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財政制度分科会(平成28年4月7日開催)記者会見

平成28年4月7日
財政制度等審議会 財政制度分科会


 

〔吉川分科会長〕 それでは、私のほうから、いつものように会議の概要をご説明いたします。

 本日14時より、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたしました。お手元に資料があるかと思いますが、本日は議題1が、EU、イギリス、アイルランド及びIMF、アメリカ、カナダの海外調査報告、それから議題2が「経済・財政再生計画」の着実な実施ということで、本日は社会資本整備、それから文教・科学技術、それから地方財政について審議を行いました。

 本日の皆様方へのご説明ですが、全体を2部構成でご説明させていただきたいと考えています。第1部として、いつものように私のほうから、たった今言いました一応会議の概要ということで委員から説明のありました海外調査、それから事務局からの説明に関する審議をご紹介します。それに加えて、第2部として、実際に海外調査に行かれた4名の委員の先生方が、お忙しい中、皆様方からご質問があればということでスタンバイしてくださっていて、必要があれば皆様方と質疑をしていただくということになっています。

 では、早速、今日の会議の概要ということで、まず海外調査報告についての概要を私のほうから説明しますと、4先生のご説明に対して、お一人の委員の方から、やはり国民の理解というのが財政再建にとって絶対に必要だと、このような報告を受け取ったが、その点についてもう一言というご発言があり、それに対して調査に行かれた委員の方から、国民の理解が財政再建にとっては必要である。とりわけアイルランドなどでは、危機を経験したことから、その危機を乗り越えるための、言ってみれば覚悟のようなものを国民が共有していたことが財政再建にとって大きかったと。その点で日本は危機意識が低いと、こういうご説明でした。

 また、もうお一人の海外調査に行かれた先生からは、アメリカで行われているような税財政教育というのがやはり重要であると。日本では、初等中等教育等で税制等については全く習わないという問題があるのではないかというご発言でした。

 続けてということですが、同じ方が、要するに財政について、国民があまりよく知らないという問題があるのだから、ボトムアップで財政教育を行うことが重要で、また、そうした活動をサポートすることが大事だと。

 次に、お一人の委員の方から、日本の場合には、社会保障、福祉の関係予算の抑制をやろうとすると、すぐに弱い者いじめという批判があって、改革が中途半端に終わってしまう。アイルランド、イギリス等では社会保障改革が大分進んだといったことがあるようだが、どこに違いがあるのだろうかというご質問があったのに対して、現地調査を行った委員の方からは、そもそも日本とイギリス、アイルランド等では、社会保障の内容がかなり違う。一言で言いますと、日本の場合には、最近ではもちろん子育て支援ということもありますが、主として高齢者向けの社会保障であるのに対して、イギリス、アイルランド等では、若者に対する失業手当といった現役世代への援助というのが大きい、その点で大分状況が違うというお答えがありました。

 同じ委員の方は、イギリスでは消費税を引き上げたが、増税に伴って消費の減少はあったのか。これに対して、現地調査をされた先生からは、日本と海外では消費税、海外では付加価値税と一般的には言われていますが、ここではまとめて消費税としまして、消費税がコストの1つとして捉えられ、転嫁のタイミングというのは事業者に委ねられている。つまり、日本では、消費税が上がると一斉に価格が上がるということが見られるが、海外では価格への反映にはかなり時間的にばらつきがあるということもあって、一斉に価格が上がることがないため、駆け込み需要、反動減という大きな落ち込みは、日本のようには見られなかったというお答えがありました。

 それから、もうお一人、別の委員の方、この方はIMFの説明の中では、エスケープクローズ、つまりは情勢に応じた柔軟な対応を可能とする例外条項が紹介されているが、こうしたエスケープクローズは、場合によっては政治的に利用される、いわゆる乱用されるという可能性があるのではないかというご質問がありました。それに対しては、現地調査に行かれた委員の方から、IMFの立場というのは、財政ルールとしてシンプル・イズ・ベストでは必ずしもなく、きめ細かくすることでより現実の事態に即した規律にすることができるし、またそうすべきだという議論が主流であったと。

