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関税・外国為替等審議会 関税分科会 (令和5年11月7日開催) 議事録

  1. 開会
  2. 関税改正項目①
    -個別品目の関税率の見直し
    -沖縄に係る関税制度上の特例措置(特定免税店制度)
  3. 急増する輸入貨物への対応状況
  4. 加糖調製品をめぐる動向等
  5. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 江島関税局長
委員 伊藤 恵子 山崎審議官
植田 健一 内野審議官
片山 銘人 奈良井総務課長
河野 真理子 吉田関税課長
木村 旬 仲参事官
木村 福成 馬場監視課長
古城 佳子 箭野業務課長
佐藤 基嗣 大関調査課長
杉山 晶子 澤藤事務管理室長
高橋 裕子 濵口特殊関税調査室長
田邊 國昭 坂本原産地規則室長
田村 善之 近田税関調査室長
樽井 功 香川経済連携室長
永沢 裕美子 伊藤知的財産調査室長兼認定事業者調整官
根本 敏則 内閣府 田村政策統括官(沖縄政策担当)付参事官(企画担当)
野原 佐和子 農林水産省 小島輸出・国際局国際経済課長
三石 誠司 石田農産局地域作物課長
和田 照子
専門委員 阿部 克則
石黒 憲彦
大橋 弘
国松 麻季
佐藤 英明
末冨 純子
藤岡 博
村上 秀德

 

午前10時00分開会


森田分科会長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。
 委員の皆様方には、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。 
 それでは、早速ですが、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。 
 本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。具体的には、「個別品目の関税率の見直し」及び「沖縄に係る関税制度上の特例措置(特定免税店制度)」について御説明をいただき、審議を行いたいと思います。また、「急増する輸入貨物への対応状況」について、事務局から報告を受けたいと思います。最後に、今後の審議の参考といたしまして、「加糖調製品をめぐる動向等」につきまして、農林水産省より説明を受けたいと思います。 
 それでは、まず、吉田関税課長より「個別品目の関税率の見直し」及び「沖縄に係る関税制度上の特例措置(特定免税店制度)」につきまして御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
吉田関税課長 関税課長の吉田でございます。 
 それでは、「個別品目の関税率の見直し」及び「沖縄に係る関税制度上の特例措置(特定免税店制度)」につきまして御説明をさせていただきます。 
 まず初めに、「個別品目の関税率の見直し」について御説明をさせていただきます。横紙の資料1-1を御覧ください。 
 令和6年度改正要望が提出された項目でございますが、ルイボスに関しまして、HS委員会における決定を受けた分類変更への対応といたしまして、現行税率が維持されるよう要望がなされております。 
 資料の右上に写真を掲載してございますが、ルイボスとは、南アフリカの一部の地域に自生するマメ科の落葉低木でございまして、2ミリから3ミリ幅に切った葉がルイボスティーの原料となります。 
 令和4年度の輸入実績に関しましては、現在、ルイボスに関して独立した統計細分を設けておらず、ルイボス以外も含まれ得る数字とはなりますが、現行分類における南アフリカ共和国からの実績といたしまして、約27億円、約3,259トンとなってございます。 
 次に、経緯でございますが、ルイボスは、これまで我が国では関税率表第1212.99号、「その他の植物性生産品」に分類されてきましたが、昨年9月のHS委員会において第1211.90号、「主として香料用、医療用、殺虫用、殺菌用その他これらに類する用途に供するその他の植物及びその部分」に分類することが決定されたため、これに伴い分類の変更を行う必要がございます。 
 HS委員会においてルイボスの分類は決定されたところでございますが、各分類における関税率は各国で設定されるものでございます。この新たな分類の税率は、現行、ルイボスに適用されている税率を下回る水準となってございます。 
 このため、改正の方向性といたしましては、引き続き、国内産業を保護するため、新たな分類の中にルイボスの税細分を新設した上で、現行と同水準の関税率を設定することが適当と考えております。 
 続きまして、「沖縄に係る関税制度上の特例措置(特定免税店制度)」について御説明をいたします。資料2-1を御覧ください。 
 特定免税店制度につきましては、沖縄振興特別措置法に基づきまして、関税暫定措置法にその具体的な内容及び適用期限が定められておりまして、2年間の適用期限が本年度末に到来するところでございます。 特定免税店制度の具体的な内容につきましては、沖縄の市中又は空港等の免税店におきまして、沖縄から本邦の他の地域へ出域する旅客向けに販売される外国貨物につきまして、20万円の範囲内で関税を免除する制度でございます。 
 次に、改正の必要性のところでございますが、特定免税店制度の適用期限につきまして、内閣府及び経済産業省から令和9年3月末まで3年延長する内容の要望がなされてございます。また、特定免税店制度は、その創設以降、沖縄の観光振興に一定の効果をもたらしているところでもございます。 
 したがいまして、改正の方向性といたしましては、要望どおり特定免税店制度の適用期限を3年延長することが適当と考えております。 
 以上でございます。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いしたいと思います。 
 オンラインで佐藤英明委員から御発言の御希望がございます。どうぞお願いいたします。
佐藤(英)委員 ルイボスについて御質問が1つあります。 
 本件について異議はありません。改正の方向性について、「国内産業を保護する必要があることから」とありますが、この「国内産業」というのは、我が国でルイボスを育てている農家がおられるということなのか、ルイボスティーと競合する緑茶や麦茶等の原材料を育てておられる農家との競合なのか、あるいはそれ以外のことなのか。この「国内産業」の意味について御教示いただければ幸いです。
森田分科会長 ありがとうございました。これにつきまして、お願いします。
吉田関税課長 御質問いただきまして、ありがとうございます。 
 国内産業を保護する必要性の点につきまして御質問いただいたところでございます。 
 まず、事実関係といたしまして、ルイボスに関しまして、国内に商業ベースで栽培しておられる方は、現在のところ、把握している範囲ではございません。 
 御指摘のとおり、「国内産業」と申しますのは、いわゆるお茶として広く流通しております緑茶など国内で生産されるお茶との競合関係にあるということで、現在の税率を維持していただきたいという要望が出されたものと理解しております。以上でございます。
佐藤(英)委員 よく分かりました。以上でございます。
森田分科会長 それでは、片山委員、御発言をどうぞお願いいたします。
片山委員 片山です。ありがとうございます。 
