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財政制度分科会(平成25年4月12日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
平成25年4月12日
財政制度等審議会


 財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

 平成25年4月12日(金)15:00〜17:06
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

1.開会
2.事務局説明
・「日本の経済社会構造と財政」

3.有識者ヒアリング
・「我が国財政の現状と政策上の課題」
 高田創 みずほ総合研究所 常務執行役員 チーフエコノミスト
・「経済成長と財政の関係について」
 熊谷亮丸 大和総研 チーフエコノミスト

4.質疑応答
5.閉会

配付資料
○ 資料1      日本の経済社会構造と財政
○ 資料2      我が国財政の現状と政策上の課題
○ 資料3      経済成長と財政の関係について
○ 資料4      「平成25年度予算編成に向けた考え方」の反映状況


出席者 

分科会長 吉川 洋            

竹内大臣政務官
木下主計局長
中原次長
福田次長
岡本次長
可部総務課長
工藤司計課長
大鹿法規課長
小宮調査課長
余島主計官
富山主計官
神田主計官
諏訪園主計官
角田主計官

分科会長代理     田近 栄治  
 委員

秋山 咲恵
井伊 雅子
井堀 利宏
岡本 圀衞
倉重 篤郎
黒川 行治
古賀 信明
角   和夫
竹中 ナミ
土居 丈朗
富田 俊基
鳥原 光憲
早川 準一

 臨時委員赤井 伸郎
葛西 敬之
小林 毅

午後3時00分開会

〔 吉川分科会長 〕 それでは、定刻ですので、ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には、ご多用中のところご出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日は、まず、事務局より、「日本の経済社会構造と財政」について説明をしていただきます。次に、有識者ヒアリングといたしまして、お二人の方からお話を伺い、最後にまとめて質疑を行います。

 また、先日の審議の際、岡本委員よりお話がありましたが、これは財審での議論が政府の施策に具体的にどのように生かされたのか、少しその点を説明してもらいたいというご要請がありましたので、皆様にご審議いただき取りまとめました「平成25年度予算編成に向けた考え方」の反映状況につきまして、お手元に資料4としてお配りさせていただいております。

 また、倉重委員、小林委員からお話がありました、「税収と経済成長率の見込みと実績」、これも我々が議論を進める上で重要な参考資料であるという、このようなご指摘がありましたので、このデータも机上配付させていただいております。説明は省略させていただきますが、後ほどごらんいただければ幸いです。

 それでは、議事に移らせていただきます。まず事務局より、「日本の経済社会構造と財政」について説明をお願いいたします。

〔 小宮調査課長 〕 調査課長の小宮でございます。私から、お手元の資料1、日本の経済社会構造と財政の資料につきまして、ご説明を申し上げたいと思います。

 資料の1ページ目をお開きいただきたいと思います。これからご説明申し上げる内容は、委員の皆様にとってはある意味常識といいますか、知っているよということもあろうかと思いますけれども、復習かたがたご説明申し上げたいと思います。

 まず、生産年齢人口の減少と経済成長率のページでございます。1ページ目でございますが、やはり中長期的に考えた場合に、人口動態というのは経済のパイの伸び縮みといいますか、成長にはやはり非常に大きな影響を与えているという側面がございます。資料を見ていただければわかりますとおり、生産年齢人口は、もう既に1995年あたりをピークに減少に向かっております。他方、年代ごとの成長率も、そういう意味では高度成長期、そして80年代、90年代と経て、やはり徐々に平均的なレベルは下がってきているという現実がございます。

 また、実質GDP成長率を要因分解した場合に、生産性の伸び、これは青い部分でございますけれども、これもやや小さくなってきてはおりますけれども、就業者の変化率、これは2000年代にはもうマイナスに入っておりますし、人口動態から推計が可能でございまして、今後さらにマイナス幅は大きくなるという予想になっております。

 1枚おめくりいただきまして、そういう中で、企業部門はどういう動きになってきているのだろうかという視点でございます。経常利益について言えば、リーマンショック時に一時的にかなり谷と言いますか、下がりましたけれども、現状、その前のレベルに向かって回復はしてきている。

 他方、雇用者報酬、これは右目盛りでございますけれども、95年を100とした場合に、現状90前後のところにあるという状況になっております。そういう中で、企業側としては、右側でございますけれども、内部留保額、これはオレンジの部分でございます。黄色の部分は配当金等でございますけれども、オレンジの部分につきましては、リーマンショック時、マイナスに振れましたけれども、また留保をむしろためる構図になっている。

 このような中のキャッシュフローはそれなりに潤沢にあるわけですけれども、設備投資、左下でございます、黒い点線になっておりますけれども、キャッシュフローの伸びに比して、実はそれほど伸びていない。もちろんこれは将来への成長への期待、投資をしてどこまでリターンが返ってくるかということも当然左右されますので、一概に申し上げられませんけれども、おそらく乖離がやはり広がってきているというのが見てとれると思います。

 実際、設備投資をマクロで純で見た場合、つまりグロスの設備投資から資本減耗分を引いた観点で言いますと、ここ10年ぐらいはほぼ横ばいということでございます。成長との関係で言いますと、資本ストックの伸びがほとんどないということであれば、かつ労働の供給が、むしろ今マイナスになっているわけでございますので、よほど生産性が伸びない限りは、経済全体のパイ自体が増えにくいという構造になっているということでございます。

 また、3ページ目でございます。世帯の状況でございます。例えば右上、非正規職員、これは非常に比率としてはやはり伸びてしまっております。これは将来に対して、やはり現状のフローが不安定なものですから、なかなか安心感を持ちにくいという要因の1つになっているかと思われます。

 また、若年失業率、この途中で上がって下がっているのは、これは団塊ジュニアの世代が労働市場に参入する前後で若干数字が動いてしまうのですけれども、大きな流れで言いますと、左から右にかけて、若干やはり若年者の失業率は上がってきているということが見てとれると思います。

 また、マクロで言いますと、家計貯蓄率でございますけれども、これはSNAベースでございます。したがいまして、老齢人口が増えれば、それだけ取り崩す世帯が増えるということでございますので、足元ではかなり貯蓄率は1%もしくはもう0%台になってしまっているということでございます。

 また、4ページ目以降でございますけれども、まず人口、もう1回おさらいでございます、生産年齢人口も既にピークアウトし、総人口も既にピークアウトを始めております。長期推計に基づきますと、今後この高齢化率は、少なくともどんどん高まっていくことは見越されておりまして、ほうっておけばこれに対応する政策経費の増大が見込まれているところでございます。

 5ページ目、少しそれを人口ピラミッドで見たものでございますが、ご承知のとおり、団塊の世代そして団塊ジュニアの世代、2つこぶがございます。団塊の世代はもう既に60歳を超えておりますけれども、65歳以降は基礎年金の受給が開始されますし、また介護1号被保険者にもなるようになります。また、2015年以降、この団塊の世代がまさに75歳以降の後期高齢者の世界に入ってこようとします。実際には20年前後に、おそらく突入してくると思われます。またそこで社会保障関係費の、そういう意味では歳出圧力が生じるということが見込まれてございます。

 6ページでございます。こういう社会構造の変化は、歳出の面でもやはり構成が変わってきて、ここに反映をしております。この表自体は実際の公債の発行をせざるを得なかった額を、各要因別に分解したものでございます。平成2年度を基準として、そのときの歳出歳入の構造から、どの項目がどれだけ増えているかというのを並べているものでございますけれども、見てのとおり、平成10年代前半ぐらいまでは公共事業関係費の伸びが、そういう意味では多かった。それ以降、やはり社会保障支出の伸びが非常に大きくなっている。これは社会のニーズに応えた形になっているということでございます。

 他方、経済のパイが伸びにくくなっておりますから、税収は思ったほど入っていない。平成2年度のレベルから比べると、相当入っていないという状況になっているわけでございます。

 7ページは、それを単年度同士で比較したものでございますけれども、ちょうどバブルが一番ピークでありました平成2年度のころは、これだけ税収がございました。他方、社会保障費は17.5%、現状は社会保障費は30%を超えております。また税収は半分にも満たない構造になっているわけでございます。

 8ページは、これをOECD諸国で比較したものでございます。日本は全体の中では小さな政府の部類でございますけれども、社会保障支出の比率は伸び、それ以外の支出はOECDの最低になっているというところでございます。

 9ページでございます。こういう社会構造の変化で歳入歳出構造が変わってきておりますけれども、マクロ全体としてのファイナンス資金の出し手、取り手の構造はどう変わったかと、この20年間で見たのが9ページでございます。資金の出し手のほうで言いますと、家計の金融資産は曲がりなりにもそれなりに増えました。これが左側の青いグラフ、家計が左側に矢印が伸びている部分でございます。それから資金の取り手のほう、企業部門は、これは非金融法人でございますけれども、むしろ矢印が左に向いている。つまり取らなくなっている。つまり金融負債を切り詰めて、縮減してきたという状況でございます。

 ほかにも海外とのやりとりもありますけれども、一番矢印が大きいのは、一般政府の金融負債部門ということでございまして、全体の構図としては、企業はお金を借りて活動をしなくなり、その分、一般政府部門がお金を借りて活動を拡大させている。これはあくまで相対的なものでございますけれども、そういう構図が見てとれると思います。

 10ページをお願いいたします。そういうマクロの状況の中で、経常収支でございますけれども、貿易収支、これは紫色の部分でございます。徐々にその幅が平均的には小さくなってきて、特に震災以降、エネルギーの確保の観点から、そういう意味では鉱物性燃料の輸入等も増えておりますので、足元ではむしろもう貿易収支は赤字の世界に入っている。

 全体の経常収支としては所得収支、つまり海外の投資へのリターン部分が以前よりは増えてきているおかげをもって、経常収支全体としては黒字を保っておりますけれども、今後この趨勢がいつごろまで続きそうかということは、中長期の財政ファイナンスを考える上では、1つの重要な視点になろうかと思います。

 最後のページ、11ページでございます。これは国内に少し視点を限らせていただいておりますけれども、一般総債務の額、これが24年度末で1,000兆を超えております。他方、そのファイナンスをしている、特に家計部門に着目してみますと、純資産ベースでは1,193兆円ということでございまして、かなり近接をしてきているということでございます。もちろん企業部門、それから海外部門もございますので、これをもって、直ちにということにはならないかもしれませんけれども、ファイナンスの面では、やはり構造がかなり変わりつつある、もしくは今後変わっていくだろうということは見てとれると思います。

 私からは、以上でございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 それでは次に、お二人の有識者から説明をお願いいたします。最初に、我が国財政の現状と政策上の課題、このお手元の資料2といたしまして、高田創、みずほ総合研究所常務執行役員、チーフエコノミストからお願いいたします。

〔 高田みずほ総合研究所チーフエコノミスト 〕 みずほ総合研究所の高田と申します。どうか、よろしくお願いいたします。

 私からは、ちょうど我が国の財政の現状と政策の課題ということではございますけれども、主にこの市場を中心としてどんなような変化が起きているのか、今の財政をめぐり、どのような状況の中で、資金の流れの中で起きているのかというところを、主に市場の観点からお話をさせていただこうかと思っております。

