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社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案

1.趣旨(第1条)

この法律は、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築することにより支え合う社会を回復することが我が国が直面する重要な課題であることに鑑み、社会保障制度の改革とともに不断に行政改革を推進することに一段と注力しつつ経済状況を好転させることを条件として行う税制の抜本的な改革の一環として、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から消費税の使途の明確化及び税率の引上げを行うとともに、所得、消費及び資産にわたる税体系全体の再分配機能を回復しつつ、世代間の早期の資産移転を促進する観点から所得税の最高税率の引上げ及び相続税の基礎控除の引下げ並びに相続時精算課税制度の拡充を行うため、消費税法、所得税法、相続税法及び租税特別措置法の一部を改正するとともに、その他の税制の抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置について定めるものとする。

2.消費税法の一部改正

  • (1) 平成26年4月1日施行(第2条)

    • ○消費税率を4%から6.3%に引上げ(地方消費税1.7%と合わせて8%)。

    • ○消費税の使途の明確化

      • (消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする)

    • ○課税の適正化(事業者免税点制度の見直し、中間申告制度の見直し)

  • (2) 平成27年10月1日施行(第3条)

    • ○消費税率を6.3%から7.8%に引上げ(地方消費税2.2%と合わせて10%)

3.所得税法の一部改正(第4条)

  • ○所得税の最高税率の引上げ(課税所得5,000万円超について45%)

  • (注)平成27年分以後の所得税について適用

4.相続税法の一部改正(第5条)

  • ○相続税の基礎控除の引下げ(「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」⇒「3,000万円+600万円×法定相続人数」)

  • ○相続税の税率構造の見直し(最高税率を50%⇒55%に引上げ)

  • ○相続時精算課税制度に係る贈与者の年齢引下げ(65歳⇒60歳)

  • (注)平成27年1月1日以後に取得する財産に係る相続税、贈与税について適用

5.租税特別措置法の一部改正(第6条)

  • ○直系卑属(20歳以上)を受贈者とする場合の贈与税の税率構造の緩和

  • ○相続時精算課税制度に係る受贈者の対象拡大(20歳以上の孫を追加)

  • (注)平成27年1月1日以後に取得する財産に係る贈与税について適用

6.税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置(第7条)

第2条から第6条までの規定により講じられる措置のほか、政府は、所得税法等一部改正法附則第104条第1項及び第3項に基づく平成24年2月17日に閣議において決定された社会保障・税一体改革大綱に記載された消費課税、個人所得課税、法人課税、資産課税その他の国と地方を通じた税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策について、それらの具体化に向けてそれぞれ検討し、それぞれの結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならない。(基本的な方向性については別紙参照)

7.附則

  • ○消費税率の引上げに当たっての措置(附則第18条)

    • 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。

    • この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。


(別紙)

税制の抜本的な改革及び関連する諸施策について(第7条関係)

  • 1 消費課税については、消費税率の引上げを踏まえて、次に定めるとおり検討すること。

    • イ 番号制度の本格的な稼動及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理と併せて、総合合算制度、給付付き税額控除等の低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策を導入する。

    • ロ イの再分配に関する総合的な施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として、社会保障の機能強化との関係も踏まえつつ、給付の開始時期、対象範囲、基準となる所得の考え方、財源の問題、執行面での対応の可能性等について検討を行い、簡素な給付措置を実施する。

    • ハ 消費税の簡易課税制度の仕入れに係る概算的な控除率については、今後、更なる実態調査を行い、その結果も踏まえた上で、その水準について必要な見直しを行う。

    • ニ 消費税率が段階的に引き上げられることも踏まえ、消費税の円滑かつ適正な転嫁に支障が生ずることのないよう、事業者の実態を十分に把握し、次に定める取組を含め、より徹底した対策を講ずる。

      • (1)消費税の円滑かつ適正な転嫁に資するため、事業者等が消費税の転嫁及び価格表示等に関して行う行為についての指針を策定し、その周知徹底を図り、相談等を行うこと。

      • (2)中小事業者向けに相談の場を設置するとともに、講習会の開催等を行うこと。

      • (3)取引上の優越的な地位を利用して下請事業者等からの消費税の転嫁の要請を一方的に拒否すること等の不公正な取引の取締り及び監視の強化を行うこと。

      • (4)競争を実質的に制限することにより対価を不当に引き上げる行為を抑止するための独占禁止法の厳正な運用及び便乗値上げ防止のための調査、監督及び指導を行うこと。

      • (5)適正な転嫁等への取組を効果的に推進する観点から、関係行政機関の相互の緊密な連携を確保し、総合的に対策を推進するための本部を内閣に設置すること。

    • ホ 取引に際しての価格表示と消費税との関係については、外税、内税等に係る様々な議論を勘案しつつ、事業者間取引、相対取引等におけるその表示の在り方を含め、引き続き、実態を踏まえつつ、様々な角度から検討する。

    • ヘ 医療機関等における高額の投資に係る消費税の負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して措置を講ずることを検討し、医療機関等の仕入れに係る消費税については、診療報酬等の医療保険制度において手当をすることとし、医療機関等の消費税の負担について、厚生労働省において定期的に検証を行う場を設けることとするとともに、医療に係る消費税の課税の在り方については、引き続き検討する。

    • ト 住宅の取得については、取引価額が高額であること等から、消費税率の引上げの前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいことを踏まえ、一時の税負担の増加による影響を平準化し、及び緩和する観点から、住宅の取得に係る必要な措置について財源も含め総合的に検討する。