 沖縄に係る関税制度上の特例措置で御質問させていただきます。平成10年に創設された制度で、結構長い時間がたっております。沖縄の観光振興に一定の効果もあるということで、重要な制度かと思いますが、2年や3年単位で延長するような区切りは何か意味があるのでしょうか。もう少し長くてもいいのかなと思いますが、その辺いかがでしょうか。
森田分科会長 お答えをお願いします。
吉田関税課長 特定免税店制度の期限の期間について御質問いただきました。 
 確かに、現在適用されているものが2年間で、次回は3年間でございます。 
 まず、3年で区切っている理由といたしましては3つほどございます。 
 1点目といたしましては、そもそも要望が3年だったということです。 
 2点目といたしまして、沖縄振興特別措置法に基づいてこの制度が設けられておりますが、いわゆる大きな括りとしての沖縄振興計画というものがございます。こちらにつきましては5年ごとの見直しというものが規定されているところでございまして、次の5年後の見直しというのがこの要望の3年後というところで、そこに揃えているというところでございます。 
 御指摘のとおり、2年か3年かとございますが、その時々に応じて判断しております。少なくとも今回の判断につきましては、次の沖縄振興計画の見直し等を踏まえて、次の3年後としているところでございます。ただ一方で、あまり長くしてしまいますと、他の沖縄振興措置の適用状況なども総合的に勘案しながら判断していく必要があるということで、一定の期間の範囲内で区切って、その成果等を検証した上でまた延長しているというところになります。
森田分科会長 よろしゅうございますか。 それでは、オンラインで、野原委員、どうぞお願いいたします。
野原委員 野原です。ありがとうございます。 
 ルイボスティーの件で質問があります。農林水産省としては、3%から2.5%へ関税が下がった場合ルイボスティーの価格低下により市場拡大するといったこととか、それによる国内の関連産業のダメージがあるということかと思いますけれども、その規模等を分析、試算をされたのでしょうか。 
 国内にはルイボスティーを製造・販売する事業者もあり、関税低下のメリットを享受する事業者や消費者がいます。それに対して農林水産省は、国内産業の保護に重きを置いた検討をするだけではなく、国内産業、特に先ほど御説明のありました日本茶等の生産・加工・販売をする産業の競争力を向上させることが重要ではないかと思います。ルイボスティーは、コーヒー、紅茶、ハーブティーとともにティーバッグ等で簡易に手軽に入れられるよう加工する、あるいは香りをつけるなどして付加価値をつけて市場を拡大しています。日本茶もそういった努力をより一層行うことによって、生産力、産業の拡大が考えられるのではないかと思います。海外展開では付加価値化が必須だと思います。そのような点で、できれば国内・海外での日本茶等の競争力を高め、市場拡大を図る強化をする方向で努力をした上で、こうした関税についても検討いただきたいと思います。 
 以上、1点は御質問と、もう1点はコメントさせていただきました。よろしくお願いします。
森田分科会長 ありがとうございました。これにつきましては農林水産省のほうからお答えいただけますか。
小島輸出・国際局国際経済課長(農林水産省) 農林水産省でございます。 
 委員御質問につきまして、3%から2.5%になった場合にルイボスティーがどのぐらい市場で拡大をして、それが日本茶にどれぐらい影響があるのかという、そういった分析をしているのかという御質問でございます。定量的な分析というのはしていないところでございます。他方で、ルイボスティーの輸入量、消費量が国内市場におきまして非常に急激に伸びているという状況にございまして、例えば2008年の消費量391トンだったものが2018年には2,808トン、これは700%以上に増加というようなこともございます。その影響が一定程度国内の日本茶市場にあるのではなかろうかということもございまして、今回要望させていただいているところでございます。 
 2点目の御意見につきましては、まさに御指摘のとおりでございまして、日本茶につきましても、これから海外市場等を念頭にどんどん輸出拡大をしていくべく、競争力強化を図っていくということで、その方向で政策を進めてまいりたいと考えております。以上でございます。
森田分科会長 ありがとうございました。野原委員、よろしいでしょうか。
野原委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。
森田分科会長 他に御発言はいかがでしょうか。 
 ないようでございますので、続きまして、箭野業務課長より「急増する輸入貨物への対応状況」についての報告を受けたいと思います。よろしくお願いいたします。
箭野業務課長 ありがとうございます。業務課長の箭野でございます。 
 私からは報告事項といたしまして、資料3を用いまして、「急増する輸入貨物への対応状況」について御説明を申し上げます。 
 まず、1ページを御覧ください。グラフに示しておるところでございますけれども、いわゆる輸入許可件数がここ数年急激に伸びておりまして、これは越境電子商取引の拡大に伴って、通販貨物の輸入が急増しているという事象だと我々としては見ております。 
 直近の状況を御紹介いたしますと、令和5年度の上半期の輸入許可件数は前年同期比117%で増加し、依然として増加傾向が続いている状況でございます。 
 このような状況への対応といたしまして、昨年度、本分科会での御審議を踏まえまして、制度改正を行わせていただいたということでございます。 
 まず1点目としまして、税関事務管理人制度の見直しでございます。これは、税関の審査等の実効性を高めるために、税関長が非居住者等に税関事務管理人の届出を要請したものの非居住者が期限までに応じない場合に、税関長が非居住者の一定の国内で関係ある者を税関事務管理人として指定をすることができるという制度をつくらせていただいたところでございます。 
 2点目としまして、なりすまし輸入への対策といたしまして、「輸入者の住所・氏名」を政令上の輸入申告項目として追加させていただいております。これによりまして、輸入者名を偽って輸入する行為が虚偽申告輸入罪の対象となることが明確化されました。併せて、輸入者の意義というのを明確化させていただくべく、通達の改正を行わせていただいております。 
 輸入者の意義について、少し御説明をさせていただきますと、輸入の取引によって輸入された貨物については、原則として、仕入書の荷受人、つまり売買契約における買手が輸入者となります。これは従前から通達に規定があるところで、特に変更はございません。ただ、今回、輸入取引によらずに輸入される類いの貨物が増えているという状況を踏まえまして、輸入者の意義を明確化させていただいたというところでございます。 
 資料の下のほうの図で、フルフィルメントサービスを利用した貨物の例を示させていただいております。このフルフィルメントサービスというのは、ECプラットフォームの運営事業者等が提供するサービスを利用して、売買契約が成立する前にそれを予定して輸入をされる貨物でありまして、この場合には、売買契約が成立する前に貨物が輸入されまして、一旦はフルフィルメントサービスの倉庫に搬入をされます。このような場合には、輸入時には売買契約の買手が存在しないということになりますので、従前の規定によりますと、輸入者が誰かということが少し不明確になっておりました。したがいまして、このような場合の輸入者の意義を明確化することが必要と考えまして、輸入者とは、輸入申告の時点において、国内引取り後の輸入貨物の処分の権限を有する者をいい、その者以外に輸入の目的たる行為を行う者がある場合にはその者を含むという趣旨の通達を発出させていただいております。 