 私は25分ぐらいお時間をいただいておりますので、その辺を中心にと思っておりますが、今日はこちらにございます、9のキーワードということで全般的なお話をさせていただこうかと思います。まず先週、マル1日本の10年長期金利は、世界の史上始まって以来の低金利、0.315を記録した史上最低金利。第2のキーワードは、バランスシート調整、それからマル3国債は身代わり地蔵なんていう、ちょっと何を言いたいんだというような言葉がございますが、マル4それから日本の国債市場は信頼関係に依存しているのではないか、それからマル5失われた20年、マル6ソブリンワールドカップ、マル73本の矢による脱デフレ3段ロケット、マル8そして財政と金融の関係、これも含めた上で、マル9国債が国力であるのではないか、今の政治課題が国債に通じているのではないかという論点を、今日はお話をさせていただこうかと思う次第でございます。

 それでは最初、まず、これは10年の長期金利でございますけれども、先週0.315、これは一時的ではございましたけれども、人類の歴史始まって以来と言われるくらいの低金利水準になったということでございます。そもそも0.4台という水準が、ちょうど10年前にございましたけれども、それを下回る状況になっている。これだけ未曾有な状況になっているということの背景を、財政の問題等踏まえた上で考えてみたいというのが、今日の趣旨の1つということでもございますし、また同時に、先週このような状況になったのは、大変な金融政策だったわけでございますので、そういう中での、最近言われておりますファイナンシャル・リプレッションといわれるような金融との関係も最後の話題にさせていただこうかと思う次第でございます。

 先ほど日本のことを申し上げましたけれども、実はアメリカの長期金利でございますが、これは足元若干上がっておりますが、昨年アメリカの歴史始まって以来の低水準になり、こうした状況が日本だけではない、グローバルな状況でもあるのだということも1つの論点でございます。いずれにいたしましても、市場参加者の誰もが体験したことがない世界にグローバルに踏み入っているという状況もあるわけでございます。

 私自身、債券市場、国債の市場ということで、今30年近く携わっているのですけれども、正直申しまして、日米の金利がここまでなるというようなことは、全く考えてもいなかったというくらいの状況でございます。

 そもそもこの財政の問題は、先ほど課長様からご説明がございましたけれども、1つの大きな問題とすれば、大規模な国債の発行、そしてプライマリーバランスの赤字化といったところがあるのは、言うまでもない点でございます。これがワニの口と言われるような状況、財政の歳出的な拡大、そして国債発行の継続というような状況が続いているということでございまして、これが問題であるということは、言うまでもないことでございます。

 それでは、なぜこうした状況がということを考えますと、当然のことながら、歳出と税収という両面があるわけでございまして、とりわけ歳出につきましてはここにございますように、先ほども小宮調査課長様よりご説明がございましたけれども、高齢化の進捗に伴い、社会保障関係費が増加しているといったところが大きいわけでございまして、そうした中で、税と社会保障の一体改革といった構造問題に対応するといった議論が出てきているのは当然でございます。また、そうしたものが市場の信頼の支えにはなっているということではございます。しかしながら、税収というもの、先ほどご説明がございましたけれども、なかなか改善がないというのも現実の姿ということでございます。

 こうした状況の中、公債残高ということになってまいりますと、先ほどのご説明にもございますけれども、大変大きな金額にまでなってきたということでございまして、こうした構造的な問題、これは先ほどご説明させていただきました社会保障関係といったこともございますけれども、実はその裏に、この何十年間かにわたる、もう1つの大きな構造問題があるのではないかという問題提起が次の論点でございます。

 これはどういうことかと申し上げますと、1つは、ジャーナリスティックには第二の敗戦といわれるくらいの大きなバランスシート調整。その1つの姿は、この絵にございますような、大変な資産デフレと言われるような状況が、日本の場合は90年を挟んで存在しました。それまで80年代までの大変な信用拡張という流れ、これがバランスシートを両建てで拡大する中で、資産価格の上昇、中でも不動産を中心としたものがあったわけでございますけれども、こうした区誤記がこの90年を挟みまして大きな転換を迎える。不動産だけで、ここにもございますように、1,000兆円近い、すなわちGDPの2年間分に値する、それをもって第二の敗戦と言われても、あながちうそとも言いにくいという部分もあるということでございます。

 こうした構造でございますけれども、同様に、これは世界レベルではグローバルな金融資産と、それから実際のGDP、実物資産というふうに考えていただいてもよろしいかと思いますが、この対比をとったものを考える必要が生じます。先ほど、日本の場合は90年のところでの大きな節目があったわけでありますが、グローバルには、この90年代以降、2000年代以降も大変な金融の拡張、レバレッジの拡張というものがございまして、2007年が節目になりました。すなわち、ちょうど80年ぐらいのころはほとんど1対1だったGDPと金融資産の関係が、4倍近いところまでというような状況。日本の場合は90年、アメリカ、ヨーロッパ的に言えば2007年というような1つの節目が出てきたということでございます。

 こうした状況の中でのバランスシート調整ということになってまいりますと、この概念図のところにございますように、信用拡張が起こるときは両建てでどんどんバランスシートが、どのセクターも拡大するわけでございますが、先ほど90年というところで申し上げたように、資産価格が大幅な縮小に転じる。しかしながら、先ほど申しました負債は残ってしまうというような状況の中で、真ん中に挟まれた金融を中心とした資本問題が生じます。それに対応した対応措置というようなことでの国債で、実質的にバランスシートのギャップを埋めていくような状況というもの、こうしたプロセスがバランスシート調整としての90年代以降、10年、20年にわたる状況であったと考えることができるのだろうと思います。

 こうしたようなバラスシート調整、私は3原則でと考えておりまして、この絵も90年代からずっと使わせていただいているのですけれども、そもそも今回の日本の90年をピークにしたバランスシート問題、すなわち、この真ん中のところにあります企業が主だったわけでありますけれども、日本の場合、主に企業、中でも建設、不動産、ノンバンクを中心とした過剰債務、これを真ん中の肩代わりプロセスの中で金融、そしてそれが国が肩代わりをするような状況として、そしてその裏側で国債が発行されることになりました。私はこの国債の発行される状況を、民間の債務を肩代わって大きくなった「身代わり地蔵」というような言い方をさせていただいたというのは、まさにこの流れでございます。

 そして、まさにこの国債というものは、こういう中での、悪く言えば「時間稼ぎ」をするということでございますが、よく言えば、「時間を確保する器」としての役目を果たし、しかしながら、それは必ず左側の成長戦略といわれるようなところで償還を図るというようなプロセスというのが、基本的に国家レベル、ソブリンレベルでの調整のときに、これまで重ねられてきた歴史でございます。

 そういう中で、成長戦略は一番理想的には生産性向上、いろいろな新技術というものがあるわけでございますが、多くの場合は、過去の歴史をさかのぼってまいりますと、外需、中でも自国通貨が安くなる中で対応してきたケースが多かった。そういう観点で申しますと、日本の場合は90年代以降、円高という流れにありました。通常、今回のアメリカなりヨーロッパでも自国通貨が下がっておりますし、例えば過去の歴史をさかのぼりますと、90年前後のスカンジナビア諸国、また90年代後半のアジアも大きく為替が下がったケースが多くございましたが、日本の場合はこの20年間、2000年代前半を除けば円高の圧力が極めて強かったといったところに、1つ大きな制約もあったのではないかと思いますし、また、そういう状況の中で先行き期待、この3つでございますけれども、それが毀損してしまった部分というものも大きかったと考えることができようかと思います。

 ちょうどここにございますのは民間債務の名目GDP対比でございますが、日本の場合、80年代の拡張、90年にピークを迎え、それからの失われた10年、実際にはここにございます、大体2007年近辺でひとつのめどをつけた、これが前のページの肩代わりプロセスと申しましょうか、ひとつの債務の軽減、民間の縮小プロセスでございますが、実はそのときが、ちょうどこの上のところにありますアメリカ、ヨーロッパの債務調整のピークにぶつかってしまったというところに、またこの6年間における難しさというものを抱えていたということでございます。

 ただ、このプロセスの中で、12ページでございますけれども、こちらにございますのは、日本とアメリカの企業、中でも上場企業でございますが、実質無借金企業の比率でございます。日本の場合は、ここにございますように、実はもう半分近くが実質無借金になるくらい、民間の債務の軽減プロセスができている。90年の頭のころには2割台といった状況が、今では半数近くまで、アメリカを超えるくらいまでなっているという状況でございます。

 こうした状況は、同じくこちらの絵をごらんいただきますと、こちら一番細い線が日本にあたるものでございますけれども、実は日本の90年と、アメリカ、ヨーロッパの2007年を同じスタート時点にして書いたものでございます。すなわち、先ほど私は「身代わり地蔵」と申し上げましたけれども、この20年間にわたるプロセスは、日本の民間セクターの債務がだんだん小さくなる中で、公的な債務がどんどん大きくなる。ちょうど交差しているのが二〇〇三、四年ぐらいのころでございます。こちらのもう2つの線はアメリカ、ヨーロッパでございますが、似たようなプロセスを後から17年おくれでたどっていると考えることもできるのではないかと思う次第でございます。

 このプロセスは、先ほどのご議論の中にもございましたけれども、主体別の資金過不足という観点から申し上げますと、ちょうど民間、中でも事業法人が従来は不足セクターであったところが、バランスシート調整以降、余剰に転ずる。そうした中で家計、事業法人が余剰になり、その反対として中央政府といったところの赤字が大きくなるというようなプロセスになっている、これが典型的にバブル崩壊後の日本の状況であったわけでございますが、14ページ右側のアメリカも事業法人と家計がここ数年間は余剰化する。また一方で、15ページ左側のユーロ圏も、同じく民間、家計が余剰化しています。

 日米欧、いわゆる従来の先進国といったところが、民間セクターの家計と事業法人が同時に余剰化するという状況は、戦後初めてなのではないかと思います。先ほど私は最初のところで、史上最低金利と申し上げたわけでございますけれども、史上最低金利に日本、それから昨年アメリカもそうでありましたし、ユーロ圏、ドイツ等もそうだったわけでありますけれども、それらの低金利の1つの要因というのは、こうした民間セクターの資金需要の低下といったところにも、1つの要因があろうかと思いますし、こちらも先ほど私が申しました、日本の90年、アメリカの2007年というものをスタート時点にして書いたものでございますけれども、その後、アメリカの2007年以降の不動産市場の状況というものは、日本のバブル崩壊後と類似した動きになっておりますし、また、政策金利の動きというものも極めて似た後をたどるような状況になっているということでございます。

 幸いにも、アメリカはこの調整6年たってまいりまして、ある程度めどがつくところにはきております。しかし、ユーロ諸国については、まだこのプロセスが数年残ると見るべきではないかと私ども思っている次第でございます。

 こうしたプロセス、改めてこちらのページ、先ほどと同じ絵でございますけれども、日本の場合は肩代わりは終わったと私はある程度思っております。ただ、問題は、先ほどのこの絵で言いますと両端、3つの課題の中で言えば、残る課題は左側の成長戦略、いわゆる債務を償還する原資となるものでございますし、また、それを伴いまして、先行きの期待を改善していくというような対応というものが同時に必要になります。

 また同時に、このプロセスでございますけれども、なぜ日本の場合はこのような形で肩代わりができてきたのかということを考えてまいりますと、やはり肩代わりができる前提となっていた国債市場の信頼、もしくは財政規律への信認といったようなものがあったわけでございまして、そうした国債市場の安定を守りながらも、今後の残る課題である成長というもの、また先行きの期待の改善というようなものをどういうふうに考えていくのかが重要です。

