こういった側面も大きいと考えます。これについても、来年法案提出の方向でございます。

 それから、10ページは医療法人制度の改革ということです。これにつきましても、提供体制の再編のためには、法人の再編・統合、こういったものをより容易にする必要があろうということで、例えばホールディングカンパニー制度の創設、あるいはまちづくり会社との連携、こういったものをより促進していくといったことが重要ではないかということでございます。これについても、プログラム法に基づき検討がなされているところでございます。

 続きまして、11ページでございます。今度は診療報酬・介護報酬の抑制と抜本的見直しということであります。昨年の年末、診療報酬改定についてはごらんのような中身の決着をしたということでございます。その中で26年度予算では、3つ目の丸でありますけれども、提供体制の再編として新たな財政支援制度が活用されることになりました。これを前提とすればということでありますが、診療報酬に関して過度な政策誘導というよりは、より包括的で簡素・透明、安定的な仕組みを目指して体系的見直しが必要であろうと思いますし、そのときに必要な医療とか、この地域でどんな医療が要るといったような水準についても、ITなんかも活用して客観的なデータによって合理的に改定していくといった見直しが必要だろうと考えます。

 それから、12ページは、今度は医療法人ではなくて、社会福祉法人の課題ということです。特に介護の関係、特別養護老人ホームの経営主体というのは営利企業の参入が許されておりませんので、事実上、社会福祉法人及び地方自治体のみが運営するということになってございます。介護保険が導入されたということを考えますと、従来の昔やっていた社会福祉事業で措置を行政がする、そのかわりを社会福祉法人がするという時代から、利用者が契約して福祉サービスを受けるという大きな転換があったのだと思います。介護費用についても11兆円という非常に巨額なお金を投じているわけでありますので、本来的な意義がちょっと変わってきているのではないのかと。こうした中で、規制改革会議では社会福祉法人に対して、課税もされていないこともありますので、収益の一定割合について地域貢献活動への拠出を義務づけるといったことが検討されてございます。

 もちろんこういったご検討は極めて重要だと考えますが、その上でということですが、13ページをごらんいただきますと、特に社福法人によって経営されております特別養護老人ホームの経営状況、財政審でも何度かご議論いただいたわけであります。フロー・ベースでもストック・ベースでも大きな黒字あるいは巨額の内部留保という数字が出てございますので、社会への還元と同じぐらいあるいはそれ以上に、介護基盤、介護のインフラの最も重要なことは介護人材の確保ということでございますので、介護人材の処遇改善といったようなものにむしろ積極的に活用していただく必要があろうと思います。内部留保の存在を勘案して、こういったものを活用する。介護報酬改定に当たっては、こういった内部留保の活用を念頭に置きつつ、検討も必要であろうということでございます。

 それから、保険者機能をよりよく発揮していただくという意味では、ご案内のとおり、職業、年齢で保険者が分立しているという我が国の状況を踏まえますと、先ほどまさにお話がありましたように、例えば74歳から75歳になったらそこで記録が切れてしまうというようなことで、生涯を通じた医療記録がないといったこともあり、また、おのおのが自分の都合で保険者を選べないということで、なかなかサービスの競争が生じないというのでインセンティブを発揮しにくい。あるいは、被用者保険をとってみますと、後期高齢者の医療費は負担するけれども、その運営なりに参加できないといった、こんな中身があろうかと思います。

 14ページ下をごらんいただきますと、現行の後期高齢者制度を基本的に生かしつつ、その上にありますように、この費用をどう負担するかということについては長年の議論を経て一定の落ちつきを見たものでありますので、これを基本的に生かしつつ、1つは国保とか後期高齢者で保険者機能を発揮・強化していただきたい。これは都道府県化ということになろうと思います。被用者保険については、先ほどあった後期高齢者支援金のインセンティブをもう少し強くする。それから、ICT化を行うといったことでございます。

 次のページ、15ページでございます。1つは国保、それから、後期高齢者、これは保険者機能を強化していただく。都道府県の役割は強くなってまいります。それから、被用者保険においては、今、メタボ健診をやったかどうかで後期高齢者の支援金の増減を行ったりしておりますけれども、もっと医療費の効率化の度合いといったアウトカムに基づいて、そういう努力をした被用者保険については後期高齢者支援金を減額し、努力が認められないあるいは足りないというところであれば増額するといったインセンティブが働く仕組みが必要であろうと存じます。

 次に16ページでありますが、今度は供給面ではなくて負担面ということで、保険料による支え合いの維持・強化という論点があろうかと思います。現在プログラム法に基づいて検討されておりますのは、後期高齢者支援金の総報酬割導入、それから、特に所得の高い国保組合に対する補助の見直しといったものが検討されてございます。

 さらにということで、課題にございます、介護についても後期高齢者は同様の問題がございますので、総報酬割の導入を検討する。あるいは、介護保険の被保険者の年齢の引下げ。それから、後期高齢者医療の保険料軽減特例措置の廃止については、平成20年度に後期高齢者医療制度が動き出したときに、70−74歳の方については本来2割のところを臨時に1割に据え置くと。同時に、75歳以上の方については保険料負担について、これも臨時に一部の方の保険料を軽減するという措置をとってございます。これについても本来に戻すような検討が必要になろうと思います。それから、資産の把握といった面で、特に高齢者はそうでしょうけれども、所得は低くても資産が大きい方について、一定の負担能力がある場合には負担をお願いするといった検討も必要であろうと思います。

