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関税・外国為替等審議会
第43回外国為替等分科会議事録

令和元年10月8日(火)

財務省 国際局

於 財務省第3特別会議室
本庁舎4階

 
1.開会
2.「対内直接投資審査制度について」事務局報告
3.質疑応答
4.閉会

出席者
委員伊藤 恵子財務省岡村国際局長
 小川 英治 宮原国際局次長
 奥田 英信 有泉国際局審議官
 河野 真理子 土谷国際局審議官
 坂元 龍三 三村大臣官房参事官
 神保 寛子 今村国際局調査課長
 杉山 晶子 緒方国際機構課長
 高山 一郎 梶川地域協力課長
 根本 直子 細田開発政策課長
 原田 喜美枝 大場参事官
 春田 雄一 米山開発機関課長
 山西 健一郎 土生外国為替室長
 渡井 理佳子 日向為替実査室長
臨時委員大野 早苗 福島資金移転対策室長
 亀坂 安紀子 河邑国際調整室長
 神作 裕之 桜田調査課企画官
専門委員井戸 清人 森下国際機構課企画官
 植田 健一 近藤開発企画官
 渡辺 博史 田部開発企画官
  経済産業省飯田貿易管理部長



○小川分科会長 それでは、ただいまより第43回外国為替等分科会を開催いたします。  委員の皆様方には、御多用中のところお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 事務局より「対内直接投資審査制度について」の御報告をいただき、質疑、自由討議の時間をおとりしたいと思います。
 それでは、三村副財務官から御報告をよろしくお願いいたします。

 