 そういう意味では、このたび新政権になってからの動きというようなものが円高是正、そして先行きへの期待改善というものは、ある面で言えば、この絵の中で言えば、両端のところへの改善への期待というものに対応したものと考えることもできましょうし、また、そういう環境になったのは、アメリカの調整も6年たつ中で、ようやく終盤を迎えるような状況になってきたということではないかと思います。

 しかしながら、このプロセスにはまだまだ多くのハードルがあるというところも十分考えざるを得ないというところが、これからの状況でございます。

 そもそも先ほどの議論の中にもございましたけれども、日本の財政状況でございますが、海外と比べましても極めて厳しい状況であるのは言うまでもないことでございまして、こちらに財政収支の国際比較、またプライマリーバランスの国際比較というものも言うまでもない状況でございます。

 そうした状況の中で、日本の国債の場合は常にこの10年以上暴落論があり、実は私もこの10年間、何度か国債の暴落というふうにタイトルした本も出させていただいたほどでございますが、しかしながら、何とか暴落にならないで済んでいたのはどうしてかも考える必要があります。その背景にある信認が失墜すれば、当然のことながら暴落というシナリオも現実のものとなり得るということも認識せざるを得ないわけであります。

 それでは、すでに暴落に近いような欧州においては、ソブリン問題ということが言われたわけでございますけれども、またかつてもいろいろな国々で、途上国などでは問題があったわけでございますけれども、どこに問題があったのかということを考えてまいりますと、やはり私は大きな問題としますと、ISバランス上の経常収支といったところに大きな論点があったのではないか。日本の場合は、何とかこうした経常収支の黒字、確かに財政赤字は大きいわけでございますが、何とか国内対応できることが大きかった。アメリカのように、基軸通貨国でという信頼があるわけでもございません中では、こうした経常収支の黒字が大きかった。

 逆に言えば、かつての途上国の問題であり、昨今のユーロの問題というのは、やはりこうした中でのISバランス的な問題に大きな論点があったということもあるでしょうし、またそういう中で、特にユーロの問題につきましては、副次的なソブリンと言われますような為替調整がない中での難しさという、難しさを考えているということではないかと思います。

 今、申しました論点は、ここの22ページ目のところで言えば、日本は大変な財政赤字というようなことでございます。この点を見ればギリシャ並み、ギリシャ以上ということではあるわけでございますが、しかしながら、この図にございますように、経常収支はまだ小さくなったとは言いながらも黒字を続けています。この問題は、私はこの十何年以上ずっと使っておりましたたとえでございますけれども、日本の場合は、日本の「家」としては借金はない、対外的には黒字である。しかしながら、同じ家の中でお父さんがお母さんからやりとりをしていると。その中で、お母さんが不安になってきた。要は、お父さん、お金を返してくれるのかしら、それとも家から出ていこうかというのが、キャピタルフライトということになるわけで、そういう中での、何とか信認というものは、この両者の中の信頼。それは私はある面では財政規律への信頼で国内の中とどまっていると考えることができるのではないか。

 また、今申し上げた点は、あくまでも「同じ家」、すなわち経常収支が黒字であるということを前提としながら、しかしながら、その中での国内での信認、私はこれは「市場に対する愛」と申し上げておりますけれども、こうした点というものが、ここにあります暗黙の信頼。先ほど3条件と申しましたけれども、マル1いずれは成長にということの支え、そこでの租税高権を発揮し、マル3それをガバナンスとして完工するというような状況、マル2そういう観点から申し上げますと、私はここのところ、例えば先ほど議論させていただきました税と社会保障の一体、そしてまた消費増税といったようなものは、それだけですぐにプライマリーバランスが均衡するものではございません。しかしながら、少しでもこういう「信頼への証」を示しているというような部分が、私は今の市場を支えているのではないかと思います。

 逆に言えば、そういうこともできないのかということになってまいりますと、大きな問題となり得る。そういう目で見れば、ここにございますような論点、まさに昨今言われておりますいろいろな政策上の論点は、まさに国債市場というものに直結しているのだというようなことが重要ではないかと思いますし、また、そうした状況の中での大きな要因は、経常収支が重要です。しかしながら、先ほどご指摘ございましたように、既に貿易収支は赤字化している状況でございます。こうした状況の中で、いかに経常収支の黒字を保つことができるのかというようなことに対する不安というものも、既に市場では広がってきているわけでございます。

 これに対する見方というものは、いろいろな見方がございます。私どももいろいろなシミュレーションをさせていただいておりますけれども、ここにありますのは私どもの見通しと、もしリスクケースがあればということで示させていただいたものでございます。私ども、基本的にはまだ貿易赤字は続きながらも、経常収支のところは次第に回復に向かうのではないかという見込みをしておりますが、しかしながら、リスクケースがあるとすれば、今後も資源価格がどんどん上がり、また円高の上昇というものが続く場合には、場合によってはマイナスに経常収支が転ずるリスクというものがあり得る。

 そういう意味では、こうしたものに対応できるような対応をするかといったところも非常に重要な、先ほど申しましたように、今の政治的な課題が国債に通じるといった論点ではないかと思います。また、こうした経常収支の黒字というものの背景には、何とかここの28ページにありますように、国内中心の国債の保有というような状況。もちろん海外の投資家が入る中での安定というものはございますけれども、少なくとも国内で完結し得るような状況にあるという部分が非常に大きな支えとしてあるわけでございます。まだ今、これだけ大きな赤字があるにしても、ここに消費税率の国際比較、また租税負担率あたりも日本は海外と比べてまだまだ非常に低うございます。こうした水準が、いずれは上げる力があるのだということ、それに対する1つの姿勢を示すということも非常に重要であるわけでございまして、そこに書かせていただいておりますように、消費税引き上げは「信頼の最低限の証」として、少なくとも市場は注目しているというところは重要な論点ではないかと思う次第でございます。

 そもそも、この数年間、ソブリン危機と言われた、ここの中には言うまでもなく、この30ページにありますように、ユーロ諸国の財政赤字という問題はございました。しかしながら、中でも大きな問題となった国々、いわゆるPIIGSと言われている国々の問題は、ここにあります経常収支の問題、こうしたものが、こちらにあります一時的、ややおさまってはおりますけれども、市場におけるソブリンの評価というものを下げる状況であったわけでございます。

 こうした状況を考えてまいりますと、日本の違いといったところは、先ほど申しましたような経常収支、そして国内における信頼関係といったところ、どう市場を維持できるかというところが中心にあるわけでございまして、そういう中で、今の政策が存在しているということでございます。

 現政権でございますけれども、3本の矢による対応策というところが注目されているわけでございます。私は、この絵の中で3段ロケットという言い方を、ちょうど今年に入ってから最初の200日、次いで200日、そして最後の300日、というようにしています。ちょうど今、第1段ロケットのところ、まさしく財政、金融を中心に対応というところでございますけれどもより成長戦略に課題がうつります。

 ただ同時に、その中では、こうした金融政策と同時に、財政のところへの信頼、規律をいかに維持できるかというところがポイントになるわけでございまして、先ほどの基本形の概念図というものを改めて挙げさせていただくとしますと、ここにありますように、肩代わりは終わった。そして成長戦略のところにいかに手をつけることができるか、そして同時に先行き対応に着手しました。しかしながら国債の残高というものが大変大きくなった中で、金融政策との連関といったようなものが実は重要になってくる、そうしたものを受けた対応が、グローバルにも昨年来のFRBの対応であり、同時に先週の日本銀行の対応になってきている。

 そういう中で言えば、ここにございますように中央銀行の国債市場への関与、日本もFRBも非常に強くなるような兆しを迎えている。こうした状況の中で、いかに出口戦略等を踏まえた上で、財政の規律、また国債市場への信認というものを保つことができるかが問われます。また、こうした状況というものは、従来から理論の世界で言えばドーマー条件と言われる財政の持続可能性ということが言われておりました。そうした状況の中から言えば、こちらにございます名目成長率と、それから名目金利の関係、すなわち成長と同時に、金利の安定というものをいかに両立できるかという概念とも関連があります。先ほどこうした状況の中に、現在の国債の規律、財政の規律を維持しながらも対応していくということ。

 先ほどから申し上げております、グローバルな展開の中で言えば、世界中がこの国債を伝わって競い合う、私は「ソブリンワールドカップ」と申し上げておりますが、こうした状況の生き残り戦の中で、日本は何とか生き残ってきたわけでございますけれども、常にこうした1つの市場というものにさらされているのだということがあらわされている世界でもございます。

 最後のページでございますけれども、今の状況というものは、調達力の有無で、まさに生き残りをかけたソブリンワールドカップでございます。そうした状況の中で、何とか欧州の債務国のような負け組にならずになってきたというところは、日本の経常収支という成長にともなう、国債の調達力、もしくは安定性、もしくは財政規律というものに支えられてきた。こうした状況の中で、何とか震災後の復興資金というようなものも自力で対応できるような、これはある面では国力に近い世界でございます。しかしながら、こうしたものを維持できる、こんな力があるのは、今や日本ぐらいがというのが、今の世界の状況でございます。

 そうした中で、こうした債務調整を果たしながらも、今後のエグジットに向けた動きというものを、いかに円滑にすることができるかといったところは、全ての現在の政治問題であり、また、こうしたものを通じまして、今の日本というものが問われているという、まさに総動員の状況になっているのだと。そういう中で言えば、今の政策、3本の矢という中に、国債、もしくは財政規律を含めた信頼関係の維持というものが、やはり重要なものとして生かされるべきではないかという論点を踏まえた上で、私のご報告とさせていただければと思う次第でございます。

 ちょうど25分になりましたので、この辺でまとめとさせていただこうかと思います。今日は貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、「経済成長と財政の関係について」、熊谷亮丸、大和総研チーフエコノミストからご説明をお願いいたします。熊谷さん、よろしくお願いいたします。

〔 熊谷大和総研チーフエコノミスト 〕 大和総研チーフエコノミストの熊谷でございます。本日は、お招きいただきまして、心より光栄に存じます。

 それでは、まず、お手元の資料1ページ目をごらんいただきたいと思います。私からは、今日4つの柱でお話をさせていただきたい。まず1点目としては、「増税の前に、やることがある」というロジックについてです。このロジックは1970年代の大平内閣の時代から繰り返し主張されてきました。例えば、「やること」というのは経済成長であったり、もしくは歳出のカットであったりするわけですが、ただ、現実問題としては、経済成長だけで財政再建をしていくというのは非常に難しい。これは先ほど高田先生からもご説明がありましたが、日本はなかなかドーマー条件を充足するような状況にはなりにくいと考えられます。これを最初に申し上げたい。

 それから2点目としては、日本の財政再建に向けた課題でございますけれども、これは諸外国の事例などに照らしてみると、経済成長と増税と歳出のカット、この3つをバランスよくやっていくということが必要である。

 そして3点目として、この増税が経済に及ぼす影響でございますけれども、まずグローバルな動向としては、財政赤字の累増が多くの諸外国の経済に悪影響を及ぼすということがわかってきた。さらには海外での消費税の引き上げが景気に甚大な悪影響を及ぼしているかと言えば、決してそういう事実は認められない。