 最後に17ページでございますが、子ども・子育ての関係でございます。ご案内のとおり、子ども・子育てについては、待機児童解消加速化プランということでこれを着実に推進するということでございますが、それに基づく費用ということで、子ども・子育ての新法、新システムが動き始めますと、消費税をもって新たに追加する財源が0.7兆ということでございます。ただ、子ども・子育て会議等ではもっと財源が要るのではないのかというご議論がなされているところでございます。

 具体的に申し上げますと、待機児童の解消のための量的拡充に必要なのが4,068億円と今試算されておりますが、質の改善については3,000億円から6,000億円超といったものがございます。量的拡大はイメージしやすいのですが、質の拡大は少しイメージしにくいと思いますので、恐縮ですが、参考資料とございます資料4の15ページ以下をごらんいただければと思います。

 量的拡充と質的拡充と両方書いてありますが、質の改善という中身が、例えば15ページの一番上の項目、職員配置を改善する。あるいは、職員の方に研修をしていただく。研修をしている間は人手が足りなくなるから、その間新しく保育士さんを雇う。あるいは、例えば16ページの一番下をごらんいただきますと、保育園の中で保育士さんが子供の面倒を見るだけではなくて、外で地域の子供を見る、あるいは相談に乗るという、こういった地域活動を先端でやる保育士さんを雇うということです。いずれも重要な事業ではあるのでしょうけれども、全体所要額がありますので、こういったものについて中を見ていただく必要があると思います。数百億円、おのおの各項目かかるというような中身になっておりますので、他とのバランス等も見る必要があるのではないのかということでございます。

 その上でということですが、17ページに戻っていただきますが、3つ目の丸をごらんいただきますと、0.7兆円というのは消費税率が10%に引き上げられたときに手当てする額ということでありますので、実は10%に上がる前は段階的に上がりまして、かつ平年度化するまで時間もかかります。それのペースに応じてという必要があると思います。仮にこれを、赤字公債で賄うなどということになりますと、子供のための施策を子供につけ回ししてやるということでありますので、これは論外だろうと思います。

 さらにということですが、その上で0.7兆円をさらに上積みした財源が必要になるということに仮になるのであれば、一番下の丸にありますように、仕事と家庭の両立支援によるメリットを受ける事業主の負担を求めていくということを含め、財源を検討する必要があろうと思います。質の改善の0.4兆円を超える部分の内容というのは、先ほどごらんいただいた非常にたくさんの項目があったものでありましたので、この中身について他との重複がないのかとか、あるいは優先順位はどうなのかといったようなものを吟味しながら手当てしていくという必要があろうかと思います。

 それから、新しい数字のご紹介ですが、先ほどジェネリックに対する保険の範囲ということで申し上げました。何度か財政審ではご検討をお願いしました。現状のご報告をいたしますと、資料4の参考資料の4ページをあけていただきますと、ざっくり言って、ジェネリックは4割と申し上げましたが、一番直近のデータでいきますと46.9%と改善はしてきているという状況にございます。

 以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、以上、お2人の主計官のご説明に関して、ご意見、ご質問、どなたからでもどうぞ。恐縮ですが、ご発言の方は名札を立てていただけますと幸いです。

 では、土居委員。

〔 土居委員 〕 ご説明どうもありがとうございました。医療・介護、年金と幅広いので、一つ一つ、3点にわたってお話をさせていただきたいと思います。

 まず最初にご説明あった年金なのですけれども、今年は年金の財政検証の年で、かねてから私自身もこの財審で厳しく財政検証の結果を見るべきだということを申し上げておりましたけれども、先ほど主計官からのご提起で、資料3の13ページにありますように、この財政検証で特にオプション試算のところは非常に重要なものになってくるのではないかと思います。特に年金の支給開始年齢の引上げという問題は、やはり試算結果を見きわめながら国民的に議論をする必要があるのではないかと思います。そういう意味では、厚生労働省には、このオプション試算で年金の支給開始年齢を引き上げた場合にどういう年金財政の影響があるかというところをしっかり示すようにぜひともお願いしたいと思うわけであります。

 それと同時に、ヨーロッパの例を見ますと、就労期間ということもさることながら、平均寿命と連動させて年金支給開始年齢を引き上げるということも議論として出てきているということは我が国としてしっかりも踏まえるべきで、単に就労期間が延びないと支給開始年齢は引き上げられないというだけの議論に終わってしまわないように。受給期間が伸びるということになってしまいますので、平均寿命の延びと支給開始年齢の引上げというところは連動させた議論がこれから必要ではないかと思います。

 それともう1つは、この議論は、今の高齢者に対しての議論ではないということをはっきり言うべきで、むしろ今の三、四十代以下の若い世代の人たちに真剣に考えていただくという問題なので、今もう年金を受給していらっしゃる方にノイジーな声で上げるな上げるなと言われても若い人たちは困るだけなので、若い人たちの問題だということをしっかり提起していく必要があると思います。

 それから、2点目は医療の話です。先ほどの松田先生のご議論を踏まえながらこの議論を進めていく必要があるのではないかと思っております。1つは、将来的な医療費がどのような推移になるのかということ、特に地域医療ビジョンが今後各県で策定され、各県で医療費の推計をするということになるわけですけれども、単に各県でそれぞれやればいいというだけでなくて、先ほども私、申し上げましたけれども、国費として医療費に財源を投入するということであるからには、国としてもより精緻な医療需要の推計ないしはそれと整合的な医療費の推計をやっていくべきではないかと思うわけです。

 先ほどの松田先生のプレゼンにもありましたけれども、患者調査とか病院報告を使って、もう既に国として社会保障に関する集中検討会議で医療・介護に係る長期推計を出しています。私もこれに関して、『医療経済研究』という学術雑誌に論文を書いたことがあるのですが、よりうまく工夫することを通じて将来推計がより細かくできるのではないかと思いますので、その点、財政審として少し考えていただきたいなと思います。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 はい、どうも。