○三村副財務官 恐れ入ります。副財務官、三村でございます。
 お手元に「対内直接投資審査制度について」という右上に資料2と記載された横長の紙がございますので、これに沿いまして御説明を申し上げたいと思います。
 まず、1ページ目は、もう委員の皆様方御承知のとおりでございますけれども、現行の外為法の対内直接投資制度でございます。今回この制度を改正したいと思っておりますので、まず現行がどうなっているのかというところでございます。あまり詳しくは繰り返しませんけれども、基本的に外為法においては、対内取引は自由が大原則でございますので、大半の対内直接投資は届け出も報告も特段必要ないことでございます。その上で、一部の投資につきまして外為法上の対内直接投資等と定義いたしまして、これまたその多くは事後報告でございますけれども、一番下の吹き出しに書いてございます国の安全、公の秩序等々4つの観点から特にしっかりと審査する必要があるだろうという業種につきましては告示で指定いたしまして、指定業種ということで審査付きの事前届け出の対象にさせていただいております。真ん中のフローチャートではオレンジ色囲みが事前届け出審査対象業種でございます。こちらにつきましては、審査をさせていただきました上で、仮に問題がございますれば、変更・中止の勧告及び命令もできるということでございます。そして、最終的に外国投資家の方に命令に従っていただけない場合には、現行の外為法では、この下にございます対象業種の中で国の安全にかかわる業種の場合につきましては、株を売却してください等々の措置命令もできるような制度になっております。逆に言いますと、国の安全の業種以外でありますと今のところは措置命令の対象になっておらないということでございます。これが現行の制度でございます。
 これを今回ぜひ見直しをしたいということでございまして、おめくりいただきまして2ページ目、外為法の改正の狙いでございます。現行制度は今申し上げたとおりでございますが、大きく2つの観点で見直しを行いたいと思っております。1つは、健全な投資、日本経済の成長に資するような外国からの投資は、当然のことでございますが、一層促進したいということでございます。一方、諸外国を見ましても、安全保障等の観点でしっかりと見ないといけないような業種についてはむしろしっかりと対応を強化しようというのが欧米においても流れとして存在しております。後ほども資料に出てまいりますけれども、昨年8月にはアメリカで新しいFIRRMAと呼ばれる法律ができまして、安全保障の観点から審査制度がかなり強化されておりますし、ヨーロッパにおきましても今年3月に新しいEUの規則ができておるようなことでございます。こういった国際的な流れには我々としてもぜひついていきたいということでございます。したがいまして、以上2つの観点を合わせますと、下のオレンジ色のところにございますように、日本経済の発展につながりますような問題のない投資はどんどん入っていただく。一方で、国の安全等の観点でしっかりと見るべき投資につきましてはしっかりと見るということで、メリハリのある制度に外為法上の対内直投制度を見直したいということでございます。
 3ページ目でございます。まず、対内直投を一層促進したいところは、申し上げるまでもなく、この何年かの間ずっと現在の安倍政権のもとでも日本政府として目標としてきておるところでございます。6年ほど前に日本再興戦略の中で日本の成長戦略といたしまして、端的に申しますと、海外の成長力を日本に取り込む観点で、世界のヒト・モノ・カネをいかに日本に引きつけるかということが成長戦略として盛り込まれております。来年になってしまいますけれども、2020年までに対内直投の残高を35兆円に拡大するという目標を政府として掲げた経緯がございます。
 他方、翻って、下に小さい字で恐縮ですが、2018年末時点ではまだ30.7兆円の残高という状況でございますので、2020年末の35兆円に向けてもう一段の努力をしないといけない状況にあるのが我が国の対内直投の現状であろうかと考えております。したがって、こういったところで一層促進する努力を図りたいというのが1点目の大きな考え方でございます。
 他方、海外においてどうかというところが次の4ページ目以降でございます。幾つか資料がございますが、一番ポイントのみを4ページ目で申し上げます。アメリカにおきましては、先ほども申し上げましたとおり昨年8月にFIRRMAという名前の法律が新たにできまして、法改正が行われ、この対内直投につきまして審査制度が大幅に強化された経緯がございます。その下の矢印のところにございますように、従来アメリカは、事後的に問題があれば、業種を問わず、株式を売却してください等々の命令を当局が行うという事後介入の制度だったのでございますが、新たに事前届け出の制度もつくりまして、その上で外国政府の実質的な支配下にある国有企業のような外国投資家による投資でございますとか、いろいろな機微な技術を伴うような業種についての投資は事前にきちっと審査をするのだということで事前届け出制度がつくられたのが昨年のアメリカの法改正でございます。
 それから、ヨーロッパも今年3月にEUの規則を承認しております。端的に言いますと、EU加盟国の中で必ずしもまだこういった審査制度を持っていない国もあるのでございますけれども、全ての国がこういった業種についてはこういう考え方で審査の制度をつくってくださいといった審査制度の大枠をEU共通の枠組みとして定めた規則でございます。EUの規則を待つまでもなく、欧州の中でも主要国は当然一歩先んじていろいろな制度あるいは制度改正をやっておるところがございます。そこに英、独、仏の例を並べさせていただきました。端的に言いますと、対内直投の審査対象につきまして、対象となる取引の株式所有等のパーセンテージなり金額の閾値を引き下げるとか、対象の業種自体を拡大するとか、いろいろな形で対内直投の審査制度のターゲットを広げることを、国の安全等の観点で欧州の主要国も既に法改正を含めてこの一、二年やっている状況でございます。こういった欧米の流れもありますので、先ほども申し上げましたように、日本としても国の安全等の観点からしっかり見るべきものは遅滞なく対応しなければならないというのが法改正に当たっての2つ目の大きな考え方でございます。
 今ざっくりとポイントを申し上げましたけれども、アメリカ、それからヨーロッパのそれぞれの最近の法改正につきましてもう少し詳しく、比較表のような形でまとめさせていただきましたのが5ページ目、6ページ目でございます。ポイントは先ほど申し上げました。時間の関係もございますので、説明のほうは割愛をさせていただきます。
 その上で7ページ目でございます。先ほど来申し上げております問題のない対内直接投資はどんどん行っていただく一方で、国の安全等を損なうおそれのあるものはしっかりと見させていただく観点で、具体的にどういう法改正を行いたいかをまとめたのが7ページ目のポイントの紙でございます。問題のない投資の一層の促進という観点につきましては、今、事前届け出の対象になっておりますものの中でも、ここにポートフォリオ投資と書きましたけれども、いわゆる会社の経営支配を目的としない――逆に言いますと、株価が上がれば、利益が出れば売却しますという純粋な投資目的のものにつきましては、あえて届け出を頂戴せずに、事前届け出は免除しまして、事後報告を頂戴する制度に変えてはどうかというのが1つ目の大きな柱でございます。
 一方、その上で国の安全等を損なうおそれのある投資をしっかりと見ますというほうが下のブルーのところでございまして、特に大きいのが2ポツのところでございます。事前届け出の対象を今よりは少し広げたいところでございまして、現行は、上場会社の場合には発行済み株式総数の10%以上を取得した場合が外為法上の対内直接投資等の定義に当たりますけれども、この10%といいますものを1%まで引き下げたいということでございます。1%がどこから出てくるかについては、資料に書いてございますけれども、御承知のように1%以上の株式を持っておりますと、会社法上、株主総会における議題提案権が発生いたします。つまり、1%以上持っていれば、例えば役員交代とか重要事業の譲渡といった提案ができるということでございまして、そういった権限を持つことは会社の支配力という観点でかなり大きな影響を持ち得るということですので、ここは1%まで少し網を広げさせていただきたいということでございます。
 もう1つが次の黒丸でございまして、現状は、株式を取得した後は、定款の変更で事業目的を変えるといったケースを除きますとあまり事前届け出の対象となっている行為がございません。具体的に申し上げますと、例で書かせていただいておりますような役員に就任するとか重要事業の譲渡を提案するといったことを行うに当たって特に外為法上の事前届け出は必要ないことになっておりますけれども、指定業種につきましては、こういったものの事前届け出を頂戴して、必要があれば審査をさせていただく形のほうがよろしいのではないかと、こういったものを事前届け出の対象に広げたいということでございます。
 それから、3ポツは、そういった審査をやるに当たりまして、当然様々な情報が必要でございますので、これは守秘義務や相互主義が前提になりますけれども、内外のカウンターパートとなりますような当局としっかりと情報の共有、情報交換ができるような根拠条文を、現行はございませんから、外為法上にしっかりと入れておきたいということでございます。
 先ほど欧米の法改正のお話を御紹介申し上げましたけれども、アメリカの昨年の法改正とか今年承認されましたEUの規則でも、域外あるいは外国の同盟国との情報共有のための根拠規定がちゃんと入っておりますから、我々もそういったものをきちんと作ることで、しっかりと法的な枠組みの中で同盟国との情報共有ができるようにしたいということでございます。
 今申し上げましたことのバックグラウンドが8ページ目でございます。私、先ほど純粋な経済目的、株価値上がり目的のポートフォリオ投資を事前届け出の免除の対象にする制度を考えておりますと申し上げましたけれども、これに伴って10%から1%に下げることに伴いまして実際どれぐらい届け出が増えるのか増えないのかというところが9ページ目でございます。現行は事前届け出につきまして、10%以上であれば、指定業種についていわば一律に届け出を頂戴しておるわけですが、最近で年間600件ほどの届け出を頂戴しております。実はそのうちの9割程度は、会社の経営支配の目的ではない、純然たる経済目的のポートフォリオ投資でございます。なぜ9割と申し上げることができるかといいますと、外為法上、30日の審査期間、不作為期間がございます。この9割につきましては、特段、会社の経営支配等々の観点で問題ありませんということで、審査期間を5日以内に短縮しまして、ほぼフリーパスでお通ししてございます。これらにつきましては、審査期間の短縮をしながらも形の上では事前に届け出を頂戴して、審査期間の5日間は取引できませんということで外国投資家の方に若干手間をおかけしておるわけですが、現状も事実上フリーパスでございますし、実際に問題も生じてございませんので、こうしたものについてはそもそも事前届け出をこの際免除させていただいてはどうかという発想でございます。
 一方、10%を1%に引き下げるとどれぐらい届け出が増えるのかを示したのが次のオレンジ色の欄でございます。これは、公表資料に基づきまして日本の株主の方も含めますので、試算としては若干不正確な上での御参考の数字でございますが、10%を1%に引き下げますと、株主の数で申し上げますと8倍ぐらいには増えるかということでございます。一方で、先ほど申し上げたようにこのうちの9割は事前届け出の免除の対象になるだろうということでございます。潜在的な母数は8倍に増えても9割は免除でございますので、全体として見れば事前届け出の件数が大きくこれによって増えることはないのではないか。結局8倍の1割だけが届け出の対象というざっくりとしたイメージでございますので、日本全体として届け出の負担を著しく大きくすることにはならないのではないかと我々としては思っておるところでございます。
 ただ、その上で、事前届け出の免除の場合にも事後報告は頂戴しようと思っております。したがいまして、この届け出の免除に当たっては、そもそも誰がどのような形で免除を受けられるのか受けられないのか。それから、事後報告に係るいろいろな事務負担を明確化あるいはできるだけ軽減するのは、健全な投資の促進という観点から当然やらせていただかないといけませんので、そういったことはしっかりとやらせていただこうと考えておるところでございます。このあたりは後ほどもう少し詳しく申し上げたいと存じます。
 おめくりいただきまして、9ページでございます。先ほど10%を1%に下げるということが出てきておりますけれども、翻って歴史を遡りまして、そもそも現行でなぜ10%なのかというのが9ページの上段でございます。これは、極めて率直に申し上げますと、歴史的な経緯によるところでございます。昭和54年の外為法改正時にはこういうことを考えておりましたということで国会等々でも4つの理由を御説明しております。1つは、旧外資法のもとでも10%以上を事実上のメルクマールとして、10%以上であればより慎重に取り扱っていました。2点目は、証取法上の公開買い付けに当たって、当時の証取法では10%が届け出が要るかどうかの一つのメルクマールになっていたこと。3ポツは細かいですけれども、4ポツで言えば、当時は10%ぐらい持っておられれば筆頭株主でした。こういったようなことで10%だったわけでございます。したがいまして、本来的にこの制度は会社への経営支配の影響力を持ち得る方をどういうふうにしっかりと見るかという制度なのですが、今申し上げたように、必ずしも、その制度上の設計の目的から照らしますと、今にして思えば、あまり根拠のある10%という数字ではなかったところもあるかなというところでございます。
 そういう観点で、逆に今、会社法等々の10%にかわる数字となり得るものとして何があるかというのが下の段でございます。これも御承知のとおりのものでございますけれども、1、3、5%あるいは今の10%も解散請求権ということで会社法上それなりに意味のある数字ではございますが、先ほども少し申し上げましたように、そもそも本当に安全保障等の観点で機微な業種については、会社の経営支配のようなことについて当局として物が言えるような制度設計にするという観点から申し上げますと、1%の場合でも株主総会での役員交代の議題提案ができるのはかなり大きな影響力でございますので、私どもとしてはやはり1%が適当と検討致しました。そして、先ほど申し上げたように、免除制度と組み合わせれば、10%を1%に変更いたしましても極端に届け出をお願いする件数が増大することもございませんので、このような考え方の整理をさせていただいているということでございます。
 10ページは、今申し上げましたことを簡単にイメージ図にしたものでございます。今までは指定業種につきましては、10%以上であれば、いわば一律に審査付事前届け出ということで届け出を頂戴しておりました。今後は10%を1%に下げ、会社役員選任等も届け出の対象にしまして、右側のオレンジ色の部分でございます。全体の9割ぐらいは純粋な経済目的の投資ということで免除になりますので、トータルで見れば届け出の件数が膨大化するわけではないだろうということでございます。
 このように御説明申し上げますと、結局、何が免除になって、何がならないのかということが当然持たれる御質問、御疑問ではないかと思います。そこが11ページでございます。事前届け出の免除制度の具体設計でございます。まず大前提といたしまして、どなたが、あるいはどのようなものが免除を受けられるのか受けられないのか。これは外国の投資家の目から見ましても外形的にはっきりとしておりませんと、結局届け出を出すということになってしまいまして、せっかくの免除制度も使い物になりません。対象範囲は、かなり細かい技術的なところもございますので、政令・告示で規定すると考えております。いずれにしましても、ルール上はっきりとわかるような形で対外的にお示ししようと思っております。
 その上で、2ポツにございますのは、その免除制度の対象にならない方、裏返して申し上げますと、必ず事前届け出を引き続きお願いしますというケースでございます。投資家の類型と業種の類型と両方の切り口があると思っております。1つは投資家の類型で、ここにございますように、過去に外為法違反の前歴のあるような方、あとは外国政府の影響にあるようないわゆる国有企業。先ほど少し申し上げましたアメリカなども国有企業に絞った事前届け出制度を昨年策定しておりますが、こういった投資家のケースは純粋な経済目的の投資と見るには少し慎重な配慮が必要かと思いますので、こういった方は引き続き免除の対象外といたしまして届け出をお願いするということでございます。あとは、投資家のいかんにかかわらず、こういった業種の場合には届け出をお願いするというものもあるかと思っております。ここに並べておりますのも、ほかの部分と同様、あくまでも現時点での我々の考えでございまして、今後引き続き政令・告示に向けて検討していくところでございます。例えば武器製造とか原子力、あるいは送配電を持った電力とか通信のようなインフラの中でもとりわけコアとなるインフラは、文字どおり国の安全とか公の秩序の根本にかかわるような部分でございますので、こちらは免除制度導入後も届け出を基本的にお願いするのかなということでございます。
 逆に、こういった投資家、業種以外であれば、3ポツにあるようなことをお守りいただければ免除の対象にさせていただきます。ここの3ポツに掲げております基準は、結局、先ほど私が申し上げました経営支配を目的としないような純粋に経済的な投資かどうかを外形的に整理してみたらこうなるでしょうということであります。これは自分自身あるいは関係者も含めて役員に就任しないとか、重要事業の譲渡・廃止等を提案しない、あるいは、株主になっても非公開の機微な技術・情報へのアクセスを行わない、こういったことを基本的にお守りいただける方であれば、会社の経営支配を目的としているよりは、基本的に経済目的、投資目的という意味での株式取得であろうということで免除の対象にさせていただければと今のところ考えておるところでございます。
 ただ、このようにお約束いただいて免除を受けましても、事後に心が変わった、あるいは外的な事情が変わったということで、結果的にこの基準を守れませんという方が出てくることは当然考えられます。一旦免除したが最後あとは野となれ山となれというわけにはもちろんまいりませんので、そこについては事後報告を頂戴します。仮に事後報告の結果、こういった基準を結果的にお守りいただいていなくて、これは問題だというケースにつきましては事後的に勧告・命令を打てる形で最低限の制度的なバックストップは用意しておこうということでございます。勧告・命令としては、究極的には例えば株式を売却してくださいといったこともお願いできるようなたてつけにしようと思っております。
 長くなって恐縮でございますが、12ページ目でございます。その上で、先ほども申しましたように、免除をするといいながら、10%から1%まで下げたところで事後報告の負担は生じるわけでございます。我々の1本目の柱、大目的でございますところの健全な我が国への外国投資家による投資に無用な御負担をおかけするようなことがあってはならぬと思っております。そういう観点でいろいろな負担軽減策も同時に既に考えておるところでございます。ここも外国の投資家の皆さんを含めまして市場関係者の皆様方といろいろと御相談を始めさせていただいております。政令・告示の部分が大宗でございますので、そのあたりのいろいろな御意見、御提案を承りながら、できるだけ皆様方に使い勝手のいい、御負担の軽い制度にしたいということで、これは、法改正を成立させていただいたとして、引き続きその後もしっかりとやっていこうと思っております。
 1つはインデックス投資への対応と書いてございます。先ほど私は、基本的に経済目的の投資であれば免除ですと。ただ、武器等々、本当に機微な業種については免除の対象外ですと申し上げましたけれども、マーケット関係者のお話を伺っていますと、インデックス投資のような相当広範な、上場全銘柄、あるいは東証TOPIX全銘柄のような形で幅広い業種を薄く広く投資戦略として買うような場合、たまたまその中のワン・オブ・ゼムで原子力に関係するような業種が入っているときに、これが免除を受けられないので届け出となるととても大変ですというようなお話を頂戴いたします。こういった場合にどう対応するかというところですが、私どもが武器や原子力を免除の対象外だとしておりますのは、この武器や原子力を扱う会社の株式を買って何かしたいという方をしっかり捕まえるのが事前届け出のポイントでございます。薄く広範に何十、何百という銘柄をお買いになる方について、たまたまワン・オブ・ゼムでそういった業種が入っていても、一個一個の企業の経営支配を目的としているわけでないことは明らかでございますので、こういったものは免除の対象にできるのではないかと、その方向で考えたいと思っております。インデックス投資とここは書いてございますが、ほかにもアクティブであっても薄く広くいろいろな銘柄を買う投資戦略はあると思いますので、そういったことも含めてマーケット関係者のお話を聞きながら、あまりマーケットの常識に反したような制度にならないようにしっかりと考えたいと思っております。
 それから、報告頻度でございます。1%以上で今後は報告対象ですが、1%が1.1%になり1.2%になったときに一々報告が要るのですかというところでございます。ここも先ほど申し上げたように、我々の今回の考え方は、1%であれば株主としての議題提案権という会社法上の大きな権限が生じる。そういった権限に着目をしてしっかり報告していただこうということでございます。そういう意味で、1が1.1になったことで一つ一つ報告を頂戴する必要はなかろうと思っております。ここも今後、市場関係者の方とも御相談でございますが、今我々で思っていますのは、1%の次は3%、3%の次は10%と、先ほど会社法上のパーセンテージをごらんいただきましたけれども、会社法上このパーセンテージを超えるとまた新たな権限が株主として生じますといった節目のところで報告を頂戴するぐらいで十分ではないかと。これも、取引のたびごとに毎日のように、毎週のように、あるいは毎月のように事後報告が要ることにはならないようにしたいと考えております。
 それから、報告自身の事務負担の軽減も当然でございます。報告期限をできるだけ延長するとか、報告自体の様式を軽くするところも、もともと総体的に問題が少ない中で届け出の免除をさせていただくわけですので、そこも現在のものに比べましてできるだけ柔軟にできるところは柔軟にしたいということでございます。
 最後に、13ページ、14ページでございます。こちらはむしろファンド形態の投資でございます。これも御承知のように、日本の場合は、ファンドといいますと、多くの場合は投資事業有限責任組合のような形で、組合形式で届け出を出していただいているケース、あるいは投資をされているケースが多いのではないかと思うのですが、左側が現行制度でございます。今は、組合形式でファンドをつくって外国投資家の方が投資をされる場合、まずはGPが外国投資家の方でいらっしゃる場合にはそのGPの方、あと実はLPの方も外国投資家であればそれぞれ届け出を出していただくことで、実態としては1つのファンドなのですが、そこにおられる外国投資家の方の数だけ届け出を頂戴している形になっております。これは当然のことながら、ファンド関係の皆様方、ベンチャーキャピタル関係の皆様方からはいかにも煩雑だというお声も頂戴しております。特にLPなどは、LPは議決権行使があっても意見を言わないだろうという話もございます。これも全くそのとおりであるということでもございますので、今回ここも法改正をさせていただきまして、会社と並びで、組合の単位で1つ届け出を出していただけば良いのではないか。組合として外国投資家であるか否かというところは、「改正の方向性」の箱書きでございますが、全体として外国投資家の方が5割以上出資されている、あるいはGP自体が外国投資家の方であるところをメルクマールにして、その場合に組合に限っていただく。会社の場合もやはり同じでして、株式出資比率が5割以上、あるいは役員の方の過半数が外国人であれば、日本法人でも外国投資家とみなすのが現行の外為法でございますので、それに合わせた形で組合に一本化しまして、外国投資家のLPの数だけ届け出を頂戴するような御負担になることはこの際改めようということでございます。
 14ページは今申し上げたことを図解したものですけれども、詳しくは割愛をいたします。これに伴いまして、いわゆるベンチャーキャピタルとして組合形式で投資いただいているファンドの皆様方も今よりはかなり負担の軽減につながることを期待しておるところでございます。
 最後、15ページは、今日御説明しました法改正ができましたときのフローチャートでございまして、やや細かいところでございますので割愛いたします。いずれにいたしましても、今申し上げたようなことで、健全な投資につきましてはどんどん入っていただき、できるだけマーケット関係者の皆様方に余計な手間をかけないようにしっかりと対応しつつ、本当に問題のあるものに絞って、冒頭申し上げましたメリハリのある形で、我々の限りあるリソースをより一層有効に活用して、国際的な流れに沿って対応したい。こういうことで外為法の改正を考えさせていただいているところでございます。
 時間を超過しまして申しわけございません。以上でございます。