 他方で、日本については、やはり財政状況が悪いことによって、将来不安が貯蓄率を押し上げているという部分がございますので、むしろ消費税を増税することで、非ケインズ効果、むしろ経済の安定性に資するという部分を一部期待できるのではないかということです。

 最後に、日本経済を取り巻く中長期的な変化、そして必要とされる政策対応について申し上げますが、今までの日本は、いわゆる「茹で蛙」構造であった。これは5点セットでございますが、1つは、まずお金が余っているということ。2点目として経常黒字があるということ。その結果、3点目で円高になり、4点目でデフレになり、そして5点目として低金利が続いてきた。この5点セットが経常収支の赤字化をきっかけにして、むしろ悪い円安ですとか、インフレというよりはスタグフレーションという不況下の物価高の可能性がありますので、その中で、しっかりとした成長戦略と、加えて財政規律の維持、これを行っていくということが必要であるという考え方です。

 そして最後に、アベノミクスの評価と課題について申し上げたいと思います。

 以上が全体の概要でございますが、2ページ目は、今後の日本経済の予想として13年度は2.7%成長、14年度は0.4%成長ということで、特に13年度の後半は消費税増税の駆け込みによって、かなり年度の後半の成長率が上がってくる。14年度は若干反動で落ちますけれども、ならしてみれば比較的高めの成長が予想されるということです。

 3ページ目、ちょっと私の本をご紹介させていただくと、昨年ほんとうに日本国民全体を敵に回してしまった本を出してしまいまして、『消費税が日本を救う』と。ただ、おかげさまで一応3刷りで1.7万部ぐらいお読みいただきましたので、少しはこういうことについて、国民の方にわかっていただけたのではないかと考えています。

 ただ、世の中の多くの方が、私はもうとにかく増税一本やりの人間だと誤解をしている部分もあるかと思いますが、実はこの本の中で展開している政策論というのは、まさに今回安倍総理が出された「3本の矢」そのものなのです。特に金融政策については、やっぱり私は極めて不十分だという考え方で、インフレ目標の導入を、ここ数年間主張してまいりましたので、まさに安倍さんの政策自体は、非常に高く評価できるという認識です。

 4ページ目をごらんください。まず最初の論点として、経済成長すれば財政再建ができるのかということでございますが、高田先生からお話があったように、ドーマー条件をなかなか満たすということが難しくなっている。具体的には、左側のグラフの右上のところに表がございますけれども、ちょっと小さくて恐縮でございますが、緑色のかかっている表です。こういう形でドーマー条件の勝率を調べてみると、71年からの40年間の勝率は25%。ですから40年のうち、わずか10年しか満たしていない。そして過去30年間に限ると、勝率は10%。ですから30年の中で、わずか3年間しかドーマー条件は満たしていないということです。

 実際、右のグラフで、横軸が時間軸、そして縦軸がOECDの国の中でドーマー条件を満たしている国の割合でございますけれども、70年代の規制金利の時代は、ドーマー条件というのは満たすのが一般的であった。ただ、80年代に入ると、ほとんどの国が満たさなくなって、よほどのITバブル、住宅バブルでも起きない限りは、今、国際的にドーマー条件を満たすのは難しくなっている。

 ですから、こういう観点からすると、確かに成長によってプライマリーバランスは改善いたしますけれども、利払いの部分を考えますと、最終的には成長だけで財政再建をするというのは難しい。やはりその他の歳出のカット、もしくは増税が必要であるという考え方です。

 次に、5ページ目をごらんください。ここから2つ目の論点の財政再建に向けた課題でございますけれども、5ページの左上のグラフが、日本の財政収支を歳出歳入に分けたときに、どちらが効いているか。そして左下のグラフが歳入の中身。そして右上のグラフが歳出の中身でございますが、大きく3つポイントがございます。

 まず1点目は、左上のグラフでございますが、ここで青い線が歳出、そして横じまの線が歳入で、上にいくほど財政収支が改善して、下にいくほど財政収支が悪化をする。この要因分解をしてみると、上にいって財政収支が改善している時期というのは、日本の場合は、やはり青で書いてある歳出のカットはどちらかと言うと甘くて、横じまで書いてある歳入の増加、とりわけ、例えばバブルの時代ですとか、アメリカの住宅バブルの時代などに、この経済が上がると、そのことで一時的に歳入が増えて、一時財政がよくなることはあるのだけれども、やはりブルーで書いてある歳出のカットが甘いので、どうしても景気が悪くなると、また財政が悪くなるということを繰り返してきた。これが1つ目のポイントです。

 2点目は、左下のグラフですけれども、これが歳入の中身です。歳入については、やはり所得税、法人税等の直接税については非常に景気によって振らされて、バブルで上がった後で、また落ちるということを繰り返している。

 他方で、紺色で塗ってあるのが消費税でございますけれども、やはり間接税は非常に景気の動向に振らされずに安定的な動きというものが見られる。これが2つ目のポイントです。

 3点目は、右上の図表、これが歳出の中身でございますが、歳出の中身を見ると、例えば右から2本目の部分で、ブルーで大きく上に出ている格子じまの部分、これが小泉さんの時代に公共投資を大きく一時的に削ったことがあって、これがかなり寄与したわけですが、ただ問題は、この紫色で塗ってあって、ずっと下に出ているもの、ここが社会保障です。ですから、やはり社会保障のところの抜本的な切り込みができていなかったので、結果的に歳出のカットが甘くて、バブル頼み。バブルで一時的に税収が起きると景気はよくなるのだけれども、結果的には日本の財政はなかなか構造的によくならないということを繰り返してきたということでございます。

 6ページから9ページには、6ページがイギリス、7ページがドイツ、この2カ国はどちらかと言うと、ちょっと苦戦している例。他方で、8ページはスウェーデン、9ページはカナダで、これ2カ国はどちらかと言うとうまくいっている事例でございますが、やはり言えることは、まず間接税、消費税のようなものは非常に税収が安定しているということ。それから財政再建に成功した国は、やはり一時的な歳入頼みではなくて、社会保障の抜本的なカットを行うことが、財政の持続的な改善へとつながっている。このあたりを日本は大いに教訓にすべきだという考え方です。

 11ページをごらんください。11ページでお示ししているのが、2020年度のプライマリーバランスのGDP比のシミュレーションでございますが、横軸が成長率、縦軸が社会保障です。2010年代の後半に毎年どれだけ削るかということでございますが、ご注目いただきたいのは左下のピンク色、ここが唯一プライマリーバランスが黒字になるシナリオです。

 これはどういうシナリオかと言うと、3つ条件がございまして、1点目は、横軸の名目成長は3%の高成長を達成する。これが第1条件。第2条件としては、消費税は予定どおり10%に上げるということを織り込んでいる。それでもなおかつ3つ目の条件として、2010年代後半に社会保障を毎年4%ずつ削っていったとして、やっと2020年度にプライマリーバランスが黒字化して、財政再建の入り口のところに立てるということでございますので、よく言われる、増税の前にやることがあるという議論は、これは言ってみれば論点をずらすことによる先送りの論理であって、経済成長であるとか、歳出のカットであるとか言われるわけですが、結果において、論点をずらすことで30年余りにわたって、増税の前にやることがあるというのは70年代の大平内閣のときからずっと言われているわけですから、このことが日本の世界最悪の財政状況をつくってきた。

 ですから、まだ増税までに1年弱あるわけでございますので、そこまでに徹底した成長戦略と、この社会保障を中心とした歳出の合理化、これらを三位一体でやっていくということが今後の財政再建に向けた課題であるという考え方です。

 次に、3つ目の論点として、13ページ以降で増税等が景気に与える影響についてお話をしたいと思いますが、これは釈迦に説法ということですけれども、13ページにあるような、4つぐらいの財政赤字の弊害というものが存在する。

 そして14ページ、これは諸外国の事例でございますけれども、縦軸が潜在成長率、横軸が一般政府の負債残高ということで、これは緩やかながらも右下がりの相関関係が存在する。やはり財政が非常に悪い国というのは、潜在成長率が低い傾向があるわけでございますので、その意味では、財政赤字を、これはやっぱりある程度の水準におさめていくということが必要になる。

 15ページ、これはラインハートとロゴフの有名な分析でございますが、縦軸は政府債務残高のGDP比、そしてそのときにそれぞれの多くの国の成長率がどうなるかということですが、例えば、右のグラフで成長率の平均値を見ると、政府債務残高GDP比90%というところに非常に大きな断絶があって、ここを超えてしまうと、一気にがくんと経済成長が落ちるような、財政赤字の積み上がりが景気に対して非常に大きな悪影響を与えるという傾向があるわけです。

 16ページでございますけれども、左上が、これが横軸でお示ししているのが前年からその年にかけての経済成長率の加速度。例えば、去年が3%成長で、今年が4%になったら、1%だけ加速したというのが横軸でございます。そして左上のグラフは、消費税を上げなかった年、左下のグラフは消費税を上げた年、そして右上のグラフは消費税を上げた、さらにその翌年にかけての動きでございますが、全体としてこれらを比較したときに、少なくとも欧米の常識で言えば、消費税を上げたからといって、景気が一気に減速するという事実は認められないということがございます。

 17ページ、18ページ、ここは後ほどごらんいただければと思いますが、例えば日本でも海外でも、消費税を上げて、そのことが主因で景気が一気に悪くなるということは決してない。実際は1997年のときも、日本の金融危機とアジアの通貨危機が、これがやはり景気が悪くなった主因でございますので、消費税の増税自体と景気の悪化に明確な因果関係というものは認められないということです。

 19ページをごらんください。ここで縦軸が社会保障の支出、横軸が国民負担率でございますけれども、国際的には右上がりの緩やかな均衡線が引けるわけですが、日本はギリシャと並んで、ほとんど垂直に上の方向へと上がっている。従来、中福祉・低負担などと言われてきましたが、現状は福祉は高福祉に近づいていて、完全に受益と負担のバランスが崩れてきている。ですから、ここをやはり将来的に回復していくということが課題になる。

 20ページでございますが、左側のグラフで、なぜ国民が貯蓄をしているかということを考えると、やはり将来に対する不安というのが大きい。そして右のグラフ、ここで縦軸が貯蓄率で、横軸が将来不安でございますけれども、この2つが同じような動きをしているわけですから、将来の不安があることによって、かなり貯蓄率が高まっているということがあるのではないか。

 21ページで、貯蓄率の関数のようなものをつくって、どういう要因によって貯蓄率が動いてきたかというのを私どもが推計してみると、ご注目いただきたいのは、緑色で塗ってある将来不安要因、これが83年からの累計で見ると、大体将来不安によって5%ポイント程度、日本の貯蓄率が累計ベースで押し上げられてきた。ですから、むしろある程度財政再建の姿を示すことで将来不安がなくなれば、一部で非ケインズ効果と言われるようなものが一定程度期待できる可能性があるという考え方です。

 ちなみに、22ページは消費税増税の影響でございますけれども、左上が消費の影響、右上が住宅の影響ということで、一時的に駆け込みで上がって、その反動で落ちるということはありますが、2015年度ぐらいに入れば、ある程度定常状態に戻ってくるということでございます。