 なお、この通達におきましては、輸入の目的たる行為を行う者について幾つか例示をさせていただいて、利用者の方が混乱しないようにということも配慮させていただいているところでございます。 
 このフルフィルメント利用貨物について具体的にあてはめますと、輸入貨物の処分の権限を有する者というのは、これは海外にいる販売者になります。また、輸入の目的たる国内販売を行う者についていいますと、この貨物は海外にいる販売者の名義で販売をされているということになりますので、このケースでは当該販売者が輸入者に該当するということになります。したがいまして、フルフィルメント利用貨物の場合においては、輸入申告者は海外にいる販売者ということになります。この場合、非居住者が輸入申告を行うという形になりますので、税関事務管理人を定めるということが必要になってくるということでございます。 
 こうした貨物について、単に輸入手続の委託を受けて輸入代行しているというような方がいらっしゃいます。このような方々は輸入者としての立場ではないということになりますけれども、今までの商流をあまり変えずにやっていきたいというニーズもあろうかと思います。そのような方に関しては、これまで輸入代行をしておられた方が税関事務管理人として指名されれば、これまでの商流を変更することなく商売ができると考えているところでございます。 
 2ページを御覧ください。このような制度改正をさせていただきましたので、通関業者やプラットフォーマー等の関係各者に対して、掲載をしております写真のような説明会をさせていただいているというところでございます。 
 また、税関事務管理人は届出が必要となりますので、その事務負担を少し緩和しなければいけないと考え、届出書の記載要領を新設させていただくとともに、同じ内容の届出を複数の税関にしていただくというときには、届出の宛先に複数の税関長の名前を列記していただいて、どこかの税関に提出をすれば複数の税関に提出したことにしますということを可能としているところでございます。 
 このような通販貨物については、プラットフォーマーの存在というのが非常に重要になりますので、プラットフォーマーとの連携についても取り組んでおりまして、一部のプラットフォーマーとの間で知的財産侵害物品等に関しての「水際取締りに係る協力に関する覚書」を締結したり、プラットフォーマーにおける出品者の過去の平均販売価格を輸入申告時の課税価格を計算するための資料として利用するといった協力関係をつくっておるところでございます。さらに、今般の制度改正の内容については、結局、海外の出品者が認知しないとあまり意味がありませんので、日・英・中・韓といった外国語のリーフレットを作成して、税関のホームページに掲載しております。また、税関のホームページに載せているだけではやや不十分かと思いまして、海外の出品者に対してもプラットフォーマーを通じまして周知協力を依頼しておるというところでございます。 
 さらに、これまでの輸入実績等を踏まえまして、単に輸入手続の委託を受けた輸入代行者と思われるような方たちに対しては、1ページの図で御説明したように、輸入申告者とならない可能性というのが出てきておるものですから、税関から個別に連絡を取らせていただいて、個別に制度改正の説明を実施させていただいているところでございます。 
 最後に、3ページを御覧ください。1ページで御説明を差し上げました税関事務管理人制度の見直し及び「輸入者の住所・氏名」の輸入申告項目の追加に加えまして、昨年度の関税改正においては、通販貨物の急増等を踏まえた輸入貨物の類型を考慮したリスク管理を行っていくという観点から、輸入申告項目の追加としまして、通販貨物に該当するかや通販貨物に該当するときの「プラットフォームの名称等」及び「国内の運送先」というものを含めさせていただいたところでございます。この改正については、申告項目を新規に追加するということでございますので、やはりシステム対応が官民双方で必要となるものですから、次期NACCSの更改に合わせて、令和7年10月の施行予定ということにしております。現在、システムの仕様について、利用者の声を聞きながら検討を進めさせていただいているところでございます。 
 最後に、下の枠内でございますけれども、海上貨物の増加への対応でございます。通販貨物が増大をしていくに従って、近隣のアジア諸国からの通販貨物の一部については、リードタイムに大きな影響がないといった理由で、航空貨物から海上貨物に輸送手段をシフトする動きがございます。これによって、海上貨物の輸入許可件数もやはり急増し高止まりをしているという状況がございましたので、一定の要件を満たす海上貨物について、申告項目の一部省略を認める簡易な通関手続の対象とするということを検討しておるところでございます。これは昨年根本委員に座長をお願いしておりました研究会のとりまとめでも言及されておりますとおりでございまして、このような対応を海上貨物の増加への対応として検討させていただいているというところでございます。 
 こうした海上の通販貨物については、もともと航空貨物として輸入されていたものです。したがいまして、小口で迅速な通関が求められるといった貨物の性質を踏まえなければならないというふうに考えておりますので、現行の航空貨物に係る簡易な通関手続を参考としながら制度設計をしておるところでございます。 
 ※印のところに制度対象となる貨物の要件を少し書かせていただいておりますけれども、こうした海上小口貨物では、通販貨物を対象として迅速な審査、通関を実現するために、輸入申告までに、販売者、荷受人、貨物といった情報を事前に提供いただくということを予定しておるところでございます。 
 こうした海上貨物の増加への対応についても、やはり官民双方にシステムの対応が必要となりますので、先ほど申し上げた輸入項目の追加と同様、令和7年10月にNACCSを更改するのと同時に制度利用を開始していくということを予定しておるところでございます。私からの説明は以上でございます。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 それでは、ただいまの御報告につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。根本委員、どうぞお願いいたします。
根本委員 最近、さらに制度が整ってきたのかなということを感じました。特にプラットフォーマーが海外の出品者に対して、日本では「こういうふうな対応をお願いしたい」というアナウンスを、前はあまりちゃんとしていなかったという印象です。アメリカのアマゾンが、WEB上で中国向け出品者に情報提供しているものを、そのまま日本のアマゾンが提供しているような感じで、「少し違うんじゃないか」という印象を持っていました。そういうのが改められたというのはよかったと思います。