 それから、その次に、もうお一人、別の委員の方からは、イギリスあるいはIMF、アメリカも含めてですが、最近の世界経済について、一体どのような現状判断をしているのか。日本では、5月にサミットをホストするわけですが、そこで財政出動をすべき話もある。財政再建は経済環境がいいときに行うべきで、また、リーマン級の危機のように悪いときには少し遅らせるというロジックはいいが、とにかく海外では、現在の経済の状況についてどのように見ているのかといったご質問があって、それに対しては、現地調査をされた委員の方から、例えばIMFでは、今年に入ってからやや慎重な見方に傾いてきてはいるが、この程度でリーマン・ショックの状況とは考えていない。また、現地調査をされた別の委員の方からは、イギリスでも、むしろ比較的楽観的な見方をしている。つまり、今年に入ってからの現状を危機的とは見ていないというお答えがありました。

 次に、また別の委員の方は、IMFの資料との関係で、「健全化疲れ」という表現に関して若干のクラリフィケーションのご質問があって、「健全化疲れ」とは、基本的には健全化をすると言いながら先送りすることが問題だというやりとりがございました。

 次に、もうお一人、別の委員の方、この方は2つ述べられていますが、1つは日本では国民が「赤字慣れ」してきていて危機感が薄いというご指摘。それからもう1つ、同じ委員の方ですが、これは前にもご紹介したとおりで、やはり国民に直接、財政教育を行うという取組をしっかり進めていかないといけないと、そういうことですね。

 それからまた、別の委員の方からは、IMFの議論でも経済の実情がリーマン・ショック後のような危機的な状況に陥っていれば、あまり無理な財政健全化を進めるべきではないが、経済がある程度よければ財政健全化を先送りせず、しっかり進めていくべきだという考え方だと、確認のようなご発言がありました。

 それからまた、次の委員の方のご発言です。アメリカの財政運営には、キャップやペイ・アズ・ユー・ゴーなどのルールがあるが、日本の少子高齢化の進展を踏まえると、やはり現在の基礎的財政収支の黒字化目標をしっかり守ることが必要と、こういう発言がありました。

 それから、もうお一人の委員の方のご発言で、日本は諸外国と比べ高齢化の進行具合が全く異なる。超高齢社会へのフロントランナーであるということからすると、社会保障と税の一体改革は待ったなしである、こういうご意見でした。

 最後に、もうお一人、別の委員の方からは、アメリカについて、アメリカの財政再建に関する現在の雰囲気というのは一体どのような感じなのか、このようなご質問があって、それに対しては、アメリカの調査をされた先生から、アメリカでは、ご承知のとおり、与野党対立というのはもちろんあるわけですが、ご存じのとおり、民主党は増税、共和党は歳出カットという点で考え方の違いはありますが、ベクトルの方向としては、両方とも財政健全化という、そういう意味ではある種の大きなコンセンサスがあると、そのような答えがありました。

 以上が海外調査に関した質疑応答の大まかな概要ですが、初めにもお話ししたとおり、今までの段階で特に意味がよく分からないといったようなことはないという理解でよろしいでしょうか。もしそうであれば、初めにお話ししたとおり、実際に調査に行かれた4先生に今日ご出席いただいていますので、後ほどもうちょっと突っ込んだ質疑をしていただければ幸いだということです。

 続いて、事務局説明に関係した質疑応答ということで進めさせていただいてよろしいでしょうか。

 では、今日の会議としては後半ということになりますが、「経済・財政再生計画」の着実な実施ということで、まずは社会資本整備について事務局、主計官からご説明いただいた上で質疑応答をいたしました。

 お一人の委員の方からは、社会資本整備交付金について、いわゆるB/C、コストベネフィットの比率を算出することには大賛成だと、そういうところをしっかりやらなければいけないというご指摘です。

 次に、もうお一人、別の委員の方、公共事業はPDCAのサイクルを適切に回す必要がある、こういうご意見でした。

 次にもうお一人、別の委員の方は、公共事業にかかわる建設業等について、担い手確保に当たって職業教育は重要な視点だというご意見です。

 それから次に、もうお一人の委員の方、この方は、やはり公共事業に関連した建設業界は、特に女性の比率が非常に低いが、建設業界でも女性比率を上げていこうという日本建設業連合会の取組もある、こういうご指摘でした。

 それからもうお一人、別の委員の方のご意見です。この方は、社会資本整備関連で「立地適正化計画」について、複数の近隣市町村が連携した取組や、コンパクト化により医療費を抑制するといった取組をどのように進めていくか、そうしたことも重要な視点である、こういうご意見でした。