 23ページ以降で、最後の論点である、今後の構造変化、そしてアベノミクスの評価ということを申し上げたいと思いますが、冒頭申し上げたように、23ページの左側が今までの「茹で蛙」構造、右側が今後想定されるハードランディングということでございますが、従来は国内でお金が余って、その結果ISバランスから経常黒字になって、円高になって、デフレになって、非常に低い金利が続いてくる。こうした、日本がじりじりと悪くなる、五角形の「茹で蛙」構造のようなものがあったわけですが、これが高齢化による貯蓄の取り崩し、そして将来的な経常収支の赤字化、これらを受けて、為替は円安の方向、そしてインフレであればいいわけですが、スタグフレーションと呼ばれる不況下の物価高、そして国債金利が大きく上がってくる可能性がございますので、こういう構造変化を念頭に置いた上で、やはりしっかりとした成長戦略と、加えて財政規律の維持ということを、これを政策的に強化していく必要がある。

 24ページでございますが、高田先生からお話がございましたけれども、この下の部分に、日本とヨーロッパは2つの面が違っている。1つは、彼らは双子の赤字ですけれども、日本は経常黒字国であった。そしてその結果、外国人が持っている国債は、わずか9%しかないわけですから、とりあえず日本人が日本の政府を信頼する限りにおいては、すぐに国債が暴落する状態とは言いがたかった。ところが問題は、左上がイギリスの1930年代の事例、右上がアメリカの1970年代の事例ですけれども、いずれも経常収支の赤字化が視野に入ると、海外からお金を呼んでくる必要が出ますので、長短スプレッドが急拡大して国債がかなり暴落に近いような状況になってくる。

 ですから日本も、やはり経常収支の赤字化を控える中で、しっかりとした成長戦略だけではなくて、財政規律の維持、ここを行っていくということが必要になる。

 実際、25ページ、これがカリフォルニア大学のボーン教授という人が言っている財政のサステーナビリティー、縦軸がプライマリーバランスで、横軸が年初のストックベースの債務残高ですが、極めて単純化して言うと、ピンク色の矢印で右上にいっている国はかろうじて持続可能である。ところが、日本だけは唯一このブルーの矢印で右下のほうにいっているわけですから、これだけストックベースの債務が悪いにもかかわらず、それでもなおかつ毎年プライマリーバランスを悪化させる財政運営というものを続けているということでございますので、この財政規律をしっかりと回復していくということが必要だということです。

 26ページで、アベノミクスに関しては大胆な金融政策、ここは非常に高い評価ができる。ただ、課題としては、2本目の矢である財政政策については、国土強靭化の美名のもとに、やはり公共投資が肥大化すると、将来的にトリプル安的なリスクが否定し得ない。そして3本目の矢の成長戦略。ここの体質改善をやって、TPPへの参加、規制の緩和、法人税の減税等を通じてしっかりと中長期で成長していける体制をつくるということが必要ではないかということです。

 そしてアベノミクスの評価できる点は30ページぐらいまでありますので、ちょっとここはスキップをして、31ページ、通常アベノミクスに対しては3つぐらいの批判があるわけでございまして、この3つは、まさに今後の課題でございますけれども、1つは財政規律の問題、2点目として、中長期的な成長戦略をしっかりやっていくということ、3点目として、インフレが加速する中で、雇用者の所得が増加せずに、国民の生活が苦しくなってしまうのではないか、この3つの点に一定程度の目配りが必要である。

 財政規律については、32ページでございますが、やはり公共投資はあくまでカンフル剤であって、一時的にこれを出すと景気は上がりますが、息切れすると景気はまた悪くなって、財政赤字がさらに積み上がるということを繰り返してきた。例えば、34ページで非常に大胆な試算でございますけれども、青の白丸の線が実際の社会資本ストックで、800兆円程度ある。これに対して赤の三角の線は、日本の公共投資のGDP比が、戦後ずっと他の先進国並みの2.5%であったと仮定をすると、400兆円程度。ですから、この2つの差をとると、戦後の累計では367兆円程度、公共投資をやり過ぎてしまった可能性というのがある。

 ですから、例えば5本橋があるとしても、3本は補修をして、残りの2本についてはある程度フェードアウトを図っていくというような、費用対効果を考えた財政運営というものが必要になる。

 35ページで、2つ目の課題は成長戦略。縦軸で労働生産性、横軸で乗数効果、他産業に対する波及効果でございますが、1つは、右上の広い意味での環境絡みの分野が効率がよくて波及効果が大きいわけですので、ここが1つの成長分野になってくる。

 もう1つは、左下のところに医療、介護などのサービス業がございますけれども、実はこの丸の大きさが雇用者数を示している。ですから医療、介護等のサービスは今のところはあまり効率がよくなくて、他産業への波及が小さいわけですけれども、他方で、やはり圧倒的な雇用吸収力があって、加えて、今、効率が悪いということは、抜本的な規制の緩和を行っていけば、ここはやっぱりかなりの伸びしろが期待できるということでございますので、こういう規制の緩和を中軸に据えた、さらなる成長戦略の強化が2つ目の課題である。

 3つ目の課題は、38ページ、賃金が上がるかどうかということですが、ここでブルーの一番目の線が売上高、オレンジの線が賃金、3番目の緑の線が物価ということでございますが、実はこれを微妙に右に傾きをつけて重ねると、この3つが一定のタイムラグで、大体同じような動きをしてくる。ですから、最初に動くのは売上高で、これが動くと半年から1年ぐらいして賃金が上がってくる。さらに半年すると物価が動いてくるということでございますので、ただ、真ん中のオレンジの丸をつけたところを見ると、最近は必ずしも売り上げが上がっても、2000年以降はそれが賃金にきれいに連動しなくはなってきているということがありますので、その意味では、売り上げが伸びたときに、さらに賃金のところにちゃんと波及をしていくような、ここのトランスミッションメカニズムをさらに強化をしていくということが必要になる。

 ただ、39ページ、労働分配率自体は、これは日本は長い目で見れば、赤い線で、決して下がっていないということがある。しかも、ここ20年間ぐらいで見ても、大体横ばい圏でございますし、アメリカなどほかの国と比べても、労働分配率が高いということでございますので、一部で言われる、企業がもうかって、それを労働者から取ってしまって、その結果、家計が苦しかったというのは、事実関係から言うと、私は違うと思っていて、やっぱり労働分売率はある程度一定のレベルで動いてきた。

 ですから、今後アベノミクスでしっかりと売り上げが戻って、企業が元気になってくれば、一定のタイムラグを置いて家計のところにもそのプラスの恩恵というものは及んでくる。ただ、従来以上にそこのトランスミッションがちょっと弱くなっていますので、さらに政策的にそこのトランスミッションを強化するということが3つ目の課題であるということです。

 ここまで大体お話ししようと思っていたことを申し上げましたが、先ほど高田先生のお話をちょっと伺っていて、私から2つほどコメントをさせていただきたい。61ページでございますが、まず1つはジャパナイゼーション、アメリカの日本化、欧州の日本化という話がございましたが、確かにバランスシートのところだけを見れば欧米は非常に悪くなっていて、債券市場の動きとしては日本化が進んでいる。

 ただ私は、アメリカは基本的に日本化しないという考え方でございまして、大恐慌と平成不況には3つの共通点があった。政策があまりうまくいかなかったことと、労働市場が硬直的で、設備が10年がかり、20年がかりというストック調整をしたこと。さらには金融システムの毀損という問題でございますが、ヨーロッパはいずれも三角で、ちょっと危ない状況ですが、私はアメリカについては、やはり経済構造はかなり健全であって、ジャパナイゼーションの可能性は限定的であると考えています。

 これらに加えて、アメリカは移民で人口が伸びておりますし、またシェールガスの劇的な革命で、対外バランスが改善してくる。また、うまくドルを調整して輸出倍増計画が今、経済を支えているということがございますので、金利面だけを見れば日本化ですが、構造的には私はアメリカの経済は、やっぱり日本よりも非常に強いだろうという考え方です。

 もう1点は、これは身代わり地蔵というお話がございましたけれども、その点について、83ページをごらんください。この点は、まさに私も同じような考え方でございまして、実は2年前に『世界インフレ襲来』という本を私は書いたのですけれども、そのエッセンスは真ん中の黄色い部分で、過去100年ぐらいの金融危機の歴史を見ると、最初に金融危機がある。そこから3年、5年すると、まさに身代わり地蔵で、財政危機が訪れる。

 ただ、諸外国の例を見ると、実はそこから次のステップは魔法のつえの金融政策のところにかなりプレッシャーがかかってきて、グローバルに金融面からインフレの圧力がかかるという状況でございますので、やはりそういう状況下の中では、私は金融を緩める一方で、財政は短期的には柔軟であってもいいと思いますが、やはり中長期的な観点からは財政規律の維持というものが非常にこういう国際環境から見れば重要になるのではないかという考え方をしております。

 ちょっと長くなってしまいましたが、最後に1ページでポイントだけ、もう一度申し上げますと、やはり経済成長だけでは財政再建は難しい。そして今後、諸外国の事例を見ると、経済成長と増税と歳出カットをバランスよく行うことが必要である。そして増税の影響は、グローバルに見ればそれほど大きなものではなくて、むしろ財政赤字の積み上がりが経済に世界的に悪影響を及ぼしておりますので、日本については、ある程度将来不安をなくすことによる中長期のプラスの効果というものも期待できる。

 そして、グローバルな国際変化を踏まえた上で、やはりアベノミクスについては、1つ目に財政規律の維持、2つ目に成長戦略、3点目として雇用者の所得が上がっていくという、この3点をさらに強化していくということが必要であるという考え方です。

 私からご報告は以上でございます。ありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 竹内大臣政務官もお見えになりましたので、竹内政務官、それからお二人の有識者の方を交えて、残りの時間、質疑応答を行いたいと思いますが、どうぞ、委員の皆様方、ご意見、ご質問等をどなたでも、よろしくお願いいたします。

 どうぞ、岡本委員。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

 小宮課長のご説明された資料の4ページなのですけれど、確かに社会構造の変化というのは大変なことだなと、人口の推移を見ると大変だなと思うのですけれども、ただ、この数値よりもっと早く来てしまうのではないかという感じもするのです。

 と言いますのは、これは2010年までが実績で、その後が推定なのですけれども、過去、人口問題研究所で置いた数値は、例えば1986年の推計では合計特殊出生率を幾らで見ていたかと言うと、足元が1.76だったのに、2.00で見ていたとか、1992年の推計はどうかというと、足元が1.53なのに、1.80で見ていたとか、常に期待数値的なところで置いている。

 実は社会保険料の厚生年金保険料率なのですけれど、2004年の13.58%を18.3%まで上げている最中です。しかし保険料率を上げる時の試算の前提を見てみると、金利が4.1%、賃金上昇率が2.5%、国民年金の保険料の納付率が80%だったと。ところが、例えば国民年金の納付率は現実は58.6%だったと。こういうふうになると、終了時の18.3%の後はもうあげないよと言っても、保険料をあげないということになると、想定との違いのしわ寄せは全部税のほうに負担が来るのではないか。

 そういうふうに考えると、我々企業の場合には、このような数値以外にストレステストと言いますか、ほんとうに厳しい状況のときにどうかと、それでも耐えられるようにということでやるのですけれども、何となくこれは期待数値みたいなのでやっているから、自然増1兆円の中で、どのくらいのものがこういう期待数値でやったために起こったのかという分析も必要な感じがしますので、これは質問なのですけれども、そういった意味での厳しい目線で、やっていけないものかどうかと。

 もちろん国会を通すのは大変でしょうから、どうしても期待数値でいってしまうのかもしれませんけれども、財政の再建とかいうことを検討するときは、かなりきちっと押さえないといけないと思うのです。