 しかし、逆に考えてみますと、こういう越境ネット通販の仕組みに関し、各国の税関の考え方の違いで、出品者が各国に出品するときにいろいろ違った対応を取らなければならないというのも、またこれ事実だと思います。ですから、そういう意味では、国際的な税関の連携の中で、どういう標準的なやり方が越境ネット通販の促進、そういうものに資するかというような検討が必要になってきたと思います。ありがとうございます。
森田分科会長 これは御意見として受け止めておけばよろしいですか。事務方のほうは特にコメントございませんか。ありがとうございました。 
 それでは、他に御発言いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、オンラインで野原委員、どうぞお願いいたします。
野原委員 野原です。急増する輸入貨物への対応については、研究会にも参加させていただいて昨年10月に取りまとめました。それに基づいて、今回御説明いただいたような施策が推進されて、大変よかったと思います。 
 しかし、資料3ページにある輸⼊申告項⽬の追加等の次期NACCS更改に合わせて施行する施策は、2025年10月にならないと施行できません。研究会で取りまとめてから3年、課題が認識されて研究会を準備してから考えると4年経過してしまいます。輸入貨物の急増等の環境変化は大変急激で、対応として遅過ぎるのではないかと思います。 
 NACCSの更改時期に合わせることは分かりますが、何らかの形でそれを補うような工夫をしていただけないかと思います。以上です。
森田分科会長 ありがとうございました。これについてお願いいたします。
箭野業務課長 NACCSにつきましては、御承知のとおり、8年ごとというサイクルで実際の様々なコストを官民でともに負担しながら更改していくというシステムの中で、なかなか急激に大きな変更を行うのが難しいという御事情は御理解いただいているというふうに思います。 
 税関としては、円滑な物流というのが我々の大きな使命であると同時に、しっかりと手続を踏んだ上で、リスクのある貨物についてはしっかりと見ていくという仕組みも構築しなければいけないと考えております。そのためのNACCSという基幹システムでございますので、そこの更改にかかる検討に時間がかかってしまうという点は御理解を賜れればというふうに思う次第でございます。以上です。
森田分科会長 野原委員、よろしいでしょうか。
野原委員 承知しました。
森田分科会長 澤藤事務管理室長、お願いいたします。
澤藤事務管理室長 関税局でシステムを担当しております事務管理室長の澤藤でございます。 
 御意見ありがとうございます。まさにそういう面はございますが、官民ともにどうしてもシステム開発が必要となり、特に本件のような輸入申告項目の追加となりますと、システム全体への影響がかなりあるということで、今回については、2025年10月にNACCSの更改が予定されているということもあり、この時期に制度を導入することになったということかと思います。 
 本件については、2025年10月に実施するということで御理解はいただいておりますが、御指摘のあったような点については、これから技術の発展も加味しながら、スムーズに制度改正などにシステムが対応できるよう、検討に取り組んでまいりたいと考えております。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 では、続きまして、河野委員、どうぞお願いいたします。
河野委員 ありがとうございます。私も研究会に参加させていただきました。 
 この制度を取り入れることによって、日本の社会にとってより安全できちんと規制が効くことを望みます。ただし、それと同時に、やはりこの制度によって、新しい商慣行、あるいは取引の仕方が発展することが阻害されないことも願う次第でございます。 
 また、研究会のときには、その他の論点となりましたけれども、3ページの海上貨物の増加への対応に関してですが、船舶を用いる方法も今後ますます大事になっていきますし、また、航空貨物と大分違う点があると思いますので、こちらにも目配りをお願いしたいと思います。以上でございます。
森田分科会長 お願いします。
箭野業務課長 検討に当たっては、委員から今御指摘を受けた点も踏まえて、制度設計をさせていただこうと思っております。
森田分科会長 他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 
 それでは、他に御発言ないようでございますので、最後に、農林水産省から「加糖調製品をめぐる動向等」につきまして御説明をいただきたいと思います。農林水産省、石田農産局地域作物課長、よろしくお願いいたします。
石田農産局地域作物課長(農林水産省) 農林水産省で砂糖を担当している石田でございます。 
 資料4「加糖調製品をめぐる動向等」について御説明させていただきたいと存じます。 
 3ページ目をご覧ください。調整金の徴収制度の概要でございます。この糖価調整制度は、国内の砂糖の安定供給の確保を目的としてございまして、左側の図のとおり、輸入糖から調整金を徴収し、その価格を引き上げる一方で、この調整金を財源としまして、国内産糖へ交付金を交付し、その価格を引き下げることにより両者の価格のバランスを図る制度でございます。このような中、平成29年の11月でございましたが、TPP大綱の方針を踏まえまして、加糖調製品をこの調整金の対象としたところでございます。 
 具体的には、右側に図がございますけれども、加糖調製品からの調整金を財源としまして、輸入糖の調整金を減額するとともに、その分、国内産糖の交付金を拡大させるということで、その財源に充てているところでございまして、これらにより国内の砂糖の価格面での競争力の強化を図っているというものでございます。 
 今般、この輸入加糖調製品からの調整金、この徴収幅の拡大につながる暫定税率の引下げを要望させていただいているところでございます。 
 次の4ページ目をご覧ください。昨年も同様の要望をさせていただきました。この審議会におきまして、そのことが適当ということに併せまして、加糖調製品と砂糖の価格差や需給の動向、さらには国内の砂糖の競争力強化の取組、暫定税率引下げの効果、そして中長期的な在り方と取組等について、検証と報告を求めることが適当ということをお示しいただいたところでございます。このことを踏まえまして、食料・農業・農村政策審議会の甘味資源部会を9月に開催いたしまして、検討いただいたところでございます。 
 その結論は、その枠内の2つ目にございますけれども、価格差が依然として存在している状況が確認されたということを踏まえまして、その価格差を埋めるために引き続き関税改正の要望が必要ということでございました。 
 次の5ページは、その考え方でございますけれども、この後の資料の説明と重複いたしますので、割愛させていただきたいと存じます。 
 そして、加糖調製品と砂糖の需給動向等の説明でございます。7ページをご覧ください。加糖調製品につきましては、真ん中のグラフでございます。平成2年に輸入が自由化されて以降、輸入量が増加してまいりまして、国内の砂糖需要を代替してまいりました。ここ数年間、やや減少に転じてはございますけれども、それでもなお令和4砂糖年度におきまして40万トンということで、一定の規模が引き続き輸入されている状況にございます。 