 次に、また別の委員の方のご意見です。この方は、建設業で人手不足というのは確かにあり、人材の育成というのも大切だが、今後の少子高齢化やコンパクト化を踏まえれば、そうやって育成した人材が後々に余剰人材になるというリスクも考えておいたほうがいいかもしれないというご意見でした。

 それから次に、もうお一人の委員の方は、社会資本整備について、PFIなど、民間資金の導入が重要というご意見でした。

 以上が社会資本整備、事務局説明、3つ分野があるわけですが、1番目の社会資本整備関係です。

 続いて2番目、文教・科学技術について。

 まず、お一人の委員の方は、文教関係の資料の20ページですが、文化財の整備予算は460億円だと。考えてみると文化国家としてもう少し文化財保護等に予算を使うということを考えてもいいのではないか、このようなご意見でありました。

 次に、もうお一人、別の委員の方のご意見です。この方は2つご意見を述べられて、1点目は、科学技術予算について、ドイツの研究所の例を挙げられて、ドイツでは、そうした研究所が民間の企業から外部資金を得れば、たくさん得たところに国も補助金なりを出すということになっていると。もちろん、民間の企業は、やはり研究委託などをするときにはシビアにその研究所の能力を見るであろうから、日本でも、国が研究機関等にお金を出すときには民間からの外部資金が多いところに出すといった制度を少し取り入れてもいいのではないかと、こういうご意見。これが1点目。

 それから、同じ委員の方は、もう1つご意見を述べられて、教育、初等中等教育に関して、教員が忙し過ぎるという指摘が従来からある、また、それを緩和するために加配定数が考えられているが、そもそもなぜ先生方が忙し過ぎるのかという実態を正確に把握する必要があるのではないかと、そのようなご意見を述べられました。

 ちなみに、先生がなぜ忙し過ぎるのかと、その実態をきちんと把握するということの必要性については、全く同じ点について、もうお一人の委員の方が同意見を述べられました。

 それから、もうお一人、別の委員の方は、文化財に関係して、財務省の提言の中に文化財の紙のパンフレットの多言語化というのがあるが、外国人は皆、タブレットの端末を持ってきているので、ICTを活用した情報提供をすればよいのではないかと。時代に合った、紙だけではなくて違った媒体も有効に活用すべきだ、このようなご意見でした。

 それから、もうお一人の委員の方は、初等教育について、皆さん方のお手元の事務局資料、11ページに、小中学校の在学者一人当たり公財政支出が諸外国と比較してほぼ同水準であるというのは、世の中では意外と知られてないと。つまり、世の中では、よく日本では教育支出の対GDP比が先進国、OECD、他の国々に比べて低いと言われますが、お手元の事務局資料、資料4の11ページにありますが、生徒一人当たりというような形で直してOECD諸国、とりわけG5で比べると、一言で言うと日本は遜色ないというような数字もあるわけで、そうした数字は意外と世の中で知られてないが、これはやはりきちんと世の中に知ってもらうというのが、議論を実りあるものにするためのフェアプレーの第一歩ではないか、このようなご意見でした。

 以上が文教・科学技術です。

 次に、3つ目、地方財政に移ります。

 地方財政について、お一人の委員の方から、この方は2つご意見を述べられて、1つは、リーマン・ショック後の特別措置として導入された別枠加算が平成28年度に廃止されたということは、財審でもこれまでそういう主張をしてきたことであり、評価できると、こういうご意見を1点、述べられて、続けて同じ委員の方は、今後、生じる可能性があるフローベースの財源余剰分について、ともすれば新たな歳出に使ってしまいかねないが、債務縮減に充てる取組をしっかり進めていかなければならないと、こういうご意見でした。

 次に、また別の委員の方のご意見。この方も2つ意見を述べられて、1つは、同じ財源でも国と地方のいずれの財源で使うかで規律が著しく異なっている。特に、社会資本整備総合交付金について、未契約繰越率や不用率が公表されていない、B/Cの算出も要件化されていなかったことは問題で、こうした点を進める必要がある。これが第1点。

 第2点、同じ委員の方、続けて2つ目のご意見として、補助金は余ったら国庫に返還する必要があるが、地方交付税は地方税収が上振れした場合も事後的に清算がなく、国が発行した赤字国債の減額につながらないという問題があると、このようなご意見でした。

 実は今日は時間も限られていたのですが、地方財政については以上です。これで一応、会議の概要をご報告しました。海外出張については、実際に行かれた先生方があちらでスタンバイしてくださっていますので、後半の事務局説明の部分について、質疑の必要があれば、お願いいたします。