〔 吉川分科会長 〕 これは事務局へのご質問という形でしたけれども、ご承知のとおり、推計自体は今回、主計局の事務局がしたわけではない。ですが、この図は中位推計を使っているということでしょうか。いわゆる低位の推計値等もあるわけですから、そういうような図も書いてみるかというご指摘ということでしょうか。

  事務局から。

〔 福田次長 〕 よろしいですか。これは年金改革のときにやった推計なのですけれども、確かにご指摘のようなことがあったものですから、改善しているのは、下の欄をごらんいただきますと、合計特殊出生率は一応直近の数字の横置きになっているということにはなっております。

 ただ、ご指摘のとおり、成長率よりも金利が高いという前提にはなっていまして、年金を推計する場合は、積立金があるものですから、さっきのご説明のドーマー条件と反対でして、そうなると少し有利になるというような議論もあります。

 いずれにせよ、条件が実現しないケースについても、なるべく最近は出すようにしているかと思います。

〔 岡本委員 〕 ただ、これからもずっと従業員と会社が負担している中で1兆円ずつ出てくるわけで、だからこれが2017年の18.3%から、これ以上あげないこととなっていますよね。しかし、その約束を守る以上、将来どんと国の負担が増えるような感じもします。そういうところの不安というのがあります。企業は社会保険料の負担がものすごく大きいです。法人税どころか、非常に負担が大きくて、そうすると雇用その他にも影響がありますので、こういった面でちょっと考えていく必要があるなと。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、古賀委員。

〔 古賀委員 〕 お二人の先生、貴重なお話をほんとうにありがとうございました。

 少し財政審の話とは違うかもわかりませんけれども、まず高田常務にお聞きしたいのですけれども、熊谷さんからは成長戦略について、一定程度具体的なお話をいただきました。まさに真に投資効果の望めるメリハリのきいた産業創造が必要だろうと思います。環境あるいは医療、介護ということについてご指摘がございましたけれども、高田さんのほうとして、この成長戦略についての具体的な重点政策的なものがあれば、ぜひお聞かせを願いたいということが1点です。

 それから2点目は、非常に幼稚な質問になるかもわからないのですけれども、国内中心の国債保有構造を考えれば、国債が短期間で大量に売られる圧力は相対的に小さい、そのことは理解できます。しかし、にもかかわらず、資料にございますように、国債の格付においては、ネット債務残高がそこまで差があるとは言えないアメリカと比べたら、かなり違うんです。その理由を少しお聞かせ願えないかということ、その2点です。

 それから、熊谷先生には、財政再建に向けてのいわゆるコストカット、非常に重要なことであろうと思いますし、社会保障の削減についても、吉川会長も常に、賢い削減ができないかということを絶えず言っている。そのことも必要だと思います。

 ただ、やはり資料にも出てきました、国民の将来不安ということから捉まえれば、社会保障のカットにしても、仕組みを変えたり、あるいはタイミングというものがあると思うのです。その辺をどう考えるか。一律カット、一律カットでいくと、やっぱり国民不安のほうが大きくなって、かえって経済を悪循環にしてしまうような、そういうデメリットもあるわけで、その辺をどうお考えになられるのか。

 この3点をよろしくお願いします。

〔 吉川分科会長 〕 では、お願いします。

〔 高田みずほ総合研究所チーフエコノミスト 〕 古賀先生、どうもありがとうございました。

 まず最初に、成長戦略といったことだと思いますけれども、これにはいろいろな分野が私はあると思います。ただ、今、私自身いろいろ考えております。先ほど熊谷先生からは環境、そして医療、介護といった分野がございまして、私もその分野というところは非常に重要であると思っておりますし、日本の今後の1つの成長分野だと思っておりますが、ただ、これまでの枠組みにとらわれず、場合によってはこれからいろいろな産業というものが日本の分野としてあり得るのではないか。

 例えば、農業みたいな分野でも、今後日本の潜在力と申しましょうか、一定のものは発揮できる分野というものも当然あり得る。今の環境を考えれば、日本の農業みたいなものも非常に重要ではないか。

 また、私は今でこそいろいろな日本の産業の、やや停滞と言われておりますけれども、ただ日本の科学技術予算、民間投資といったものをずっと考えておりますと、足元若干緩んではおりますけれども、GDP対比で世界のトップを維持していた部分がございます。そうなりますと、やはり戦後もそうでありましたけれども、非常に日本の技術力というものを生かすということから考えますと、やはりまた潜在力というものをもう1回日本のものを生かしながらの技術力。

 しかも、成長戦略ということを考えますと、日本はアジアという非常にいい場所に恵まれておりますので、こうしたものを生かしていくというような、そういう面では通商政策と一体となったグローバルな対応というようなもの、こういうものを総合的に対応していくということが重要ではないかと思います。

 幸いにも、為替の円高といったようなものが回避される状況に足元なってきておりますので、そういう意味では、これまでのハードルがやや下がってきて、いろいろなものに投資がしやすくなっていた部分というものもございますので、これまでなかなか力があってもできなかった部分というものを、こういう中で、より潜在力を目覚めさせていくというところが成長戦略として、我々やや縮こまっていた部分もございましたので、そういうネガティブな部分から、もう少し悲観を取り除きながらの部分というもので、いろいろな目で見ていく必要が私はあるのではないかと思う次第でございます。

 それから、2番目にご指摘いただきました、格付の議論でございますけれども、ちょうど私の資料でも38ページ目のところに主要国の国債の格付、中でも日本と、それから例えばアメリカとは差があるではないかとご指摘いただきました。私は、実はこの格付、もう20年近く見ているのですけれども、正直申しまして、国債の格付、ソブリン、国ベースの格付、グローバルな格付機関も、やや揺れている部分があるのではないかなと、実は20年かかって思っております。

 企業の格付というのは100年以上の伝統がございますし、私もいろいろ見ている中で、ある程度1つの定まった姿というものがあるのではないかと思っておりますけれども、ただ、この20年ぐらい私も実務で見ておりますと、足元、要は証券化も含めたストラクチャードファイナンスの格付、これは大変な問題を起こしました。それからもう1つ、今回の、この主要国、国の問題で考えますと、やや揺れ動いている部分があって、実は日本の場合、2003年にかけて二〇〇一、二年という状況で、ムーディーズ、左で言いますシングルAの水準まで落ちた時代がございました。これは明らかに、先ほど申しました財政赤字という部分が多かったのですけれども、しかしながら日本の場合は市場では意外というのは経常収支という部分でございまして、この経常収支のところに対する配慮なり、要はバランスをどうとっていくのかというところが、どうもなかなか難しいと言いましょうか。

 ですから、このCDS、市場での評価のところと、国債の格付のところが実はあまり一致していない部分があるというのも、実際。特に昨今のヨーロッパの危機の中では、そういう現象が起きておりまして、そういう中で、やや格付機関のほうも手探り状況の中で、こうした体系になっていて、今後こうした変わり得る。ただ、やはりそうは言っても日本の場合は財政赤字が大きいので、その不安はございます。

 また、アメリカの場合は、実は双子の赤字でありましても、基軸通貨といったところで支えられている部分がございますので、そんな部分でのいろいろな総合評価のあり方の中で、こうした格付が決まっているというところでございまして、この辺につきましては、なかなかこれがといったようなものが生じておりませんので、今後もこういうものに対して、我々市場参加者も含めて、厳しい目を見ながら、批判的な対応も含めながら分析なり研究をする必要があるのではないか。そんなふうに思う次第でございます。

 どうもありがとうございました。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 では、熊谷さん。

〔 熊谷大和総研チーフエコノミスト 〕 ご質問ありがとうございます。

 確かにご指摘のように、実際の国民の生活に対する影響ですとか、そういう部分がございますので、やはりある程度、景気の状況は見きわめながら、また段階的に社会保障の負担は重くしていくということは必要であるという考え方でございますが、ただ、先ほど19ページのところでご説明させていただきましたけれども、やはり日本の社会保障の根本的な問題は、完全に受益と負担が見合っていない状態になっているということであって、むしろ国民の反応としては、負担が重くなるからといって悪い反応をするというよりは、それ以上に、やはりいずれはこれが立ち行かなくなって、その負担がいずれは重くなるだろうということで、そういう漠然とした将来不安だとか、もしくは、これがもう持続可能ではないという考え方を国民が持っていること自体が、景気に対する悪影響を与えるということだと思いますので、そう考えると、タイミングの議論等々、そして景気に対する一定の配慮は必要だと思いますが、やはり受益と負担を見合った形にしていくということは、これは何としてもやっていく必要がある。

 基本的な考え方としては、制度設計はちょっと難しいかもしれませんが、やはり社会保障などの出と入りのどちらか1つを固定して、他方は経済状況、出生率等が変われば、それはもう自動的に調整していくような形で、その仕組み自体がバランスするものをつくっていくという考え方が重要ではないか。

 実際問題として、今、国民負担率は40%程度ですが、私どもが計算してみると、2060年になると、これは普通にいけば国民負担率は7割台までいく。それで、例えば今の4割ぐらいの国民負担率を保とうとすれば、社会保障の給付水準を、これを1人当たり半分にカットしたとして、やっと今と同程度の国民負担率が保てるということですから、明らかに人口構成などで見れば持続可能ではなくなっているのではないか。

 それからもう1つは、例えば国際的な比較で言うと、国民負担率が高い国は、これはあまり格差が大きくない傾向があって、逆に国民負担率が低い国は、必要なところにいろいろな施策が行き渡らないところがありますから、国民負担率が低い国ほどジニ係数が大きくて格差が大きいというような、こういう一般的な傾向が見られる。ですから、こういう格差是正の観点から見ても、ある程度国民負担率を上げて、そして格差を是正する。そしてさらに今の日本のいろいろな社会保障、生活保護などの問題は、ほんとうに困っている人のところに実は行き渡っていなくて、例えば生活保護などで言えば、ある意味で、入りにくくて、出にくい仕組み。なかなか入っていくことができないのだけれども、1回入ってしまうと、そこに安住してしまって、トランポリンのような形で出ていくことが難しい仕組みになっている。そしてほんとうに困っている人のところにメリハリがついていってない部分がありますので、そういう、できるだけメリハリをつけながら、全体としては収支が均衡していく。できれば自動的に均衡していく方向を目指していくということが重要ではないかと思います。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 ほかに、どなたでも。

〔 角委員 〕 私は、今の熊谷さんの話、全く賛成でして、このところ百貨店の高額商品が非常に売れています。宝飾品ですとか、高級バッグとかです。この数カ月間で株式の時価総額が約120兆円増えました。個人が保有されているのが約25%ですから、個人のいわゆる現金化するかどうか別として、30兆円のいわゆる資産効果があった。

 ただ、株を持っている方というのは、年齢構成が非常に高い方ですから、いわゆる高齢者が宝飾品とか時計とかバッグとかを買っていただいている。阪急百貨店の売り上げを見ましても、残念ながら女性衣料はそれほど期待したほど売れていないのです。ということは、若い人はそんなに買っていないのです。それはまさに将来不安です。ですから、社会保障、ちゃんと将来にわたっても持続可能ですよということがない限り、若い人は消費に回さないと思います。