 では続いて、老川委員、鳥原委員、井堀委員の順でお願いいたします。

〔 老川委員 〕 ありがとうございます。この資料でいえば、資料3の14ページになると思いますが、生活保護について伺います。これは、年々伸びてきていて、高齢者世帯が伸びているということがあるわけで、これは考えによっては当然といえば当然、高齢者がふえてきているからということだと思うのですが、いわゆる生活保護と関係のない高齢者世帯の伸び率と、それから、生活保護の受給者としての高齢者世帯の伸び率、これは大体並行していると見てよろしいのでしょうかということが1つです。

 それからもう1つは、高齢者ということとは連動しない、かねてから問題になっている不正受給といいますか、本来であれば立派に働ける体力も能力もあるにもかかわらず、働けないとかいろいろな理屈をつけて受給しているというケースがしばしば指摘をされて、いろいろ改善の努力は行われているとは思うのですが、そういった改善の実績というのはどうなっているのだろうか、それから、それをさらにもっと改善していくためにはどういうことが必要なのか、ここら辺を具体的に教えていただければと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、2点ご質問でしたので、主計官からお答えをお願いいたします。

〔 土谷主計官 〕 1点目でございますが、データを確認させていただきますので、お時間をいただければと思います。

 2点目につきましては、まさに不正受給は問題でございまして、傾向といたしましては、いろいろな意味で不定受給に対する問題意識が高まってございますが、不正受給の件数なり額はどちらかというと増加傾向にございます。政府としての対応でございますが、16ページをごらんいただきますと、昨年の秋に生活保護法を改正してございまして、その1つの柱が不正受給対策の強化ということでございます。いろいろな議論がございましたが、例えば福祉事務所の調査権限の強化とか、罰則の引上げ、あとは、特に医療扶助におきましては必ずしも適正な支給が行われていないのではないかというようなことで、後発医薬品使用の原則化とかそういったさまざまな法制上の措置はとらせていただいているところでございます。不正受給は生活保護制度に対する信頼を確保してくためにも非常に重要な課題だと思ってございますので、引き続き取り組んでまいりたいと思ってございます。

〔 吉川分科会長 〕 では、鳥原委員。

〔 鳥原委員 〕 ありがとうございます。4月から消費税率の引上げによって国民に大きな負担を求める中で、歳出の削減の徹底は不可欠だということは、改めて確認しておかなければならないことだと思います。いわゆるプログラム法に基づく個別の改革法案が平成26年度から27年度にかけて順次国会に提出されますが、歳出削減の本丸と言える社会保障給付の重点化・効率化を軸にした制度改革は手綱を緩めることなく断行しなければならないと思います。

 その個別法案の1つとして本国会に医療介護総合確保推進法案が提出され、医療提供体制の再構築や介護保険制度改革の一歩が踏み出されたわけですが、今年はいよいよ医療保険制度改革の議論が集中的に行われることになります。これまでも意見を申し述べてきましたが、被用者保険から高齢者医療への拠出金負担があまりにも過大となっていて、これ以上の負担を求めることはできない状況にあります。企業や現役世代に偏った高齢者医療の財政負担構造は見直すべきであると思います。

 特に今年大きな争点となります後期高齢者支援金への全面総報酬割の導入につきましては、所得に応じた負担の公平化を図ること自体に反対するものではありませんが、それ以前に既に被用者保険全体として保険料収入の約5割を高齢者医療のために拠出しており、8割もの健康保険組合が赤字に陥っている状況にあります。これ以上の保険者努力には限界があって、ここで無条件に全面報酬割への移行を強行すれば、6割の健康保険組合がさらに大幅な負担増を強いられることになります。大変大きな影響と波紋を呼ぶことになると思います。そういう意味で全面総報酬割導入の議論に際しては、少なくとも健保連が主張するように、前期高齢者医療への公費投入を検討するなど被用者保険全体としての負担増を抑制する具体的手段をあわせて示していくべきであると思います。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では、井堀委員。

〔 井堀委員 〕 先ほどの土居委員の最初の点に関連することです。私も平均寿命が延びているときに年金の支給開始年齢を引き上げるのは賛成で、それを就労の引上げを必要条件とするとなかなかうまく進まないというのもそのとおりだと思います。その意味では、高齢者の就労を促進すると同時に、年金支給開始年齢が引き上がったときに、働いていない場合、要するに、そこまでの期間労働市場に参加できない場合に、個人勘定の積み立ての年金をあらかじめ充実させておいてそこで埋めるという、その方法も同時にもう少し充実させる必要があります。そうしていけば、必ずしも公的年金の引上げ支給開始時期と労働市場の高齢者の促進とは1対1に連動しなくても公的年金の引上げが可能だと思います。

 そことの関連で今度の財政検証について。今の若い世代はやはり公的年金に関してかなり不信感を持っていますから、支給開始年齢の引上げが若い世代にとってメリットになっているということを定量的にぜひ示していただきたい。財政検証というと、どうしても公的年金の積立金が将来もゼロにならないというので持続可能だという、そういうところが論点の対象になるのですけれども、同時に世代別の損得勘定をやはりきちんと出して、支給開始年齢を引き上げると、若い世代にとっても一生の払う年金の負担と給付との比率が現状よりも改善するという、そういうデータが出てくれば支持されるのではないかと思います。