〔質問〕 まず、地方財政についてですが、フローベースの財源余剰分について、債務の返済に充てるということについては、委員からは了解が得られたというような形なんでしょうか。

〔吉川分科会長〕 ええ。反対意見はありませんし、財審としては基本的にはそういうスタンスでこれまでも議論してきているわけで、今、言っていただいたような理解で問題ないと。

〔質問〕 あともう1つ、個別の話ですが、社会資本整備のところで、上水道事業と同じように、下水道事業の会計も変えていくべきではないかという話があったと思いますが、それについて、何か委員からの意見というのはございましたか。

〔吉川分科会長〕 お一人の委員の方が上下水道に言及されましたが、基本的に今、言っていただいた方向でやるべきだと、下水道についても上水道と同じような形でという形で、そういう方向のご発言だったと思います。 では、実は今日、会議3時間のうち、半分以上はむしろ海外調査のほうで時間を使いました。

 では、こちらに移っていただいて、できれば海外調査について少し、先生方、せっかく待ってスタンバイしていただいたので。

〔事務方〕 では、何かご質問があれば。

〔質問〕 全体的なことで1点、お話を伺いたいのですが、資料を見させていただくと、各国とも、リーマン・ショック後、非常に経済成長率が伸びていたり、あと、借金を堅実に減らしていたりということで、大分、日本と違うなと思ったのですが、すぐに回復できているのかといった理由について、それぞれの委員の方は現地を見られてどのように感じられたかをお願いしたいんですが。

〔佐藤委員〕 私、アイルランドとイギリスを担当いたしました。どちらの国でも彼らが強調していたのは、「柔軟な経済」という言葉です。具体的には、規制が緩和されているということを含め、労働市場棟が非常に柔軟だったということ、これが実は財政再建と経済成長の両立につながっていくということになっているわけです。

 あと、アイルランドの場合は、特に彼らは小国解放経済モデルという言い方をしますが、非常に貿易が大事な国でありまして、したがって、国内で緊縮政策をとっても、海外からの需要が伸びれば輸出が伸びますので、結果的にそれが財政再建の国内のマイナス影響を緩和する方向に働いたという面もあるということでした。

〔田中委員〕 カナダも同じように4、5年でかなり回復をしていますが、資料でいうと25ページを見ていただきたいのですが、時系列で財政収支対GDP比を見ていただきますと、山場が2つありまして、1つは1993年から1997年、それから2009年から2014年ですね。

 実は、均衡予算は1994年から始め、均衡化のためにつくったプログラムがベースになっています。これは自由党のクレティエン政権のときに国債の格付が悪化しまして、そこでウォール・ストリート・ジャーナルで第三国あるいは途上国並みと批判されたことで、国民の危機意識が非常に高まって、やはり財政健全化が必要だというコンセンサスができていった。そういった下支えをベースにしながら、政治が相当コミットしたんですね。しかも、増税をしないで、歳出削減によって財政均衡化を実現しますということで、その手段として導入されたのがプログラム・レビューです。これは日本でいうところの行政事業レビュー、あるいは前の事業仕分けに類するものなんですが、これを導入したことによって、4年で均衡を実現したということです。

 2009年は、リーマン・ショックの後に財政出動しましたので均衡がくずれたわけですけど、ここも同じようにプログラム・レビューを入れているのですが、加えたこととしては、これまでは事業の歳出削減だったんですが、各府省の経常経費も切り込んでカットをした。しかも、2011年には実際の歳入が見込みよりも下になったんですね。それで、追加の削減項目を加えて、徹底した歳出削減を行ったことによって、やはり4年、5年で均衡化を実現できたという経緯がありました。

 以上です。

〔末澤委員〕 今回のIMF、アメリカ、カナダの資料の9ページ、10ページ、11ページをご覧いただきたいと思いますが、9ページのところ、おっしゃるとおり、リーマン・ショックのときは、2009年というのは対GDP比で13.2%の財政赤字が発生しています。ただ、その後、急激な改善をしておりまして、基本的には歳入が大きく増えた。これは、やはり米国の場合ですと、直接税主体ですから、その後の景気回復に伴って個人所得税と法人税が急激に改善しています。例えば、昨年の9月に終わりました2015会計年度でも、個人所得税は10%以上増えておりますし、法人税も8%近く増えている。問題は歳出なのですが、歳出の伸びは極めて限定的になっている。ただ、その歳出の伸びについては、極めて能動的に歳出を少し抑えた部分と、与野党の対立の結果、抑えられた部分と、2つあります。

