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関税・外国為替等審議会 関税分科会 (令和5年11月30日開催) 議事録

  1. 開会
  2. 関税改正項目②
    -暫定税率等の適用期限の延長等
    -特例申告納期限延長に係る担保の取扱い緩和
  3. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 江島関税局長
委員 伊藤 恵子 山崎審議官
植田 健一 内野審議官
片山 銘人 奈良井総務課長
木村 旬 吉田関税課長
木村 福成 仲参事官
杉山 晶子 馬場監視課長
高橋 裕子 箭野業務課長
田村 善之 大関調査課長
根本 敏則 澤藤事務管理室長
三石 誠司 濵口特殊関税調査室長
和田 照子 坂本原産地規則室長
臨時委員 清水 順子 近田税関調査室長
専門委員 石黒 憲彦 伊藤知的財産調査室長兼認定事業者調整官
大橋 弘 厚生労働省 海老医政局医薬産業振興・医療情報企画課医療用物資等確保対策
佐藤 英明 推進室長
末冨 純子 農林水産省 小島輸出・国際局国際経済課長
藤岡 博 石田農産局地域作物課長
宮島 香澄 経済産業省 中山通商政策局通商機構部通商交渉調整官
村上 秀德

 

午前10時00分開会

森田分科会長 皆様、おはようございます。時間も参りましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。
 委員の皆様方には、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。
 本日の議題はお手元の議事日程のとおりでございます。具体的には、来年度改正の検討項目として、「暫定税率等の適用期限の延長等」及び「特例申告納期限延長に係る担保の取扱い緩和」について御説明を受け、審議を行いたいと思います。
 それでは、まず、吉田関税課長より「暫定税率等の適用期限の延長等」について、説明を受けたいと思います。よろしくお願いいたします。