 

○小川分科会長 ありがとうございます。
 岡村局長、よろしくお願いいたします。

 

○岡村国際局長 三村副財務官からの詳細な説明に私から付け加えることがあるわけではないのですが、1点だけ強調して、お願いを申し上げたいと思いまして、小川会長に機会をいただきました。
 本件のポイントは、今の説明にもありましたとおり、国際的な状況も踏まえて、経済安保の対応を強化するという要請と、それから健全な投資を阻害しないという要請。この2つの要請のバランスをしっかりとることがポイントであります。その上で、今お願い申し上げるのは、決まったことを御説明してエンドースやサポートをいただくような場として、この審議会での御議論をお願いするわけではない、ということでございます。
 と申しますのは、確かに臨時国会に法律案を提出することを目指して、現在、準備を進めておりますが、法律事項というのは、説明にもありましたように、株式取得の10%という数字は法律に書いてありますので、10を1に下げること、あわせて免除制度を導入することが、法律事項のポイントであります。
 それでは、免除制度をどういうふうに具体的に設計していくのか。今日の資料では11ページ以降の話でありますけれども、この中で外形的に対象を明確化して、萎縮効果をなくす、透明性を確保していくことでありますとか、実務上の負担軽減策で投資の抑制・阻害にならないように仕組みを作っていく。こういったことは政令・告示あるいは運用といった、法改正の先の話になりますので、これから詳細の設計をしていくということでございます。実務を十分踏まえた上で進めていく必要がありますので、様々な角度からのインプットをお願いして、それをもとに制度を設計していきたいと考えております。そういう趣旨でのインプットのための御議論のお願いでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

○小川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御報告いただきました内容に対して、御質問、御意見がございましたらお願いしたいと思います。それでは、亀坂委員、お願いいたします。

 