 次のページ、10ページ、11ページをご覧いただきたいのですが、まず11ページのオバマ政権発足以降の上院と下院の構成を先にご覧いただきますと、2009年1月にオバマ政権が発足しました。このときはオバマブームでしたから、議会も勝ったんですね。上院が民主党は59、下院も256ということで、上下両院でマジョリティーをとっている。しかも、上院ですと、基本的にはクローチャー・モーションを採決するためには60議席が必要ですが、60に極めて近い議席数を確保できたということで、オバマ主導の政権運営ができています。そのときにやったのが、1ページ戻っていただいて10ページのペイ・アズ・ユー・ゴー法ですね。これが2010年2月に成立しております。ここまではある面、能動的に歳出を抑えた。

 ただ、その後、もう一度、次の11ページをご覧いただくと、2010年11月の中間選挙で民主党が大敗しまして、上院でも55議席しかないと。ですから、上院もなかなかコントロールできない。下院はもう共和党にとられまして、これ以降、与野党の対立が深刻化している。特に、共和党内でもティーパーティーの台頭がありましたので、民主党と共和党が政治的に妥協するということは極めて難しくなりました。

 その結果、何が起きたかというと、少し戻っていただいて、Cap、2011年予算管理法とありますが、この予算管理法ができるまでに相当もめまして、予算管理法が一応、2011年8月にできましたが、その直後にアメリカの格付が下がるという問題も起きている。

 それ以降は本当により対立が深刻化して、結果的には、実はこの予算管理法に盛り込まれた10年間での9,000億ドルの歳出カット、プラス1.2兆ドルというのがあったんですが、1.2兆ドルは結局決まりませんで、ご案内のとおり、超党派の委員会もつくりましたけど、全然決まらずに、11ページの一番下のほう、黒字でついているところ、2013年3月に、最終的には強制歳出削減、シークエスターが発動した。これで10年間で1.2兆ドルの歳出カットが行われています。半分は国防関連費ですね。

 その後、ご案内のとおり、2013年10月にはガバメント・シャットダウンというのも発生しておりまして、要は、その後は相当、与野党の対立が深刻化したことで、この強制歳出削減がずっと続いているんですね。昨年11月の超党派予算法ないし12月に成立した2016年統合歳出法でも若干緩和はされましたが、基本的には強制歳出削減が続いている。

 ただし、アメリカの場合は、民主党も共和党も基本的に財政再建計画を打ち出しています。しかし、民主党は基本的に増税、富裕層向けの増税で財政赤字を削減する。一方、共和党は基本的に歳出の削減、主にオバマケアの撤廃等ですね。そういう面もあるので、結果的には財政削減目標は出していますが、これはもう妥協ができない状況が続いています。その結果、ミニマムの、ある程度お互いが合意できるところが最終的に予算になり、その結果、強制歳出削減に極めて近い予算がずっと継続されておりまして、この最近の財政収支の改善は、1つは企業収益、個人所得の改善に伴う増収、一方は、それに対して歳出が、このペイ・アズ・ユー・ゴー、またはシークエスター等の影響で抑えられていると。これによって急激に回復してきていると理解しております。

〔竹中委員〕 私、専門家としての立場というよりも、むしろ勉強させていただくということで、アイルランド、イギリス、ベルギーへ行かせていただいたのですが、とりわけ関心を持って行ったのは、アイルランドの経済のV字回復というのが、なぜできたのかというのが大変知りたくて、何か日本にも参考になることがないだろうかという興味を持ちながら訪問したのですが、佐藤委員がおっしゃったこと以外に、自分が皮膚感覚で感じた話としては、最低の、どん底の、本当に地獄を見るような経済、財政危機を乗り越えるために、与党も野党もない、政府も国民も区別ない、とにかく全員一丸となって財政再建に取り組んで乗り切った、そして現在、右肩上がりの経済成長をしているという、この状況をすごく誇りに思い、この誇りを持って前進する以上、また危機があったとしても、私たちは必ず乗り越えてみせると、そのようにおっしゃったのがとっても印象に残りました。