 そのときの1つの大きな論点は、自分が払う保険料以外も、雇用主の払う保険料と、それから、公的な、公費で払う負担をきちんと世代別に割り振って出していただきたい。そういった、世代別の損得勘定の計算の中で支給開始年齢の引上げが若い世代にとってよりメリットがあるということが定量的に出てくれば、若い世代もこういった支給開始年齢の引上げへの政治的な支持がかなり出てくると思いますので、その点よろしくお願いします。

〔 吉川分科会長 〕 どうも。

 富田委員、碓井委員の順で。

〔 富田委員 〕 我が国の社会保障の今の仕組みの原点は、1960年代の初めに確立したと言われております。皆保険皆年金。それから半世紀です。半世紀たってようやくその安定財源の確保が始まるのが今年と私は位置づけております。半世紀もかかっているということに驚きを禁じ得ないわけですけれども、これから迎えることはさらに大きな問題です。

 2025年というのは、私は団塊の世代なのですけれども、団塊の世代が全部後期高齢者になる。2020年までにはプライマリー収支を黒字化しなければならない、また、2025年以降は団塊の世代のジュニアが高齢者になる。そういう中で、先ほど鳥原委員より総報酬割の問題等ご指摘あったわけですけれども、そういう長いスパンでやはり問題を考える必要があるということが第1です。

 第2に申し上げたい点は、先ほど参考資料、資料4の4ページに、ジェネリックの資料があったのですけれども、その次の5ページを見ているのですけれども、これは1人当たり国民医療費について平成23年度の実績が示されております。これが将来どういう政策でもってどのように変化していくか。

 本年度予算について、当然増、自然増ということでよく予算編成において精査されたと思うのですけれども、当然増、自然増以上に大事なコンセプトというのは、私は、純粋に高齢化によってふえる医療費がどれだけなのか。それは名目GDPスライドで、年金の人口構成が変わるだけでどれだけ医療費が変わるか。もっと言えば、1人当たり国民医療費がGDPスライドで将来にわたってふえていくというのが、多分ピュアエージングによる医療費の増加というふうに見ていいと思うのです。

 だから、そういう形に向けて、あるいはそれでも非常に巨額の医療費だと思うのですけれども、これから先の年齢階層別の1人当たり医療費、それと今あるような議論とがどういう関係にあるのかということも踏まえながら議論していきませんと、非常に多様にわたる問題ですので。介護との関係を議論する場合にも、将来の1人当たり医療費の動向を見すえて、それがニュートラルといった場合には、多分名目GDPスライドで変化する場合、これはあたかも年金における物価スライド、マクロ経済スライドと同じような概念で捉えて、いつもそういうことを見すえながらご説明もいただきたいし、我々も議論したいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では、碓井委員。

〔 碓井委員 〕 生活保護と介護保険、両方に共通の問題なのですけれども、いわゆる世帯分離ということは、例えば介護保険でいえば介護保険料の算定との関係で、それから、生活保護でいえば生活保護の要否との関係で、事実上結構進行しているように私は思うのですが、そういう世帯分離という問題について制度論として何か議論されていることがありますでしょうか。

〔 吉川分科会長 〕 主計官。

〔 土谷主計官 〕 いろいろホームページ等見ますと、やはり世帯分離することによりまして保険料を節減するとか、そういうことはいろいろ出てございます。実態の運用上どういう対応しているのか、今にわかにはここではわかりかねるところもございます。そういう問題があるということは承知してございます。

〔 吉川分科会長 〕 では、佐藤委員、赤井委員、板垣委員の順でお願いいたします。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。まず最初に素朴な質問からなのですけれども、資料3の16ページのところ、今回、医療扶助で後発薬品の使用を原則化というのは非常に大きな一歩だと思うのですが、ここには例えばこれでどれぐらい医療扶助が下がりそうかという試算が出ていないので、これは、実際どういう見込みなのかなということと、実効性というところで、医師が後発医薬品の使用を認めた場合なので、認めるインセンティブがどこにあるのかなということで、この実効性を含めてどれぐらい節約できるのかという見通しがあればという話です。

 それから、これは若干感想になるのかもしれないのですけれども、こういう社会保障の適正化あるいは抑制というのは、今できることと将来にわたってやらなければいけないことと多分何段階かに分けて考えなければならない。さっきから出ている支給開始年齢は、土居先生とかがご指摘のとおり、これは将来世代というか、今の私たち、将来の年金受給者に関わるお話です。では、足元でできることは何なのだろうということを考えたときに、これはほんとうは税調の議論かもしれませんけれども、年金課税の問題がやはり出てくるのではないかと思うのです。それは今の年金受給者に対する対応として。

 特に最近、例えば消費税の増税にあたっての簡素な給付なんかでも非課税世帯を対象にしたりするのですけれども、実は公的年金等控除がありますので、多くの年金受給者が実は非課税世帯になります。そうすると、実は彼らがそういう給付まで受けるという仕組みになっていますから、単に年金給付の適正化というだけではなくて、ある意味、本来ターゲットにするべき給付がそうではない人たちにも行っているケースも出てきかねないので、ここはやっぱり真剣に考えなければいけないかなと思います。

 それから、少し長い目で見たときに、先ほど井堀先生からもお話があった、例えば貯蓄というか積み立てのような貯蓄口座を若い人に持たせてもらうということは、これは、多分医療にも通じることであります。いわゆるメディセーブというお話があったと思いますけれども、やはり将来の医療費についても自己負担の比率が高まる、あるいはジェネリックがふえていってなかなか先発医薬品を使えなくなるというのであれば、その負担を埋めるような形でのメディセーブ的なもの、これは多分非課税貯蓄でいいと思うのですけれども、こういったものも充実させていけば、将来の社会保障の抑制に寄与できるのかなと思いました。