○亀坂委員 私は、たまたまなんでしょうけれども、経産省の産業構造審議会の委員をさせていただいていて、安全保障に関連する小委員会でこのことを集中的に議論させていただいているので今御説明いただいたことがすっと頭に入ってくるんです。非常に納得いく御説明をいただいたと思っているのですが、何か勘違いしている人があまりにも多いと思うんですね。新聞報道にも責任があって、強化する、強化する、強化するというイメージで報道しているのがそもそもの問題の発端だと思うんです。いろいろなところでずっと議論、特に経産省の小委員会で議論させていただいた上で、私の理解では、これは悪意のある投資を防ぐための閾値の引き下げなんです。なので、何でそんな規制強化するんだと、私も直接、投資家の方から実は問い合わせを既に受けていまして、何が起きているんだと。説明すると納得していただけるんですね。これは安全保障とかに関するような、本来であれば日本にとってよくない投資をある意味で防ぐというか、どちらかというと、その技術を持った企業を守るための閾値の引き下げであって、だから問題ない投資は自由だ。これまでどおり自由なんですけれども、このところアメリカやヨーロッパで悪意のある投資が大分実例として出てきて、各国、アメリカや欧米諸国が規制を強化している。それは企業の技術を持っていかれてしまうというか、抜き取られるから規制強化しているんですね。だから、日本にとって、日本の企業の技術を守るために閾値を下げていただくという意図だと思うんです。それに対して新聞報道が、ただ単に規制強化されるんだというふうに報道しているのがそもそもの誤解の主要因ではないか、誤解が発生する根本的な要因ではないかと思っています。私は、日本の企業が意図せざるような形で技術をどこかに持っていかれてしまう、海外に持っていかれてしまうのを防ぐための閾値の引き下げですので、1%まで下げていただくことには大賛成です。
 その1%まで下げていただくというのも今御説明いただきましたが、資料の9ページ、会社法等の閾値を示していただいて非常にわかりやすくなっているんですけれども、1%の取得でも会社法上の株主総会における議題の提案権が出てきてしまう。1%の保有でも会社に何らかの形で支配力を行使できる可能性があるので、会社法上、支配力を行使できる限界の1%まで閾値を下げていただいて、それで日本の企業の技術を守るというふうに理解しています。その大前提が本当に誤解されて、あるいは、ゆがめられて報道しているというのは、投資家の方々とかいろいろな方々にまずは理解していただかないといけないのではないかと非常に感じております。ずっとこれを公表できなかったために、産構審の小委員会も一切非公開でやっているがために、投資家の方々から問い合わせられても答えられないんですね。でも、「たぶん全然そういうのを気にしなくていいと思います」と言うと、「何かよくわからないけど、そうなんですか」と言って投資家の方が帰っていく。そういう状態がここしばらく続いております。だから、今日これを終わって外為審のこのスライドがアップされて、産構審の小委員会の報告書もアップされれば大分誤解が解けるんじゃないかというふうに私は思っています。
 ただ、先ほど国際局長も話されたように、これから決めることに関してはちょっとコメントしたいんです。1つは単純なことですけれども、例えば11ページの3の箇条書きの3つ目です。「非公開の技術・情報にアクセスしないこと」というと、ものすごく広く感じてしまうんです。私が何も背景にある議論を知らなくて、非公開の技術・情報にアクセスしないことといったら、うちの人事情報もだめなの、私の持っているデータもだめなのかな、研究費でとった私しか持っていないデータはどうなるのとか。産構審では、大学の持っている技術とかいうことも議論しているのですけれども、非公開と言われると、私の持っているデータは何か気をつけなくちゃいけないのという形で、すごく誤解が発生する状況になっていると思うんですね。小委員会の委員は機微情報なんだという認識のもとに議論しているのですけれども、機微情報って多分伝わらないんですね。この委員の方々の中も、機微情報の例えば定義とか。定義もそこの委員会でずっと議論していたはずですけれども、クリティカルテクノロジーをどう訳すかという議論もあったんです。だから、伝わりにくくて誤解を生じがちなのではないかなとずっとこのところ思っております。
 ですから、11ページ以降はこれからのことですけれども、そういった誤解を解く努力もすごく重要ではないかと思っていて、その典型例が11枚目のスライドの3の3つ目の箇条書きの「非公開の技術・情報にアクセスしない」。これが、自分は関係あると思った人が見て、すごく嫌な感じを持つところだと思うんですね。そういったことももうちょっと気を使いながらこの話を外為審でも進めていただいたほうがいいんじゃないかとすごく感じております。
 もう1つは、12ページのこれからの案ですけれども、インデックス投資――私たちだとインデックス運用とか言ってしまうんですね。投資というよりも運用するという感じで言ってしまうのですけど、確かに事前届け出免除制度が導入されると、どんどん自由にというか、制約なくできるという意味で非常にいいと思うんです。ポートフォリオ運用とかポートフォリオ投資の投資家の意見ばかり優先し過ぎると転売されるとか、あまり軽くし過ぎると本来阻止すべき機微技術を狙った悪意ある投資家による投資を防ぎ切れないこともあると思うので、事後報告の負担を軽くするにしても、ここは非常に気をつけたほうがいい点だと感じております。例えば株式取得の当初はポートフォリオ運用とかポートフォリオ投資を装っていたファンドであっても、1%以上取得しているとなると、後に取締役の就任とか、何らかの会社への影響力、支配力を行使してくる可能性はあると思うんです。ですから、事後報告負担を軽くするのはもちろん必要なんですけれども、本来の日本の企業を守る、日本の技術を守ることだけは忘れない形で負担を軽くするべきだと思うんですね。
もう1つこれからのことで気になっているのは、私は委員をさせていただいて議論していても、機微技術って何なんだというところに今でもひっかかっていまして、難しいんです。これに関係しなくても、アメリカのファーウェイの規制といったら、どこまでは規制して、どこがだめで、どれが危なくてというのが、はっきり言って、委員でもまだわからないんですね。わからない状況で事前届け出免除制度を導入して、モニタリングをしっかり機能させる環境を整える。それはそれで、言うのは簡単なんですけれども、ものすごく難しいのではないかと思っています。財務省の方々もそうですけれども、事業所管官庁の方々が本当に機微技術なのかどうかを判断できるのか。そういうことを考えていて、何らかの形で専門的知見を高めていただいて、しっかり見きわめていただくような専門的知見をつけていただくとかいった対策が必要なのではないか。ここで議論するにしても、全然背景を知らないで議論するとしんどいと思うんですね。私はたまたま両方の委員を兼ねているのでわかるのですけど、ほかの委員の方々は機微技術が何とかといっても全くわからないと思うんです。そういうのをもう少し外為審側にもフォローしていただきたい。私だけしゃべっておしまいとかなってしまってもしようがないと思うので、この外為審で議論する限りは、外為審でももうちょっと産構審の状況を説明していただくとか、情報共有も必要になってくるのではないか。そういうことをずっとずっとここ数カ月感じております。

 

○小川分科会長 どうもありがとうございます。亀坂委員は御意見がほとんどだったのですが、非公開の技術・情報にアクセスしないという機微情報、その点、先ほど言及されていたので御説明いただければと思います。

 

○三村副財務官 ありがとうございます。基本的に亀坂委員のおっしゃるとおりでございます。ここでの非公開の技術・情報は、文字どおり機微技術ですけれども、おっしゃいますように、別に人事情報などではありません。こういう技術がこの外国投資家に流れると、日本にとって文字どおり外為法の目的とします国の安全や公の秩序等々の観点で非常によろしくない事態になり得る。そういう技術へのアクセスを我々としては防ぎたいということでございます。
 そういう意味で、「非公開の」というふうに書きますとざっくりとし過ぎているという御指摘はそのとおりかと存じます。さっき亀坂委員におっしゃっていただきましたように、一般論的に定義するとそうであるとして、具体的にどういうものが機微技術なのか、あるいはクリティカルなテクノロジーなのかというところは非常に定義が難しいのはおっしゃるとおりだと思います。亀坂委員は御承知のとおりかと存じますけれども、アメリカでも昨年この法改正ができた後、何がイマージングテクノロジーなのか、何がクリティカルテクノロジーなのかを具体的に定義する段になりますとアメリカの商務省は今なお悶絶しているというふうに聞きますので、ここの部分を定義づけるのは正直難しいところでございます。実は今回も私どもは、技術を何か指定した形で届け出をお願いするよりは、業種という形で今までの外為法の枠組みを維持しました。これも、技術を定義するのはなかなか難しいところがあることは横目でアメリカの状況もにらみながら、引き続き業種でということにしたのでございます。そうでありながら、この機微技術が何なのか最終的にわかっていないことにはきちんとした制度運用はできません。法改正はもちろんやらせていただきたく御提案を申し上げておるわけですが、具体的にどの会社が持っている、どういう日本の会社のどういう技術が本当に日本として守らなければいけないものなのかというところは、法改正等々とは別の話として、各事業所管省庁にもお願いしながらしっかりと整理しないといけないところだと思っております。これも政府の中で既に関係省庁にもお願いして、共同でやっております。この産業の中で日本のこの企業のこの技術が今サプライチェーン全体の中で見ても特に重要な技術だというものをそれぞれの事業所管省庁においてしっかりといわば洗い出しをしておいていただいた上で、そこにかかわるものかどうかをしっかりと見ていくことが実際上の運用の仕方だと思っておりますので、引き続き関係省庁ともよく話を伺いながらやっていかなければいけないと思っている状況でございます。

 

○小川分科会長 ありがとうございます。
 それでは、札を上げていただいた順番に指名させていただきますので、伊藤(恵)委員、お願いいたします。

 