 8ページ目をご覧ください。これを甘味全体の需要量で捉えたものでございます。砂糖、異性化糖、加糖調製品、これらを合わせました甘味全体の需要量は、人口の減少、そして消費者の低甘味嗜好等ございまして、減少傾向となってございます。最近では、令和元年でございますけれども、新型コロナの影響によりまして、300万トンを割り込んでいるという状況にございます。このような甘味全体の需要量が減少する中で、加糖調製品の需要についても減少してきているという状況にあろうかと思ってございます。ただ、右側の円グラフを御覧いただければと思いますが、砂糖、加糖調製品ともに「菓子・冷菓」が第1位となってございますし、その仕向け先は共通してございまして、競合関係にある点、これは変わらないのであろうと考えてございます。 
 9ページ目をご覧ください。直近の加糖調製品の輸入動向でございます。グラフの右側を御覧いただければと思いますが、令和3年から4年にかけて12.1%の減少となってございます。一方、CIFの単価は16.6%の増加でございます。このデータは8月までで集計してございますが、直近のデータを追ってみますと、9月まで含めてもこの傾向に大きな変更はございません。 
 この減少要因について分析したものが次のページになります。右側のグラフを御覧いただきたいと思いますが、全体で5万2,000トン減少しているもののうち、6割が粉乳調製品の減少でございます。その背景でございますが、左側に国内における脱脂粉乳在庫の推移のグラフを載せてございますけれども、脱脂粉乳の在庫が過剰になる中で、民間主体でこの在庫対策が講じられました。この輸入調製品との価格差を補塡するというものでございます。結果、国産の脱脂粉乳の利用が進みまして、輸入の粉乳調製品が減少したということが考えられるところでございます。この対策、現在終わっておりまして、また価格差が戻っている状況にあり、今後増加に転じることも十分に想定されますので、動向を注視してまいりたいと考えております。 
 11ページ目をご覧ください。暫定税率引下げ対象6品目に絞った輸入動向等でございます。左側のグラフでございます。直近1年間の変化といたしましては、20.5%の減少となってございます。これは、6品目の中で粉乳調製品の量の占める割合が高く、その減少率も大きくなっているものかと思っております。なお、右側のグラフのとおり、この引下げ品目につきましては、漸増する関税割当枠数量がございまして、その枠内は調整金の徴収なく輸入できるわけでございますが、枠内輸入量、消化率を含めて増加傾向にあるということでございますので、この点、枠内の安価な加糖調製品の輸入増の脅威、これは依然として存在するのだろうと考えてございます。 
 12ページ目をご覧ください。次に、CPTPP加盟国からの輸入状況でございます。 左下のグラフのとおり、ベトナムからの輸入量については、堅調に増加している状況にございます。これは、韓国からベトナムに進出した工場での生産、これが存在することによるものでございまして、輸入がさらに増える可能性があろうかと考えてございます。 
 真ん中のグラフの濃いオレンジの部分がマレーシアからの輸入量で、この輸入の99%はココア調製品でございます。ここ1年間を見てみますと、若干の減少が見られますけれども、生産量自体は年々増えてございますし、その減少要因は、右側のグラフのとおり、価格差が縮小していることが影響しているのであろうと考えてございます。 
 砂糖について、国際価格、高騰しているところでございますが、ココアの原料となるカカオ豆の国際価格につきましても、先月、46年ぶりの水準で過去最高値を記録しているという状況にございまして、そのようなことが影響して価格差の縮小につながっているのだろうと分析してございます。また、このカカオ豆の価格は、世界的な需給動向、生産国の気象等の影響を受けるものでございますので、このまま固定化するものではなく、また戻る可能性もあるということを注視していく必要もあると考えてございます。 
 13ページ目をご覧ください。加糖調製品を使用するメーカーにアンケート調査を行いました。理由につきましては、左側のグラフのとおり、多くは「コスト削減」のためということでございますが、右側のとおり、今後の方向としまして、国産の様々な原料が値上がりしている中で、輸入加糖調製品を増やしたい、あるいは値頃感のある商品を増加させていきたいという意向がございますので、こういったユーザーの視点においても、加糖調製品の輸入増の脅威というものが存在するのではないかと考えているところでございます。 
 14ページ目をご覧ください。左側の表の下から2行目が調整金収入の推移でございます。調整金の収入額につきましては、徴収幅の拡大と加糖調製品のCIF単価の上昇、これらが相まって増加傾向で推移してございまして、直近1年間では94億円となっているところでございます。この部分につきましては、右側にスキームがございますが、輸入原料糖の調整金の軽減と国内産糖支援に充当することで、国内における砂糖価格の引下げ、競争力の強化につなげているという状況でございます。 
 15ページ目をご覧ください。暫定税率引下げの効果についてであります。直近の砂糖と輸入加糖調製品の価格を比較したものでございますが、右側の砂糖の価格については、直近1年で170円から215円となってございます。原料糖相場の高騰等によりまして、昨年からは10~15円の上昇となっております。一方、輸入加糖調製品につきましては、左側の図の一番右側ですが、150円から170円程度でございまして、前年から15円の上昇となっており、価格差が僅かに縮小しているという傾向が見られます。この要因といたしましては、加糖調製品からの調整金を原資とした輸入粗糖の調整金の軽減措置、これを3.9円で設定してございました。その効果とメーカーの合理化努力があって、価格の上昇幅が抑制されたことによるものと考えてございます。引き続き価格差は存在するわけでございまして、競争力の強化を図るため、暫定税率の引下げは必要と考えてございます。なお、この軽減額につきましては、令和5砂糖年度におきましては、調整金の収入の状況等を踏まえまして、4.1円に拡大するということで運用しているところでございます。 
 16ページからが国内産の砂糖の競争力強化の取組状況でございます。 
 17ページ目をご覧ください。下にグラフ、表が幾つかございますが、中段にさとうきびとてん菜の労働時間の推移がございます。さとうきびにつきましては、ハーベスター等の機械化を進めてございます。これによって労働時間が減少してきているところでございます。てん菜につきましても、これまでは苗を植える移植が主でございましたが、種をまく直播に切り替えるということを進めてございまして、労働時間が減少傾向にございますが、肥料ですとか、様々な資材の価格が高騰する中で、ここ数年は物財費が横ばいないしやや増という傾向がいずれの品目でも見られるところでございます。 
 また、甘味資源作物から砂糖に加工する工場のコストについて、こちらも省力化施設の整備なり進めてございますけれども、様々な資材が高騰する中で、なかなか引下げには至っていないんですけれども、抑制はしているという状況にあるのではないかと思ってございます。 
 18ページ、今後のコスト低減に向けた取組でございます。さとうきびにつきましては、機械収穫に適した「はるのおうぎ」という品種の普及拡大を図ってございますし、農業従事者が減少する中で生産の効率化を図るスマート農業の普及も進めております。てん菜につきましても、除草剤耐性品種の普及を新たに進めているところでございます。直播の場合は、雑草との初期生育の競合というのが何より課題でございまして、除草剤耐性品種がさらに直播の拡大に資するものではないかと考えてございます。また、てん菜も同様にスマート農業の普及を進めているところでございます。 