 以上です。

〔 鳥原委員 〕 結論から言いまして、今は何より3本の矢によるデフレ脱却、経済成長が最優先の課題であります。成長戦略が軌道に乗って、期待される経済成長が達成されたとしても、しかも消費増税を見込んだ上でも、2020年のプライマリーバランスの黒字化目標の実現は大変厳しいという構造が大きく変わるわけではなく、早いうちに財政健全化の道筋をつける必要があるのではないかと思います。

 財政再建には、まずは今後展開される成長戦略によって、実体経済を成長軌道に乗せることが最も重要ですが、その中で、企業数で言えば99.7%、雇用者数で言えば7割を占める中小企業の成長が必須であって、中小企業政策を成長戦略の柱として位置づけ、攻めの政策を展開することが重要だと思います。

中小企業のIT化を通じた生産性向上、海外展開の加速による新興国需要の取り込みなど、具体的に期待できる分野がありますので、そこに対して積極的な政策を打つべきだと思います。

 もちろん、もう一方で、財政歳出見直し等による徹底的な歳出改革は進めなければなりません。こうした取り組みを行っても、2020年のプライマリーバランス黒字化というのは、極めて高い目標であります。

 要は、先ほどのお話にもありました、財政再建に成功した他国の例にあるように、経済成長、歳出抑制、そして税、社会保険料など、政策手段の適切な組み合わせによって財政健全化の道筋をつけるしかないと思います。

 そのためには、どれだけの財政収支改善が必要であるのか、また、それを達成する政策手段のベストミックスとはどういう内容になるのか、また、その際の国民負担と社会保障給付のバランスはどうなるのか、そういった具体的な数字での財政健全化の全体像を示す必要があると思います。

 基本的に目指す方向は景気回復と経済成長、そして歳出抑制に最善を尽くすことによって、どれだけ財政再建に要する増税幅を小さくするかにあると思います。それにしても限界があるわけで、過度な期待を引きずることのないように財政再建の大筋を国民に説明して、決断することが必要な段階になっていると思っております。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、どうでしょう、葛西委員、それから井堀委員。

〔 葛西委員 〕 1点だけ、高田さんがおっしゃったことについて私の意見を申し上げたいと思いますが、経済成長を議論する前に、日本の科学技術の予算の規模は、世界の中でも十分大きいということを言われましたが、科学技術というものが、必ずしも新しい技術に、そしてその新しい市場を生むような形で使われていないというところに大変問題があるのではないかと思います。

 それはどうしてそうなるのかと考えた場合、やっぱり新しい技術を生み出すという、成長をもたらすような技術というのはトップダウンでしか出てこないのであって、それをボトムアップで自由にやらせるという形ばかりでは、おそらく不毛な議論、砂漠に水をまくような話になってしまうわけです。今の日本の予算のつけ方は、文部科学省という枠の中で科学技術の予算として配られていますが、一方で、例えばアメリカですとDOD、国防総省が、例えばソ連に勝つためにどうしたらいいかという明確な目標を持って、トップダウンで技術開発のためのお金を配ってきており、今でもやっぱり同じような構造になっております。

 要するに、成長をもたらす技術というのは、最先端でかつ目的を明確にしたトップダウンの形でない限り、何の意味もないとは言いませんが、場合によっては、一部の人の人件費、あるいは知的好奇心を満足させるものにしかならない気がしますので、その辺はよく頭に入れておいていただかなくてはいけないと思います。

 日本は、冷戦時代に高度成長を遂げた要因というのは、アメリカが軍事予算その他で、第二次世界大戦中から冷戦にかけてさまざまな技術開発をしたものを取り込むことによってその恩恵を享受してきたからでありまして、今、そういう状況になっていないということになりますと、日本自身がやはりトップダウンの方式で、国家目標を明確にして、技術開発をやっていくことが必要になると思います。その1つは安全保障であり、もう1つは医療の分野に有力なものがあるのは承知しております。ほかにも幾つかあるかもしれません。いずれにせよ、そういうやり方で成長を求めていかなければならないのではないかと思います。

 それから介護の分野、これは熊谷さんのほうですが、将来の成長分野だと言われましたが、あれは成長をもたらすものではなくて、消費を拡大するものだと思うのです。稼いだものがなければ使えないわけですから、その辺はどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。

〔 吉川分科会長 〕 では、高田さん。最後の点だけ。どうぞ。

〔 高田みずほ総合研究所チーフエコノミスト 〕 葛西先生、どうもありがとうございました。私も、まさにおっしゃるとおりと申しましょうか。やはり戦略的にと言いましょうか、国家目標としての道筋というものがないと、先ほども私も3原則ということで、期待というものがありましたけれども、そういうものが盛り上がってこない。

 戦後の流れを見ますと、そういう国家目標というものがある中で、新幹線にしてもそうだったかもしれませんけれども、大変な技術開発というものが行われ、それに沿ったエネルギーもそうだったと思うのですけれども、残念ながら、今、そういうものを見失っている部分が大きいのではないかなと。

 そういう国家としての戦略、ある面では国家自体が1つのソブリン・ウエルス・ファンド的な動きだったと思うので、その先には1つの大きな目標があったわけなのですが、そうしたものを失った中で、まさしく今の成長戦略というものは、そういう旗印をどうするのかという点が非常に大きいのかなと私も感じておりまして、そういうものを我々も何とか考えられるように考えていきたいと思っています。

 ありがとうございます。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 ちょっと待ってください、こちら、井堀委員と、どなたですか。それでは3人、こちら井堀委員からお願いします。それから富田委員。

〔 井堀委員 〕 金融政策と財政の関係についてお伺いしたいのです。お二人の方も財政規律が基本的に重要で、大胆な金融政策でそれを支えている今のアベノミクスというのは、肯定的に評価されていると思うのです。結果として、高田さんのプレゼンにあったように、金利が非常に今、下がっている。これは財政運営から言うと、国債が下がりますから、非常に助かる。前回出た推計でも、これから数年は金利が上がって国債費が上がるから、財政的にはかなり厳しいという推計もあるのですけれども、これだけ日銀が大胆な金融緩和で国債を日銀が大量に購入して、金利が下がれば財政的には当面非常に助かる。問題が、それが中長期的な財政規律の維持にほんとうに役立つのかどうか。

 今日のお話では、財政規律が前提で、そうであれば、それを金融面で支えるというのが、日本経済全体をとってもプラスの効果が大きいというお話です。仮に、当面それがうまくいったとして、財政再建というのは、今日のお話に出てきたように数十年かけて、かなり長い期間でやらないと、非常に大変だと思います。大胆な金融政策を、インフレ目標の2%が達成できた後、ずっと続けるわけにはいかない。要するに大胆な金融政策の出口戦略を考えたときに、そのときは金利が当然上がるはずですので、それは財政政策にかなり厳しい影響を与えると思うのです。つまり大胆な金融政策の出口戦略が、財政運営に与える影響について、何かコメントがあればお伺いしたいと思います。

〔 吉川分科会長 〕 時間が限られておりますので。

〔 高田みずほ総合研究所チーフエコノミスト 〕 今の状況ということを考えますと、中央銀行が、これはFRBなんかもそうだと思うのですけれども、かなり関与が大きくなってくる。そこの中でのエグジットということになってまいりますと、成長が出てくれば出てくるほど、実は金利が上がるわけであります。そこのところをまた買い支えれば、またそれが加速してしまうという部分がございます。

 となりますと、財政規律等も踏まえた上で、どういう形でエグジットするか、私、最後に日本版のアコードと書かせていただいたのですけれども、そういう中での両方あわせた、今の場合は両方とも刺激するということかもしれませんけれども、同時にアコードの出口といたしますと、どこかで、実はアメリカも大恐慌の後、そうしていたのですけれども、51年にはアコードという形で、そこは切るのだという形になったのと同じように、日本においても同じような形で対応するような、両面でのアコードが必要になっているのではないか。

 今は、どちらかと言うと前面の、まず拡大するという方向なのですけれども、いずれの段階ではしめにかかる中でのアコードというものを、政府との間での財政規律、もしくは財政運営ということを含めて対応していく必要があり、そこをどういう形で見きわめるかという時間軸なり、業況分析ということが私は非常に重要になってくると思っております。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 熊谷委員もありますか。どうぞ、一言でも。

〔 熊谷大和総研チーフエコノミスト 〕 まず、先ほど葛西委員からの介護ですが、これは例えばマイナンバー法案、これをさらに拡充をして、ITを活用していけば劇的に生産性が上がる。加えて、例えば規制緩和で、よくカリスマ介護士などと言われますが、今は料金が一律のものを、もっといいサービスの人はお金を払っていくだとか、もしくは特養老人ホームの参入主体の拡充だとか、そういうことをやっていけば、かなり生産性自体も上がる側面があるのではないかということです。

 それから、出口、それを受けた財政等への影響ですが、私が今思っているのは、アベノミクスは確かに民間のところを中心にフローベースの経済にはプラスの効果がかなりある。ただ、最後の出口のところまで含めると、おそらくこのアベノミクスだけで財政が再建できるかというと、おそらくはやっぱり金利が非常に上がってしまう可能性というのがあるのではないか。

 例えば、縦軸に各国の財政状況をとって、横軸に長期金利をとったりすると、やっぱり今の日本の財政状況から見れば、長期金利が4%、5%となってもおかしくない状況である。そうであるとすれば、仮にプライマリーバランスは改善したとしても、利払いの部分でかなり財政状況が悪化してしまうという問題がある。

 それからもう1つは、やっぱり金融システムに対する負担であって、かなり国債を金融機関が持っているわけですから、おそらくは長期金利が4%などを超えてくると、特に地方の金融機関の経営などに対して、かなりの影響が出てきますので、こういう観点からすると、おそらくアベノミクスの最終章のところで、この財政規律を保って金利を低く保てるのかどうか、そこが非常に大きな分水嶺になるのではないかという考え方です。

〔 吉川分科会長 〕 ありがとうございました。

 それでは、井伊委員、赤井委員。

〔 井伊委員 〕 簡単に1点だけ。熊谷さんの資料の19ページ、事務局の資料の8ページとも関連するのですけれども、スウェーデンのような北欧というのは、たしか年金とか子ども手当とか、社会保障給付にも課税されています。日本は医療費控除など控除もいろいろありますので、ネットのソーシャル・エクスペンディチャーというのが、たしかOECDでも報告されていると思うのですが、ネットのソーシャル・エクスペンディチャーで比べると、北欧と比べても日本は高福祉で、高福祉低負担といっても、間違いではないと思います。こうした国際比較をするときには、ネットのソーシャル・エクスペンディチャーのデータを使われるといいのではないかなと思いました。

〔 吉川分科会長 〕 では、ご指摘として。

 赤井委員。

〔 赤井委員 〕 ありがとうございました。ここにポイントも熊谷さんのは入れていますけれど、やはり前回の財政審でも議論になりましたように、成長というのは限界があるし、それに頼っていては、ほんとうに財政再建できないということもありますので、一番重要なのは、やはりこの3番目の増税をするときに及ぼす影響はというところを、国民にしっかり説明することが大事かなと思うのです。

 消費税、これまでの研究でもかなりたくさんあるのですけれども、消費税はそれほど悪影響を及ぼしていないし、かえって将来不安をとるという意味では、いい影響があるということは専門家の間ではかなり議論はされているのですが、やはり一般のところになると、特に若い人には、将来不安を持っているにもかかわらず、増税というものに抵抗があるということなので、そこのところをしっかりと説明するということは一番大事かなと思います。