 それで、その3カ国の方、皆さんそれぞれが口をそろえて言われたのは、選挙前になると、やはり財政規律というのが緩むということ。ただそれを繰り返すと、国民から逆に信頼を失うと。ですから、いかに政治がきっちりと説明責任を果たして、国民と一体になって財政健全化に向かうかということが重要であると思うということを、どの国の方々も言われたということがすごく身にしみたというか、いいお話、聞かせていただいたなと思います。

 特にイギリス、アイルランドは若い人たちが多く、高齢化問題にはまだまだ直面されていないんです。ですから、少子高齢の問題に直面している日本というのは、本当はもうかなりの危機だろうと思いますが、それを本当に日本の国民が共有できているかというと、なかなかそうでもないという状況です。そうした中、今度、4月22日に女性公聴会というのもさせていただきますが、少なくともまず女性たちが、真剣にこの問題に対して意識を共有できるようにしたいなと、今回の視察から思った次第です。ありがとうございます。

〔質問〕 皆さんにお伺いしたいのですが、調査に行かれて、「国民の理解」を得られることが財政再建で必要だとか、いろいろなことをお感じになられた上で、翻って日本を見たときに、どういうことが教訓として考えられるかというのをお感じになられたかを教えていただければと思います。

〔佐藤委員〕 まず、皆さんが強調していたとおり、やはりなぜアイルランド、イギリスで、あるいはアメリカやカナダもそうですが、財政再建が進んだかというと、やはり国民の間での危機感が共有できたということだと思います。私が行ったアイルランドの場合は、彼らには80年代の経験があって、あのときの財政危機時に、迅速に対応しなかったことで彼らはものすごい痛みをこうむって、それで何とか、最終的には乗り切るということがあったので、やっぱり財政危機が起きたときに迅速に対応しなければ、よりひどい状況になるということは彼ら自身が肌身で感じていたということ。

 イギリスの場合は、資料にもありますが、国債金利が上がり、マーケットの反応というのが国民の間での危機感の浸透につながったということがあると思います。

 それから、イギリス、アイルランドにもう一つ共通するのは、彼らは独立した、いわゆる予測機関というのがありまして、これはイギリスの場合は財政責任庁というものですが、イギリス経済の今後の見通し、それから今のままでは財政はどうなっていくのかという見通しについて、第三者的な観点からの予測が出ていたということ。つまり、数字に対する、今後の将来の経済や財政への見通しに対する、国民からの信頼が確保できたということがあると思います。要するに、具体的にお手盛りの数字ではないということなので、このままだと非常にひどい状況になるということについても、信頼のある数字が出せていたということがあるかなと思います。この点がやはり国民が危機感を共有して財政再建を支持する政治的な基盤になったのかなというふうに思います。

 あと、やはり与野党問わずですが、ベクトルの方向という点で見れば、みんな財政再建をするという方向では一致していた、あとは程度の問題だったということもあったので、財政再建の是非をめぐって何か政治的な対立が起きるということは、少なくともあの時点では避けられていたということがあると思います。

 あと、どちらかというと、イギリスやアイルランドは財政再建とは言っても歳出削減の方に比重を置いています。もちろん、消費税を上げたり増税はしていますが、歳出の削減に比重を置いていると。なぜそれができたかということですが、やはり彼らの人口動態がまだ若いんです。日本に比べて高齢化していない、結果的に歳出削減の対象は何かというと、現役世代向けの社会保障給付がある程度大きいということがあります。要は、失業給付や失業手当の類ですが、したがって、この現役世代をいかに就労のほうに持っていくかというところに彼らの努力があって、結果的に見ると、それで歳出の削減につながるし、働いてくれますから、これはもちろん労働の増加になりますので、成長にも寄与するということになるわけです。

 じゃあ、翻って日本の場合はどうかといいますと、やっぱり高齢化しているということがありますので、我々にとっての社会保障は、その多くは医療であり、介護であり、年金でありということになりますので、そのあたりは彼らとは事情は違うかなと思いました。

 よって、もちろん歳出削減、抑制は非常に大事なテーマでありますけれども、日本の場合、財政再建を進めるに当たってはやはり歳入の確保、具体的には税収確保、ここのところに目配りしないとなかなか難しい。カナダの場合は実際、歳出カットだけで何とかやったのですが、そういう方向は我々の選択肢ではないかなと思いました。