 19ページ目をご覧ください。甘しゃ糖とてん菜糖の製造コストの低減に向けた取組であります。甘しゃ糖につきましては、働き方改革が5年間猶予されておりましたが、いよいよ来年3月までとなってございます。このような中で、長時間労働の削減に向けた取組、省力化設備の導入等を進めているところでございます。また、てん菜糖につきましては、これまでは8工場体制で動いておりましたが、本年1月をもちまして本別の製糖所の操業が終了いたしまして、本年産からは7工場体制でより効率的な生産に努めているという状況にございます。 
 20ページ目をご覧ください。原料糖から精製糖に加工する精製糖企業の状況でございます。右側の枠内、直近の状況だけ申し上げますけれども、例えば昨年10月には三井製糖と大日本明治製糖の合併、日新製糖と伊藤忠製糖の経営統合、さらには塩水港精糖と大東製糖の業務提携ということで、ある意味、商社の壁を越えた形で経営統合等、合理化が進められているという状況にございます。 
 続いて、22ページからは中長期的な在り方、取組という点であります。この糖価調整制度における最大の課題は調整金収支の状況でございまして、甘味全体の需要量が減少する中で国内産糖が堅調に生産され、その分、輸入糖が減少するということ、あわせまして、国際糖価の上昇や円安の影響等により、令和3砂糖年度・4砂糖年度ともに100億円を超える赤字でございまして、今、累積で563億円の赤字を抱えているという状況にございます。このような状況を踏まえまして、様々な対策を進めている状況にございます。 
 23ページがその一つでございますけれども、昨年の12月に「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応について」という方針を決定いたしました。てん菜糖の国内産糖交付金の交付対象数量につきまして、これまでの64万トンから令和8年にかけて55万トンにするというものでございます。なお、このてん菜が減った分につきましては、加工用ばれいしょ、豆類などのその他の需要のある作物への転換を併せて進めているところでございますが、この取組1年目の令和5砂糖年度におきましては、右側にもグラフがございますが、今今の状況で申し上げますと、5万1,000ヘクタールでございます。交付対象数量に見合う面積、指標面積は5万4,500ヘクタールですので、これを下回る状況にございます。また、この状況につきましては、甘味資源部会で検証しまして、今後の方針を確認してございますが、やはり需要の動向、あるいは調整金収支の動向、引き続き厳しい状況にございますので、こういった取組を引き続き進めるという方向が確認されたところでございます。 
 24ページ目をご覧ください。異性化糖の調整金についての運用見直しを行うこととしてございます。左側のグラフのとおり、甘味の需要量のうち異性化糖というもの、よくドリンクの後ろに「果糖ぶどう糖液糖」と書いてあるものですが、その異性化糖について、需要は増加ないし横ばい傾向で推移してございますが、調整金については、平成23年以降発生していないという状況にございます。このような状況を踏まえまして、調整金の徴収に向けて運用の見直しを行うこととしているということでございます。詳細は割愛させていただきます。 
 25ページでございますけれども、引き続き砂糖の需要拡大に向けた取組を行ってございます。国産の加糖調製品の開発であるとか、あるいは「ありが糖運動」、さらには菓子の輸出拡大ということでございます。 
 26ページ目をご覧ください。昨年のこの場でも御指摘を賜りましたけれども、SAFについて、さとうきびもその原料になり得るものでございますが、農水省としても、政府全体での協議会の場に参画し、議論を各省と共に行っているところでございます。直近では、2030年のSAFの供給目標に対する供給見込みが立ってございまして、この中には国産のさとうきび等の使用は見込まれてございませんが、一方で、さらに需要は拡大するわけで、今後の議論へ対応していくために、次の27ページでございますけれども、農林水産省のほうで調査事業を行いまして、どれくらいの生産が見込めるのか、あるいはコストがどれくらいかといったデータを整理してございます。こういったデータを基に、関係者との議論を進めてまいりたいと思ってございます。 
 また、このことにつきましては、28ページでございますけれども、今、農林水産省のほうで食料・農業・農村基本法、この見直しに向けた議論を行ってございます。その中でも、国産バイオマス原料に関する需要サイドとの連携、あるいは研究開発といった取組を進めるという方向を示しているところでございます。 
 最後、30ページでございますけれども、関税改正要望の概要といたしまして、今申し上げましたとおり、価格差が存在するということ、また輸入増の脅威があるということを踏まえまして、引き続きこの暫定税率の引下げを要望させていただいているということでございます。 
 何卒御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等、御発言をお願いいたします。植田委員、どうぞお願いいたします。
植田委員 非常に丁寧な御説明をありがとうございました。 
 私も細かい制度までは完全にはこの短時間で把握はできなかったのですが、全体の方向性としては若干おかしなところがやっぱりあるなと思っております。このCPTPPで関税を引き下げて、当然、価格が下がれば消費者にとっていいことになるということもあり、それ自体を悪く言うのはおかしい話というのがまずあります。 
 それから、そこで何らかの、加糖調製品に対してもう既に改正糖価調整法に基づいて調整金の対象とするとされてしまっていますので、それ自体も本当はおかしいなと思いながらも、それはいいとして、この場では仕方がないとはしても、ただし、それを自動的に国産の砂糖の支援財源に充てるべきかどうかというのは、また話がちょっと違う感じがします。 
 いろんなところで関税があり、砂糖は調整金がある中で、どの品物をつくっている人たちをどの程度保護すべきかという話は、いろんな全体像の中で当然やっていくべき、本来であればですね。砂糖でも塩でも米でも、先ほど出ましたお茶でも実はそうだと思ったんですけども、もちろん自動車、半導体といろいろありますけれども、全体像でやっていく中で、特定財源は、その品物に関する特定の収入があったから、砂糖に関わる収入だから砂糖農家に使うんだというのは、ちょっとおかしな話かなと思います。そもそもつくっている製品の既得権益をそのとおり認めてしまうことになってしまうかと思います。 
 当然、CPTPPが発効するとか、いろんなことがある中で、改めてそのときそのときでいろんな品物の生産者の人たちにどのように分配するかというのは、本来的にはやっぱりしっかりとそれぞれの特別会計的な中でだけで話すのではなくて、一旦全て一般会計に財源を持ってきて、それでしっかりと民主的に国会で決めてもらうべき筋なんじゃないかと思います。以上です。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 関連して何か御発言ございますか。三石委員、どうぞお願いいたします。