 それも、自分ではなくて、やはり国民全体とか国を考えて行動するみたいなことをしっかりと教育者としても教育していくことが大事かなと思うので、その説明方法をいかにするのかというところを、これに加えて、ぜひもう少し議論していただくといいのかなと。

 特に若い世代にとっては、できるだけ早く増税するのが、自分にとって多分得なはずなので、そういうこともきっちりと若い人に教え込むということも大事なのかなと思います。

 以上です。

〔 吉川分科会長 〕 では、富田委員、早川委員。

〔 富田委員 〕 大変豊富なデータをもとに、また長年の経験を背景にされまして、貴重なお話いただきまして、ありがとうございました。

 お二人のお話、お二人とも言及なさいました貯蓄投資バランスという観点から、ちょっと再度確認させていただきたいのです。1つは、熊谷委員がおっしゃっております非ケインズ効果なのですけれども、マクロで見ると家計貯蓄率というのはもう1%ぐらいにまで低下しているのです。おそらくマイナスの可能性というのは、当然理論的にあり得るわけでして、熊谷先生がお使いになったのは総務省の家計調査における黒字率なので、マクロの統計とはちょっと違いますが、結局はそれぐらい将来に対する不安を現在みんなが持っているのかどうか、あるいは、その不安がなくなれば、もっともっとマイナスの貯蓄率になるのだというふうにご展望なさっているかどうか。

 それから、高田先生には、他の先進国も我が国同様、法人部門が資金余剰に21世紀になってから転じたというご指摘がありました。それで、法人部門の資金調達のコストというのは、当然ですけれどもソブリンよりもコストは高い。どこの国においても国債は一番信用力が高いので、企業の買い入れコストは高いのです。したがって、銀行においても国債よりも高い金利じゃないと資金は調達できない。国債よりも高い金利の調達をして、融資先である法人が余剰部門になった場合に、いわゆる金融仲介機関というのは、これからどういう形でやっていくのかどうか。やっていけるのかどうかということです。

 だから、我々教科書で、家計が余剰で、企業が不足だから、それをつなぐのが金融機関だと理解していて、だからこそ収益機会があったわけですけれども、不足部門が自分よりも信用力の高いところになっている場合に、どういう形で付加価値が生まれるのかということをお聞かせいただきたい。

 それから海外部門について、お二人とも日本国内における貯蓄超過が国債の安定消化に寄与しているというご指摘がございました。それも、これからだんだん黒字の幅が小さくなっていくという展望も示されました。私は、それもそのとおりだとは思うのですけれども、黒字が大きかったことが、金利が低くなったことの大きな要因とはとても思えないのです。基本的には資本移動が自由な世界なわけです。

 したがって、財政でこれだけ赤字を出して、財政拡張的な運営をしていても、金融のほうで引き締めぎみであったら、マンデルフレミング効果から言って、やっぱり自国通貨が高くなってしまう。それがゆえに、あまり海外に資金が流出しなかったということだと思うのです。

 今、大きく変化しようとしているわけでして、いわゆるミセスワタナベといわれる方がたくさん登場なさって、どんどん海外投資されるかもしれない。そういう状況で考えたときに、やはり私は結論的には財政の赤字が縮小しないと、信用を維持しつつ、国全体の貯蓄投資のバランスがとれていけないのだと思うのですけれども、その点について、貯蓄投資バランスという観点から、ちょっとお二人からお話がいただけたらと思います。

〔 吉川分科会長 〕 では、熊谷さんから簡潔にお願いします。

〔 熊谷大和総研チーフエコノミスト 〕 わかりました。まず、貯蓄率は、これはもうマイナスになってもおかしくないと思っていまして、ほんとうは高齢化ですからもっともっと下がらなければいけないのが、これが将来不安によって押し上げられているという認識でございます。

 それからあとは、確かに私は最後のキーポイントは経常収支が赤字化する時期、ここが多分日本の国債の暴落の懸念が強まる時期だと思っていますが、ただ、その前の時点で、おっしゃるようにやっぱりミセスワタナベの動き等がありますので、これが前倒しで起きる可能性というのは、常に目配りをしていく必要がある。

 例えば、ギリシャなども危機が起きましたが、危機が起きる直前のCDS5年物のスプレッドは、わずか1.2%であった。ですから、信用はやっぱり1回失われると、ほんとうにカスケード、滝のように悪くなるわけですから、そこの資本移動が起きる可能性は、かなり警戒しておく必要があると思っています。

〔 高田みずほ総合研究所チーフエコノミスト 〕 ISバランスのところでございますが、こういう環境の中での銀行のあり方ということになろうかと思います。今、日本の場合この十何年以上続いておりますけれども、今、不足セクターということで言いますと、実は非政府セクターと海外ということになります。

 ですから、ここのところ金融機関が国債に投資をしていたというのは、ある面で言えば、1つの資金需要に応えたという部分があろうかと思いますし、また当然のことながら、海外が不足セクターであるとすれば、海外向けの融資をどうするかと。中でも、例えば日本なんかの場合で言えば、特にアジアのような、非常に高い成長率があるところ、この辺のところに海外向けのところをということになろうかと思います。

 ですから、それが1つの成長分野ということだと思いますが、あとは、国内ということになってまいりますと、当然のことながら、まだまだら模様というところがございます。ただ、全体的には余剰でございますから、なかなか伸びにくい中で選別して、どうその中に応えるかというところを発掘せざるを得ない。

 となれば、今申しましたように、海外のところでというのが、普通の企業さんなんかはそうしておられたと思うのですけれども、そういう流れにようやく入ってきた部分が大きいのではないか。

 そして、企業セクターが改善するのであれば、そこのところをいち早く見つけながら、いろいろな意味での知恵も含めて対応するということになろうかと思います。

 それから最後になりますけれども、先ほどから熊谷先生もお話がありましたように、当然のことながら期待の中で動く世界でございますから、もし今後、赤字になるというような期待が強まれば、それに伴って資本が先に動くということが当然起こり得ますので、その部分をよりウオッチする必要があろうかと思います。

 ありがとうございます。

〔 吉川分科会長 〕 どうも、お待たせしました。早川委員。

〔 早川委員 〕 もう皆さんご指摘になったようなことなのですけれど、先日、テレビを見ておりましたら、消費税が上がると、こんな負担になるぞということを、かなり派手にやっておられたのです。来年の4月ですけれども、だけれどその前に消費税を実際に上げるかどうかなんていう判断を秋にかけてやろうと言っているわけです。

 財政規律を、ほんとうに中長期的に保っていかなければいけないということは、もう皆さんおっしゃるとおりなのですけれども、とりあえず一体改革をやってもらおうということが、まず手始めだと思うのです。

 ところが、やっぱりこの間の番組を見た印象なのですが、これから、こんなに負担が増えるんだぞということで、私は新聞ですけれども、新聞も含めてさまざまな形で伝えられていくのだと思うのです。

 そういうことに対して、しっかりと一体改革の意味を説明し、増税が必要なんですよということを言っていかなければいけない。それはやっぱり今度の財政審の1つのテーマだなと思うのです。

 そういう意味で、先ほど熊谷さんが説明された資料の中で、必ずしも増税が経済成長を阻害していないのですよとか、そういう説明は赤井先生もご指摘になりましたけれども、これから丹念に、なおかつ懸命にやっていかなければいけないのだと思うのです。

 そういうことも、今度の議論の中で生かしていただきたいと思います。

 それからもう1点なのですけれども、確かに財政規律を保つということが、むしろ経済成長を促すという面があろうかと思うのです。それは、いわば将来不安をなくすということだと思うのです。赤井先生がおっしゃったように、その対象は主には若い人なのかもしれませんが、しかし、現象的に言えばフローにしても、ストックにしても大半は高齢者が持ち、高齢者が使っているわけです。パイを全体拡大するということを考えれば、それは別の議論になるんですが、今のパイをいかに効率的に使い、財政健全化にも役立てていくのかという意味では、やはり高齢者にお金を使ってもらわなければいけないんだと思うんですよね。まして負担のできる高齢者には負担をしてもらわないといけないということだと思うんです。そういう効果はかなり大きいと思うのですが、高齢者の不安の除去というか、そこはいかがでございましょうか。

〔 竹内大臣政務官 〕 突然の鋭いご質問で、高齢者の方々の不安をどうやって除去するかと、これこそほんとうに難問中の難問だと思うんですが、すぐ思いつくのは、やはり医療や介護という面で、幾つになってもしっかりと面倒を見てもらえると、だから、そういう意味での心配はないと。だから、しっかりと若い世代にこの資産等を移転していただけるように安心していただけるように、そういう仕組みをつくっていくということではないかなと思うんです。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 よろしいですか。土居委員、時間ですが。

〔 土居委員 〕 手短に。お二方から示唆深いお話をいただきました。ありがとうございます。お二方ともお触れになられていたので、今後の分科会の報告書をにらみながら、少しお話しさせていただくと、コメントなのですが、ドーマー条件にとらわれ過ぎてはいけないということだと思うんです。

 つまり経済成長率と利子率のどっちが高いのかという話をしても、あまり財政の持続可能性を議論する上では、学術的に見ても別にそこまで重要な問題ではなくて、むしろ熊谷さんがお触れになられましたけれども、ボーン条件といいますか、要は政府債務の対GDP比が増加しているさなかでも、プライマリーバランス、対GDP比を改善するということにきちんと財政運営スタンスとして、コミットしているかどうかということが財政の持続可能性を検証する上でも重要で、別にこれはドーマー条件が成り立ってなくても、その条件が満たされれば、財政が持続可能であるという必要条件でしかありませんけれども、そういうことは言えるということですので、やはり我が国でもプライマリーバランスを改善していくという方向で財政健全化目標を立てているということは、そことの整合性は見事にとれているわけで、しかももう一つの問題は経済成長率と利子率の差がどうなるかということはもっとクルーシャルに影響すると。

 つまり経済成長率は高ければいいという話ではなくて、金利のほうが長期をとると、成長率よりも高くなる。では、どのぐらい成長率よりも金利のほうが高くなるのかということを見越しながら、よく経済学の学術的に使われるのは2%ぐらい金利のほうが高いと言われますけれども、その幅の中で、それでもなお財政健全化、政府債務の抑制というものが実現できるのかどうかということが2020年代以降に、特に我が国ではとられることになるのだろうと思います。

〔 吉川分科会長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、まだご意見、ご質問等あるかもしれませんが、時間が参りましたので、本日の質疑はこれで終了とさせてといただきます。お二人の有識者の方、高田さん、熊谷さん、ほんとにどうもありがとうございました。大変お忙しい中、貴重なご意見をいただきました。本日の会議の内容に公表につきましては、いつも通りですが、恐縮ですが、私にお任せいただき、会議後の記者会見で紹介をさせていただくことにいたします。会議の個々の発言につきましては、皆様方から報道関係者等に対して、お話をすることのないよう、これはお願いですが、そのようにご注意いただきたいと思います。

 次回は、4月26日にこの会議室で開催し、総論的な議論といたしまして、財政の持続可能性と国際市場。各論といたしまして、社会保障を取り上げたいと思います。いずれもビッグイシューですね。なお、詳細な時間については後ほど事務局より正式な案内をさせていただくことにいたしますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

午後5時6分閉会

財務省の政策