 それから、少し大きな話に最後になってしまうのですけれども、先ほど総報酬割のお話があったと思うのですが、日本の場合、まずは職域保険と地域保険のちゃんぽんになっているということと、やはり単に保険料を上げれば、正規雇用に対する事実上の課税みたいな部分があります。というのは、払った保険料の半分は後期高齢者への拠出金とか支援金、高齢者に対する移転で消えていくわけなので、事実上、保険料という名前の税金をとっているといってもいいわけで、それは正規雇用に対する課税であるというふうに断言してもいいぐらいですよね。となると、果たして今の仕組み、保険の原理というのがあたかも成立しているかのように社会保障の問題、社会保険の問題を考えていっていいのかどうか。ほんとうはこの中にはもう既に税が実質的には入っているというふうに考えて、抜本的な見直しも迫られてくる時期も来るのかなと思いました。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 ご質問があったと思いますが、ジェネリックは先ほどの松田先生の資料の50ページにもミクロの数字が、削減率が載っているのですが、先ほど新川主計官から、全体ではマクロで直近5割弱まで上がってきていると。このマクロの積み上げで何か数字が出ているのですかね。ジェネリックを使うことによって幾らぐらい削減できるか、それが1点ご質問だったかなと思うのですが。

〔 佐藤委員 〕 特に、生活保護の部分です。

〔 吉川分科会長 〕 では、土谷主計官のほうでしょうか。

〔 土谷主計官 〕 まず、医師にとってどういうインセンティブがあるのかというお話でございましたが、これは基本的に医薬品をどういうものを処方するかという話でございますので、やっぱり医師のプロフェッショナルとしての判断を尊重するというものがまず大前提としてありまして、そのうえでどこまでできるかということで、後発医療品の使用を原則化するということを法律で定めたところでございます。その前の過程といたしましては後発医薬品の使用を強制するとかそういうような議論もございましたが、さすがにそこまでは無理だろうという話でこういう結果となってございます。

 それで、効果のほどでございますが、実はこの法改正の部分が施行されましたのが今年の1月ということになりますので、まだ具体的な数字はございません。

〔 吉川分科会長 〕 わかりました。

 では、赤井委員、お願いします。

〔 赤井委員 〕 では、全体としての意見を1つと質問を1つしたいのですけれども、全体のマクロ的なお話では、もう既に意見が出たように、やはり制度改革を行うためには、社会保障の全体のお金の流れがどのようになっていて、それが国民それぞれの人にどういうメリット、デメリットがあるのかということを説明しないと、なかなか制度改革への理解は得られないのかなと。それは年金でも医療でも介護でも、特に世代ごとに損得がこの制度改革でどのように変わるのかということを随時、年金、医療、介護において明示をしておくというのが、国民の理解を得るためには必要かなと、それが意見です。

 質問は、医療・介護のほうの社会保障マル1の12ページの社会福祉法人の話です。僕もこの研究をやっていたわけではないのですけれども、何となくここにはいろいろな課題があるかなと思っていたのがなかなか分析されなかったり、議論がされなかったのが、ここまで議論されるようになってきたのは前進かなと思います。

 1つ質問なのは、規制改革会議が収益の一定割合を社会貢献活動にという提言をしている背景はどういうものがあるのか。規制改革会議ですから規制をふやすというのはどうなのかということと、次のページにも書いてあるとおり、やはり内部留保等があれば、将来に向けた人材育成の将来投資へ回す仕組みとか、あとは、競争があまりないから競争させるとか、その前の税制優遇措置や介護報酬を見直すとか、そういう方向で考えていくべきではないかと思うのですが、規制改革会議がそうなっていない理由と、あとは、この内部留保は将来的にどういうふうに使われると考えられているのか、その点について教えてください。

〔 吉川分科会長 〕 では、2点目がご質問だったので、新川主計官、お願いします。

〔 新川主計官 〕 まず、規制改革会議のご議論の背景まで責任持ってお答えできないかもしれませんが、ここにありますように、例えば税制上の優遇措置がなされている、あるいは補助金の受け入れをやっているということもあって、アメリカで似たような仕組みがあるのですが、アメリカでいう福祉法人というものは、ある地域からドネーションなりを受けながら活動してかなり黒字の経営もやっているところもあるのですが、そのかなりの部分を社会貢献として社会に還元していると、こういう実態もあります。日本の社会福祉法人においても、もともとは違った形での社会貢献が想定されていたものでしょうが、今いろいろなビジネスの形態等もありますので、黒字が出るということであれば、納税するという考え方もあるのですけれども、別の形での社会福祉活動をしてほしいということではないかと私は理解しています。

 それから、内部留保をどう使うのかということについて、これは逆に言うと、なぜ処遇改善に使っていただけないのかというような議論をしている過程で事業者の側からのご意見として出てくるのは、例えば特別養護老人ホームを経営しておられて、いつかは建てかえなければいけないと。建てかえるために、負債側か資産側かやや混同した議論かもしれませんけれども、一定のたくわえをしておく必要がある、そのための準備であるというご説明がしばしばなされることになりますが、仮にそういうニーズがあったとして、その適正水準は何なのかということについてまで分析はまだそれほど進んでいないように思います。