三石委員 全体を見るという意味で大事な点は、28ページにも出ていますが、農林水産省の審議会から今年の9月11日に食料・農業・農村基本法の改正に関する答申が出ていることです。 
 現行基本法は、1999年からのものです。その前年に農政改革大綱が出て、その後に基本法が成立しています。現在の糖価調製制度も同様の流れを経て2000年にできており、この制度はこうした大きな農政の流れの中で続いていると理解しています。 
 今後、糖価調製制度をどう考えていくのかということ、これは当然考えなければいけないのですが、ひとまず今回のこの改正に関しては、これで良いと思います。ただし、基本法そのものが改正された場合、それに連動して糖価調製制度を今後どう考えていくべきかということを、もう一度、立法趣旨、政策目標、そして現在の状況等を踏まえ、しっかりと検討し直していただくこと、これが必要になってくるのではないかと思います。以上です。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 さらに御発言ございますか。では、樽井委員、どうぞお願いいたします。
樽井委員 JA全中の副会長、また北海道中央会会長の樽井です。 
 私のほうから、生産者の立場から、てん菜・さとうきび生産者や、また北海道、鹿児島、沖縄、南西諸島の砂糖の産地、地域経済を守る点でコメントさせていただきたいと思います。 
 北海道のてん菜は、畑作物の輪作作物として欠かすことのできない品目であり、沖縄、鹿児島、南西諸島のさとうきびは、台風の常襲地帯において、他に代替できない基幹作物であります。また、これらの品目は、いずれの地域の基幹産業を形成しており、砂糖工場、また物流も含めた雇用は、定住人口を確保する上でも極めて有用な役割を果たしております。いずれの産地も隣国の目と鼻の先に位置しておりまして、離島を含めてこれらの地域の人口がこれ以上減少すれば、食料安全保障のみならず、国家安全保障にとっても深刻な脅威となることが考えられます。 
 のような中、TPP等関連政策大綱において、国産甘味資源作物の安定供給を図るため、改正糖価調製法に基づき、加糖調製品からの調整金を徴収し、砂糖の競争力強化を図るとともに、着実に経営安定対策を実施すると決定し、これまで国策として国内砂糖の安定供給が進められてきた経緯がございます。これらを引き続き進めていく必要があるのではないかなと、私は感じます。 
 そのためには、農家が安心して生産できる経営安定対策の支援が必要であり、糖価調製制度をしっかり堅持するためにも、加糖調製品対策としての暫定税率引下げは引き続きしっかり講じられるべきと考えてございます。 
 私の地元・北海道のてん菜を少し話させていただきますと、糖価調製制度の持続的運営を図るため、てん菜から他作物への転換を進めるとともに、生産コストの低減に向けて、輸送の効率化に向け糖業と連携した取組や、生産現場では直播きによる省力化とコストの低減などを取り進めているところであります。また、減少している砂糖の消費量を何とかくい止めるべく、砂糖に関する正しい知識の発信や消費拡大、イメージアップに向けた取組を「天下糖一プロジェクト」と銘打ち、令和元年度から生産者自らの拠出によって実施しているところであります。 
 今後も、産地自らも国内産糖に関わる競争力強化や中長期的な在り方を検討しながら、生産者団体として、食生活において不可欠な砂糖を国民の皆様に安定的に供給すべく、引き続きその責務を果たしていく所存でございますので、今後ともよろしくお願いを申し上げさせていただきます。以上です。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 大橋委員も手を挙げていらっしゃいますので、どうぞお願いいたします。
大橋委員 ありがとうございます。1点御質問と1点コメントです。 
 加糖調製品からの調整金の収入が大幅増であるというお話があって、他方で、砂糖の調整金収支は相当悪化しているというお話がありました。この2つがどう整合的になっているのかという辺りの御説明いただければというのが1点御質問です。 
 2点目は、コメントになります。まず、私自身は、砂糖の国内産業というのは、離島も含めて非常に重要な産業であるので、しっかり持続可能な形で育てるべきだというふうに考えていますが、他方で、今回示していただいた中長期的な在り方というのが、そうした持続的な姿になっているのかということを気にしています。コスト低減とか価格差を埋め合わせるというのは、ある意味、暫定的な措置にしかすぎなくて、こうした今回の関税改正の要望の間に、抜本的に砂糖の産業のあるべき姿ということに向けて絵を描いて、担い手確保も含めて抜本的な取組というのが相当程度必要ではないかと思います。 
 今回、SAFとか、需要増とか、いただいているんですけれど、こうした取組は分かるんですが、じゃあ、それをどこまでやることを目指されているのかというタイムラインと、あと、どこまで掘り下げることで持続的な姿に近づくのかという話がないなと思っています。要望は重要だというお話は分かるんですけど、そうした形を示した中で要望がどういう位置づけになるのかという御議論をちょっとしていただくのが必要ではないかなと。これも、私は昨年も申し上げたと思うんですけど、そういうことだと思います。 
 やっぱり欲しいのはKPIの設定だというふうに思っていまして、そういった点も含めてぜひしっかり御検討いただくことで、砂糖の産業、国内産業をしっかり育成して、将来の担い手をしっかり確保するんだという絵姿をしっかり見せていただくというのは重要だなと思っています。以上です。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 では、村上委員、どうぞお願いいたします。
村上委員 どうもありがとうございます。 
 先ほどCPTPPの話がございました。平成29年の閣議決定の中で、この加糖調製品に対する調整金の徴収ということが盛り込まれたわけでございます。その背景として、菓子やチョコレートなどの関税が撤廃され、加糖調製品については、それなりのアクセス改善を行うということがございました。そういう中で、国内のユーザー、あるいは消費者の視点からその負担をできるだけ減らしていくということが念頭にあったのではないかと思います。そういう意味で、実需者、あるいは消費者、負担をする製糖業者、これらのバランスを取る意味で、そのような決定がされて、今日の経過に至っているのではないか思っております。 
 砂糖の消費、あるいは甘味全体の消費が減少する中で、実需者負担をできるだけ減らしていく、消費者負担を減らしていくという観点が非常に重要ですし、内外価格差が非常に大きいので、国内の生産、あるいは工場において合理化をして縮めていく努力をしてそれを縮小していく必要があると思いますし、更に、基本法の見直し等の中においても、制度を不断に見直して合理化を図っていくという視点が特に必要だと思っております。以上でございます。
森田分科会長 ありがとうございました。
植田委員 追加で1つよろしいですか。
森田分科会長 この際ですから、伺っておきます。どうぞお願いいたします。
植田委員 皆さんの御意見を伺いながら思っていたのが、ここは関税の話ですので、グローバルな視点も当然必要になってくるかと思います。 