吉田関税課長 関税課長の吉田でございます。それでは、お手元の資料1-1に沿いまして御説明を申し上げます。
 1ページ目を御覧ください。基本税率は、中長期的な観点から、内外価格差や真に必要な保護水準を勘案して設定される税率でございます。一方で、暫定税率は、政策上の必要性等から、適用期限を定めて基本税率を暫定的に修正するということで設定している税率でございます。令和6年度関税改正につきましては、令和6年3月31日に適用期限が到来いたします412品目について延長等を検討する必要がございます。
 2ページ目を御覧ください。延長等の検討に当たりましては、生産者及び消費者等の間の利害調整に及ぼす影響や国際交渉との関係等を考慮しており、今年度の改正の方向性につきましては、411品目について暫定税率の適用期限を1年延長することとしたいと考えております。また、ポリ塩化ビニル製使い捨て手袋の1品目につきましては、暫定税率を撤廃することとしたいと考えております。
 3ページ目を御覧ください。ポリ塩化ビニル製使い捨て手袋、いわゆるPVC手袋は、医療等の現場において、感染症対策や清掃、汚物処理等のような衛生確保が必要な場合に幅広く使用されているものでございます。考慮すべき事項といたしまして、PVC手袋は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う需給逼迫を受けて調達価格が高騰していたことから、価格高騰に伴う関税負担の軽減を図るため、令和3年度から無税の暫定税率を設定しておりましたが、今般、物資所管省庁より無税の暫定税率の延長は要望しない旨の意向が示されております。状況を確認いたしましたところ、PVC手袋の需給逼迫は解消され、調達価格は新型コロナウイルス感染症の発生前と概ね同水準となっていることから、価格高騰に伴う関税負担の軽減を図るために設定した無税の暫定税率を撤廃しても、特段の支障はないものと考えております。また、PVC手袋と用途の一部が重複し競合関係にありますポリエチレン手袋につきましては、国内産業保護のため関税有税となってございます。PVC手袋の需給逼迫が解消した状況においてPVC手袋に係る暫定税率を維持することは、ポリエチレン手袋の国内生産に影響を及ぼす可能性も考慮する必要がございます。改正の方向性でございますが、このような状況を踏まえまして、PVC手袋の暫定税率を撤廃することとしたいと考えております。
 4ページ目を御覧ください。特別緊急関税制度は、ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて関税化された農産品につきまして、関税化措置に伴う輸入急増時等の安全弁として、輸入数量が一定の水準を超えた場合、または課税価格が一定の水準を下回った場合に、それぞれ関税率の引上げを行うものでございます。適用期間は1年間であり、毎年度、期限延長の必要性を検討しております。考慮すべき事項として、ウルグアイ・ラウンド合意に基づき関税化された農産品につきまして、本制度そのものが当該農産品の輸入が急増した場合等に備えて設けられた制度であることから、国際交渉の状況等を踏まえて検討する必要があると考えているところでございます。こうしたことから、現在協議中のWTOドーハ・ラウンド交渉を含め、経済連携協定に係る交渉の対象となり得るものでございますところ、国際交渉の状況等を踏まえ、予断なく注視する必要があることから、適用期限を1年間延長することが適当であると考えております。
 5ページ目を御覧ください。前回の分科会では委員の皆様方から活発な御議論を頂戴いたしました。加糖調製品は、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、CPTPP発効時に糖価調整制度における調整金の対象に追加されたところでございます。CPTPP発効に伴い、加糖調製品に係る調整金を原資とした価格調整により、国産の砂糖の価格は加糖調製品よりも価格上昇が抑制されているものの、前回の農林水産省からの説明のとおり、加糖調製品と国産の砂糖の間には依然として価格差が存在しております。こうした中、農林水産省から、加糖調製品に係る調整金収入の拡大を可能とすべく、令和6年度のCPTPP税率の設定状況等を踏まえた暫定税率の引下げを求める要望が提出されております。次に、考慮すべき事項といたしまして、糖価調整制度の目的は、甘味資源作物に係る農業所得の確保等を通じて国内産糖の安定的な供給確保を図ることにより国民生活の安定に寄与することとなっており、加糖調製品と国産の砂糖の価格差、需給の動向、暫定税率の引下げによる政策効果などを勘案した上で、加糖調製品に係る調整金を拡大する必要性の有無について検討すべきであると認識しております。改正の方向性といたしましては、前回の分科会で加糖調製品と国産の砂糖の価格差が認められることについて農林水産省から説明があったことに加えまして、加糖調製品全体の輸入量は減少しているものの、今後再び輸入量が増加する可能性も否定できないこと、甘味資源作物の生産費削減を含む国内産糖に係る競争力強化等に努めていること、調整金を原資とした原料糖の価格調整により国産の砂糖の価格が抑制され、消費者の利益に寄与していると評価できること等を総合的に勘案いたしまして、加糖調製品5品目について、令和6年度のCPTPP税率の設定状況等を踏まえ、国内産糖への支援に充当する調整金の拡大が可能となるよう暫定税率を引き下げることが適当であると考えております。なお、本件につきましては、令和6年度以降につきましても、加糖調製品と国産の砂糖の価格差及び需給の動向、国内産糖に係る競争力強化の取組状況、暫定税率の引下げによる政策効果、食料の安定的な供給等における位置づけを踏まえた砂糖及び加糖調製品の今後の在り方及びその実現に向けた具体的な取組の進捗等について、消費者の視点も踏まえつつ、農林水産省に検証及び報告をいただく必要があると考えております。
 6ページ目を御覧ください。幼稚園、小学校、中学校や、保育所をはじめとする児童福祉法上の児童福祉施設等において提供される給食用の脱脂粉乳は、一定の数量の範囲内で関税が無税となってございます。ただし、助産施設や児童家庭支援センターなど、給食の提供が想定されない児童福祉施設については、政令において関税軽減措置の対象から除かれております。こうした中、児童福祉法等の一部を改正する法律により、令和6年4月から児童福祉法上の児童福祉施設として里親支援センターが新設される予定でございます。改正の方向性でございますが、里親支援センターにつきましては、給食の提供が想定されない施設のため、給食用脱脂粉乳に対する関税軽減措置の対象から除外することとしたいと考えております。
 私からの説明は以上でございます。

森田分科会長 御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして御質問、御意見等がございましたら御発言をいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
 植田委員、どうぞ。

