このページの本文へ移動

第2回 環境と関税政策に関する研究会 議事要旨

第2回 環境と関税政策に関する研究会 議事要旨

1.日時:平成22年4月22日(木)10時00分~12時15分

2.場所:第1会議室(財務省本庁舎4階)

3.概要

(1)諸富教授、安藤准教授及び関係省より、WTOドーハ・ラウンドにおける環境物品の関税引下げに係る議論、炭素リーケージ対策のあり方、日本企業の国際分業等について説明。

(2)意見交換

4.主な意見等

  • ○環境物品の関税引下げについて
    • 環境物品には、最終物品の環境負荷が低いものとその製造工程の環境負荷が低いものが含まれるが、我が国は、ドーハ・ラウンド交渉において、省エネルギー効果を勘案した上で、前者を主張している。
    • 製造工程を考えると、例えばソーラーカーなど、省エネ物品の方が通常の製品よりかえって環境負荷が高い場合もあるのではないか。
    • 制度実施の観点からは、環境物品にあたることが分かりやすいものを対象として提案するのがよいのではないか。
  • ○国境調整措置の妥当性についての経済学的議論
    • 通常、関税をかけると市場に歪みが発生して厚生が低下するが、外部不経済が存在することを前提とするならば、これを内部化するために、温暖化ガス排出地から輸入される際に国境調整措置を設けることは、経済学的観点からみても妥当。
    • サプライチェーンが複雑である産品においては、排出地がどこかトレースすることは困難であり、そういった産品に対して国境調整措置を設けることは、歪みをより大きくするのではないか。
    • 経済的歪みの是正を追求しすぎると、行政コストが過度に増大するおそれがある。歪みがいくつもあるような状態の場合には、一つ一つの歪みを解消していくのではなく、ばっさりとバランスをとるような政策も採り得るのではないか。
  • ○産業の特性・国際分業への配慮の必要性
    • 海外への生産拠点移転が起きる理由は産業によって異なるため、炭素リーケージの影響を考える際には産業の違いを併せて考える必要がある。
    • 各国共通の基準に基づく炭素排出証明のようなことが実現すれば、国境調整措置を設けるためのハードルは大きく下がるが、途上国におけるMRV(測定、報告、検証)の実行可能性等を考えると、短期的には難しい。そうした場合、最終製品段階におけるみなしの排出量を設定し、それに基づき国境調整措置を実施することを二国間あるいは多国間で合意できるか、という問題になる。
    • 国境調整措置を実施する場合、迂回が行われるおそれがあるため、原産地規則を整備する必要がある。
  • ○リーケージ対策の射程
    • 国内市場のみならず、海外市場における競争力も考慮することが必要ではないか。
    • 炭素リーケージには、財の輸入によるものと生産拠点の移転によるものの2種類があり、前者は比較的早期に発生し得るが、後者は簡単に現れるものではない。
    • 20 年程前、公害規制の緩やかな途上国への先進国の生産拠点移転が起きたが、その後、途上国においても公害規制が導入されている。炭素排出規制に関して言えば、特に大型の施設であれば、現状でも、国際機関や金融機関において環境ガイドラインに基づく融資が行われるなどしている。途上国における環境規制強化の流れが明白である以上、規制の緩い国に安易に生産拠点が流出することはないかもしれない。

(問い合わせ先)

財務省関税局関税課 関税企画調整室長 錦織(にしこり)

(代表)03(3581)4111 (内線2481)