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第3回 環境と関税政策に関する研究会 議事要旨

第3回 環境と関税政策に関する研究会 議事要旨

1.日時:平成22年5月27日(木)9時30分~12時00分

2.場所:第1会議室(財務省本庁舎4階)

3.概要

(1)高村教授、有村准教授、JBIC本郷室長及び関税局より、カーボン・リーケージ対策と途上国の参加、国境調整措置の効果に関する定量分析、CO排出量の定量化、国際法ワーキング・グループにおける検討結果の概要等について説明。

(2)意見交換

4.主な意見等

    • 世界銀行やOECDの報告書等によると、輸出の多い国にとっては、輸入に対してのみ国境調整措置を実施しても効果は薄く、輸入・輸出双方に対して炭素リーケージ対策を実施すると、効果が見込まれる。
    • 炭素リーケージ対策措置は、途上国におけるCO排出総量の削減に対する効果としては限定的である可能性もあるが、気候変動対策によって大きな負担を強いられる国内の特定産業に対する影響緩和という効果はある。
    • 輸入に対して国境調整措置をとった場合に発生する収入の使途によって、マクロ経済への影響は大きく変わってくる可能性がある。
    • 国境調整措置を実施するためには、原産地規則に類似した仕組みにより、どこで温暖化ガスが排出されたかを判断することが必要。やや強引な手法ではあるが、輸入に際して排出量データが不明な産品については、炭素制約を受けずに生産された産品とみなし、国境調整措置の対象とすることも考えられる。
    • 途上国に次期気候変動枠組への参加インセンティブを与えるためには、先進国が途上国に対して気候変動対策のための技術協力を行い、技術協力を受けている国については、気候変動対策を講じていると評価して取り扱うことも考えられる。
    • 貿易集約度やエネルギー依存度といった客観的基準に基づいて炭素リーケージ対策の対象産業を決定したとしても、実際に恩恵を受けるのは特定業種に集中すると考えられる。そうした場合、補助金協定上の「事実上の特定性」があるとみなされる可能性が高い。但し、「事実上の特定性」があるとみなされたからといって直ちにWTO協定違反となるわけではない。
    • 国家間合意をいずれの国際フォーラムで行うかということが議論されており、国連気候変動枠組条約あるいは貿易のフォーラムで行うべきという意見がある。セクターに関する国家間合意は、必ずしも全ての国が関わる問題ではないので、関係する幾つかの国の間で合意がなされればよいとする意見もある。
    • 国境調整措置が途上国の次期気候変動枠組への参加を促すためのものであるとすれば、当該措置が途上国に保護主義的とみなされないよう配慮すべき。排出枠無償供与より、国境調整措置の方が途上国の参加を誘引する効果は高いが、制度設計の問題が非常に重要である。
    • 国全体として枠組みへ参加するインセンティブがなくとも、途上国が参加インセンティブをもつようなセクター別合意のあり方も考えられるのではないか。
    • 途上国に対する支援策を組み合わせなければ、枠組みへの参加を促すことは困難。環境問題以前に、途上国は国際的な意識がそもそも低いため、データを得ることすら困難な状況。
    • 日本と中国のエネルギー原単位でみたCO排出量には大きなギャップがあり、その競争力の差を国境調整により埋めるのは困難ではないか。
    • 輸出国における排出量データをベンチマークとした国境調整措置は、WTO協定上問題が多く、また、相手国における排出量データを捕捉することは技術的にも困難であることから、輸入国における排出量データをベンチマークとする措置の方が現実的ではないか。
    • 経済学上合理的な国境調整措置について国際約束として合意できるか否かは、インセンティブを付与できるか否かによる。途上国や新興国が何らかのインセンティブをもつような措置であれば、合意形成が可能。
    • 国境調整措置に係る国際レジームは、各国の自主的な措置、拘束力をもつ国際約束、目標を設定して各国の自助努力を促す国際約束等が考えられ、いずれをとるかについては今後議論の余地がある。
    • 米国・EUが一方的に国境調整措置を実施した場合、新興国との通商戦争に陥る可能性が高く、国際貿易体制と気候変動枠組双方に悪影響を及ぼし得る。本来、WTOレジームと気候変動対策レジームはシンクロさせるべきであり、次期気候変動枠組交渉を踏まえたWTO協定の改正について議論すべき。しかし、合意は困難であろう。

(問い合わせ先)

財務省関税局関税課 関税企画調整室長 錦織(にしこり)

(代表)03(3581)4111 (内線2481)