植田委員 いつも御丁寧な説明をどうもありがとうございます。
 全体的に非常に個別的な話が入っているような感じがするのですが、1本の筋が見えにくいというところがございます。
 最後のほうから言いますと、例えば、給食用脱脂粉乳というのは、その目的は何となく分かります。子どもたちのためには当然安く脱脂粉乳を提供してあげたほうがいいという意図はよく分かりますが、それが正しいかどうかということをまず多分、戦後すぐというわけでもないですから、それを考えるべきということもある一方で、やはり子どもたちなので、それが正しいというふうな考え方に立てば、何でそれが脱脂粉乳だけなのかということにもなってくるわけです。先ほど出た糖でもそうですし、ほかに、小麦とか、子どもたちが給食で使うような食材というのはいろいろあるかと思います。そういうことを今、この場で話すべきかどうかということもありますが、もうちょっと全体的に、一体我々はどういう筋を通してこういうことを言っているのかということをやっぱり考えないといけないと思います。
 もう1つは、最初に出てきた暫定税率の考え方も筋は何かということです。暫定税率というのは適用期限を定めて暫定的に使っているもので、今、ここで個別にどれが悪いか、どれがいいかということは私は言いにくいですけれども、今回、411品目について延長して、1品目だけ撤廃ということですが、これを考えてみますと、毎年こういうことをやっているのではないかと思いますが、暫定ということが全く意味をなさなくなってしまって、やはり、本当に暫定であれば、大きな枠組みで、例えば毎年半分減らすとか、4分の1減らすとか、本来的には、ある程度目標を持って、本当に暫定にしていくということを考えてやっていくべきなのではないかなと思います。今、ここで急に変えろということではございませんけども、将来的にはそうすべきではないかと思います。
 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。これにつきましてお願いします。

吉田関税課長 御指摘をいただきましてありがとうございます。
 脱脂粉乳に対しての関税軽減措置として個別の内容を御説明申し上げました。全体像がなかなか見えにくいのは、おっしゃるとおりでございます。こういった個別の措置を検討するに当たっては、全体像の中での位置づけ、そして、その制度の趣旨等を踏まえた上で検討する視点は大事でございます。その一方で、こういった品目は、過去の国際交渉の結果として、個々の品目の状況を踏まえて個別に判断されているという事情もございます。様々な視点がありますので、確かに、御指摘の視点もきちんと踏まえつつ、不断の見直しをしていくことは必要かと考えております。
 また、御指摘いただきました脱脂粉乳の子ども向けに対する措置というところでございます。非常に細かい話でございますが、例えば子ども向けの粉ミルクという観点で申しますと、脱脂粉乳というよりは、どちらかというとホエイが利用されているところでございまして、こちらにつきましては、乳幼児用の調製粉乳等用のホエイの関税割当制度というものがございます。非常に細かくて恐縮でございますが、それぞれの品目の事情に応じた制度が構築されていると承知しております。
 それから、暫定税率の1年ごとの見直しということでございます。これにつきましても、各品目について各省庁から毎年ヒアリングを行い、議論をした上で延長という決定をさせていただいているところでございます。それから、これもそれぞれの国際交渉の結果として暫定税率を設定しているというところです。背景といたしまして、GATTウルグアイ・ラウンド交渉の後、なかなか進捗はございませんが、WTOドーハ・ラウンド交渉が継続しているという状況も踏まえつつ、果たして現状の暫定税率を基本税率とすることが我が国にとってどういう影響をもたらすのかも踏まえながら判断していくものかと思います。御指摘をしっかり踏まえた上で、毎年度審議してまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。

森田分科会長 よろしゅうございますか。

植田委員 はい。

森田分科会長 ありがとうございます。
 それでは、ほかに御発言はいかがでしょうか。オンラインで参加の方も、いらっしゃいませんか。
 オンラインで大橋委員のほうから発言の御希望があるようですので、大橋委員、どうぞ。

大橋委員 ありがとうございます。今回、3ページ目でPVC手袋についての説明をいただいて、税率を上げること自体に私は全く異存はないのですけれど、恐らく、関税の考え方の中に、今後は資源循環みたいなことをしっかり考えていくものなのかどうかと思います。PVC手袋自体が具体的にどう焼却されるのかということは私はよく分かっているわけではないですが、今後はしっかり資源を循環していこうという観点で考えてみたときに、PVC手袋の扱いというのはどうするのかということはやっぱり大きな問題だと思っています。そうした資源循環のようなものを関税政策の中でも整合的に考えていくことは重要だろうなと思い、ちょっと発言をさせていただきました。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。事務局、お願いいたします。