    • チ 消費税及び地方消費税の賦課徴収に関する地方公共団体の役割を拡大するため、当面、現行の制度の下でも可能な納税に関する相談を伴う収受等の取組を進めた上で、地方公共団体における体制の整備状況等を見極めつつ、消費税を含む税制の抜本的な改革を行う時期を目途に、消費税及び地方消費税の申告を地方公共団体に対して行うことを可能とする制度の導入等について、実務上の問題点を十分に整理して、検討する。

    • リ 酒税、たばこ税及び石油関係諸税については、個別間接税を含む価格に消費税が課されることが国際的に共通する原則であることを踏まえ、国及び地方の財政状況、課税対象となる品目をめぐる環境の変化、国民生活への影響等を勘案しつつ、引き続き検討する。

    • ヌ 酒税については、類似する酒類間の税負担の公平性の観点も踏まえ、消費税率の引上げに併せて見直しを行う方向で検討する。

    • ル 森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する財源確保について検討する。

    • ヲ 燃料課税については、地球温暖化対策等の観点から当分の間税率が維持されていること及び平成24年度以降において石油石炭税の税率の上乗せを行うこととしたことも踏まえ、引き続き検討する。

    • ワ 自動車取得税及び自動車重量税については、国及び地方を通じた関連税制の在り方の見直しを行い、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から、見直しを行う。

    • カ 印紙税については、建設工事の請負に関する契約書、不動産の譲渡に関する契約書及び金銭又は有価証券の受取書について負担の軽減を検討する。

  • 2 個人所得課税については、次に定めるとおり検討すること。

    • イ 金融所得課税については、平成26年1月から所得税及び個人住民税をあわせて20%の税率が適用されることを踏まえ、その前提の下、平成24年度中に公社債等に対する課税方式の変更及び損益通算の範囲の拡大を検討する。

    • ロ 扶養控除の在り方については、真に税負担の減殺に配慮が必要な者が対象となっているかどうかとの観点及び課税ベースの拡大等の観点を踏まえるほか、今後更に具体化される社会保障制度の改革の内容及び給付付き税額控除の導入をめぐる議論も踏まえつつ、検討する。

    • ハ 年齢二十三歳以上七十歳未満の扶養親族を対象とする扶養控除については、関連する社会保障制度の内容も踏まえつつ、検討する。

    • ニ 配偶者控除については、当該控除をめぐる様々な議論、課税単位の議論及び社会経済状況の変化等を踏まえつつ、引き続き検討する。

    • ホ 給与所得控除については、給与所得者の必要経費に比して過大となっていないかどうか等の観点から、実態を踏まえつつ、今後、その在り方について検討する。

    • ヘ 年金課税の在り方については、年金の給付水準や負担の在り方など今後の年金制度改革の方向性も踏まえつつ、見直しを行う。

    • ト 個人住民税については、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分かち合うという個人住民税の基本的性格((2)において「地域社会の会費的性格」という。)を踏まえ、次に定める基本的方向性により検討する。

      • (1)税率構造については、応益性の明確化、税源の偏在性の縮小及び税収の安定性の向上の観点から、平成19年度に所得割の税率を比例税率とした経緯を踏まえ、比例税率を維持することを基本とする。

      • (2)諸控除の見直しについては、地域社会の会費的性格をより明確化する観点から、個人住民税における所得控除の種類及び金額が所得税における所得控除の種類及び金額の範囲内であること並びに個人住民税における政策的な税額控除が所得税と比較して極めて限定的であることを踏まえるとともに、所得税における諸控除の見直し及び低所得者への影響に留意する。

      • (3)個人住民税の所得割における所得の発生時期と課税年度の関係の在り方については、番号制度の導入の際に、納税義務者、特別徴収義務者及び地方公共団体の事務負担を踏まえつつ、検討する。

  • 3 法人課税については、平成27年度以降において、雇用及び国内投資の拡大の観点から、実効税率の引下げの効果及び主要国との競争上の諸条件等を検証しつつ、その在り方について検討すること。

  • 4 資産課税については、次に定めるとおり検討すること。

    • イ 事業承継税制について、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に基づく認定の運用状況等を踏まえ、その活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について検討を行い、第5条の規定の施行に併せて見直しを行う。

    • ロ 相続税について、老後における扶養の社会化が高齢者の資産の維持に寄与している面もあることも踏まえ、課税方式を始めとした様々な角度から引き続きその在り方を検討する。

  • 5 地方税制については、次に定めるとおり検討すること。

    • イ 地方法人特別税及び地方法人特別譲与税について、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置であることを踏まえ、税制の抜本的な改革に併せて抜本的に見直しを行う。

    • ロ 税制の抜本的な改革による地方消費税の充実と併せて、地方法人課税の在り方を見直すことにより税源の偏在性を是正する方策を講ずることとし、その際には、国と地方の税制全体を通じて幅広く検討する。

  • 6 番号制度については、税務における一層の適正かつ円滑な利用を確保する観点から、番号法及び同法の整備法の公布後、納税者の利便の向上、個人番号及び法人番号の告知、本人確認の実効性の確保並びに調書の拡充による必要な情報の収集等に関する各種の施策について、納税者及び事業者の事務負担等にも配慮しつつ、引き続き検討すること。

  • 7 国際的な取引に関する課税については、国際的な租税回避の防止、投資交流の促進等の観点から必要に応じて見直すとともに、国際連帯税について国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること。

  • 8 歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進めること。