〔 赤井委員 〕 ぜひ財政に貢献を。

〔 吉川分科会長 〕 では、続いて、板垣委員、田近委員。

〔 板垣委員 〕 大きな問題点とか議論は大分出ましたので、少し個別のところで教えていただきたいのが、資料3の6ページ、高齢者の就労について、緑の中の2番目、高齢者の就業率の高い都道府県ほど医療費が低くなる傾向があるという図があります。これについては様々な見方をすべきだと思います。基本は、高齢でも健康であるから働けるのであって、医療費も安くて済むと読むべきではないでしょうか。しかし、長野県は医療が非常に行き届いていて、わりと健康な人も多く、働けるということもあったりして、医療費が低く抑えられているように思いますが、一方で、沖縄に高齢者が非常に多いのに、医療費が低くはないというのはどうなっているのだと思います。つまり、このグラフは今言ったこと以外にも非常に複雑に読まなければいけないはずなのに、「働けば医療費が安く済む、だから高齢者もどんどん働きましょう」という解釈だけでは、説得力を持ち得ないのではないでしょうか。

 それから、9ページ、女性の就労について。ここのM字カーブ、ここは簡単に済ませているようではありますけれども、30代、40代というのは出産、子育てというところに入ってくる中で、なぜM字になるのかということですね。専業主婦になってしまうのか、あるいは保育所がないから働けないのか、いろいろな事情がこのM字のくぼみには入っているわけです。ただ、子供が小さい時に専業主婦になって子育てに専念するということは決して悪いことではありません。現実にそういう判断でこの時期に働かないという選択をする人も多いはずです。こういう事情を汲み取った上でこの図表を使いつつ人を説得していかないと、何のためにこのグラフがあるのだということがわからないと思うのです。もちろん働く人が多くて、遅くまでずっと働いてくれれば年金財政が安泰になると、こういう理屈なのだろうとは思いますけれども、財政の論理だけでなくやはりそういう現状の説明をきちんとされたほうがいいのではないかと思います。

〔 吉川分科会長 〕 一応この図の解釈について、主計官からお願いいたします。

〔 土谷主計官 〕 最初のご指摘の相関関係につきましては、おっしゃるとおり、こういうものは多様な解釈ができるものだと思ってございます。出典といたしましては厚生労働省の「労働経済の分析」からそのまま持ってきたということでございますが、この使い方については多様な解釈が必要であるということを前提とした上で使っていきたいと思ってございます。

 後段のほうのグラフにつきましては、かなり説明をはしょらせていただきましたが、おっしゃるとおり、女性の30代・40代の労働力率、ここにM字カーブが見られる原因というのはさまざまなものが指摘されてございます。年金の話でございましたので、年金について阻害要因になっているものということで考えられるものとして「130万円の壁」を説明させていただいたところでございます。舌足らずでございました。

〔 吉川分科会長 〕 田近委員。

〔 田近委員 〕 1点具体的な質問なのですけれども、いよいよ医療及び介護の総合的な確保を推進する法律が出てきて、一体改革のときからこの中で一番大きな問題だと思っているのは、基金というのは何なのだろう、どう使われるのかということです。事実認識が間違えていたら正していただくとして、今の法律でも、新たな基金の創設と医療・介護の連携強化、いろいろなことをやるようですけれども、質問は、この基金をどう使って、この基金がうまく使われたか、使われなかったというのはどう判断するのか、この財審ではこれからこの点をどうウオッチしていったらいいのかと、それを説明いただきたい。

〔 吉川分科会長 〕 では、主計官からお願いいたします。

〔 新川主計官 〕 実は現在提出している法案で、この基金ですが、新たな財政支援制度ということになっているわけですけれども、実は、何回か前の財政審でもご質問があったわけですが、人材の確保、それから、提供体制の改革のために使うということが法律上のこと、さらにその配分等について今後具体的な基準ができていくということなのですが、実はまだ細かな基準に至るまでできていないところがありますので、基準ができていく過程でその中身についてよく見ていかなければいけないということが1点です。

 それから、検証のすべということでありますと、先ほどの子育て支援の質の改善みたいなところもありましたけれども、病床再編のために幾らを割り振ったということでほんとうに病床の再編になったのかとか、あるいは人材の確保といってほんとうに医療提供体制を変えるための確保のために使われているのかといったようなところについて、特に基金でありますから、毎回毎回事後的に厳しくチェックしていく必要があろうと思いますし、内容について、もっとこうするべきではないのかということについて継続的に財政審においてもご議論いただかないと、ともすれば現状追認型のお金の使われ方になりかねませんので、そこは引き続きよく監視、ご指導お願いいただければと思います。

〔 田近委員 〕 監視、ご指導はこの場で続けるとして、やはりさっきの松田さんのお話の続きですけれども、病床の機能分化は診療報酬のあり方と同時に議論しないといけなかったと私は思います。包括払いを進めていく。そして、その包括払いの範囲で質の高い適切な医療のできないところは、自然に高度治療の病院から外れていくと、そういうメカニズムが埋め込まれないまま基金でやれるかということは、これはほんとうに、監視するのは当然だとしても、非常に大きな問題だと私は思います。これは感想です。

〔 吉川分科会長 〕 では、竹中委員、田中委員。

〔 竹中委員 〕 資料3で高齢者の働き方とか、それから、資料3の10ページでは女性の労働者25万人、改正後の拡大といったような、これは女性だけではないのか。短時間労働とかが出てくる中で、いわゆるチャレンジドをタックスペイヤーにと私たちは言っていますが、障害のある人たちの働くというテーマについて、労働力としては全く浮き上がってこないのがすごく寂しいなということがあって、でも、それは現実なのだろうなと思いながら資料を拝見していました。