吉田関税課長 御指摘を踏まえまして、常に結論ありきではなく、そのときの状況を踏まえて今後も検討してまいりたいというふうに考えております。ありがとうございます。

森田分科会長 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、ないようでございますので、続きまして、「特例申告納期限延長に係る担保の取扱い緩和」につきまして、箭野業務課長より御説明を受けたいと思います。

箭野業務課長 ありがとうございます。業務課長の箭野でございます。私からは、資料2-1を用いまして、「特例申告納期限延長に係る担保の取扱い緩和」について御説明を申し上げます。
 1ページを御覧ください。まずは、AEO(Authorized Economic Operator)制度の現状について御説明をいたします。AEO制度は、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備されました事業者を税関が承認・認定しまして、税関手続の緩和・簡素化といったベネフィットを提供する制度でございます。国際物流を取り巻く環境が、現在目まぐるしく変化しておりますなかで、AEO制度の利用拡大やAEO事業者とのパートナーシップの強化を通じまして、貿易の円滑化と国際物流におけるセキュリティの確保を両立させるということが一層求められているという認識でございます。ページの下半分に掲載をしておりますAEO事業者数の推移を見ますと、AEO事業者の総数は堅調に増加しており、AEO制度の利用拡大は進んできていると見ていいと思っております。一方で、事業者別に細かく見ますと、グラフの緑色の部分でございますけれども、AEOとして税関の承認を受けた輸入者である特例輸入者の数は100者程度にとどまっておりまして、近年は横ばいの状況となっております。この特例輸入者に対して新たなベネフィットを提供することで、AEO制度の一層の利用拡大・AEO事業者とのパートナーシップの強化を図ろうということが今回の改正提案の基本的な考え方となります。
 2ページを御覧ください。具体的な検討内容の前に、まずは、現行制度について御説明を申し上げます。申告納税方式が適用される貨物については輸入申告に併せて納税申告を行っていただき、関税等が納付された後でなければ輸入を許可しないということが原則となっております。これに対し、特例輸入者等は輸入申告と分離した納税申告である特例申告を行うことが認められておりまして、納税申告の前に貨物を引き取ることができるというベネフィットが提供されているということになります。
この図で申し上げますと、輸入許可日から特例申告の期限までの間、税関長は、関税等の保全のために必要があると認めるときは、特例輸入者等に対しまして担保の提供を命じることができることとなっております。この必要があると認めるときに限り提供を命じる担保を保全担保と呼んでおります。また、特例申告に係る貨物に関する関税等の納期限を延長する場合、その延長申請と併せまして担保を提供することで、当該担保の額の範囲内で2か月以内に限り関税等の納期限を延長することができることとなります。現行制度において関税等の納期限の延長を行う場合は担保の提供が必須となっておりまして、これを必要担保と呼んでおります。今回、特例輸入者が行う特例申告に係る貨物の関税等の納期限延長を行う場合の担保について、現行は必要担保とされているところを保全担保に緩和することを検討しているというところでございます。
 3ページを御覧ください。改正の必要性についての御説明となります。関税等の特例申告納期限延長に係る担保の取扱い緩和については、さらなる貿易の円滑化という文脈から、これまで複数回にわたりまして業界団体等から要望を受けているところでございます。今般、特例申告納期限延長に係る担保を必要担保から保全担保に緩和することによりまして、輸入手続に関する実際のコストは低減されることになりますので、メリットがあるということを踏まえますと、本緩和措置に対する事業者のニーズは高いと考えておりまして、AEO制度の利用拡大の効果が見込まれると踏んでおります。また、国際物流を取り巻く環境の変化としまして、前回の分科会で私から御説明を差し上げたところでございますが、越境電子取引の近年の拡大に伴いまして、輸入貨物の申告件数が増加しているという状況がございます。税関としましては、特例輸入者の増加を通じまして、税関の限られたリソースを相対的にリスクの高い貨物に対して集中的に投入することで国際物流のセキュリティの確保を図ることが可能となると考えているところでございます。このように、今般の改正を行うことでAEO制度の利用拡大・AEO事業者とのパートナーシップの強化がさらに進みまして、さらなる貿易の円滑化と国際物流のセキュリティ確保を両立させることが可能となると考えておるところでございます。
 今般の改正におきまして、適切な納税という観点から考慮すべき事項についても御説明をさせていただこうと思います。税関が特例輸入者を承認するに当たりましては、その資質、財務状況を審査いたしまして、納税に関する法令遵守の状況等を十分に加味した上で、その承認を与えておるところでございます。また、税関といたしましては、特例輸入者の承認後においても、事後監査等を通じまして納税手続の履行状況及び財務状況の健全性を確認しておりまして、必要に応じて保全担保の提供を求めることとしておるところでございます。さらに、特例輸入者が関税等について重加算税を課されたとき、関税等を滞納したとき、保全担保の提供命令に従わなかったとき等、適正な納税に関する義務を怠ったときには、税関長はその承認を取り消すことができることとされております。これらを踏まえますと、特例輸入者については、特例申告納期限延長に係る担保を必要担保から保全担保に緩和したとしても適正な納税は十分に確保できるものと考えておるところでございます。
 最後に、改正の具体的な方向性について再度御説明を差し上げます。4ページを御覧ください。特例輸入者につきましては、これまで申し上げてきましたとおり、その承認や事後監査等の際に税関が財務状況等の確認を行っていることから、特例申告に係る担保の取扱いと同様、特例申告納期限延長に係る担保も必要担保から保全担保に緩和することが適当と考えておるところでございます。これによりまして、特例輸入者は特例申告及び特例申告納期限延長の申請に際して担保の提供は原則として不要となります。つまり、税関長が関税等の保全のために必要があるとして担保の提供を命じたときのみ、輸入者は担保を提供するという形になります。また、特例輸入者の利便性を考慮いたしまして、1つの特例申告貨物に対して税目によって担保の取扱いが異なることにならないように、関税と同様に、内国消費税及び地方消費税に関する同担保についても必要担保から保全担保に緩和することが適当と考えておるところでございます。
 私からの説明は以上となります。