 以上です。

〔田中委員〕 よろしいですか。今、「国民の理解」というキーワードを出していただいたので、あと危機感の共有もあったと思うのですが、なかなか日本でも、危機だ、危機だと言われても、危機感があまり伝わらないところがあって、そこをどうしたらいいのかというのは常に考えていますけども、ある意味、財政状況に関するIQをアップしないといけないと思うんですね。それは1つは、いわゆる学校で教えるということもあるでしょうけれども、例えば今回、アメリカで見てきたところでは、日常、日ごろから財政やタックスの行方を、今どうなっているんだということを、いわゆるNPOが監視していて、常に分かりやすい言葉で情報発信をしているんですね。それがやっぱり財政IQをアップするために重要な役割を果たしているのではないかなと思いました。

 以上です。

〔末澤委員〕 米国の状況で申し上げますと、ちょうど私どもがお伺いしたときはスーパー・チューズデーの直後で、向こうでは実は毎週火曜日に選挙をやりますので、スーパー・チューズデー・ワン、ツー、スリーという言い方をしていましたけど、ちょうどツーのときだったんですが、やはりもう24時間、ニュースチャンネルは選挙戦をやっています。

 先ほども申し上げましたけど、オバマ大統領の政権運営は厳しくなっていますが、やはり日本とちょっと違うのは、やっぱり彼らは自分の財布に勝手に手を突っ込んで、税金で取っていっているんじゃないかと、そういう意識がやっぱり少しあると。ただ、日本は、多分それがある面、皆さん同一性がより強いので、結局、何か同じコミュニティーの中で借金しても、あんまり痛まないという意識がちょっとあるのかなと。米国の場合は相当多様な移民国家でもありますし、いろんなパーティーといいますか、いろいろ分かれていますから、そういう面でなかなかあんまり、何ていいますか、大きな政府にすることに対するすごい警戒感があって、これが今のむしろアメリカの大統領選の1つのキーワードになっていると。

 ですから、アメリカが必ずしもいいというわけではなくて、アメリカはアメリカでそういう財政再建の圧力というのは、ある面、個人主義的な色彩が極めて強いので、圧力があると。日本は逆に、それがない面はいい面もあるんですけれども、ただ、日本の今の人口動態を勘案すると、じゃあ今後は、逆に言えばこれは世代間の競争になりかねないんですよね。全く人数が同じ状況で、ないしはかつてのような正のピラミッドの人口動態が維持できれば、若干借金しても後世にお願いすることはできますけど、今後はもう一種の財政的なビジネスモデルが、これから10年後、20年後には、今度はなかなか機能しなくなるのではないかと、危惧しています。

〔竹中委員〕 私自身は、活動で障害のある人のことをチャレンジドと呼んで、チャレンジドをタックスペイヤーにできる日本というようなことを掲げて、25年活動してきたのですが、日本ではこういう活動というのは非常に異端で、障害のある人、とりわけ障害の重い人は福祉の対象で、手当てを受けて生きていくというシステムになっています。私は逆だと思っているのですが、このたび、アイルランド、イギリス、ベルギーへ行き、そしてアメリカとはおつき合いがあり、アメリカのチャレンジドとはつながりが深くて情報もあるのですけど、まさに福祉というのは弱者に手当てをすることではなく、同じ税を投入するのであれば、その人たちが弱者でないようにするプロセスにきちっと投入すべきで、それこそが福祉予算なんだという考え方なんです。

 で、日本は、チャレンジド、障害者だけにじゃなく、女性にでも、高齢者にでも、福祉というと何かしてあげるというのでずうっとやってきて、結局、それが大きな赤字につながる1つの理由にもなったのかなと、つまり循環しない福祉のシステムというのを構築し過ぎた。右肩上がりの日本ではできたかもしれないけれど、やはり財政危機を脱してこられた国々の考え方から、今、この部分はすごく学ぶべきところがあるのではないかというふうに私は実感しました。

 それと、カナダでは税財政の教育をNPOが実施しているということですけど、私は子供のときにあまり税について正式に授業で学んだという記憶がなく、これはよく考えてみると、やっぱり不思議な、怖いことだと思いました。やはりそういった教育の中に、どれだけこういうことを知ってもらう層を広げるのか、まして若い人たちにはこれから負担が重くなっていくというときに、現実を教育の中でも伝えるというのが重要だなと思いました。

 最後に、これは視察そのものではないのですが、約1週間、財務省の担当の方と寝食をともにして、財務官僚、働き過ぎと思うぐらい働かれて、改めてそのことに頭が下がったということだけをつけ足しておきたいと思います。

〔質問〕これで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

 

(以上)

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