○伊藤(恵)委員 御説明、ありがとうございました。2点御質問で、2点簡単なコメントです。
 1点目の質問は、7ページ、先ほども亀坂委員からお話があった事前届け出免除制度のことです。具体的な設計はこれからというお話でして、ただ、法律は来週ですか、国会に出したいというお話がありました。そこのタイムラインというか、具体的な制度の中身がまだ決まっていない状態で法律を国会に提出して、いつ施行されるのか。企業側は非常に混乱するのではないかなと思うんですけれども、ある程度具体的なものが固まってから提出すべきなのではないか。別に大丈夫なのか。そのあたり、どのようにお考えになっているかというのが1点目の質問です。
 2点目の質問は、7ページだと思いますけれども、外為法改正案のポイントの一番最後のところで、「国内外の行政機関との情報連携の強化」という文言になっています。一方で、5ページのアメリカ、EUのところですと、アメリカだと「外国政府との情報交換規定を新設」と書いてありまして、EUは「EU域外国との情報共有を規定」とあります。これをぱっと見た印象ですと、アメリカ、EUはかなり具体的に規定をしているような印象に対して、日本の連携強化というのはすごく緩い書きぶりのように感じてしまうのですけれども、そのあたり、実際、法律上どのような文言で、どの程度の強さの外国との情報共有なり連携を考えていらっしゃるのか。そこが2点目の質問です。
 コメントとしましては、先ほど亀坂委員もおっしゃったように、単なる強化ではないというところをしっかりと情報を正しく伝えることだと思うんです。どちらかというと、これまで直接投資ではないポートフォリオ投資に対して無駄に申告してもらっていたものを、より正確に直接投資というものを捉えて、直接投資ではないものに対する無駄な事前届け出はなくする意図だというあたりをしっかり正確に伝えることが必要ではないかな。単に安全保障上の理由で強化する話ではなくて、海外投資の形態も技術もどんどん発展している中で様々な投資形態があって、その中で直接投資に該当する投資をより正確に見ていく意味の改正であるというあたりをしっかりと情報提供する必要があると思います。
 もう1点のコメントは、どうも産構審のほうでも議論されているというお話ですけれども、事前届け出を比較的緩くする一方で事後の審査をしっかり強化していく、セットになっている話だと思うんですね。事後を誰がどういう基準でどのように審査するかというところがちょっと曖昧であって、事後をどういうふうに審査して規制していくのか。そのあたりの透明性なり具体性をしっかりと議論していただきたいというのがコメントです。
 以上です。ありがとうございました。

 

○小川分科会長 札を上げていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるので、二、三人まとめて御質問、御意見をいただいて、そしてお答えをいただくことにしたいと思います。では、大野(早)委員、お願いいたします。

 

○大野(早)委員 2点ほど質問させていただければと思います。
 まず1点は機微情報の件です。もう既に指定産業というのが指定されていまして、そこが審査の対象になってくるということですけれども、技術の進歩がいろいろあるところで、どこまでの技術を審査の対象にするべきなのかというところは今後も変わってくるところがあるかと思います。今後、現状では審査の対象になり得ると思えなかったような産業が規制すべきであるというふうな状況になった場合に、産業をもう少し追加してくる必要があるという状況も出てくるかと思うんです。その場合に、では、既に日本に投資をしているところも事後的に規制の対象にするのか。あるいは、新たな産業が追加された時点から投資をするような企業から規制の対象にするのか。規制の対象を追加された場合に遡及するのかどうか。遡及しないといった場合に、そこで起こり得る問題に対してどのような対処、対応が求められるのかについて伺いたいというのが1点です。
 2点目なんですが、やるべきことはメリハリをつけて規制するところで、決して日本の産業を阻害するような規制はあってはならないということで、メリハリをつけるところが非常に大事であるという御説明で、私もその点については納得しております。  規制をかける対象としては、技術の漏えい、特に国の安全保障とかに非常に関連するようなところについては流れないようにきちんと対応していかなくてはいけない。そこの抜け穴をいかに防ぐかが大事になってくるところがあるかと思うんです。あまりあり得ないケースかと思うので、うがった見方とも言えるかもしれませんが、投資組合は、いろいろな対象の投資組合があったり、目的に合わせてファンドをつくってくるような状況ももしかしたらあり得るのではないかと。国内の投資家が国内の企業に投資するところは特に問題ないので事前届け出義務から外すということでありますけれども、例えば国内の投資家と言われているGPが、実は海外の主体のコントロール下にあるようなところがGPになっているとか、出資比率も当初からどんどん変わってというような状況があるかと思いますので、事後のチェックが非常に大事になってくるところもあるかと思うんです。先ほど伊藤(恵)委員からも御指摘がありました。事後の体制をいかに構築するかが今後もしかしたら大事になってくるのではないかというふうな御意見もありましたので、そのあたりについて少し確認させていただければと思います。

 

○小川分科会長 植田委員もお願いできますか。

 

○植田委員 いろいろと御丁寧な御説明、ありがとうございました。
 私のほうは、ここにいらっしゃる方はおわかりかと思いますが、亀坂さんと逆の立場からあえて質問させていただきます。これをしっかり規制していこうとすると、皆さんおっしゃるとおり、対象業務をどんどん増やしたり、どんどん細かく見ていかないといけないと思うんですが、それが本当にいいことかなというのは常にどこかにあるわけです。もちろん、もう一個のバランスがやはり必要で、いかに健全な投資を増やしてもらうかとあります。そもそもコーポレートガバナンスコードとかフィデューシャリー・デューティーといって片方で改革をしてきたことは、むしろ物を言う投資家を増やす。外国の方でもとにかくやってきて、投資効率が悪いと思ったら物をどんどん言ってもらって、場合によっては企業を分割して売ってということもやってもらわないといけないとずっと言ってきているわけですよね。もちろん、それが大事な、どうしても国の安全にかかわるというならいいと思うんですけれども、それを広げ過ぎてしまって、最初からだめだ、おかしいというふうな立場でやってしまうと、本当におかしな状況に、資本主義の根幹が揺るぐなという感じがいたします。
 だから、どうするかわからないのですけれども、もし一つのやり方があるとすれば、これまたさらに煩雑になるかと思うんですが、例えば考えている、想定している国というのがあると思うんです。それを公にするんですか。それとも、どの国も、アメリカのような国でも全部調査するのか。それから、国によっても、白黒だけではなくて、グレーゾーンみたいな国もあると思うのですが、それをどうするのか。
 それから、さっき言いましたけれども、武器をつくったり原子力というのは1%でも確かに気になると思うのですけれども、皮革関連の産業とか警備業とか、1%でなくてもいいけれども、今までどおり10%だったら見たいというところはあると思うんです。あと、中身にもよるとは思うんですけれども、今だと一くくりにかなりおさまってしまっている気がするんです。もうちょっと分けてもいいんじゃないかという気がしております。

 

○小川分科会長 それでは、伊藤(恵)委員、大野(早)委員、植田委員の御質問、それからコメントにお答えいただきたいと思います。

 