 まだまだ私たちの活動というか、私たちのようなミッションの活動が広がっていないのだろうという反省も込めて、こういった資料の中に、障害のある人たちのこういうふうな働き方があって、彼らが社会にこれだけの貢献ができるというようなデータが出るような日が来るように、各省ともご一緒に頑張っていけたらいいなと思ったのが1つです。

 それから、実に細かいことなのですけれども、もう1つは、資料2の4ページに、受診時定額負担という、病院外来診療に行ったときに1回100円などの少額負担ということが今般の一体改革時に検討されたが見送られたということで出ていました。消費税が広く薄く公平にというような意味でいうと、ユニークでおもしろいかな、発想してはあるのかなと思ってこれを拝見したのですけれども、検討されたけれども見送られた理由と、もうこれでこの話は見送られたから終わりになるのかというところで何か情報があれば教えてください。

〔 吉川分科会長 〕 4ページの下を見ていただくと、「検討する必要」と書いてありますけれども、この審議会としてはこういうことを再チャレンジというか、もう1回議論してもいいのではないかということだと思うのですが、主計官から、このワンコインがマクロでどれぐらいの数字になるかという、その数字ともども少しお答えいただければ。

〔 新川主計官 〕 やや古い数字になってしまいますが、一体改革のときに検討された、これを導入した場合の公費への影響ですけれども、100円をとることで1,300億円、医療費になりますとその約3倍ということになろうと思います。

 それから、検討の過程で成案に至らなかったときに比較的多くの方の意見として出てきたのは、これは、実は高額療養費制度の充実のために、低所得者の方の月額上限を下げるためにこれを財源にしてはどうかというコンテクストで出てまいりました。両者合わせるとちょうど財政ニュートラルになるような形での提言だったのですが、その2つをあわせてご説明した結果、比較的多く出た意見は、なぜ患者の負担を軽減するのに患者の負担を求めるのかというご意見がその過程では出てきたということでございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございます。

 では、田中委員。

〔 田中委員 〕 ありがとうございます。先ほどの板垣委員のご指摘に少し啓発されたというか刺激されたところがあるのですけれども、高齢者の就労の問題を指摘されたのは非常に重要だと思っています。前回の中長期の財政計画にかかる議論の中では、さほど検討はされていませんでしたけれども、人口ピラミッドを見る限りは、かなりお年になっても働かなければこの国を支えられないような人口構造になっていると思います。ただし、おそらく年をとった方が同じ職位でひとつの組織に居続けることは現実的ではないので、ワーキングシェアをどうするとか雇用の流動性をどうするかという話になって、その結果としてこのお話になるのだろうと思います。

 今まで財政の中長期の議論をするときにも、実はいろいろな変数があるのでしょうけれども、例えば就労年齢が70までになったときにどうなるのかというようなことの議論はあまりされていなかったと思うのです。働くというのは生活の半分以上を占めています。働くためには転居も移動もしますし、購買行動にも影響してくる。したがって、おそらく国の形を変えるぐらい大きな話ではないかと思うのですけれども、そういった視点があってもいいのではないかなと先ほどの板垣委員のご説明を聞いて感じました。以上です。

〔 吉川分科会長 〕 増田委員、お待たせしました。

〔 増田委員 〕 すみません、遅れてきて主計官の説明しか聞いていないのですが、感想というかコメントなのですけれども、非常に重要な視点がこの資料にいろいろ入っているわけです。ですから、これを全部実行していかないと社会保障制度がきちんと直らないと私は思います。

 例えば資料2、新川さんが先ほど説明した保険者機能の発揮・強化というのは非常に重要なことであって、14ページ、15ページぐらいに書いてありますが、それにしても保険者機能をきちんと発揮する上でのインセンティブの付与がやはり今まで不十分だったのではないかなと私は思うのです。この15ページに後期高齢者への支援金の加算・減算の制度のアウトラインが書いてありますけれども、例のメタボ健診の実施については、たしか、0.1%未満の保険者だけ対象にして、ここに書いてある0.23%の範囲で加算・減算になっているはずですが、法律上10%まで上限が決まっていると思うので、私はやはりこういっためり張りを拡大して、そのあたりははっきりとインセンティブを与えるという形にしていかないといけないのではないかなと。

 それから、よくこういうことを言うと乱暴だとすぐ怒られるのですが、例えば保険者だけではなくて個人に対しても、この中で喫煙者がいると怒られてしまいますけれども、喫煙だとか、それから、やはり健診だとか、そういうことを保険料の中で上げ下げするようなインセンティブを付与していかないといけないのではないか。今の保険制度上は個人への金銭的なインセンティブを与えるということは禁じられているわけですが、もちろん不当な差別につながらないような形が必要だと思いますけれども、喫煙だとか運動習慣だとか健診だとか、そういったことはやはり私はもっと大胆にいろいろな議論をしていかないといけないのではないかと思います。

 それから、経営者の皆さん方に対しても特に意識を高めていただく必要があるので、データヘルス計画できちんとデータに基づいた、着実な実施が当然必要です。例の女性の登用のときになでしこ銘柄みたいな話があるのですが、名前はいろいろあるかと思うのですが、私はやはりそういう銘柄みたいなものをつくって、健康経営銘柄みたいなことで、社会全体として単にそれを賞揚するだけではなくて、それが具体的に融資制度だとか格付などにきちんと影響するように、あるいはコーポレートガバナンスに関する報告書の記載事項にも従業員の健康管理に関する取組みをきちんと記載して、それで各経営者が意識を持ってこうしたことを実施していく、要は、健康予防についての大きな国民的運動をもっと動かしていくようなことをしていかないといけないところまで来ているのではないかということであります。