 この砂糖とかの輸入、我々の輸入元ですよね、輸出している国々を見れば分かるとおり、お砂糖というのは、特に19世紀の植民地のときに欧米の列強がいわゆる貧しい地域に大量にシュガープランテーション、さとうきびプランテーションをつくったこともあって、カリブ海だの太平洋諸島だの熱帯の地域でかなり行われていて、発展途上国の主要産品であるということは間違いないわけでして、これ、やっぱり昔から問題になっており、私も前、国際通貨基金とかにおりましたけど、すごく問題になったのは、先進国側におけるこういった補助金とか関税によって発展途上国の、我々よりもっと貧しい人たちの生活がやはりなかなかうまく伸びないということを我々先進国側の人間としては知っておかないといけないと。当然、恐らく北海道とか沖縄の方々も大変なんでしょうけども、それ以上に貧しい人たちが世の中にはいまして、いわゆる南北問題の一つの中心になっていて、お砂糖というのは特にそういう意味でも大事な品物でもございますので、北海道や沖縄の方の状況も分かるんですけれども、グローバルな視点も考えて、本当にこれでいいのかということも考えないといけないのかなというのを1つ意見として言わせていただきます。ありがとうございます。
森田分科会長 ありがとうございました。
永沢委員 すみません、私もよろしいですか。
森田分科会長 では、永沢委員、お願いいたします。
永沢委員 植田委員の御意見に関連した発言をさせていただきたいと思います。 
 資料の中の10ページの乳製品に関するところでございます。糖価調製制度や農業政策については詳しくありませんので、的外れな発言かもしれませんが、コロナ禍の前後から生乳の余剰が深刻な問題になっており、消費者として、安全な牛乳を国内で確保できるのかということを非常に心配しているところでございますが、脱脂粉乳、つまり乳と、加糖調製品が連動しているということが、資料に示されたデータから見てとれるわけです。このように、ある産業が別のある産業に影響を与えるということが見てとれるわけですから、農業政策において、全般に、日本として、特に食の安全として何を確保、安全を確保すべきなのかということを中核に据えてどう保護していくのかを考えていただきたいと、消費者として強く思う次第です。既にそういう取組みをされていると思いますが、こうしたお金の使い方について、全体で見ていただくことをお願いしたく、発言をさせていただきました。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
森田分科会長 ありがとうございました。 
 それでは、よろしいですね。農林水産省のほうからお答えいただきます。
石田農産局地域作物課長(農林水産省) 多数御質問、御意見賜りましたので、もし回答に漏れがあった場合は改めて御指摘賜れればと思ってございます。 
 まず、御質問いただいた点について、大橋委員から、加糖調製品からの調整金の収入が増えていく一方で、制度全体の調整金収支が赤字であることの関係について御質問をいただきました。この点、加糖調製品からの調整金の収入につきましては、その目的が国産砂糖の価格を引き下げて競争力の強化を図るということでございますので、直接この収支の赤字のほうに投入するということではなく、収入を得られた分をそのまま国内の砂糖価格引下げに充当しているということで、基本的にはこの調整金収支とはニュートラルな関係にあるということでございます。軽減しなければ、その分、収入超過になりますが、それは制度の趣旨ではないというふうに考えてございまして、引下げを図っているということであります。なので、調整金収支の赤字対策、これはこれで別途、説明で申し上げましたような様々な対策を進めてまいりたいと考えてございます。 
 また、植田委員のほうから、CPTPPでの関税引下げと消費者メリットの関係について御指摘を賜りましたけれども、資料で申し上げますと30ページを御覧いただければと思います。今回の暫定税率の引下げの意味でございますが、これは国民負担を増やすことではなく、枠外の譲許税率と暫定税率の差分が調整金になるということで、この関税か調整金かというミシン目を変えるものでございますので、国民負担、消費者の負担を増やすということではなく、どこに充てるかという部分の変更であるということをまず申し上げておきたいと思っております。 
 その上で、輸入加糖調製品からの税収は一般会計に計上した上で使うべきではないかという点でございますけれども、この加糖調製品の輸入によって影響を受ける者が、当時の閣議決定でも示されていたとおりでありますが、まさにこの砂糖の生産者、その原料となる甘味資源作物の生産者でございますので、こちらに充当するということが示されたのではないかと考えてございます。 
 また、国会で審議すべきという御指摘もございましたが、法律自身も当然国会での審議を経て定められたものでございますが、我々として透明性というのは重要だと思ってございまして、国内産糖交付金の支援水準や、さとうきび生産者への支援水準など、どのように政策支援を行っているのかが分かりやすい説明、公表というものを、引き続き実施してまいりたいと考えてございます。 
 また、大橋委員から、中長期的に、いつまでに、何をするのかというKPIの設定が必要ではないかという御指摘を頂戴いたしました。この点、三石委員からの御発言にも関わりますけれども、砂糖だけでなく、この国の農業全体、食料全体のグランドデザインをするものが基本法と基本計画でありまして、その検討の中で砂糖につきましてもしっかり検討し、必要なKPIの設定についても併せて検討してまいりたいと考えてございます。 
 当然、この点につきましては、先ほど永沢委員からも御指摘ございましたけれども、食料安全保障が大きな課題となっております。砂糖は、我々が食べているカロリーのうち約1割を占める重要なものでございます。同時に、さとうきび等が地域産業としても重要ではございますけれども、そういった両面を含めて考えますと、この制度を安定的に運営しながら砂糖の安全供給を図ることは、やはり重要ではないかと考えているところでございます。 
 また、植田委員から重ねて、グローバルな視点ということで、砂糖を先進国で生産するのかという御指摘と承知してございますが、現在、砂糖の生産国、地域は、生産量が多い順に申し上げますと、ブラジル、インド、EU、タイ、中国、米国の順でございまして、途上国ではなく先進国でも砂糖は重要な品目として生産されている状況にございます。先ほど申し上げましたとおり、砂糖は食料として重要であるという考え方は世界でも共通でございまして、日本でもしっかりその供給を安定させていくということは重要な政策課題ではないかと思っております。そのために、この糖価調製制度を引き続きしっかり運営してまいりたいというふうに考えてございます。ありがとうございます。
森田分科会長 植田委員、よろしいですか。
植田委員 どうもありがとうございました。
森田分科会長 それでは、特にこれ以上御発言がないようでございますので、以上をもちまして本日の関税分科会を終了いたしたいと思います。 
 なお、次回の関税分科会の開催につきましては、11月30日(木曜日)の午前10時開始を予定しております。詳細につきましては、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げます。 
 本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。 
 それでは、これで終了とさせていただきます。

午前11時17分閉会