○三村副財務官 恐れ入ります。いろいろとコメントを頂戴しまして、ありがとうございます。
 まず、伊藤(恵)委員からお尋ねがございましたけれども、そもそもこの法律がいつ施行されるのか。免除制度の内容等々、もう少し詳細が固まってからの改正ではいけないのかという御質問だったかと存じます。まず、仮にこの臨時国会で法案を通していただいたといたしますと、今提出を考えている法律自体では、半年以内の政令で定める日で施行を考えております。したがいまして、もし法律をお通しいただければ、これから半年以内のうちに政令・告示の中身も当然固めてまいりまして、来年春ぐらいには法律の施行を目指すような日程感を考えております。その心は、来年の株主総会のピークシーズンに間に合うようなスケジュール感を考えております。今日御紹介申し上げましたように、株主総会のまさに議題になるような事柄につきましての法改正でございますから、総会の直前で法律施行というわけにまいりません。総会のピークシーズンよりも少し前には政令・告示まで含めまして詳細も固めまして、それ以降、来年のピークシーズンに向けて、議題の提案の場合も含めて、株主総会に実際にかかわられる皆様方に混乱を来してはいけませんので、そういうスケジュール感でということです。心としては、来年の春には政令・告示まで中身を固めて施行しまして、その後、株主総会のピークのシーズンに向けてしっかりと、当然それまでもやるわけですけれども、それ以降も制度の周知徹底を図っていく。こういうスケジュール感で考えております。
 政令・告示に関して何も決まっていませんということにもいかないわけでございますので、本日この11ページ以降の資料で、我々として今こういうことを考えておりますと申し上げました。どちらかというと、担当者の心としましては、まだ確定ではありませんと言いながら、こうして審議会の場でもお諮りしておりますので、今日お諮りしているようなことについて今後なしにしますというつもりで出しているわけではございません。むしろ今後マーケット関係者の皆様方のお話も聞きながら、いろんな追加なり、さらなる改善を行うつもりで御提案申し上げております。いずれにいたしましても、できるだけ早い段階で制度の詳細をしっかりとお示しするのは、今申し上げました来年の株主総会に向けて混乱を来さないためにも当然必要でございますので、そこはしっかりと御意見も改めて肝に銘じまして対応したいと思います。
 それから、2点目の御質問でございました国内外、特に国外との情報連携のところを具体的にどういう書きぶりにするのかというところでございます。ここの部分は、外為法には今そういう規定は全然ないのでございますが、その他の法令では既に外国のカウンターパートの当局との情報交換の根拠規定がいろいろなところにございます。財務省の関係でも、例えば関税法や税法などにそういうケースがございます。あるいは金融関連ですといろいろなところにございます。そういった法令の規定の前例を見ながらでございますが、中身としましては、先ほど私が駆け足で口頭で申し上げたかもしれませんけれども、例えば相手国との関係で、まずはこちらが情報を出せば向こうも同じような情報を出してくれる相互主義が確保されていることとか、提供した情報につきまして相手方もしっかりと法律上守秘義務の枠のもとで情報をお取り扱いいただけるとか、そういった基本的な考え方は他法令でも前例がございます。そういった基本的な考え方をしっかりと法律にも書き込んだ上で、枠の中で我々は情報を共有しますということを書こうと思っております。まずそういうことが法律上、きちっと担保されていることがあって初めて、まさに欧米も、それなら安心だということで機微な情報を出してくれると思います。逆に我々のほうも、相互主義ですとか相手方の守秘義務の保証がないままに情報をお出しするわけにはいきません。これは法律上の要請ですときちっと言えるように、そういった規定をぜひ盛り込みたいということで先ほど御紹介申し上げたということでございます。
 それから、大野(早)委員から機微情報のところに関連しまして、技術進歩により対象が今後変わってくるではないかということで、遡及の話も含めて御質問を頂戴いたしました。まさに日進月歩で技術も進歩しますので、その時々の状況に応じて機動的に業種の追加、場合によっては削除もあるかもしれませんが、これは告示によって定めるということでございます。今年に入りましてもサイバーセキュリティ関連につきましては告示改正で新たに広げることもさせていただきましたけれども、基本的に新たに広がった部分について遡及適用はございません。そこはございませんけれども、例えば今回10%から1%に下げるところもそうですが、対象になった後、初めて対象になるような行為をされる場合には当然届け出が必要になりますので、例えば告示で業種を広げた後に1%以上新たに株を積み増すようなケースは届け出を頂戴することになろうかと思います。あるいは、告示で広げた業種について、改正以降に、役員になりたいということであれば当然届け出が出てくる。こういう形でございますので、できるだけこのあたりは機動的に、告示の中で機微な業種が出てくれば文字どおり早目に指定していくことかと思っております。
 それから、メリハリづけは大事だというところは全くおっしゃるとおりで、その関連で投資事業組合についての御指摘がございました。GPが日本と言いながら実際は海外の支配下に置かれていたらどうなるのかという話もございました。これは、今回の法改正を待たず、現行の外為法でございましても、株主の過半が外国人である、あるいは役員過半が外国人である場合には、日本でつくられた日本法人でございましても外為法上は外国投資家とみなすということでございますので、そういう方がGPになった場合には当然これは外国投資家のGPという形でございまして、基本的には組合名義でしっかりと届け出を出していただく形になろうかと思います。
 もちろん、そこまで露骨にやらなくて、49.9%の人とかいろいろいるでしょうという話はあるわけでございまして、ここのところはどこまでも追いかけていくところをやり過ぎますと、別途、植田先生もおっしゃいましたように、逆にやり過ぎてしまうことにもなります。どこかで線は引くのでございますが、先ほどのお話にもありました内外の情報共有等も今後しっかりとやっていきますので、ここは形の上で外国投資家になる、ならないということと同時に、それ以外の周辺の方も含めて、必要な情報は、投資家についてであれ、あるいは会社なり業種、技術についてもできるだけ収集できるものは収集していく中で、結局は審査能力を一生懸命高めていく形で対応していくしかないのかなと思っております。
 それから、植田先生よりマーケットの観点から、もちろん機微なものを監視するのはいいけれども、一方でコーポレートガバナンス、スチュワードシップコードと言っているじゃないかと。おっしゃるとおりでございまして、冒頭、私の御説明の中でむしろはっきり申し上げるべきだったかと思いますが、我々も一方でコーポレートガバナンスあるいはスチュワードシップコードを提唱しておりますので、それに反するようなことをしてはいけない、それに反するようなメッセージをそもそも発してはいけないというのは重々認識しております。したがいまして、免除の基準の中で役員にならない、経営に関与する提案をしないのを条件にと書いておりますと、いかにも提案しないでくれと言っているように聞こえてしまうかもしれませんけれども、これは本当に事前届け出の対象になるような機微な業種につきましてはそうでございます。それ以外の業種につきましては、そんなことは必要ございませんということがまず大前提でございます。
 それから、事前届け出になったら必ず我々が何かを行うということではございませんで、これまでも事前届け出を踏まえて実際に我々が審査の結果、勧告・命令を出した件は過去に1件しかございません。事前届け出の手間をおかけしても、問題がなければ当然やっていただくわけでございます。我々としては、本当に国の安全等々の観点で、さすがに物言う株主の御発言といえども、これを認めると幾ら何でも国の観点から困りますというものについて、最終的なツールとしてはこういうものを用意したいということでございます。コーポレートガバナンスで物言う株主の方にいろいろな御意見を頂戴するのがそもそも嫌だということにはならないように、そこはメッセージも気をつけたいと思っております。
 その上で、外為法上、そもそもこの制度自体が内外無差別のイシュー、国の安全の観点からの例外なわけです。さらに制度的に差別するわけにはなかなかまいりませんけれども、ここも先ほど申し上げた審査能力と同じ話でございまして、全ての外国投資家の方が同じだけ問題を抱えておられるわけではございません。このあたりは、実際上どういう投資家の方がどういうものに投資するのを、日ごろから事業所管省庁と連携して、情報収集と審査能力を高める努力をこの制度改正後もさらに一層やっていかなければいけないというふうに思っております。

 

○小川分科会長 技術に関連して、経産省貿易管理部長の飯田さんから御発言をお願いいたします。

 

○飯田経済産業省貿易管理部長 1点、大野(早)委員から御指摘のあった点について、15ページの資料を見ていただきますと、上のほうに①「国の安全」ということで、その行の中に軍事転用可能な汎用品の製造業という形で例示されているわけですけれども、ここは輸出管理と投資管理のブリッジがかかっているところでございます。まさに軍事転用可能なデュアルユーステクノロジーと言われるものについて、国際的な議論の場が4つございます。その場で軍事の専門家といわゆる民生技術の専門家が集まって、こういうスペックのこういう品目であれば軍事的に転用されるのではないかということで、毎年ローリングで規制対象のリストを見直しております。これについては、通常、我々年に1回、ちょうど今パブリックコメントを募集しているところですが、技術の進歩に合わせて緩和される部分、それから強化される部分がございます。これを反映させることを輸出管理の側でやりますと、同時に、告示改正はしないのですけれども、投資規制についても最新の軍事転用可能な技術が反映された形で、しかも国際的な合意のある品目を製造する能力のある企業あるいはそういう技術を持った企業が対象になるということで、まさに御指摘いただいた部分、少なくとも軍事転用可能な技術のところはローリングで反映されていくことを補足させていただきたいというふうに思います。
 これ以外のところでも対象になるものが出てくるということで、前回、サイバーセキュリティ業種というのはその技術とは関係ない業種指定として指定をさせていただいているわけですが、国際合意のある技術についての反映と、それから日本が独自に考えてこういう部分が技術にかかわる業種として指定すべきではないかという、両面から常に見直しをして強化あるいは緩和していくことで進めていきたいと考えております。

 

○小川分科会長 ありがとうございます。それでは、神作委員、お願いいたします。

 

○神作委員 ありがとうございます。総論的なことを1点申し上げさせていただいて、その後3点、各論に関連してコメントを申し上げたいと思います。
 第1は、今回の見直しというのは、対内直接投資審査制度の規制の趣旨、すなわち先ほど岡村局長がおっしゃいましたように、海外からの投資を促進するとともに、国の安全、公の秩序、公衆の安全等を確保する。この目的を過不足なく行うためのものでありますので、そういう意味では規制の強化というよりもむしろ規制の改善を企図しているものだと思います。したがって、そのような観点から次に各論について申し述べさせていただきたいと思います。
 スライドの6ページの表を拝見いたしますと、確かに植田委員が御懸念されたように、日本の1%というのは諸外国に比較してもちょっと低いのではないかという御意見もあろうかと思います。私、会社法を専門にしている立場から申し上げますと、日本の会社法は、少数株主権の範囲が広いだけではなくて、株主総会の権限が比較法的に見て非常に広いという特徴がございます。ただ、実際に株主権が実効的に行使されているかどうかというのはまた別として、少なくとも法制上は日本の会社法は少数株主権と株主総会の権限が非常に広い。特に定款変更のような形で株主提案をすると経営事項に関連するようなことも株主総会のほうで議論されてしまう、こういう特徴がございます。もし、経営に対して支配する、あるいは支配的な影響力を行使し得る、こういう観点から網をかけて問題のないものを除いていくという立場をとるとすると、私は、まさにこれも御説明がございましたけれども、株主提案権の行使の基準である1%の基準をとるというのは、過不足のない規制という観点から一つの合理的な説明になり得るのではないかというふうに思います。
 ただ、各論の2番目でございますけれども、そうはいっても、現在の日本で特に外国からの投資が非常に重要で割合も大きい。特に取引に関してはむしろ外国人投資家の取引が大きいようなときに、適用除外のあり方、事前の審査が不要である場合の除き方はよく御検討いただいて、外国投資の抑制にならないような制度設計をしていただければと思います。既に御提案いただいている中でも、例えばスライドの10ページにつきまして、現行に比べて規制が緩和されている部分ですとか、投資組合ファンドからの対内直接投資に係る部分について、13ページ、14ページでしょうか、このあたりは過剰と思われる部分はなくすという御提案が既にございますけれども、10%から1%への引き下げに伴って、過不足のないルールのために、くれぐれも外国からの投資の抑制にならないような観点を重視していただければと思います。
 その点に関連して各論の3番目ですけれども、適用除外にすべきものというのは、基本的には支配していない場合と、それから支配的な影響力を及ぼす可能性が非常に低いものなのではないかと思います。そのような観点からいたしますと、パッシブな投資家というのは基本的に除かれるべきものだと思います。ただ、何がパッシブかというのを定義するのは非常に難しいのかと思いますけれども、パッシブな投資家を定義するとともに、いわばアクティブなものも考慮に入れて、どのように組み合わせていいか難しいのですけれども、例えば金融商品取引法は、現在の大量保有報告制度において特例報告が認められております。これは、いわゆるパッシブな投資家の手間を省くために特例を認めているものでございます。これは釈迦に説法でございますけれども、ここでは、条文を読み上げさせていただきますと、発行者の事業活動に重大な変更を加え、または重大な影響を及ぼす行為として政令で定めるもの。これを重要提案行為等と定義して、このような行為を行うことを目的としない。こういうアクティブでないというのがパッシブの定義になっているようなところがありまして、ここはパッシブを端的に定義する場合もあるでしょうし、アクティブなものを除く。アクティブなものを目的としないというような、様々な除外の仕方があり得るかと思いますけれども、くれぐれも第2に述べました外国投資の抑制にならない。つまり、過剰な規制にならないような観点から何を除くかという点について御検討いただくとともに、あまり複雑になり過ぎると逆にまた明確性がなくて、投資するほうはどうすればいいかわからない事態になるのも避けなければいけないと思います。そういう意味では本当に難しい問題かと思いますけれども、ぜひ御検討を進めていただければと思います。