森田分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして御発言がございましたらお願いいたします。
 佐藤英明委員、どうぞ。

佐藤(英)委員 御説明ありがとうございました。改正の必要性と方向性について、よく承知をいたしました。
 1つ伺いたいのは、これが令和6年度の改正となった場合に、適用はいつからになりますでしょうか。

箭野業務課長 現在、適用のタイミングについては検討をしておるところでございます。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。それでは、適用のタイミングを決めてある程度走らせたところで、本当に特例輸入者が増えるという効果が生じたのかどうかということについて、また是非分科会に御報告を頂戴できればと思います。ありがとうございました。

森田分科会長 続きまして、清水委員、どうぞ。

清水委員 御説明をありがとうございます。これまでにもAEO制度を使うことで貿易の円滑化が図られるということは分かっていながらAEO業者の数が増えていないということが問題だと思っておりましたので、このように制度を少し緩和することでAEO業者を増やそうという取組は非常によいことだと思って、感謝しております。
 一方で、輸入者がこれまでずっと増えてこなかった理由の1つに、例えば、通関業者が輸入者を代行するようなことで、必要がなかったのではないかという疑問があります。通関業者のAEO業者数についてはずっと伸びてきていますので、今回の制度変更で、輸入の事業者が実際にAEO制度を活用する余地があるものなのか、あるいは、通関業者がすでに代行しているので、実はそんなに増えないのかといったことについて、もし何かお考えがあれば教えてください。よろしくお願いいたします。

森田分科会長 それでは、お答えをお願いします。

伊藤知的財産調査室長兼認定事業者調整官 認定事業者調整官の伊藤です。清水委員からの御指摘に関して、特例輸入者ではない輸入者が認定通関業者を利用して輸入申告を行う際のベネフィットとしては、輸入の際に貨物の引取りを先に行って、その後でまとめて納税申告を行えるということと、輸入申告を行う官署を自由に選択できることの2点になります。この2点は特例輸入者と同等のベネフィットを享受できるということで、特に、平成29年10月に申告官署の自由化が行われた前後に認定通関業者の数が大きく増加したということでございます。他方で、今回提案させていただいた担保の緩和につきましては、税関で財務状況や法令遵守の状況等をしっかり確認した輸入者である特例輸入者に対してのみ与えられているベネフィットですが、これまでは納期限を延長する場合に特例輸入者と一般輸入者の差別化ができていなかったというところがありまして、そうしたことからも業界から緩和の要望が寄せられていたと考えております。今回の提案では、特例申告に係る納期限延長については必要担保を保全担保に緩和するということで、一般輸入者との差別化がより図られるという観点からも、特例申告の利用の増加、ひいては特例輸入者の増加につながることを期待しているところでございます。