 そのほか、先ほど見ておりましたら、これは別のことですが、地域でそこそこの病院間がお互いに競争関係にあって非常に非効率的なことが行われているものを、非営利ホールディングカンパニー制度、今日たまたま日経の一面のトップに出ていましたけれども、そういう大きな経営統合をして、それで合理的な、診療の科目から、日にちから、それから、人材の動かし方から何から、経営について医療から社会福祉まで全体を見ていこうということは、やはり大変必要なことであり、こういったことも確実に実行していく必要があるのだろうと思います。

 今日たまたま午前中に産業競争力会議の関係の部会があったので、今言ったようなことを言っておいたのですが、多分違うところからまた別な反論はいろいろと出てくると思いますが、やはり今申し上げましたようなこと、ここのペーパーに書いてあるようなことを確実に実施していかないといけないのではないかと私は思っております。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 どうぞ、高原委員。

〔 高原委員 〕 

経営者として現在検討していることを申し上げます。それは、適切な排泄ケア用品をなるべく初期の段階から活用することによって健康寿命を延伸させ、国家財政に大きな影響を与えている医療費・介護費を抑制することです。

 先ほども施設での介護から、在宅介護へとシフトする件について議論がありましたが、在宅介護においてご家族が最も困窮しているのは排泄ケアです。排泄ケアは介護を受ける方お一人お一人のADL(activities of daily living:日常生活動作)に合せて適切な方法を選択することが大切なのですが、日本メーカーがつくっているような高機能の排泄ケア用品を活用するとADLが改善する傾向にあり、現在これを検証中です。

 この適切な排泄ケア用品を用いることによるADL改善と、その効果による財務負担の軽減ですが、「老人向け施設5業態」(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)に入所の約200万人のうち約8割がオムツを使用しており、その内の約100万人が本来一日の大半をベッドで寝て過ごす方向けの「テープ止めタイプ」を使用しています。この「テープ止めタイプ使用100万人」のうち3%に相当する3万人が体を動かしやすい「パンツタイプ」に移行し、自立排泄へと促進できた場合、1年あたりの介護費用を137億円が削減できるという試算をしています。この3%が将来において30%まで高めることができれば、1,370億円の削減となり、財政負担軽減に対し相当の効果が期待できます。また、日本以上のスピードで高齢化が進むことが予測されるアジア各国に対して、高齢化先進国である日本の排泄ケアモデルを展開することを視野にいれており、アジアでのビジネスによって得た収益を税として国家に収めることによって、財政に貢献できると考えております。これらの取組みについては、今後も必要に応じて本分科会にご報告申しあげますので、ご支援を賜りますようお願い申しあげます。私からは以上です。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。では、大体時間になりましたので、今日の議論は終えたいと思います。

〔 土谷主計官 〕 すみません、会長、冒頭の老川委員からのご質問について回答だけさせていただければと思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうぞ。

〔 土谷主計官 〕 生活保護世帯数の比較のデータはとれなかったのですが、全体の60代並びの70代の人口の伸びに比しましてその同じ年代の生活保護受給者の伸びは、特に足元、上回っているという状況でございます。具体的にいえば、60代、70代の生活保護受給率というのは年々高くなりつつあると、そういう傾向は見てとれます。

〔 老川委員 〕 ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。先ほどの受診時の定額負担100円玉、ワンコイン、私は賛成論者なのですが、主計官からその反対論を伺っていてなるほどなと思ったのです。なるほどという意味は賛成ではなくて、反対論に反対なのですが、私たちからすると、ローリスクとハイリスク、ローリスクについてはもう少し負担して、ハイリスクをみんなでしっかり支えようというのは当然と思うのですが、一方で、患者の負担軽減を負担増で賄うというのは意味がないではないかというその反対論、しかもそれが力を持ったということを伺って、やはり世の中の議論ではレトリックというものが重要なのだなと。ギリシャの昔からレトリックというのがいかに重要かと、これは私たちの財審、この審議会にとっても大きな教訓ではないかなと伺っていました。

〔 竹中委員 〕 すみません、一瞬だけ。

〔 吉川分科会長 〕 竹中委員、どうぞ。

〔 竹中委員 〕 すみません、最後に高原さんがおっしゃったお話なのですけれども、おむつしていても働けるのですよね。うちのおかんももう認知症が進んできておむつしていますけれども、そのおかげで一緒に旅行に行けるのですね。つまり、消費者になれる、お金を使う人になれるのです。ですから、今のお話は、個人的におむつのメーカーでいらっしゃるからと、とられ方がどうだったかわからないけれども、どんな状況になってもその人の能力が生かせるというのは、私は非常に重要な視点だと思います。私たちがやっていることも、決して障害者だけ働くのではなくて、この働き方がたくさんの人にきっと何か新しい知恵になるかなということなので、そういう意味で少し一言だけ。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。では、時間ですので、今日の議論は以上としまして、次回は4月4日9時半からこの会議室で開催し、各論として、地方財政、文教及び公共事業をご審議いただきます。

 最後に、前回の分科会で私にご一任いただきました長期の財政見通しの試算につきましては、起草検討委員の小林委員、田近委員、土居委員及び富田委員にお願いすることになりました。4名の委員の皆様方には、大変お忙しいと思いますが、よろしくお願いいたします。

 なお、本日の会議の内容の公表につきましては、いつもどおり私にお任せいただき、会議後の記者会見でご紹介させていただくことにさせていただきます。会議の個々の発言につきましては、大変恐縮ですが、皆様方から個別に報道関係者等にお話をすることのないようお願いいたします。

 では、これで閉会といたします。どうもありがとうございました。

午後4時03分閉会

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