 

○小川分科会長  続けて原田委員、お願いいたします。

 

○原田委員 もう既に大勢の委員の方から御意見がありましたけれども、私も健全な投資を阻害しないかという観点からは植田委員と同じ意見を持っております。あと、伊藤(恵)委員がおっしゃったように、タイムスパン、ちょっと急ぎ過ぎではないかということについても同感です。また、神作先生がおっしゃったように、6ページの表を見て1%は低過ぎないかということについても同じように感じております。
 先ほど御説明いただいたときに、市場参加者の話を聞きながら制度設計をするというお話でしたけれども、今回の改正案についてはパブコメの対象外であろうと思います。そうしましたところ、何が今後パブコメになるのかと考えますと、恐らく11ページのところで、政令・告示で規定しますという詳細の部分はパブコメの対象になるのかなとは思っているんですけれども、そこが定まる前に1%というのが先に走り出してしまうのも市場参加者に与える不安はかなり大きいのではないかと思います。投資、運用という観点からいきますと、他省庁との連携はもちろん重要ですが、金融庁との連携なども多分ここにかかわってくるところであろうかと思います。
 あと、これも神作先生がおっしゃったことですが、日本の市場における外国投資家のプレゼンスは非常に大きいものがありますので、上場銘柄に関してはマーケットへの影響はすごく気になるところですが、同時にベンチャー投資についてもこの影響が出てくるのではないかと非常に危惧するところであります。13、14ページあたりで投資組合の事前届け出の事務負担を軽減しますと書いていただいて、これは確かに軽減の対象ではあろうと思います。ただ、通信は指定業種で"すので、1%という枠がかかってくると、そこから事務負担は明らかに増えていくかと思います。そういったベンチャー投資を阻害しないか。あと、上場している会社のマーケットへの大きな負担にならないかということについては、もっと時間をかけて議論していただければと思うところです。

 

○小川分科会長 続いて渡井委員、お願いいたします。

 

○渡井委員 慶應義塾の渡井と申します。投資の自由と安全保障のバランスが図られているという点で改正の考え方に賛成いたします。ただ、今後の国内外との連携強化を踏まえますと、やはりアメリカの規制との比較が重要になるのではないかと思いますので、少し感想を申し上げます。
 9月に出たアメリカの規則案を見ますと、実質的にホワイト国と言ってよいと思いますが、リストの作成に向けての手続が出ております。御案内のとおり、このリストに載るにはアメリカと同様に安全保障の見地からの投資規制の枠組みを持っていることが求められておりますので、それとの関係で事前届出の免除と事後報告のあり方を考えておりました。
 まず、事前届け出の免除につきましては、例えば一部の政府系投資ファンドの場合には必ずしも情報公開が十分ではないこともありますので、事前届出の免除をするというケースについては、資料の11ページにも御指摘がございますけれども、安全保障にリスクを生じさせるような行為を明確にして、それをしないことを免除の条件にすることが考えられると思います。いずれにいたしましても、これまで以上に事後のモニタリングのあり方が重要になると思います。そこで、同じ11ページの4番の事後報告等のところですが、アメリカの審査手続ですと、規制当局と投資家との間での安全保障へのリスクに対する軽減に向けての協議が中心になっていると思いますが、その軽減合意の内容としては、報告書の提出ですとか第三者による内部監査といった内容が定められているというふうに聞いております。そこで、日本でも軽減合意をどのようにデザインしていくのかが問われるでしょうが、健全な投資を促進するという大前提から考えますと、モニタリングや事後報告というのは、投資家にとっては負担ではございますけれども、やはり自由な投資を担保するための措置であるという説明の仕方ができるのではないかと思いました。
 最後に一言、一般論ですが、やはり大きく制度が変わることになると思いますので、これまで以上にぜひ投資家にとってわかりやすく透明性の高い制度になるように、適正な手続の確保を図っていただければというふうに思っております。

 

○小川分科会長 ありがとうございます。時間もだんだんなくなってきたのですが、3人の方の札が上がっておりますので、その3人の方も含めて最後にお答えをいただきたいと思います。まず根本委員、お願いします。

 

○根本委員 根本です。お忙しいところお時間をいただいて、すみません。
 この制度趣旨自体は非常に理解できるところです。ただ、他の先生方もおっしゃったように、健全な投資家の育成というところで、なるべく事前届け出においても明確な定義が必要かと思うんです。7ページのところで例えば経営への影響力行使につながる行為で重要事業の譲渡とあるんですけれども、昨今ESG投資というのが盛んで、特定の事業はあまり望ましくないという提案をする投資家が増えていて、なかなか判断が難しいところではないかと思うので、そのあたりはどうお考えなのかというのが1つ質問でした。
 コメントとしては、原田先生もおっしゃったように、今後、実務家というか、そういう方とも対話されると思うんですが、投資家が本当に1%というところを把握が簡単にできるのか。その他、実務的な面で非常に大きな阻害要因がないのかは確認していただきたいと思います。やはり日本の株への投資というのは、今後の経済成長の見通しの低さとか考えると非常にアウトワーズな環境にあることは確かですので、それを阻害しないようにしていただきたいと思いました。

 

○小川分科会長 続いて奥田委員、お願いいたします。

 

○奥田委員 すみません、時間の詰まったところで。特にコメントですか、細かい技術的なことは、先ほどから皆さんおっしゃるように、専門外でよくわかりませんので。  1つは、セキュリティの問題と投資の問題が対立的に何か言われているのですけれども、別に対立するものではなくて、きちんとしたマーケットエコノミーが動くための前提条件、価値観というのはあるわけです。そういう価値観を守る、そういう世界を守った上で初めて投資が行えるわけです。しかも日本で言っているところのナショナルセキュリティというのは健全な市場経済を守るための価値基準を担保していこうと言っているわけですから、これを担保した上で初めて投資ができるわけで、そういう意味では全然矛盾するものではない。別にトレードオフの関係ではないと思います。トレードオフに捉えること自体が実はすごくおかしいというふうに僕は思っています。これまでは主要国というのが暗黙のうちに全部同じ価値観を持っていたので、投資を促進することは結構ですねという話だったんですけれども、価値観を共有しない、あるいは、しないかもしれないと疑われるような場合、そういうのがマーケットプレーヤーとして主要なものになってきた場合には、それを許してしまうと健全な投資ではなくなってしまうわけですね。だから、大前提を守るためにはそこの部分を守らなくてはいけなくて、今の場合、日本のナショナルセキュリティを担保しようとしている価値観だということを考えれば全く矛盾するものではないんじゃないかと思います。  だから、僕は、日経の論調というのは時々変なことを書くなと思っているんですけれども、少し理解が浅いのか。あるいは、知った上で言っているのか、それはわかりませんけれども、そういうふうな感じを持ちました。
 もう1つは、事後報告制になると、ある意味では事務的な作業は難しくなってくるわけで、どうしてもいかに焦点を絞って処理するかということになると思うんです。そうすると、今回入った国内外の行政機関との情報連携の強化というのは非常に大事になってくると思うんですね。海外との話もありましたけれども、国内との連携というのはもっと重要ではないかと思います。それから、価値観を担保することから言うと、そもそも本来は外為法だけでカバーできるものではないですね。なので、もう少し広い立場から見て焦点を絞った効率的な運用をしていかないといけないと思いますし、多分その辺がポイントになるのではないかと思いました。

 