森田分科会長 よろしいですか。

清水委員 はい。

森田分科会長 それでは、植田委員、どうぞ。

植田委員 今回は、私はもっと勉強してこないといけないなと反省しているのですが、ちょっと教えていただきたいことがありまして、必要担保が100%担保だったのを保全にすると、100%ではないという意味で楽になるということでしょうか。緩和されるということなんでしょうか。そうではないのかなということが1つの質問です。
 もう1個は、担保とは何なのかということが私はよく分かっていないのですけども、担保というのは、見る限り輸入したものではなさそうですので、当然何か別のものだと思うんですが、国債でないといけないとか、決まりがあるのか。それとも、どこかの信託銀行における特定の目的の預金口座の中にあるお金であればいいのか。それとも、一般的な会社さんであれば、会社の社債なんかを出せばいいのか。いろんなやり方が金融手続上であると思うんですけど、そちらのほうでもある意味では緩和ができる可能性もあるのではないかということを思っているのですが、そういうことは考えられているでしょうか。以上です。

森田分科会長 お答えをお願いいたします。

箭野業務課長 まず、担保の額ですが、租税債権に対する担保となりますので、担保の金額そのものは債権額そのもので100%のままであって、それは、保全担保になろうが、必要担保になろうが、額として変わることはございません。ただ、実務において違うのは、必要担保だと担保という形でお金の使い道というものがフィックスされてしまう一方で、保全担保であれば、別に担保として必然性がないわけですから、事業者さんのお金の使い方に余裕が発生するということです。つまり、事業者が100万円という担保があったとしても、保全担保となると、すぐに担保を積む必要はなくて、税関から積めと言われるまでは担保として積んでいる額はゼロ円という状態になるということが大きな違いというところでございます。
 また、担保としてどういうものを積めばいいのかというご質問ですけれども、それは、こういうものをということが既に税法で規定がございますので、基本的にはそれに合わせてということになります。
 以上でお答えになっておりますでしょうか。

森田分科会長 よろしいですか。

植田委員 はい。

森田分科会長 それでは、ほかにいかがですか。根本委員、どうぞ。

根本委員 ありがとうございます。法改正の趣旨は理解しましたし、賛成です。ただ、将来に向けて一言コメントをしたいと思います。輸入許可件数というものが増えているということですが、これは越境ネット通販で増えているわけですね。この越境ネット通販は、中国とかASEANに拠点を置く日本非居住者が荷主、輸入者になるケースも多いわけですよね。そうなってくると、それら企業を日本がAEOで認定するということは難しいわけですけれども、AEO制度というのは相互に認証し合うというふうな仕組みもあって、一部そういうものが活用され始めたと聞いていますから、将来相互認証がもっと普及してくるようになれば、海外の荷主もAEOということでこの網に引っかかってくるのかなと思いました。AEOのほうの推進も一緒に進めると、この制度が生きてくるのではないかというふうに思いました。以上です。

森田分科会長 ありがとうございます。これはよろしいですか。どうぞ。

伊藤知的財産調査室長兼認定事業者調整官 御指摘をいただきありがとうございました。最後に、AEOの相互承認が進められていて、その活用が期待されるという御意見をいただいたと受け止めておりますけれども、現在、日本は13の国・地域との間でAEOの相互承認を実施しておりますが、現在も相互承認のネットワークを拡大すべく協議を行っているところでございまして、引き続き相互承認の相手国・地域を拡大して、さらにこの制度が利用しやすい形になるように取り組んでまいりたいと考えております。

森田分科会長 根本委員、よろしゅうございますか。

根本委員 はい。

森田分科会長 ほかにいかがでしょうか。
 特にないようでしたら、今後、当分科会におきましては答申を取りまとめる作業に移ることになります。次回の分科会におきまして、これまでの御審議の内容を踏まえた答申案を御提示させていただき、それについて御議論を賜ることにしたいと考えております。そういうことで、本日はこれで終了ということになります。
 次回の関税分科会につきましては、12月14日(木曜日)、13時開始を予定しております。詳細につきましては、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げることにいたします。
 それでは、本日は御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。

午前10時35分閉会