○小川分科会長 最後に河野委員、お願いいたします。

 

 

○河野委員 時間のない中、すみません。ほんの短くコメントをさせていただきたいのです。
 今いろいろな先生方の御意見を伺っていて思ったんですけれども、この制度改正というのは、何より大事なことは、1%という数字よりも、この1%に引き下げることがなぜなのか。会社法上の株主総会における議題提案権があるからこそ1%にするのだという、この部分を強調されるべきだろうと思います。
 それから、それが届け出の免除制度とセットであることもきちんと、これを強調されて、数字だけがひとり歩きするような報道にならないように、ぜひ。というのは、私は、これは拙速であってはならないとはいえ、かなり急いできちんと制度をつくっておくべき問題だというふうに感じますので、あまり時間をかけている問題ではないと思います。その分、説明をされるときに、数字のひとり歩きはない。なぜこの数字なのかというのをしっかりされると思うんですけれども、そこをきちんとされることがとても大事です。
 もう1つは、伺っておりましてとても大事だと思ったのは、諸外国と情報交換をするときの基盤になるのだということも実は安全保障という点では非常に大事なことだと思いますので、それらの点をぜひ強調していただきたく思いました。

 

○小川分科会長 それでは、まとめてお答えをいただきたいと思います。

 

○三村副財務官 恐れ入ります。時間を超過しつつある中で恐縮でございますが、いろいろコメントを賜りましたのでお答え申し上げたいと思います。
   まず、神作先生から、1%は、一方では会社法上よくわかるというお話をいただきつつ、そうはいっても低く見えないかというお話がございました。私が説明のときに省略してしまいましたけれども、6ページのG7各国の比較表の中で見ると低いというお話を頂戴いたしました。私ども、この6ページの表で、10%とか3%とか1%とか数字だけを比較するのではなくて、制度の全体をまさにごらんいただくことが大事だろうと思っております。時間もありませんので一例だけ申し上げますと、例えば事後介入の部分で、実際に投資をした後にどういう介入ができるかということで御紹介申し上げております。一般的にいいますと、事前に届け出を求めるよりも事後に介入するほうが一瞬マーケットフレンドリーのように思えるのですけれども、実はアメリカとかイギリスあるいはドイツは業種による限定なく事後介入が可能でございます。何を意味するかといいますと、投資をした後になって、やっぱり国の安全上問題だと国が思いましたら、いつ何時でも事後になって株式売却命令を打てるということですので、ある意味では投資家の皆さんにとっては投資をした後も最後まで枕を高くして眠れないような制度でもございます。逆に言いますと、業種による限定は必要ないほどの極めて強烈な事後介入制度を持っているような国は、イギリスのように事前届け出制度がそもそもなかったり、あるいは閾値がちょっと高目だったりするところもございます。我々としては、業種を問わない事後介入というのは現行もございませんし、今回も御提案申し上げておりません。全体の組み合わせを考えながら、かつ、神作先生にも御紹介いただきましたような日本の会社法上何が閾値になっているかということの総合で考えましたときに、事後介入まで合わせた全体として見れば、日本の制度はG7の中の枠の範囲にはおさまっておって、逆に緩過ぎる、厳し過ぎるという、いずれの方向でも突出してはいないのではないか。そういうふうな制度設計を検討させてきていただいたつもりでございます。
 それから、原田先生に賜りました1%が低く過ぎないかという部分は、今お答えを申し上げたようなことでございます。まさに先ほど意見もございましたけれども、タイムスパンとして、今回の法改正が急ぎ過ぎではないのか、市場の不安がないのかという御指摘であったかと存じます。いかんせん外為法上10%というのが法律に書いてございます。これを変えるとなると、これも法律事項でございますので、1%というのが法律の中にどうしても出てくるわけでございます。我々も拙速はいかぬとは思っておりますし、まさに最後に河野委員からもお話がございましたように、一方で、そんなに悠長にやっていてよい話でもないというお声も当然我々のところにもいろいろと届いてくる中で、我々としては、今回、先ほど申しましたように、来年の株主総会も念頭に置いてのこのタイミングでの御提案でございます。いずれにいたしましても、おっしゃいますように、法案につきましてはパブコメの対象ではありませんが、政令・告示はまさしくパブコメの対象でもございます。冒頭御説明の中でも申し上げましたように、パブコメの期間以外を含めていろいろな意見を頂戴したいというふうに思っております。例えば電気とか通信も届け出免除の対象にならない例として申し上げましたけれども、電気も、電力といって全てが対象かというところは当然議論があるわけです。送配電のネットワークを持っているようなところは危ないと思うのですが、田舎でソーラーパネルだけ持っておられるような方まで一律に危ないのかと。一例ですけれども、いろいろなきめ細かな議論をさせていただきながら、そこは過大規制にならないように考えたいと思っております。
 渡井先生から、アメリカのいろいろな制度の御紹介をいただきました。ありがとうございます。我々もまさしく今回の制度改正でメリハリをつけた形での制度改善によりまして、アメリカからもホワイト国という目で見たときに、我々としては「ほら見て」と言えるようなことにするためにも今回こういう制度で御提示申し上げておるわけでございます。いろいろな判断に当たって、投資家にとってみての透明性でございますとか、事後モニタリングをどうしていくのか。先ほど申し上げましたけれども、日ごろの情報共有、審査能力の強化でやっていかなければいけないところだと思います。そこは内実が伴いませんと、制度の器だけつくりましても、他国からも「大丈夫なのか?」という話にもなるでしょうし、事後モニタリングを透明性高く、しかし、しっかりとやっていくところは肝に銘じたいと思っております。
 それから、根本委員からも、健全な投資家の育成という観点はもちろん大事だけれども、一方で、あまり阻害することがないように、それから1%の把握を過大規制にならず、しかし、的確にしっかりと把握する中でどう対応するかというような御意見かというふうに理解いたしました。確かに1%をタイムリーにどういうふうに把握するか。いろいろな難しい面もあるかもしれませんが、事前届け出、事後報告をタイムリーに出していただくことのかみ合わせ、それからこれも繰り返しですが、日ごろの情報収集の中でしっかりと対応していくことかと思っております。
 それから、奥田委員のお話もございました。文字どおり、必ずしもこれはトレードオフという話ではないのではないかと存じます。私ども、まさにおっしゃるとおりであるという気持ちでやってございます。他方で、外為法だけの世界でもないというのもこれまたおっしゃるとおりでありまして、我々としては外為法でないとできませんので、国境を越えての内外の取引を伴わないものまでこの法律で対応することはできませんが、純粋にそれ以外で本当に国の安全の観点で危ないものはないのかといえば、それは当然あり得ようと思います。そこは私ども財務省だけではなく政府全体として、外為法の世界については追加的なツールを頂戴できようかということで提案申し上げておりますが、それだけで終わりではないはずです。ここは文字どおりトレードオフではなく、何が日本のマーケットエコノミーにとって前提となる重要な秩序なのかという観点で、必要なものは外為法以外の世界でもやるというのは当然だろうと思います。実際に関係省庁とそういった議論もしておりますので、この外為法改正で終わりではないだろうということでございます。
 最後、河野委員から頂戴しました、なぜ1%なのかをよく説明すべし、あるいは、海外との情報交換等々しっかりと説明するべきとのご意見について、おっしゃるとおりだと思います。こういう形で資料を皆様方にお示しできる前に報道も先行しまして、我々も正直申し上げてやや難渋しておるところがございます。最初に亀坂委員のお話にもありましたが、これをもってこの資料も解禁でございますので、私どももよく御説明を申し上げたいと思いますし、先生方からもぜひ世の中の誤解を解いていただくべく、何かあればいつでも我々も御説明に上がりますので、よろしくお願いいたします。

 

○小川分科会長 どうもありがとうございました  時間が随分過ぎておりますので、これで本日の議事を終了させていただきます。
 貴重な御意見が多数ございましたので、政府におかれましては、これらを踏まえつつ、対内直接投資審査制度の見直しに取り組んでいただければと存じます。
 なお、今回の議事録の作成は私に一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前にごらんになりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくということにいたしまして、御連絡いただきました委員の方には、議事録を案の段階で事務局より送付したいと考えております。その後、1週間程度の間に御意見がない場合には、御了解いただいたものとして理解させていただきたいと存じます。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 

○小川分科会長 ありがとうございます。
 最後に、審議会のペーパーレス化について申し上げます。今年6月14日に閣議決定されました「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」の中で、各府省庁で行う審議会について、原則ペーパーレスで開催することを重点的に講ずべき施策として位置付けています。また、財務省再生プロジェクトの中でもペーパーレス化による業務改善の取り組みを今事務年度の課題として掲げております。これらを踏まえて、本分科会においても次回以降ペーパーレス化、すなわち、資料は紙ではなくてタブレット上で電子的に配付させていただきたいと思っております。
 なお、資料は財務省のホームページ上に公表いたしますので、紙媒体の資料を御入用の方は、お手数ですけれども、各自印刷いただきますようお願いいたします。委員の皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 次回の分科会につきましては、事務局と相談の上連絡させていただきたいと思います。
 本日は長時間にわたりまして御出席いただきまして、どうもありがとうございました。

 

午後2時43分閉会